武道通信かわら版

武道通信かわら版11月20日号

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―――――■―■―■■―――――――――【武道通信かわら版】
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 sugiyama@budotusin.com                 杉山頴男(ひでお)事務所
                      042-580-6428 fax 042-580-6438
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               202号 目次 
       
1 お知らせ
2 武士・騎士・紳士《六十七》 ……山本伊左夫
   ◎そんなのはコマル。もっとヘーワ的に 
3 飛行機乗りの空中“回天”《五十五》……森 武蔵(たけぞう)
   ◎COCKPITクルーとしてのマナー心得
4 忙中閑あり《百六十九》 ……杉山頴男
   ◎新選組の謎を解く――天然理心流は徳川家のお庭番だった 
   (15)生き残りが語った近藤勇の剣


■お知らせ――――――――――――――――――――――――――――――


一、 映画 南京の真実 第一部『七人の「死刑囚」』完成試写会
     日時:平成19年12月14日(金)開演18時30分(開場18時)
    場所:九段会館
     102-0074東京都千代田区九段南1-6-5 電話03-3261-5521
     http://www.kudankaikan.or.jp/access/index.html
    ※参加ご希望の方は直接会場へ。定員があるため予めご了承のこと。
    
   当映画は三部構成の予定となり、今回は第一部の完成試写会。
    第一部では副題の通り、A級戦犯の松井石根大将や東條英機大将ら、
   七名が登場致します。(キャストは近日公式サイトにて発表致)
   第二部・三部は南京攻略戦や情報戦の検証内容。

 

二、 11月25日(日)、靖国神社奉納演武
   戸山流、森重流、柳生心眼流の三団体
   11時より戸山流15名、森重流砲術20名、柳生心眼流甲冑10名。
   約45名による武者行列。戸山流は紋付羽織「陣笠着用」両刀帯刀
   森重流は甲冑着用にて火縄銃総備柳生心眼流は羽織袴にて靖国神社
   を一周  
   12時〜  戸山流試斬演武  12,3名による試し斬り
   13時〜   柳生心眼流にて甲冑組討の演武
   13時40分〜  森重流砲術にて15名による火縄銃にての実射
            演武(14時40分終了予定)  
    ※12月8日「 魁! 武道通信TV」にて放映


三、 「日本刀――なぜサムライの魂となったか」
    KATANAを世界へ発信
    日本武道具HP英語版にて同時掲載
     http://www.budoshop.co.jp/
    イギリスの刀剣家、ポール・マーチン氏と日本武道具店主、角田芳樹
    氏による英訳。杉山頴男の原文も当HP日本語版、杉山のブログ「煙
    管のけむり」 にて同時掲載。
    http://www.budoshop.co.jp/Kiserunokemuri-2-2.html
      (毎月1回、初旬掲載)「一章 日本人の原点」
    
四、「 魁! 武道通信TV」 11月24日(土)(夜10時〜11時)
   ゲストコーナー:島津兼冶。柳生心眼流(相沢富雄)/森重砲術師範
   虎の穴:初代タイガーマスク対鈴木みのる一騎打ち(12月20日)
   両者記者会見の模様
     Sky Perfect <パッピー241>無料
    インターネット放送 http://www.ch-sakura.jp/topix/356.html
           
五、 兵頭二十八・私塾「読書余論」17回目 11月25日配信 
   <既刊HP「告知版」に目次掲載>
   入塾案内
   ★お申込はメールにて。sugiyama@budotusin.com
    (不祥事で急ぎ連絡の際は電話も可)
   ※継続申し込みをする塾生は「継続」と一筆お願いします。
   兵頭二十八のネット私塾「読書余論」希望(何月から6ヵ月または1年
   =いずれか)
    支払い方法☆銀行振込 三菱東京UFJ銀行 国立駅前
   支店 普通3765873  有限会社 杉山頴男事務所 銀行振込みが
   確認され時点でPDFデータを添付配信します。


