安心!?食べ物情報

安心!?食べ物情報 Food Review 833

カテゴリー: 2015年10月25日
安心!?食べ物情報833号
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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------833号--2015.10.25------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「ニュースから」「国産小麦とTPP」

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--〔話題〕--------------------------------------------------

 まず、こんなメールをいただきました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 今週のメルマガの記事「冷凍海産物偽装」について、若干思うと
ころあってご連絡しました。

 宮城県亘理町の食品業者による不正行為に対する岩沼保健所の対
応について,不可解な点があるのは確かですが,当初,公益通報者
保護制度に則って情報を非公開としたのは,通報者が公表を望んで
いた場合を除いて,必ずしも不適切な対応だったとは思えません。

 河北新報の記事を一通り読んでいますが,私は行政と業者の癒着
の印象は持っていません。先に述べたように,行政側(岩沼保健所,
宮城県食と暮らしの安全推進課)の対応に疑問は残りますが。

 河北新報の報道については,過去にも食品の安全性について首を
傾げる情報を肯定的にまとめた記事を掲載したり,十数年前の無登
録農薬事件において,きちんとした取材をせずに不確かな内容の記
事を掲載したりした過去がありますので,河北新報の記事の全てを
無批判に受け入れるのは,現時点では慎重になるべきだと思います。
私は,河北新報は,宮城県政批判が基本的論調だと感じていますの
で,今回の事件についても,是々非々で記事の内容を読んでいく必
要があると思います。

 いずれにせよ,今後の調査によって,事件の全容が明らかにされ
ることを期待しています。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 なるほど、参考になります。ありがとうございました。

 次はあまり報道されていない、食品事故について。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■老舗「千疋屋」で女性客5人が体調不良 出された水に高濃度塩
素、営業停止命令

 果物販売の老舗「京橋千疋屋」(東京都中央区)で、水を飲んだ
女性客5人が体調不良を訴えていたことが21日、警視庁などへの
取材でわかった。水からは高濃度の塩素が検出されており、同庁が
詳しい経緯を調べている。

 同庁中央署と中央区保健所によると、15日に来店した20~3
0代の女性客4人が店で出された水を飲んだところ、舌やのどに痛
みを感じ、店員に報告した。店が検査機関を通じて調べた結果、水
からは高濃度の塩素が検出され、店は17日から営業を自粛。保健
所は21日~23日までの営業停止命令を行った。

 水はピッチャーから注がれたもので、他の女性客1人も異状を訴
えていた。塩素は漂白剤などに含まれるが、ピッチャーは通常の漂
白が必要がない透明のプラスチック製で、同署が店員に話を聞くな
どして、高濃度の塩素が検出された経緯を調べている。

http://www.sankei.com/affairs/news/151021/afr1510210006-n1.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 不思議なことに、この記事以外はほとんどみかけません。テレビ
的にはおいしいネタだと思いますが、何か配慮でもあるのでしょう
か。

 そういえば、このところ異物混入ネタもあまり報道されませんね。
たとえばこんな事件もあります。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■リンゴジュースを自主回収=7300本、牛乳が混入-セブン&
アイ

 セブン&アイ・ホールディングスは23日、東北6県と茨城県で
販売したリンゴジュースに牛乳の混入が判明したため、商品約73
00本を自主回収すると発表した。乳アレルギーのある人は飲まな
いよう呼び掛けている。

 回収対象は「セブンプレミアム 果汁100%アップル」の50
0ミリリットルと1リットルの2種類。雪印メグミルクのグループ
会社、みちのくミルク(宮城県大崎市)が製造し、賞味期限は20
15年10月30日。セブン-イレブン・ジャパン(約1800店)
とヨークベニマル(約170店)、イトーヨーカ堂(3店)で販売
された。

 みちのくミルクの工場で従業員が操作を誤り、牛乳がリンゴジュ
ースに混入した。購入者は対象の商品をみちのくミルクに送るか、
店頭に持参すれば代金が返還される。

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2015102400019
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 この商品は牛乳と同じ紙パック入りのようです。メーカーも牛乳
屋なので、同じラインを使っていて、誤って牛乳タンクのバルブを
開けてしまったのでしょう。

