ある自然災害科学研究者の活動

[disaster-i News]2008/08/29 No.97

カテゴリー: 2008年08月29日
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 ●ある自然災害科学研究者の活動●          2008/08/29 No.97
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【目次】
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■ 2008年8月29日の前線による豪雨災害に関するメモ
■ 東海豪雨との比較
■ AMeDASでとらえられていない豪雨があったのでは
■ 人的被害の特徴
■ 昨夜からの東海・関東地方での豪雨について
■ 水文・水資源学会

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2008年8月29日 (金)
■ 2008年8月29日の前線による豪雨災害に関するメモ

2008年8月29日の前線による豪雨災害に関するメモ
http://disaster-i.net/disaster/20080829/

を公開しました.気象データの処理システムが不調のため,降水量
分布図などは示せません.文章情報が今のところ主体です.

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■ 東海豪雨との比較

 今回の豪雨は,その発生場所などから,2000年東海豪雨を連想さ
せる.しかし,端的に言えば,今回の豪雨は,その外力(降水量の
規模)も,被害の程度も,東海豪雨とは比較にならない事例だった
と言える.

 東海豪雨時のAMeDAS観測所の最大24時間降水量は,愛知県の東海
で557mmで,今回の愛知県・岡崎での24時間降水量302.5mmよりはる
かに多い.降水量の多寡は,地域によって全く異なるので一般的に
は観測値そのもので直接比較はできないが,東海豪雨時の多雨域は
今回の豪雨の多雨域に近接し,かつ地形的にも大きな違いがないの
で,この場合は直接比較しても大きな問題はない.

 また,多雨域も東海豪雨時よりはるかに狭い.AMeDASで24時間降
水量300mm以上を観測したのは岡崎のみだが,東海豪雨時には300mm
以上の雨域は愛知県ほぼ全域に広がっていた.下記ページ内の図は
東海豪雨時の2日降水量の分布図だが,このときの降雨イベントは
ほぼ24時間以内で終わっており,24時間降水量の分布図と大差はな
い.

http://disaster-i.net/disaster/20000911/distribution.html

 被害の規模も,東海豪雨ほど激しいものには今のところなってい
ない.東海豪雨による被害は,2000年10月2日現在の総務省消防庁
資料によると,全国で死者10名,住家全壊27棟,半壊77棟,一部損
壊208棟,床上浸水27180棟,床下浸水44111棟だった.今回の被害
はまだ全貌が明らかとなっていないが,床上浸水家屋数で見ると,
少なくとも1桁以上は小さな規模である.外力が小さいのだから,
その結果としての被害が少ないことも当然と思われる.

 筆者は,ことさらに災害を過小に評価する意図は持っていない.
過去の災害のことを速やかに忘却し,あたかも全く経験もしたこと
がないような現象が次々に発生しているかのようなとらえ方がなさ
れることに懸念を持っているだけである.過去の災害の教訓「だ
け」を重視することは無論好ましくない.しかし,あまりにもあっ
さりと過去の災害の実像や教訓を忘却することは,何とか防いでい
かなければならないと思う.

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■ AMeDASでとらえられていない豪雨があったのでは

 筆者はこれまでAMeDASデータだけを用いて議論しているが,AMeD
AS観測所でとらえられていないところで,もっと激しい現象が発生
していた可能性は当然ある.

 しかし,「川の防災情報」で参照できる,国土交通省や愛知県の
雨量観測所で,岡崎市付近の観測所を参照すると,いずれも,24時
間降水量は AMeDAS岡崎より小さな値になっている.少なくとも,
今回豪雨に見舞われた岡崎市周辺では,地上雨量観測所でとらえら
れていない豪雨が広範囲に発生していたとは考えにくい.

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■ 人的被害の特徴

 8月29日消防庁第3報の時点では,死者・行方不明者は愛知県で2
名である.断定はできないが,いまのところ災害と比較して大きく
ない.

 この2名はいずれも洪水そのものによる犠牲者である.いずれも
自宅にいたところ,浸水により遭難したものと思われる.このよう
な避災形態は,洪水による被害形態としては一般的だと思われがち
だが,実際にはこのような遭難形態はまれであり,筆者が整備して
いる2004〜2008年の豪雨災害による人的被害に関するデータベース
によると,この間の犠牲者244名中同様な犠牲者は13名である.

 洪水そのものによる犠牲者の多くは,車などでの移動中に遭難し
ている.また,「溺死者」の3分の1以上は,水田などの見回りに行
って用水路などに転落した犠牲者であり,洪水や浸水とは関係がな
い.今回の豪雨では,このような犠牲者がほとんど見られなかった.
これはあくまでも類推だが,今回の豪雨は深夜に発生しており,外
に出ている人が少なかったことが背景にあるのかもしれない.

豪雨災害時の人的被害に関する研究
http://disaster-i.net/research4.html

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■ 昨夜からの東海・関東地方での豪雨について

 昨日8月28日夜から29日朝にかけて,愛知県や神奈川県,東
京都などで1時間降水量100mmを越えるような豪雨が発生していま
す.タイミング悪く,当方の降水量データ処理端末が不調で,デー
タを迅速に示すことが出来ませんが,現在関連情報を整理中です.

 本年は,1時間降水量など,ごく短時間の降水量に大きな値がた
びたび記録されていましたが,24時間降水量などのまとまった時間
の降水量ではそれほど大きな値が生じていませんでした.短時間に
激しい雨が生じるが,長続きせず,かつ範囲も非常に狭いという豪
雨が今年はよく見られていると思います.

 短時間の豪雨だけでは大きな被害には結びつきにくいので,結果
として,人的被害,家屋被害も,例年に比べれば比較的少ない状況
が続いていました.

 昨日から本日にかけては,24時間降水量の最大値(1979年以降で
観測期間20年以上)を更新したAMeDAS観測所が2カ所(岡崎[愛知],
久喜[埼玉])あり,今年の豪雨としては長時間の雨もやや強かった
と思われます.まだ降雨が継続している地域もあり,被害状況も不
明な点が多いので,まずは情報収集に当たりたいと思っています.

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2008年8月28日 (木)
■ 水文・水資源学会

 8月26〜28日の間,水文・水資源学会2008年度研究発表会が東京
大学生産技術研究所を会場に行われました.

http://hydro.iis.u-tokyo.ac.jp/jshwr2008/

牛山は,26日のみ参加し,下記タイトルでポスター発表をしてきました.

牛山素行・吉田亜里砂・太田好乃,防災ワークショップにおける地
形情報活用の試み,水文・水資源学会2008年研究発表会要旨集,p
p.132-133,2008年8月26日.
http://www.disaster-i.net/notes/2008suisui.pdf

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ある自然災害科学研究者の活動
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発行人:
岩手県立大学総合政策学部 准教授 牛山素行
ushiyama@disaster-i.net
http://disaster-i.net/
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