T-mode 遠山清彦の国会奮戦記

[T-mode]No.211 イラク人質事件:その後の論争について

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■■■ T−mode  〜参議院議員・遠山清彦のメールマガジン〜 ■■■     
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              【No. 211】 2004年(平成16年)4月26日発行

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    【タイトル】 「イラク人質事件:その後の論争について」
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みなさん、こんにちは。今金曜日の夕方です。これから外国の新聞の東京支局
長との懇談があるのですが、簡単にメルマガを書きたいと思います。

<「渡航禁止」「費用負担」問題>
イラク人質事件がとりあえず解決した後、「自己責任」・「渡航禁止」や「(
人質救済にかかった)費用負担」をめぐる議論がマスコミでなされています。
私は2日前、この点についてある通信社の記者からインタビューを受けました。
(残念ながら全体は記事になりませんでしたが。)そこで、私の述べた考えは
次の通りです。

私は今回の事件を受けて、与党の一部にもあった「渡航禁止」の強化や「救済
にかかった費用の人質本人及びその家族による負担」については、個人的に反
対です。(公明党幹部の発言については、その幹部個人の意見であったと思い
ます。)「渡航禁止」を法律で明記することは、憲法に違反する疑いが強く、
今日国際社会で活躍する日本の民間人の多さを考えれば現実的でもありません。
ただ、すでに外務省が発表したように、危険地域の情勢についてより詳しく、
インパクトのある形で政府が国民に情報提供することは必要だと思っています。
「外務省が退避勧告を出していることを知らなかった」という声も巷間あった
ようですから、もう少し工夫が必要でしょう。

「費用負担」についても、私は基本的に否定的です。なぜならば、国内で誘拐
事件などが発生した際に、その被害者である人質救済にかかったコストについ
て、被害者家族や本人に負担させるということはしておらず、海外の人質事件
についても、原則的には同じ扱いでよいと考えるからです。ただし、国内の人
質事件と海外の人質事件では、かかるコストの規模が違う点には留意する必要
があり、そういう事件に巻き込まれないような細心の注意を払う責任が民間企
業や民間の個人にある点は強調されなければならないと思います。

一部に山で遭難した際にその負担が遭難し本人や家族に求められる事実を引き
合いに費用負担を求める声があったようですが、自らの意思で登山という一種
の冒険に行った場合と、拉致誘拐などの犯罪事件に巻き込まれた場合を全く同
列に扱うのはやや無理があると思います。(自分の意思で拉致されようとした
人は別ですが。)

<「自己責任」問題>
ところで、「自己責任」という言葉をめぐる議論が盛んですが、これは自己(
の生命と安全)に対する責任という意味で、危険な地域に行く人が当然誰でも
考える当たり前の話です。私は今回の事件でより問題になっているのは、「社
会的責任」だと思います。つまり、非常に危険な地域に行って今回のような事
件に巻き込まれると自分やその家族のみならず社会全体に大きな迷惑がかかる
という意識を当事者が持っているかどうかが問われると思うのです。

解放された人質のみなさんについては、この点の意識についてやや希薄なのか
なという印象をテレビで報じられる発言などで感じた人が多かったのではない
でしょうか。

「自己責任」だけが強調されると、「自分は自らの責任で、死んでもいいと思
って行った。」と主張する人が出てくると、話はなかなか難しくなります。な
ぜなら、それでも政府はその人が日本人である限り、救助する義務があるから
です。

ちなみに、海外で日本人対象の人質事件が発生した場合、その事件に直接対応
するのは、国際法上の基本的ルールとして、その事件が発生した国の政府当局
・捜査機関ということになっています。政府はあくまでも側面支援となります。
(日本の国家主権のおよばない地域での犯罪に対しては原則こういう対応にな
らざるをえないのです。ただし、最近の刑法改正で国外の法人に関わる犯罪に
日本の警察もより積極的に関与できることになりましたが。)ということはそ
のような犯罪に巻き込まれると自国の政府のみならず他国の政府の関係者にも
迷惑がかかる、という点も忘れてはいけないと思います。

<人質事件の惹起への政府の責任、そしてマスコミ>
被害者である人質の家族が、事件発生のほぼ直後から政府の重要な政策である
自衛隊派遣の撤回(=自衛隊撤退)を求めたことは、感情的には理解しますが、
政治的には従うことのできない主張でした。人質を取ったテロリストの要求が
自衛隊撤退だったためにこうなったのでしょうが、政府の自衛隊派遣の決定と
実施が人質事件を惹起したという直接的な証拠は何もないわけで、政府として
は、救済する義務はありましたが、その救済の具体的「手法」については誰に
も縛られず主体的かつ総合的に判断することが認められていました。