 こういう人為的ミスを防ぐ仕組みがないのなら、食品工場として
は失格です。

 最後は例のキュウリ食中毒で、その菌の由来についての話です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

キュウリ、カメムシを食べて食中毒~米中の騒動を読む
<「食中毒」の処方箋>

 7月末からアメリカでサルモネラ菌の食中毒が流行しています。

 通常、家庭や学校・飲食店など特定の場所で収まるはずの食中毒
が、今年の夏はなぜか全米へと拡大していきました。CDC(米疾病
対策センター)とFDA(米食品医薬品局)が調査をしたところ、原
因として疑わしいとされたのは、ありふれた野菜の「キュウリ」。

 サルモネラ菌には2000種類ほどがあります。その中には腸チフス
など重篤な症状を示すものもありますが、サルモネラ菌は一般に激
しい下痢や嘔吐を引き起こしても治る「感染性胃腸炎」の、これま
たありふれた病原体。小児や高齢者で重症化することはあっても、
サルモネラ菌の食中毒自体は特に珍しいものではありません。

 9月22日現在の感染者数は、全米で558人(うち112人が入院)。
感染は33州にまで拡大し、アリゾナ、カリフォルニア、テキサスで
計3人の死者も出ており、9月上旬にはキュウリの供給メーカー2社
が自主回収を開始しました。

 自主回収の対象となっているのは、皮が濃い緑で固く、日本で見
られるものより大ぶりのアメリカのスーパーでよく売られている
「スライサー」もしくは「アメリカン」と呼ばれるキュウリです。
個別包装して売られるような高級品ではなく、山から必要な本数だ
け取って買うようなごくごくありふれたキュウリ。隣国メキシコか
ら輸入されたものだといいます。

 サルモネラ菌の治療には、輸液などの対処療法のほかに、おなじ
みの「抗生物質」が有効です。抗生物質では使い過ぎによって効か
なくなる「薬剤耐性」がしばしば問題になりますが、件のキュウリ
から検出されたサルモネラ菌の抗生物質に対する感受性は現在のと
ころ100%。すなわち、いま流行しているこのサルモネラ菌には
「抗生物質が100%有効である」という極めて心強いデータが出て
いるのです。治療には必ず抗生物質を用いるわけではありませんが、
仮にアメリカでキュウリを食べ、食中毒がこじれたとしても過度の
心配は不要です。

 とはいえ、今回のアウトブレイクについて、私には気になる点が
2つあります。

 1つは、原因となっているSalmonella Poonaというサルモネラ菌
についてです。Salmonella Poonaは、カメやイグアナなどの爬虫類
から高率に検出されるサルモネラ菌で、日本でもペット用のカメか
ら幼児が感染し、重篤な症状を示した例が報告されています。

 これが「なぜ今キュウリから検出された」のか。

 国立感染症研究所のリポートによると 、日本では年間約40万頭
のカメ類が輸入されており、そのほとんどが米国産。一方で、これ
らペット用爬虫類はサルモネラ属菌を高率に保菌していることが知
られており、2006~08年度厚生労働科学研究事業で市販のミシシッ
ピアカミミガメ(通称ミドリガメ)のサルモネラ保菌調査を実施し
た結果、全個体の83%からサルモネラ属菌が検出されたといいます。
また、日本のカメ類の最大輸入国である米国では、1970年代の初め
に小さなペット用カメが子供のサルモネラ感染症の主たる感染源と
なったことから、1975年には甲羅長4インチ(約10cm)未満のカメ
の米国内での販売を法律で禁止しているようです。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/082600030/092800005/?rt=nocnt
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 ミドリガメとカメムシとキュウリというのは緑一色の気配ですね。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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今回は休みます。

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「国産小麦とTPP」
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 国産小麦について、こんな記事がありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■国産小麦値上がり、差別化の切り札

 2016年に出回る国産小麦が値上がりしそうだ。9月に実施された
作付け前に実施する入札では、15年産の価格を上回る品種が相次い
だ。供給量が安定してきたことで、商品の差別化の切り札として使
いたい食品メーカーが国産小麦の使用量を増やそうとしているとい
う事情がある。

