セクシー心理学! ★ 相手の心を7秒でつかむ心理術

★セクシー心理学!★第443色~心理学ストーリー「五感の質屋」第二回

カテゴリー: 2009年05月22日
あなたは、

「視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚」

のうち、どれから「捨て」ますか?


五感の質屋、第二回です。


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   『セクシー心理学!』 第443色

            心理学ストーリー 「五感の質屋」第二回

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こんばんは。ゆうきゆうです。

(前回のあらすじ)

私の娘は、治療法のない病気にかかった。
生きていられるのは、あと1年もない。

そんなとき私は、「五感の質屋」に入った。

店主である女は、

「五感のうち一つを質に入れることで、娘の寿命を5年延ばせる」と話す。

私はそれを承諾した。

私が一番に捨てる感覚とは?



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◆ 五感の質屋 第二回
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「視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚。どれを質入れしてくださいますか?」


女は聞く。

私は、もう一度考えた。

やはり普通に考えて、まずは「嗅覚」か「味覚」だろう。

もちろんこれらを失うことは痛手だ。
しかし他の3つに比べたら、日常生活での支障は比べものにならない。

嗅覚や味覚がなくても、困るのは食事のときや、何かのニオイをかいだときくらいだろう。
そのときだけ耐えれば、どうとでもなる。

しかし他の感覚がなかったら、24時間にわたって不便に悩まされることになる。
常に人は何かを見ているし、音を聞いている。また衣服でも床でも、必ず何かに触れている。
この感覚がなくなるというのは、かなりの痛手だ。

また視覚・聴覚・触覚ともに、「コミュニケーションの手段になりえる」ということも重要だ。

聴覚があれば、声が聞こえる。
視覚があれば、筆談ができる。
触覚があれば、手に文字を書いてもらって理解もできるだろう。

しかし嗅覚・味覚でコミュニケーションをすることは不可能だ。

もちろん、誰かに何かを嗅がせたり、味わわせたりして、
「塩味がピリッと強ければ怒ってる」
「カレーのにおいは嬉しいサイン」
などと決めることもできるが、さすがに現実的ではないだろう。

いずれにしても、コミュニケーションができる手段は残しておきたいと思うのが当然だ。

となると、まずは「嗅覚」か「味覚」になる。

では、どちらの感覚にするべきか。
嗅覚と味覚、どちらなら失っても構わないか。


ここで私は、ある事実を思い出した。

「味覚」は、「嗅覚なくしては成り立たない」のだ。

カゼで鼻が詰まっていると、食欲は落ちる。
それは、「ニオイ」まで含めて「おいしさ」を感じるからだ。

すなわち、「嗅覚を失って、味覚だけ残しても、結局は味覚そのものまで障害を受ける」のだ。

だったら、味覚だけ失った方が、まだマシだ。

もちろんこれは絶対的な真実ではないかもしれない。
しかし、少なくとも私には、それが正解であると思えた。


私はそこまで考えてから、言った。


「味覚で頼む」

女は私の思考を読み取るかのように、静かに微笑みながら言った。

「承りました。味覚でございますね」

「あぁ。そしてその代わり、娘の寿命を延ばしてほしい」

「もちろんでございます。ご息女さまのご寿命、確かに5年、延ばさせていただきます」

「………」

「またご利用のときは、お越し下さい」



なるべくなら、もう二度と利用しないで済みたい。
私はそう思いながら、その質屋を後にした。


◆ 

しばらくして、娘は退院した。
医師によると「病気の進行が、ストップしている」のだそうだ。

完治といえるわけではないが、病状に変化がないため、
「もしまた症状が進行するようなら、もう一度来てほしい」
と言われ、いったん退院となったのだ。

娘は今までとまったく変わらない生活をし、成長していった。


娘は、病気のことは知らない。
ただ「ちょっと具合が悪くなったから入院した」としか考えていない。

それでいい。
娘が苦しむ必要はない。

苦しむのは、私だけでいいんだ。


◆ 

しかし私には、予想外のことがあった。

味覚を失うこと。
それは想像より、ずっと苦痛だった。

何を食べても、味のない粘土を噛んでいるような気分になる。
そのため、食事のときの喜びが0になる。

くわえて腐った食べ物であるか分からないため、不安ばかりが強くなる。

すると、食事そのものが、苦痛でしかない。


そんなときは、娘を見ることにした。
病気のこともなかったかのように、毎日すくすくと育っていく娘。

それを見ていると、その苦痛を忘れられた。


◆ 

娘の病気の治療法が開発されたかどうか。
私は毎日のように、医師に電話をして聞いた。

しかし答えは、いつも「NO」だった。

いつしか私は、病気のことを忘れていった。

娘は、治っているんじゃないか?
タイムリミットなんて、ないんじゃないか?