それでも表現の自由はありますから、人質の家族は好きなことを言ってもいい
ともいえます。しかし、ここで問題だったのは、人質家族の発言を報じたマス
コミの姿勢です。一部のマスコミの報道ぶりは、あたかも人質家族が救済の具
体的手法について言及したことについて、政府が受け入れる義務があるかのよ
うなものがあり、それが世論に不要なさざなみを起こしたように思います。さ
らに、マスコミの一部は(自分たちでそういう報道をしておきながら)今度は
一転して人質家族へ世論が反発するような報道に変えました。さらに、人質解
放後は、人質や家族に対してバッシングするのはおかしいという報道に戻った
わけで、今の混乱した議論の背景には一部のマスコミの作為が感じられます。

ところで人質事件の背景の問題ですが、私は今回の一連の人質事件は、米国の
ファルージャ攻撃に深く関わっており、一部の武装勢力が戦術として外国の民
間人を標的に人質作戦を展開したのだと思っています。サマワで人道支援活動
する自衛隊の存在が背景にあるとは思えません。(事実、人質になった外国人
の中には母国がまったく軍隊を派遣していない国の出身者も含まれていました。
)そういう意味でいえば、自衛隊が仮に派遣をされてなかったとしても、あの
時期のあの地域では起こりえた事件であって、そういう意味では、その全責任
を政府の政策や自衛隊の活動に結び付けようとする主張は、私は今でも説得性
が低いと思っています。

<NGO、ボランティアについての私の考え方>
私の以前のメルマガで、あるNGO代表の発言に反発して養老氏のベストセラ
ーの一読を薦めたことに対し、一部で誤解に基づく反論がありました。私が申
し上げたいポイントは、「たとえ国や政府に批判的な政治スタンスを日常取っ
ている方であっても、政府関係者が全力をあげて人質救済にあたったことに対
しては素直に感謝していただきたい」ということです。たとえご自分が嫌いな
政府に勤めている官僚や政治家であっても、同じ人間であり、人質やその支援
者・団体の政治的スタンスなど度外視して救済に全力をあげたわけですから、
そのことに対する正当な評価と謝意を表明することは、私は道義的に最低限必
要なことだと思います。それすら感じさせない発言を聞いたので、私は怒った
わけです。

誤解のないように書いておきたいと思いますが、私は公明党内でも政界でもき
ってのNGO擁護論者であり、そのことは私が参院の委員会で何度もNGOの
果たす役割の重要性を主張し、政府がもっとNGOに対して支援を強化するよ
う訴えた事実に現れています。(HPの国会議事録を参照)私自身、議員にな
る前は、大学教員職のかたわらNGOのスタッフとしてそれこそ危険な地域で
難民支援の活動等をしておりました。

ただ、NGOの世界を体験的に知っているがゆえに、辛口のことも申し上げて
います。例えば、「善意やボランティアでやっているから、なんでも許される」
とか「自分たちは基本的に正しい」という考えをもっていたら、それは「甘え」
である、ということです。たとえ動機が善意であり、自分の大切な時間を使っ
たボランティアの行動であっても、危険な地域で活動する際に必要な基本的な
準備を怠ってしまい結果として他者に大きな迷惑をかけてしまったら、その結
果に対しては、厳粛に責任を問われることを知らなければなりません。

また、NGOやNPOは今世界でも日本でも非常に膨大な数の団体があります
が、その資金力や危機管理能力、専門性、会計の透明性などについては正直言
って玉石混交です。中には、マフィアや暴力団が犯罪行為を隠蔽するために作
ったNGOもあるようで、海外はもとより最近は日本国内でもそういう事例が
報告されています。

NPOやNGOが活躍する領域は今後内外で拡大することは間違いないし、私
もそれを基本的に後押ししようと思っています。しかし、成長市場であるがゆ
えに、またイメージが良いだけに、その「美名」を乱用・悪用する人間や組織
も出てきており、そこに対しては警戒せざるをえません。また、NPOやNG
Oに公的資金や一般の寄付金が増えることも私はサポートしますが、その前提
条件としてNPOやNGOの活動の公益性や会計上の透明化を担保していただ
かなければなりません。

ともあれ、嬉しいのはこれらの諸課題を十分理解し、現実的にそれらを乗り越
えて活躍する日本のNGOも増えてきていることです。そういうNGOの方々
には今後も(場合によっては危険な地域も含めて)大いに人道支援活動等に従
事してもらって結構だし、「社会的責任」というものを十分自覚した上で日本
の「顔」としてがんばっていただきたい、と私は期待しています。
                            (4月23日)
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遠山清彦(とおやま きよひこ)    

参議院議員、平和学博士(Ph.D in Peace Studies, University of Bradford,    
UK,1998)    

参議院:厚生労働委員会・沖縄北方特別委員会理事、決算委員会委員    
公明党:参議院国会対策副委員長、青年局長、宣伝局長、国際局次長、
    遊説局次長、東京都本部副代表、沖縄県本部・山梨県本部顧問    
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発行部数:  3810部(2004年4月26日現在)
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