こころをめぐる話-内観に学ぶ

悲しみを閉じこめないで

カテゴリー: 2002年01月28日
こころをめぐる話ー内観に学ぶNO3                      
                        “悲しみを閉じこめないで”
                                                  
               発行者     白金台内観研修所 本山 陽一
                                               Mail to: zan25224@nifty.com
                                       http://homepage3.nifty.com/shirokanedai/
 
 だいぶ以前のことだが、ある会で人生に希望を失って思い悩む若い女性に出会った。幼
い頃よりとても恵まれたとはいえない環境に育っており、いろいろな心の傷を抱えている
ことが容易に想像できた。その会に40前後の勝気そうなキャリアウーマンも同席してい
た。冒頭のタイトルは、そのキャリアウーマンが若い女性に内観することを勧めていると
きに使った言葉である。

 最初は穏やかに話していたが、だんだんと熱を帯び熱い口調に変わっていった。その熱
心さに私は圧倒されていたが、あまりの真剣さに若い女性に対する愛情のようなものを感
じ、いつのまにか感動しながら聞いていた。おそらく彼女も心にいっぱい傷を持って生き
て来たのだろう。もしかしたら、過去の自分に話しかけていたのかもしれない。

 「悲しみを閉じ込めないで!悲しみを閉じ込めちゃダメだよ。悲しみを閉じ込めると、
悲しみから逃れられなくなるよ。悲しいこと、苦しいこと、自分の弱い部分を全部吐き出
しちゃいなよ。どんなことでも内観研修所の先生は全部受け止めてくれるし、秘密は絶対
守ってくれるから安心して、なんでもかんでも吐き出しちゃいな。楽になるよ」
 この言葉を聞いた時、私は心の中で“なるほど、うまいことを言う”と一人で感心して
いた。たぶん彼女は自分自身がこうして楽になったのだろう。以来、この彼女の体験から
出た言葉「悲しみを閉じ込めると、悲しみから逃れられなくなるよ」は私の記憶に残る言
葉となった。

 嫌な記憶や感情を溜めないことは、心の健康を保つ上でとても重要である。私はこうい
う嫌な記憶や感情を“精神的なウンコ”と呼んでいる。ウンコは外に出さないと便秘にな
ってとても苦しくなる。ところが、私たちには他人の眼を気にして、いいことは外に出す
が悪いことは隠す傾向が、ある。知らず知らずのうちに“精神的ウンコ”は溜まり、スト
レスに弱い体質になり、現実問題でもうまくいかないことが多く発生するようになったり
する。   

 だから、“精神的ウンコ”は意識して吐き出すことが大切なのである。軽いものなら趣
味やスポーツなどで吐き出せるが、深い傷はそうはいかない。心を許せる専門的な訓練と
経験を持った援助者の協力が必要になってくる。援助者の協力で無理なく吐き出せたとし
ても、実はそれだけでは充分とは言えない。過去に起きた事実は変えられないのだから、
その事実を乗り越え、その“呪縛”から解放されることがさらに大切なのである。

 内観法の本当の狙いはそこにある。内観法に沿って自らの過去に向かい合えば、自分自
身の力でさまざまな“気づき”を得て、過去の呪縛から解放され、自分らしさを取り戻し
てその人本来の持っている生命力が溢れ出すのである。
 ちなみに前述の若い女性も集中内観を体験し、「こんな明るい気持ちになれるなんて信
じられない」と言って帰って行ったことを付け加えておく。一人の女性の熱意が他の女性
の人生を変わるキッカケを作ったと言えよう。

こころをめぐる話-内観に学ぶ

発行周期: 不定期 最新号:  2019/02/15 部数:  612部

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