少しずつ、そう考え始めていた。


◆ 

それが甘いことを感じたのは、娘の15才の誕生日だった。
娘は前とまったく同じように、腹部をおさえて苦しみだした。

「お父さん…。痛いよ…。痛いよぅ…」

その言葉や表情が、私の心を、再び「現実」に引き戻した。


もう、選択肢はなかった。

毒を食らわば皿までだ。

私は再び、その質屋に向かった。


◆ 

「あら、お客様。ご無沙汰しておりました」

女のビジュアルは、あのときとまったく変化がなかった。
いや、黒い衣服、髪、そして目は、さらに深い黒さを増していたように見えた。

「…また、質入れされますか?」

女がそう聞く。
前の思考の流れから、次に失う感覚なら、一つしかない。


「嗅覚で頼む」

女は、静かに微笑む。

「…承りました。ではお望みの方の寿命、さらに5年、延ばさせていただきます」


◆ 

娘はまた元通りの生活に戻った。
これで娘の寿命は、20才まで延びた。

もうこれ以上延ばすことは、簡単にはできない。

残る、3つの感覚。
視覚、聴覚、触覚とも、安易には失えない。

今からの5年で治療法が開発されなかったら、どうなるのだろう?

暗闇か。無音か。無触覚か。
どれかを選ばなければならない。

最初の二つのように、すぐに選べるものではない。

その5年は、娘にとっても、私にとっても、重大なタイムリミットだった。


◆ 

においのない世界は、想像以上につらかった。

「アロマセラピー」というものがある。
人間に香りをかがせることによって、気持ちを落ち着けたりする治療法だ。

それに限らず、人間はニオイを嗅ぐことによって、安心や快感を得たりする。

綺麗な話ではないが、時に脚のニオイや、ワキのニオイを嗅ぎたくなってしまうことだってあるだろう。
臭い香りであっても、人はニオイの刺激によって、安心するのだ。

さらに異性の香り、またシャンプーや香水の香りによって、気持ちが高まることだってあるだろう。

これらの働きが、まったくなくなるのだ。

少しずつ、毎日の生活にたいする刺激や喜びが、失われて来るように感じた。

聴覚があるにも関わらず、「世界から、音が一つ消えた」と感じた。


◆ 

娘の治療法は、いくら待とうとも、開発されなかった。

味と香りのない生活のつらさとあいまって、イライラすることが増えた。

また娘も、18・19になるにつれて、少しずつ私にたいして反抗しはじめた。
お互いにストレスを抱え、口論になることも、少なくなかった。

そのたびごとに、娘にたいして、言いようのない怒りを感じ始めた。

私は。
私は、誰のためにこんなに大変な思いをしていると思っているんだ。
私がどれだけ自分を犠牲にしていると思っているんだ。

すべて、お前のためじゃないのか!?


自分の献身的な行動が受け入れられないほど、つらいことはない。

私の人生そのものが、まったく意味のないもののように思えた。

もしこのまま治療法が発見されず、20才の誕生日を迎えたら。
また私は、さらに自分を犠牲にして、娘の命を延ばすことができるのか?

自信をもって、その問いかけに答えることができなかった。


私はワラにもすがる思いで、医師に電話をし続けた。
医師は言う。

「まだ見つかりません。しかしあと少しで…。必ず開発できるはずなんです」

「あと、どのくらいで?」

私の質問に、医師は答えた。

「…あと、10年弱の間には…」


それは、さらに二つの感覚を失うことを意味していた。


◆ 

娘の20才の誕生日を間近に控えた日、私は決心した。

もう、すべてを話そう。
どれだけ私が頑張ってきたかを。

そして、もうこれ以上続けることはできない、ということを。


娘もまもなく、20才になるだろう。
人生として、十分に味わったじゃないか。
もう、いいじゃないか。

これが、運命なんだ。

私は自分に言い聞かせるように、何度も同じ言葉を繰り返した。


「話がある」

私は娘を呼ぶ。
そのときだった。
娘は、こう言った。

「あ、あのね、私の話から、先に聞いてくれる?」

何だろう。
私は不思議に思いながら、話を聞く。

「あのね…」

娘は、しばらく言うのをためらいながらも、口を開いた。
恥じらいながらも、とても幸せそうな顔で、こう言った。


「お父さんに、会ってほしい人ができたの」



◆ 

「…いらっしゃると思っておりました」

質屋の女は、あいかわらずの姿で、そこにいた。
私は彼女の顔を見るやいなや、思いの丈を叫んだ。

「娘を…。娘を幸せにしてやりたい…!
たとえ30才までだって、構わない…!
好きな男と結婚し、幸せに過ごす。
最後にそれくらい、味わう時間を、作ってやりたいんだ…!」


私は、娘に妻の姿を重ねていた。

同じ病気のせいで、妻は娘を産んで、すぐに死んだ。
私はおそらく、妻を幸せにしてやれなかった。

だからこそ、せめて娘を幸せにしてやりたい。

そのことに、今気がついたのだ。


女はそれを聞き、静かにうなずいた。

「それでは…」

「あと二つ。最大まで質入れさせてほしい」

結婚をするのなら、生活の心配はないだろう。
たとえ私がどうなろうとも、娘そのものは生きていくことはできるはずだ。

「承りました。視覚、聴覚、触覚のうち、どの感覚を質入れ…。いえ…」

女は息を吸い、言い直した。


「どの感覚を、残されますか?」







答えは、決まっていた。


(つづく)


最終話をお待ちください。

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それでは皆さん、おやすみなさい。
あなたが、とても静かでセクシーな夢を見られますように。

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