T-mode 遠山清彦の国会奮戦記

[T-mode]No.206 イラク人質事件について(2)

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■■■ T−mode  〜参議院議員・遠山清彦のメールマガジン〜 ■■■     
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                     【No. 206】 2004年(平成16年)4月14日発行

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    【タイトル】 イラク人質事件について(2)
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みなさん、こんにちは。昨日から東京以北は急に冷え込み、冬に逆戻りし
たような状況です。これほど寒暖の差が激しいと、特に高齢者の方々には
相当つらいと思います。どうかみなさん、風をひかれませんように(そう
いっている私が喉をはらしてますが)。

<前回のメルマガへの反響>
前回のメルマガで今回のイラク人質事件に関する私の基本的考え方を述べ
たところ、多くの方から反響がありました。わざわざメールを送ってくだ
さったみなさん、本当にありがとうございました。

反響の多く(9割以上)が賛同のご意見で、嬉しく思います。人命は何より
も尊く、その意味で政府・与党が3名の人質救出のために全力を尽くすこ
とは言うまでもありません。しかし、そのためにテロリストの要求を何で
も聞く、特に政府が聞くとなってしまうことは、避けざるを得ません。

自衛隊のイラク派遣については、その根拠となったイラク特措法の審議を
含め実に1年近い立法府での論戦を経て、小泉連立政権が決断した重いもの
であります。また、公明党も与党としての責任感から神崎代表自らが命が
けでサマワ視察(昨年12月)をした上で決めたことであり、多くの時間と
努力の結果でもあります。このような長い民主主義的手続きを経て決断さ
れた国策が、一部の悪逆なテロリストの行為によって安易に覆されること
になれば、これは根本の次元では民主主義政治の否定にもつながります。
フランス革命時代のロベスピエールを想起するまでもなく、恐怖政治は必
ず破綻します。

今人質事件に関する新たな情報は入ってきておりません。政府がここ数日
の混乱を反省し情報管理を徹底したこともありますが、現実に続報がない
こともあるようです。
前回も書きましたが、私が最も心配している点は、3人の人質の生きている
姿の映像が放映されないことです。解放までにまだ時間がかかるにしても、
是非この3人が生きているということを確認させてもらいたい、武装グルー
プに今一番求めることはこの点です。

<交渉専門家のチームがない>
日本政府特に外務省は、今でも水面下でギリギリの交渉を継続していると思
います。これは、今回の人質事件が終局してから言うべき意見かもしれませ
んが、今回の事態への対応を見て私が痛切に感じたことは、日本に交渉専門
家のチームがないということです。省庁でみると、警察庁には実際にはあり
ます。しかし、肝心の外務省内には、今回の人質事件や邦人保護に関わる他
の事件について、専門的対処ができる交渉のプロ(ネゴシエーター)が養成
されておりません。

ある外務省OB議員に聞いたところ、「外務省は『テロリストとは交渉しない』
が原則だから、交渉のプロを養成する必要性はない」という立場を従来から
とってきたとのこと。うーん、私は納得できませんでした。

私はもともと研究者時代は、「紛争解決学」や「紛争予防」をメインテーマに
研究をしており、かつ大学の授業でも「紛争解決の理論と実践」という講座を
(おそらく日本で初めて)開設した経緯がありますから、今いかに欧米で紛争
解決の手法が普及し、多くの専門家が輩出されているかをよく知っております。
欧米の大学・研究機関では、日本人の想像をはるかに超える精緻な紛争理論と
平和的解決のための実践的ノウハウが蓄積されており、私は日本人ももっと関
心を持つべきだと主張してきました。ところが、一番反応が悪いのが政府・役
所なのです。

実は日本でも交渉のプロ自体はすでにたくさんいます。どこにいるかというと、
多くは民間企業の特に渉外や営業担当部局にいます。なかには、本格的に欧米
で交渉術を学んできた人もいます。「交渉術」などというと、日本ではビジネ
スのハウツー本のタイトルとして軽く扱われがちですが、米国などではハーバ
ード大学等一流の大学で真剣に教えています。

以前国会の委員会でこのことに私もやや言及したことがあるのですが、外務省
の態度は、「私たちは外交官としてすでに交渉のプロである」というような自
尊心が見え隠れし、現状を変革しようという姿勢を感じることはできませんで
した。しかし、よく考えてみれば、外交官試験(現在は国家試験)に交渉術の
要素は全くありませんし、交渉能力向上のための本格的な研修等が省内で行わ
れていると聞いたことはありません。試験さえ合格すれば誰でも「外交官」と
いう立場を獲得できるわけですから、「外交官」が誰しも交渉上手とは限らな
いわけです。結局は、個人の資質にさしたる根拠もなく依存しているだけであ
り、「外交官」という立場だけで交渉のプロと錯覚している人も中にはいて、
そういう人ははっきり言って交渉人としては最悪の結果を招きかねません。

私は今回の事件を契機に、外務省をはじめ国際関係に関与する他の省庁・部局
の中に、交渉のプロを養成することを真剣に政府は検討すべきであると思いま
すし、そのことを今まで以上に強く主張していきたいと思います。

<続発する人質事件>
さて、今朝の新聞をみると、イタリア人も4人誘拐され、撤兵の要求が出されて
います。また、先日誘拐された米国人のうち4人の痛ましい遺体がバグダッド郊
外で発見されたとの報道も入ってきました。イラクの武装勢力・テロリストは
明らかに戦術としてこの手法を活用しだしてきています。個別の要求に屈する
ことは各国できないわけですが、しかし、この人質事件が多発する背景は冷静
に分析し、今後のイラク復興政策の見直しに役立てていかねばならないという
ことは私も強く思っています。

昨年のイラク戦争は、典型的な非対称型戦争であり、米軍は短期間に勝利する
ことができました。しかし、このことは多くのイラク人、特にサダム・フセイ
ン政権に連なる人々が武器・弾薬を豊富に所持したまま地下に潜行したことも
意味しており、実際今起こっていることはそのことを裏付けています。

国際社会は今非常に難しい現実に直面しています。今、イラクから撤退するこ
とは、イラクをアフガン化することが明らかなだけに、できません。しかし、
駐留する外国軍隊や民間人がどんどんテロリスト的手法で攻撃され殺されてい
くということになると、一体何のための支援か、という疑念の声が起きてくる
のも当然です。私はやはり一番大切なのは、イラク人の中に明確な国家ビジョ
ンを持ち、良識と国際協調主義に基づいたイラク復興を主導する勢力が出てく
ることだと思います。そのための環境整備をどこまで、できるか。今重大な曲
がり角で、私たちは真剣に考え行動することを求められています。
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遠山清彦(とおやま きよひこ)    

参議院議員、平和学博士(Ph.D in Peace Studies, University of Bradford,    
UK,1998)    

参議院:厚生労働委員会・沖縄北方特別委員会理事、決算委員会委員    
公明党:参議院国会対策副委員長、青年局長、宣伝局長、国際局次長、
    遊説局次長、東京都本部副代表、沖縄県本部・山梨県本部顧問    

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発行部数: 3688部(2004年4月14日現在)
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