 国産小麦は、国内の小麦需要の約1割を占める。価格は販売予定
数量の3割については作付け前に入札を実施して決定し、残りの7
割は入札で決まった価格を指標として売り手と買い手が相対で決め
る。

 販売予定数量などは、生産者団体や需要家団体で構成する民間流
通連絡協議会がまとめている。作付け時期の前に、全国の農家の作
付意向面積や製粉会社などの購入予定数量を調査。全国米麦改良協
会(東京・千代田)が9月以降、数回にわけて入札を実施する。

 今年9月に実施された16年産の入札では、パン用の北海道産「ゆ
めちから」は1トン4万8000円台(税抜き)と15年産に比べ約13%
高く落札された。麺類用の品種「さとのそら」なども軒並み1割以
上高い水準で落札された。

 農林水産省が決めた輸入小麦の政府の売り渡し価格が、10月~16
年3月分は1トン5万6640円(5銘柄加重平均、税込み)と4~9
月期に比べて5.7%下落するのと対照的だ。

 背景には国産志向の高まりがある。農水省の作物統計によると、
14年産の小麦の収穫量は全国で85万2400トンと13年産に比べて約5
%増となった。15年産の作付面積も14年産を上回る見通し。十分な
供給を背景に、新商品などに国産小麦を使う企業が増えたもようだ。

 敷島製パンは今年に入って、食パン以外の菓子パンなどでも国産
小麦を使った商品を発売した。「20年までにパン用に使う小麦のう
ち2割程度を国産小麦にする」という目標を掲げる。ミニストップ
も今年4月、国産小麦を使ったドーナツを店内で発売し始めた。予
約の始まった今年のクリスマスケーキでも、「国産小麦使用」をう
たうところがある。国産小麦を使うことで商品を差別化し、販売増
につなげる狙いもあるとみられる。16年産は「需要が供給を上回る」
(昭和産業)との見方も出始めた。

 収穫量を大幅に増やしにくいことも価格上昇の一因となっている。
麦類は水田からの転作作物のひとつ。主な米の産地での麦類への切
り替えは一巡し、足元では水田で生産する作物を、食用米から飼料
用米に切り替える動きが加速している。収穫量の6割を占める北海
道でも「16年産の作付面積は15年産に比べてほぼ横ばい。輪作をし
ており、大きくは増やせない」(ホクレン農業協同組合連合会)と
いう。

 小麦はもともと、雨の少ない乾燥地帯で生産される作物。北海道
以外の日本の産地では、収穫時期にあたる6月ごろに梅雨が訪れる
ことで収穫量が減ってしまうこともあるなど、天候の影響による収
穫量の変動がほかの作物よりも大きい。足元の相場でも農家にとっ
て積極的に生産する動機は乏しいのが現実だ。供給量が安定しなけ
れば、輸入小麦に再び切り替える動きも出てきそう。製粉会社など
が望む安定供給のためにも、一定面積あたりの収穫量の引き上げが
求められそうだ。

http://www.nikkei.com/markets/shohin/view.aspx?g=DGXLASDJ14H30_15102015000000
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 そういえば、のところ大手メーカーでも「国産小麦使用」という
のをよくみかけるようになりました。

 ただ、価格については国産小麦の方が安いのが普通で、今年の春
先にはこんな記事もありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■国産小麦、安さが需要喚起 海外産と価格逆転 パンや麺で切り替
え拡大

2015年02月10日

 国産小麦の需要が拡大している。2014年に値下がりし海外産より
安くなったことで、原料の一部に国産を採用する製パン大手も出始
めた。国産小麦がパンや中華麺向けでも需要拡大へ一歩を踏み出し
た。

 敷島製パンは国内で最も売れている食パン「超熟」で国産を初め
て採用する。輸入小麦にパン・中華麺向けの国産硬質小麦「ゆめち
から」を8%配合し、1月末から店頭で販売を始めた。これまでパ
ンや中華麺向けはほとんど海外産が使われていた。

