こころをめぐる話-内観に学ぶ

内観における罪悪感 2

カテゴリー: 2003年11月17日
こころをめぐる話ー内観に学ぶ NO88
                        内観における罪悪感 2
                     
                発行者 白金台内観研修所 本山 陽一
                    Mail to: zan25224@nifty.com
                                    http://homepage3.nifty.com/shirokanedai/

内観体験のない専門家や患者さんが、罪悪感に対して抵抗を感じる理由の一つ
に、心理的な病を持っている人は自分を責めたり、自分自身に罪悪感を抱いて
いる人が多いからだと思われる。そういう人たちが自分の悪いところを見つめ
ると益々自分を責め症状を悪化させるのではないか、という疑念から罪悪感に
対して抵抗を感じるようである。言葉だけで捉えるとそういう心配をするのも
理解はできる。

ただ何度も言うようだが私たち心の問題を扱う者は、常に言葉の奥にある感情
に注意を払わなければならない。たとえば「わかりました」という言葉一つと
っても本当にわかっている場合もあれば、それ以上聞きたくないという抵抗の
意思表示として話を終わらせたい場合に使うこともある。あるいはまた、本人
はわかっているつもりでも本当は全然理解していない勘違いの場合もある。

総じて心を病んでいる人たちの心は、そうでない人に比べて二重三重に屈折し
ていて単純でない。素直に自分を表現する人は少ないので、周りの人に理解さ
れにくいケースが多い。さらにややこしいのは、自分自身でも自分の本心がよ
くわかっていないケースが目立つことである。確かに、心を病んでいる人たち
は自分を責め罪悪感を持っている人が多い。しかし、じっくりと一人一人の話
を聞いていると罪悪感の内容はさまざまであることがわかる。

「自分が悪い悪い」というから「どこがどういうふうに悪いのですか」と聞く
と具体的に答えられなかったり、自分が人に悪く思われたくないので先に自分
が悪いと言って、他人の批判から身を守る場合もある。また、口では自分が悪
いと言いながら本心では両親や環境を責めている場合もあれば、なりたい自分
になれない自分を責めている場合もある。寂しさ等の愛情欲求として自分を責
めるという自己表現をして他者の気を惹いていることもある。

ちょっと考えても自分を責める理由はいろいろで、人によってさまざまである。
ただ言えることは、この人たちが持つ罪悪感と内観の罪悪感は全く別のものだと
いうことだ。どうしてそう言えるのかというと、内観をしてみるとわかる。こう
いう人たちは内観三項目の「迷惑をかけたこと」がなかなか出てこない。出てき
ても非常に少ない。具体的に他人に迷惑をかけたことを探す能力が極端に弱いの
である。

この事実は内観の罪悪感と心を病んでいる人の罪悪感は明らかに違うというこ
とを証明していると私は思っている。そしてもう一つ言えることは、具体的に
「迷惑をかけたこと」を見つける量が増えてくるほど明るく逞しくなってくる
ということである。実際の内観場面でも「迷惑をかけたこと」を多く見つける
人ほど心の健康度は高く、社会的にも環境に順応している人が多いことがわか
る。

このことに関する考察は次号にするとして、ここで言いたいことは内観の罪悪
感と心を病んでいる人の罪悪感は違う種類の罪悪感であって、心を病んだ人が
内観をすることによって益々自分を責め症状は悪化するようになるということ
はない、ということである。ただ、逆に内観三項目そのものがなかなか探せず
内観がうまくできない場合に落ち込むケースはまれにある。

これは内観独自のことではなく他の療法でも同じだと推察される。つまり、期
待して療法を受けたが、うまく出来ないという挫折感で落ち込み、益々自分を
責めるようになるケースである。これに対応することは大切だが、それは内観
の構造と全く関係のない話である。全ての療法が完璧なものではない以上、内
観もやれば必ずよくなると断言はできない。しかし、少なくとも内観をちゃん
とやった人が以前より悪くなったケースを私は知らない。

内観にも問題が起きることがある。しかし、そうした問題を見ていると内観の
構造の問題というよりも、むしろ面接者の問題がほとんどである。内観者の数
が多すぎて一人一人に目が届かなかったり、面接者の倫理観の不足だったり、
内観への理解不足だったりである。面接者の資質問題は、現在日本内観学会で
も話題になっているが、内観の構造自体の問題点は今のところ見当たらないと
私は思っている。

こころをめぐる話-内観に学ぶ

発行周期: 不定期 最新号:  2019/02/15 部数:  612部

ついでに読みたい

こころをめぐる話-内観に学ぶ

発行周期:  不定期 最新号:  2019/02/15 部数:  612部

他のメルマガを読む