■「武士・騎士・紳士」
 この違いを知ると洋の東西が見える《六十七》―――――――――――――
                            
                            山本伊左夫   
  ◎そんなのはコマル。もっとヘーワ的に
 誠に勇ましい限りではあるが、それをどんどんやられるとジツに不都合を感
じる方がおられた。 
 もちろん「ヘーワをイノって、ハナシヤイで」と寝言をこくオバサンたちは
まだ生まれてなかったはずだし、オバサンだってホントに闘争が根絶してしま
ったら食い詰めてしまうから困るんじゃないのと思うけれども、この時「そん
なことはしてもらってはゼッタイコマル」と心から憂えたのはほかならぬロー
マ教会だった。  

 「キリスト様の御心に反する・・・」もちろんそれもあるだろうけれども、
それはとりあえずさておいて一番困るのは、そういうことをドンドン勝手にや
られると群雄割拠、力の強いものがのさばり出てきて常に新しい権威が生じ交
替し、せっかく神の権威において作り上げた騎士制度というものが崩れ、教会
の手を離れて別の権力の手に握られてしまう可能性が強いことである。  
 それだけはぜひやめて欲しい。 ヘーワを愛して欲しい。 しかしながら命
の源の領土権と意地がからんだ確執など、坊主のお説教くらいで止められる代
物ではない。 それではどうするか。 

 ローマ教会はベッタンベッタン扁平足の土下座行脚で世界がヘーワになると
考えるほど愚かではなかったから、巧妙な手段を発明した。     
 「やるならおやりなさい。どんどんおやりなさい。ただしワシらが認め主催
する場所で、正々堂々フェアプレイ。 勝敗はワシらが神を代行して行司役を
つとめてあげます。そうしてこそ神の御心にかなう勝敗結果が得られるのであ
り、その御心の結果に対して事後、遺恨や報復を考えるようではバチがあたり
ますからねっ。そんな者は尊い騎士ではありませんぞ。 めえッ!。」  

 こうして他人の血を流す紛争のおっぱじめかたからその勝敗判定まで握りこ
んでしまうことに成功した。恐れ入りました。 
 これって近くても五百年から千年以上も昔の話なんです。 
 その狡智たるや、現在のなんとか党の皆様、それから外務省の偉いかたがた
も、この時代の真っ只中にタイムスリップして行っても勝ち目があるとお考え
ですかなあ。 とほほ。
   

■飛行機乗りの空中“回天”《五十五》―――――――――――――――――
                   
                森 武蔵(たけぞう)(Web編集員)

 小生、来月をもって39年間の操縦生活を終えます。
 目下、第二の人生を模索中の身でありますが、別れに臨んで教え草。
 先ず筆とりて心得を…心あるYOUNG GENTLEMANよ、聞く耳あ
れ
ば御参考になされよ。

        ◎COCKPITクルーとしてのマナー心得

 マナーとは言え、時代による社会の変貌、国民文化の違い、所属集団の持つ
価値観等により微妙に変化して行きます。
 「郷にいらば郷に従え」のごとく、TPO(時・場所・目的)に合わせ、諸
事臨機応変に対処するのもクルーとしての資質であると同時に、洋の東西を問
わず「相手を尊敬する・相手に好感を与える・相手に迷惑をかけない」はマナ
ーの基本ですが、「知らぬと言うは、恐ろしかりけり」の語は、外地で見かけ
る日本の高校・大学生の立居振舞に端的に現れています。
 学校行事の簡素省略化は、プロトコールの儀礼儀典の持つ精神性歴史性、更
には、精神の荘厳性、威厳と重厚を情操教育から奪い、誰から教育される事も
なく、未熟な自らの認識のみに頼ったオシャレの追求は、躾け抜きの誠に奇妙
な装い立居振舞となり、諸外国で恥を晒しているのも現実です。
    