 超熟は年間で約560億円を売り上げる同社の看板商品。「国産小
麦の価格が下がって、使いやすくなった」と根本力取締役執行役員
は説明する。

 ゆめちからを本格的に使い始めたのは13年8月期から。食パンの
ほか菓子パンなどでもゆめちからを配合し、16年8月期には使用量
を20倍以上へ引き上げるという。採用する小麦粉の1割程度がゆめ
ちからになる。

 「餃子の王将」を運営する王将フードサービスは、14年10月8日
から店で提供する皿うどん以外の麺類に使う小麦粉を、すべて国産
に切り替えた。これまでは全量が海外産だったが、国産原料を求め
る消費者のニーズに対応した。「今の国産小麦は使うことができる
価格水準」と話す。

 国産小麦は作付け前に全国米麦改良協会(東京・千代田)が実施
する入札で指標価格が決定される。15年産小麦の入札で、ゆめちか
らは14年産と比べて1割値下がりし、1トン4万2747円だった。ゆ
めちからが初めて入札された12年産と比べると、半額以下だ。

 一方、輸入小麦は政府が一括して買い付け、製粉会社などの需要
家に売り渡す。14年10月~15年3月の硬質小麦の政府売り渡し価格
は、1トン5万5000円程度だった。価格は逆転した。ただ、国産品
は使い方が確立されておらず製品にする際のコストが割高なため、
単純に比較することはできない。

 自給率向上を目指す政府の政策で、補助金の拡充などによって国
産小麦は増産された。「08年に作りやすい品種であるゆめちからが
開発されたことも生産の伸びに追い風だった」(農林水産省)。国
産小麦の入札には生産量の3割程度が上場され、15年産ゆめちから
の上場は1万7350トンと、13年産の約2倍になり、値下がりした。

 国産小麦の生産量は大幅に増えた。ただ、これまで生産量が少な
かったことから使い方などが広まっていない。パン・中華麺向けは
生産量や品質が安定した海外産がまだ人気だ。国産小麦は生産の伸
びに対して「需要が追いついていない」(ホクレン農業協同組合連
合会=札幌市)。

 敷島製パンは国産小麦で味を維持できるか研究を重ね、超熟への
本格採用にこぎ着けた。輸入小麦が席巻する市場に風穴が開いた。
国産小麦の状況は「確実に変わりつつある」と根本取締役執行役員
は感じる。

http://blog.goo.ne.jp/kumasan-hattsan/e/ebcd4a424e335ce1782ca5e897ec65d4
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 国産小麦の方が安いという状況について、以下のような説明があ
りました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 国産小麦は輸入小麦に比べて高いイメージがあるが、2007年から
2008年にかけては、むしろ国産小麦のほうに割安感があった。

 2013年からも再び国産小麦は輸入小麦を下回り、2014年産の国産
小麦1トンあたりの平均価格49,319円は、輸入小麦の58,330円~58,
590円より安い。背景には、2014年から国内生産量第1位の北海道産
小麦の価格が下がったことがある。北海道産小麦「ゆめちから」が
急激に生産拡大し、北海道産「ゆめちから」と「春よ恋」の価格が
50%近く下落したのだ。

 農林水産政策研究所総括上席研究官の吉田行郷氏によると、「私
見だが、北海道では『ホクシン』から『きたほなみ』への全面転換
と『ゆめちから』の導入により、外国産と品質面で遜色のない品種
が中力系小麦、強力系小麦双方で揃った。量的にも、懸案だった強
力系小麦で、大手2次加工メーカーが使いこなせる量が確保された
ことから、今後、国内での国産小麦の使用状況を大きく変え得る
供給体制が整備されてきたと思う」と言う。

 しかし、このまま国産小麦に割安感が続くかは不透明だ。上述
したように、国内で国産小麦の需要が急激に増えていることから、
今後、供給量が追いつかなくなるとの予測もある。国産小麦の需
要が逼迫して価格が高騰する可能性もあるのだ。

http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150710-00044252-biz_jbp_j-nb&p=3
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 ここで指摘されていたことが現実になってしまいました。

 国産小麦が安くなっていたのと、メーカーの差別化政策のおかげ
で、需要が伸び、元々生産の絶対量が少ないため、価格が高騰して
きました。

 実は国産小麦は生産者が受けとる価格は国際価格よりはるかに高
いので、「国産小麦の方が安い」ということが起こるには仕掛けが
必要です。

 以下は製粉協会の記事です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■小麦の自給率をご存知ですか?
2009.4.28

○小麦の自給率は?

