こころをめぐる話-内観に学ぶ

内観における罪悪感 3

カテゴリー: 2003年11月24日
こころをめぐる話ー内観に学ぶ NO89
                        内観における罪悪感 3
                     
                発行者 白金台内観研修所 本山 陽一
                    Mail to: zan25224@nifty.com
                                    http://homepage3.nifty.com/shirokanedai/

内観法の目的は、自分を知ることである。自分を知ることによって幸せになる
方法である。この場合の自分とは、ありのままの自分であって、こうあって欲
しい自分でも、なりたい自分でもない。当然のことだが、そこには醜い自分や
弱い自分等の見たくない自分も存在している。自分自身を客観視して、そうい
う自分に丸ごと向き合うのである。ちょっと厳しい作業だが、生きる厳しさを
乗り越えるには避けられない道でもある。

この厳しい道を少しでも和らげるよう内観法は工夫されている。まず自分を愛
してくれた人の懐かしい記憶を辿りながら、内観三項目「お世話になったこと」
「して返したこと」「迷惑をかけたこと」を自分のペースで整理していく。内
観三項目で一番厳しいのが「迷惑をかけたこと」だが、あくまでもその人の能
力や心の受け入れ準備に応じたその人のペースで行っていくのである。やりた
くないことはやりたくないと拒否もできる。

内観法では決して無理をしないことを尊重する。自分と対峙し受け入れていく
ことは大切なことだが、その厳しさも理解しているのだ。より重要なことはど
こまで受け入れたかではなく、どれだけ以前よりも受け入れられるようになっ
たかである。内観にゴールがあるわけではない。私たちの生きる意味は、現在
の自分より少しでも成長することにあると私は思っている。実際、私たちが喜
びを感じるときは、その成長が実感できるときである。

醜くて弱い自分も自分である以上、その自分にも目をそむけることなく自分全
体を少しずつ受け入れていく。自分の悪いところは悪いと素直に認めるのであ
る。そうすることによって自分と本当の意味で和解していくのだと思われる。
最初は否認したり怒り怨み恐怖等で葛藤したりするが、除々に事実の前にひれ
伏し自然に受け入れるようになる。その受け入れる量の大きさに応じて自分自
身が解放されていく。

ここまで書くとおわかりだと思うが、内観法における罪悪感は、悪かった事実
を具体的に見てそれを受け入れているのだ。つまり内観の課程において受容力
を鍛え大きくしているといえる。そこが病的な罪悪感と違う。病的な人は潜在
的には自分の悪いことを感じていながらその罪悪感に耐えきれず、否認や逃避
をして自分や環境を責め、無意識に自分を正当化していると考えられる。

したがって前号で述べたように、最初から「迷惑をかけたこと」に多く気づけ
る人は、人の立場に立つ能力と受容力が優れている人と考えれば、社会的に適
応能力の高い人が「迷惑をかけたこと」を多く気づくのも理解できる。逆に自
責観念ばかり強い人が「迷惑をかけたこと」になかなか気づかないのは、自己
中心性が強く受容力が弱いためと考えれば、彼らが社会に適応するのが困難な
理由も納得できる。そして「迷惑をかけたこと」を見つける量に応じて明るく
逞しくなっていくのも当然の帰結だといえよう。

ところで受容力を高めていくためには、その前段階として告白とか懺悔とか言
われる感情表出ができるようになることが重要になってくる。自分の無意識に
あるネガティブな感情や罪悪感に気づき、それを言葉にする作業である。そし
てこの感情表出が上手にできるようになるためには、他人の気持ちを思いやる
能力が必要になってくるということが最近の研究でわかってきている。

内観法ではこれらの能力をすべて養成するシステムが備わっている。今さらな
がら吉本先生の慧眼には驚くばかりである。「お世話になったこと」「して返
したこと」は、そういった前段階を自然にクリアーするのである。この設問は
自分を支えてくれている人を意識化させ、孤独感を和らげてくれる。そして相
手に対する壁を少しずつ取り除き、その行為の奥にある気持ちを自然に感じら
れ、他人に対する信頼感を取り戻す。

次に「迷惑をかけたこと」や「嘘と盗み」のテーマで無意識に眠っていたネガ
ティブな感情や罪悪感に気づき、告白するのである。この段階で自分の無意識
にあった感情が癒されるが、内観法はそこに留まらずさらに厳しく自己を見つ
め受容力を無限に高めていき、最後には「死」をも受容できるようになると私
は解釈している。病的な人は最初の否認が強く、最初の段階から困難さがつき
まとう場合もある。内観法はそういう人にも柔軟に対応している。
今回が理論編なら次回は応用編とでもいった内容というか、病的な人について
もう少し考えてみたい。

こころをめぐる話-内観に学ぶ

発行周期: 不定期 最新号:  2019/02/15 部数:  612部

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