 制服はシンボルとして、誇りと愛着を持って着用すること。
(ジーパンで剣道ができるか?パジャマで空手ができるか?普段着では武人と
しての認識がもたない、らしさが出てこない)
 ダブルの意味(甲板上長時間見張りにつく場合、横風が入るのを防ぐ為、左
前右前どちらでも可として裁縫されていたが、現在は形骸化)
  
 サイドベンツの意味(剣を吊る時、柄が邪魔にならぬようスリットが入って
いる)
 機長の帽子の庇を飾るオリーブ葉、あるいは樫の葉の意味(艦上から舷門当
直の者が接舷して来るカッター内に、高級士官の座上を速やかに判別し、相応
の儀礼をもって迎えるためにデザインされたとも言われる。)
 あご紐の金線の意味(士官:士官の士の字は十人に一人の意なり)、靴のデ
ザイン(短ブーツ、あるいは紐つき・要は脱出時脱げぬ事)ピカピカに磨いて
あること、かかとの汚れに注意。(舗装のない時代、武士は他家の門前で足袋
を履き替えた)。
   
 帽子の被り方(アミダは抜け作に見える、戦場ならば兜首の対象とされる。
兜の真庇が上がり槍の穂先も上がっていれば、うわの空の戦場不慣れと測ら
れ、首稼ぎのカモにされる故事)
 米海軍のやり方を参考(右手人差し指と親指を重ね、親指先を鼻下にあて、
人差し指の先が帽子の庇の付け根に当たる着意・鏡の前で練習)帽子は軍人の
魂。室内で被る必要はないが、ON DUTY時はエレべーターの中等、脱帽
の必要なし。
 戦後忘れ去られたマナーの一つが帽子の扱い。特に、空港内で手に持って歩
かない事。
 外部点検時は安全のため(頭部保護)絶対に必要、特に中・小型機。雨天時
傘は絶対不可(山猿軍と見られる)、レインコートと帽子着用。芯は抜かない
事、徽章がよく曲がる(互いに注意)。機付きガードマンの敬礼に対しては、
敬礼で答礼すること。

   
 制服、ブラシはかけてあるか、ズボンは外部点検で濡れると一発で線が消え
る。こまめに、Yシャツと共にクリーニングに出せ。上着の左右ポケットに物
を入れて膨らませないこと、フラップは常に外へ出す。
 特に夏季のYシャツ時、背中のシャツがはみ出ている(椅子の背もたれでず
れる)背中のシワは伸ばし、余は腰の左右に集める。ネクタイは曲がってない
か?降機時、これも手早く互いに確認するか、機内備え付けの鏡でSELFチ
ェックせよ。
   
 靴下は制服と同じ色合いか黒にせよ。はでなワンポイントマークは不可。
通常、外套の襟は立てるな。前のボタンは閉めよ。空港内で肩からかつぐな。
濡れた外套も機内では即乾く、レインコート替わりに使用可。寒冷時に備え、
薄手で良い、皮手袋を常に外套のポケットに常備しておくと助かる。制服の下
のセーター・チョッキ類は、外部から見えぬようにせよ。

 空港内、胸を張ってアゴを引き、目線は真っ直ぐ、あたりを睥睨する気分で
歩け。頭髪のYシャツのエリにかかるは不可。ピアスごとき言語同断。手の爪
は安全上も短く切っておけ。口髭は入社後10年と心得よ。(10年の意は、一応
10年たてば、所属社会の一般教養は身についた、即ち一人前と仲間内から見な
される頃であろう故である。ただし、訓練に入る時は剃れ。教官に対する仁義
にして、訓練に入る者、個性は捨て白紙たらんとするの心意気なり)

 乗客の眼を常に意識せよ。みだしなみは規律と品位を保ち、自らにFLIG
HTに臨む厳しい心を作る為であり、畢竟、自分自身のために服装を整えるの
である。

 業務の為のSHOW UP時、機長に対して「何00期のOOです。よろし
く御願いします」と、積極的にこちらから挨拶をする。(挨拶だけは先手必勝)
職務遂行に際しては、静粛で礼儀正しく、かつ秩序正しくしなければならない。
 何人に対しても冷静で忍耐強く、正しい判断をし(経験が必要な部 分だが
…)野卑で粗暴な言語又は態度は慎まなければならない。よってめったにある
事ではないが、FLIGHT前には決して対航務・対整備と争ってはならない、
それは自らの心に平静を欠き、事故に繋がる恐れがあるからである。
  
