こころをめぐる話-内観に学ぶ

内観で人が変わるということ


カテゴリー: 2013年01月10日
                                        
                発行者 白金台内観研修所 本山 陽一
                                    Mail to: zan25224@nifty.com
                       http://www.shirokanedai-naikan.com/index.html

大分以前になるが、「内観では人は変わらない」と主張するある大学教授と飲
み屋で意見交換する機会があった。周りに人がいて話が中途半端になったせい
もあるが、私の説明がよく理解できなかったようだ。そこで、「現実に内観で
変わった人がいっぱいいるじゃないですか」と言うと、「それは、そうですね
ぇ」と同意してくれた。

これに似た話で、「人間が客観的になることはありえない」とか、「人間は他
人の気持ちなんか絶対にわからない」とか主張する権威ある先生方のご意見に
出合うことがある。しかし、現実には、自分のことを客観的に見てよく理解し
ている人と自分のことが全然わかっていない人がいるし、人の気持ちがよくわ
かる人とまったくわからない人がいる。

「こういう現実がありながら、どうしてそれを否定する意見を持つのだろう」
と長い間疑問に思って、そういう人々を観察していた。そうすると、こういう
考えを持つ人々の共通点に、神経質で思い込みが強く、完璧欲求も強いという
性格傾向があることに気がついた。このタイプの人々は、現実よりも自分の欲
求や自分の概念によりこだわるようである。自己愛が強い、と表現してもいい。

つまり、彼らにとって人が変わるということは、自分の欲求を満たすレベルに
変わることを意味し、それ以下ではまったく評価しない。客観的になるという
ことは完全に客観的にならなければならないし、人の気持ちがわかるというこ
とは完全に他人を理解するということを意味する。人は誰しも自分の欲求の上
に立って現実を眺めているものだが、自分の欲求に対するこだわり方が強いと
考えられる。

高すぎる欲求や過度のこだわりは、現実の小さな変化に気づかなくなる。彼ら
にとっては、all or nothing、100点か0点しかない。しかし、現実の世界は、
常に80点から30点ぐらいまでの中途半端な状態を微妙に揺れ動いているもので、
これでいいという完成品は何一つ存在しない。古来より瞑想は、自分をはじめ
とする現実すべての存在の小さな揺れに気づく感性を磨くものであり、その小
さな揺れを辿ることで大きな何かに触れる訓練をするものである。内観法も例
外ではない。

では、内観で何が変わるのだろう。それは大脳生理学的に考えると、一義的に
は大脳前頭葉を鍛えると考えられる。大脳前頭葉は、脳の司令塔と呼ばれてい
るところでその働きは、「思考する」「行動、情動(感情)、記憶をコントロ
ールする」「人の気持ちを感じ取る(コミュニケーション能力)」「意思を決
定する」「意識・注意を集中する」「意欲を出す」だそうである。

これらはいずれも内観の効果とリンクすることがわかる。内観は結果として大
脳前頭葉を鍛えているのである。脳は年齢に関係なく、鍛えれば鍛えるほど発
達し、使わなければ退化することが最近の大脳生理学でわかってきている。脳
細胞は使われることで脳を育てる物質を分泌させ、その細胞をさらに育てるそ
うだ。そういった意味では筋肉に似ているが、脳細胞は筋肉以上に速やかに変
化するらしい。つまり、内観することは、大脳前頭葉を鍛えるエクササイズな
のである。
 
この大脳前頭葉を精神分析的側面から見ると、フロイトの唱える「自我」の働
きとほとんど同じことがわかる。大脳前頭葉は大きく分けると三つに分かれる
らしい。その外側部は「知」の中枢、底部は「情」の中枢、内側部は意思決定
をする「意」の中枢を司るという。夏目漱石の「草枕」の有名な冒頭に. 智に
働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世
は住みにくい。 とあるように知性と感情のバランスは私たちの大きな課題で
ある。

大脳前頭葉の内側部にある「意」は、この「知」と「情」のバランスをとるわ
けで、フロイトの唱える「自我」の働きと似ている。したがって、内観法は、
精神的に言えば自我を成長させる方法、大脳生理学的に言えば大脳前頭葉を発
達させる方法とも言えるのである。宮沢賢治は「自我の意識は、個人から集団
社会宇宙へと次第に進化する」もので「自我の正しい成長は、人も己も大切に
して、共に栄える幸祈る、共存共栄の姿なり」とも言っている。

私もかつて「内観医学」という雑誌に、仏教の説く「無我」とは「自我」の発
達した状態だと書いたことがあったので、この宮沢賢治の考え方に「我が意を
得たり」とばかり深く共感したのである。このように内観法は、脳細胞を鍛え、
個人的にはこの厳しい世間を生き抜く能力を磨く方法でもあるが、極めると、
人類や宇宙のすべてと一体となり、自分を超えた全体的感覚を得る方法でもあ
る。

私たち人類は他のすべての存在物と同じように、常に変わり続けるものである
が、大脳新皮質の発達した人間は、意志の力でその変化の方向性を定めること
ができる幸運を得ているのである。



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