 堪忍ならざる時は必ず相手の名前と、発言内容を控え、後に勝負せよ。これ
は地上側も深く心得るべき事である。クルーは忍耐心を持って紳士たれ。(ス
マートで目先が効いて几帳面、負けじ魂これぞパイロット)

 乗務前の空腹は禁物。ジュース一杯・コーヒー一杯でもよい、血糖値を上げ
ておけ。操縦も思考も、粘りがなくなる。
 自覚する睡眠不足よりも、自覚する空腹の方が、FLIGHTに与える影響
は大と思ってよい。動作はきびきびと、然し乱暴やぞんざいな、あるいは投げ
やりな操作は機器類を扱う者の行為ではない。

 飛行前ブリ―フィングに参加し、積極的な態度は良し。ただし機長が最終的
に責任を持って決定する事項、例えば搭載燃料、高度の選定等は意見を求めら
れたら発言する程度に腹案はとどめよ。有償の旅客を乗せた通常のLINE 
FLIGHTは、直接に機長養成の場ではないからである。

 ON DUTYにおける機長に対する横柄・ぞんざいな態度は不可。あくま
で将に対する幕僚として此れにつかえ、任務をまっとうせよ。何となれば、如
何なる機長と言えども最終的責任は彼が有しているか らであり、全責任は彼が
取るからである。

ー[機長は、航空機の航行中その航空機に急迫した危難が生じた場合には、旅
  客の救助および地上または水上の人または物件に対する危難の防止に必要
  な手段を尽くさなければならない:法75条]
  そして、機長が部下に忠誠を尽くさせるのは、彼の職権なのである。
 −[機長(機長に事故があるときは、機長に代わってその職務を行うべきもの
  とされている者)は、当該航空機に乗り組んでその職務を行う者を指揮監
  督する:法73条]

 FLIGHT中の腕組みは控えた方がよい(他人のFLIGHTを批判的に
見ているよう に取られ、20年前は怒られたものである)。
「アブナイ!」のアマチュア語は生々しく、禁句と心得、プロらしい表現方法
を工夫せよ。
 自分のことを「ぼく」、自分の父のことを「お父さん」とは言わない。自分
をさす場合「わたし」が標準であり、特に改まった場合には「わたく し」と言
う。体育会系に多い「じぶんは…」の言い方は兵隊言葉であり、士官には相応
しくない。
 ON DUTYでは「OOキャプテン」の呼び方が一般的。「くん(君)」
は本来、男子の学生用語であり、自分と同等以下の人に限る。
 機長殿、教官殿の言い方はしない。手紙等文書も然り。 機長、教官等の
役職に更なる敬称は不要。

 FLIGHTも含め、業務上の報告は適時適切に行う。タイミングを失した
報告 は、意味がなくなるだけでなく、その後の対応を誤らせることにもなりか
ねない。
 報告の内容はよく理解できるものにする。特に忙しい上司に報告する場合に
は、結論を先にするなど十分工夫し、報告時間も2〜3分間にする。(宿敵・米
太平洋艦隊司令長官・アーネスト・キングは如何なるこみ入った報告書・案件
所でもA−4版一枚のみと限り、それ以外は受付なかったと聞く。う〜ん油断の
ならぬ奴)
 FLIGHT中の報告は、こみ入ったことでも30秒以内と心得よ。

  ―孫氏曰く「兵は拙速を尊ぶ、その巧みの久しきを知らず」―
    これはFLIGHT全般における大事な心掛けと心得るべし。

 オブザーブ時等、権限も責任も有さない時、例えばスイッチ類の忘れを発見
した場合、CHECK LISTでカバーされるものなどに対してはそのまま
様子を見よ。指摘は直接に機長に対してではなく、ファースト・オフィサーに
対して具申せよ。
「CAPTAINサイドがOOになってます」等の言い方、ただし緊急を要す
る場合はこの限りではない。
  
 業務終了後、感謝の言葉は必ず述べる事。
「ごくろうさま」は目下にいう言葉であり、機長に対しては使わない。「あり
がとうございました」でよい。地上業務の場合は、「お疲れさまでした」でも
よいであろう。クルーシートからの退席は機長の後とせよ、先に降りる場合は
「お先に失礼します」と一声かけること。

 配車に対する席順は、通常第1位が後方席の右側、第二位が後方席の左側、
第三位は後方席の中央、第四位は前方の助手席である。ただしFLIGHT後
の車内ブリーフィングを考慮し、訓練生を機長の隣席とし、自ら助手席に座る
気配りのファースト・オフィサーもいる。配車には上位者が先に乗るので、上
位者が特に席を決めた場合は前述の席順に特にこだわる必要はない。エレベー
ターに乗る時は上位者が先で、降りる時は上位者が後とされているが、荷物の
多いクルーにとっては、混雑時同様入口に近い人か ら降りることが通常であ
る。

 機長から飲食に誘われたら特別の事情のない限り受けるようにせよ。嫌な奴
とも酒を飲め、話を聞け、若い内はそれができる。 「不関旗」は滅多な事で揚
げるな。 (不関旗:他艦と行動をともにせず、または、行動をともにできない
こと を意味する信号旗。転じてそっぽを向くことをいう)
 訓練生にとっては、慎ましく組織の中に溶け込むまでは、「見てもらうので
あって聞いてもらうのではない」との態度をとる必要性を弁えておく事。我々
は場所柄を考えず自分の専門のことばかりを話がちになるものである。食事の
話題についても、水準以上のものを身につける為には日頃の読書を心掛けるし
かない。  キャビンクルーの前で、下の話しなどするは全く不可。
 ファースト・オフィサーは積極的に会計をし注文を取り仕切るようにす るこ
とも、クルーとしての積極性の涵養と心得よ。     
                      

■忙中閑あり《百六十九》―――――――――――――――――――――――
                            
                             杉山頴男

 ◎新選組の謎を解く――天然理心流は徳川家の御庭番だった 
  (15)生き残りが語った近藤勇の剣


 新選組と袂を分つた伊藤甲子太郎派の安倍十郎が後年、「史談会」※で憎悪
する新選組への悪態を散々ついたその中で「近藤と申しまするのは」と、近藤
勇の剣を語っている。この安部は、伏見墨染で近藤を狙撃し失敗した者である。

 出目は百姓だが剣はなかなかのものだと褒める。やはり武士として腕前の評
価は遺恨とば別なのだ。実地(実戦)にかけては榊原健吉より近藤勇の方が上
だろうと地元ではもっぱらの評判だと、地元ビイキを割引することなく話す。
 榊原健吉は講武所師範で当代随一と評判の剣客。その榊原と真剣勝負なら近
藤勇が勝つと。新選組憎しの者が云うのだから信憑性は高い。近藤勇の剣が敵
側にいかに恐れられていたかがわかる。

 新選組生き残りの証言もある。
 ある夜、近藤の共をして近藤の足元を提灯で照らし歩いていると、突然、提
灯が真っ二つに切られたと同時に、人の絶叫とつかぬうめき声が聞こえた。
「局長!」と暗闇の中で叫ぶと「わしはここにいるよ」と常と変わらぬ近藤の
声がした。
 
 同じく、元新選組隊士の証言は『西郷隆盛一代記』(明治32年6月第三編)に
ある。
 もと高崎藩の隊士は、この西郷隆盛一代記を読み、「なおまだ近藤勇の勇武
はなかなか筆紙に述べ難し」と投稿したのだった。
 「彼は剣術、柔術、槍術においても人に秀でたるのみあらず、その軍刀を振
るい敵中に斬り込む時の如き、威風瞭然として今なお眼前に見える如くお覚ゆ。
近藤ひとたび出れば敵も味方も茫然として目を注ぐのみ。彼が敵へ向かえば左
右に避けて道を分かつ。実に奇怪不思議の如し、是は近藤の一徳なり。小生は
近藤の親族にあらざれども、勇の事はいくらほめても溢美(いつび)にあらず
云々」
 
 竹刀の道場剣法では弱かったが真剣勝負では強かった近藤勇像は、時代小説
でも同じみだ。時代小説、小説家はそれでよい。竹刀剣法が主流になつた世で、
試衛館は強くないと評判が立っても、恥じ忍んで頑なに実戦剣法を守った理由
は知らぬからだ。武州多摩の田舎剣法という隠れ蓑にをまとったのだ。

 竹刀剣道と真剣勝負は別ものあることは当時のサムライは周知のことだった。
ただ、真剣勝負など無縁だと思い込み、竹刀剣道に汗流していた元和偃武の末
裔のサムライと、敵は必ず西から来る、家康の遺言が現実になる日のための剣
技であった天然理心流の違いである。
 
 ときは文久(1849)、ところは江戸市谷にある試衞館。子の刻を回った深夜
である。道場の上座に近藤周助が座している。そこから一間半下がって、宮川
勝五郎、のち養子となった近藤勇が座していた。灯りは無い。道場の武者窓か
らもれてくる月明りだけだ。家人は寝静まっている。
 勇に四代目を継がせる話があった前半を省く。それは改めて云うまでもなく
家人一門、周知のことであった。周助がこの刻を選んだのは別の意味からだ。
「お主は<極位必勝 浮島の位>をどう読む。宗家を継ぐ者として解釈を聞き
たい」
 勇は一瞬、合点がいかなかった。なぜそのようなことをいまさらこの場で
と。周助の表情は伺い知れない。しかし、勇はそんな疑問を押し込み答えた。

 「荒海の水につれそう浮き島の 沖の嵐に心うこかす」と、勇は天然理心流
の奥儀と思われる口伝を口にしてから答えた。
 「荒波に見え隠れする沖の水鳥が、荒波の中でも悠々と浮いているのと同じ
様に、周囲の状況がどうであれ敵の姿を的確に捉えて戦えと申しておるのでし
ょう」
 勇が長年稽古する中で、天然理心流の極意は「千変万化臨機応変」であると
身を通してわかっていた。いまの世でも同じような解釈がされていることは、
天然理心流を知る方々はご存知のことだろう。
 
 「わしもそのような意味と心得ておる。が、勇よ、それは表の意味なのだ。
初代宗家内蔵之助殿が云わんとしたことはのう……」
 周助が語った、その裏の意味に勇は驚愕するのであった。そして、さらに勇
を驚愕させたのは、周助の口から語られた二代目から三代目の空白の10年間
の真実だった。
                             (つづく)

※明治24年、幕末維新に関する実歴談を集めるため「史談会」がつくられた。
『史談会速記禄』が明治25年からがほぼ毎月1回の割りで、昭和13年の411号
までの長きにわたり発刊された。感情論が先行したり、高齢者が多く、思い違い、
記憶違いも多々あるが、時代を生きたそれら証言者の一片は貴重だ


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         柔より還る元のその位置」佐々木 建(タケル)
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    「軍刀の操作及試斬」(陸軍戸山学校 編)/「兵法要務 柔術
     剣棒図解秘訣」」/「兵法要務 武道圖解秘訣」/別宮暖朗・著 
    「軍事史からみた「南京事件」の真実 」/ 田中光四郎・著「照
    準のなかのソ連兵」/木村三浩・著「右翼は終わってねぇぞ!――
    新民族派宣言」/「坂井三郎の遺訓――若きサムライたちへ」
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