 小麦の自給率は、現在14%。

 小麦はパンやめんなど様々な食品に使われていますが、国内で生
産された小麦は、主にうどんなどの日本めん用に向けられています。

 それは、国内産小麦の持つ品質によるものです。

 したがって、例えば、パン用に使われている小麦に限って見ると、
国内産の 使用比率は1%程度とみられています。

○国内産小麦の品質は?
 
 国内産小麦は主にめん用に向けられていますが、現在、日本めん
用に一番適しているのはオーストラリア産小麦です。

 その理由はオーストラリア産小麦が優れているからです。

 最近では、国内産小麦にもオーストラリア産に匹敵する新しい品
種が出てきました。

 しかしながら、日本全体で見た場合、成果はまだ一部でしかあり
ません。

 さらに、同じ品種であっても、生産地や年によって品質のばらつ
きが大きいといった課題もあります。

 国内産小麦を振興するためには、このような課題を克服する必要
があるわけです。

○国内産小麦の価格は?

 今年収穫される国内産小麦の価格は、1トン当たり、平均で約5
万7千円。

 一方、小麦を1トン作るのにかかるコストは約14万円。

 コストを引き下げる目標も作られていますが、残念ながら成果は
ほとんど出ていません。

 この差を埋めないと生産は困難ですが、そのために、マークアッ
プが使われています。

 つまり、小麦を生産する農家のコスト補填のためにマークアップ
が使われています。

 食料自給力の向上は、生産者のみならず、まさに国民的課題です。

 小麦はコメと並ぶ主食。

 その自給力強化のためには、マークアップに頼るのではなく、広
く国民的負担が必要ではないでしょうか。

○小麦の価格?

 私たちが毎日食べているパンやめん。

 その原料である小麦は、大部分を海外からの輸入に頼っています。

 輸入は政府が行い、製粉企業は輸入された小麦を政府から買って
います。

 その際の価格は、国際相場の価格にマークアップが上乗せされて
決められています。

 つまり

□小麦の価格=国際相場の価格+マークアップ

となっています。

 現在、小麦の政府売渡価格は1トン当たり64,750円

内訳は
64,750円=45,773円+16,868円+2,109円
政府売渡価格  過去の国際相場  マークアップ  その他

 マークアップは現在(09年2月)の国際相場に対して5割~7
割となっています。

 つまり、現在の国際水準に比べて、5割~7割高い水準で売られ
ていることになります。

○マークアップって何??

 マークアップの中身は、国内での小麦生産を振興するための経費
と政府による輸入小麦の売買経費です。

つまり

□マークアップ=国内産小麦の振興に必要な経費+政府による輸入
小麦の売買経費

となっています。

 このマークアップからの経費が中心となって、年間総額775億
円が国内産麦に対する支援策に充てられています。

 国内での小麦作を振興する必要があります。

 しかし、このマークアップに頼ったやり方は望ましいものではな
いと考えています。。

 製粉協会はマークアップの縮減を求めています。

http://seifun.bgst.jp/?mode=news_view
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 「マークアップ」という実質的関税を徴収し、関税だと国庫に入
るところを輸入小麦の生産者補助に使っているわけです。

 そのマークアップもTPP交渉の対象になっています。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■麦 売買差益45%削減 国産振興財源に影響 
TPPで政府検討 (2015/7/30) 

 環太平洋連携協定(TPP)交渉で、政府が小麦のマークアップ
(売買差益)を45%削減する方向で検討していることが分かった。
マークアップは年間約800億円で、国産麦の経営所得安定対策の
財源となっている。大幅な削減は、輸入小麦の価格を下げるだけで
なく、国産麦の生産振興の財源不足が懸念される。また特別輸入枠
の新設も検討していることも分かった。大麦も、同様の対応を調整
している。
 
 小麦は、ウルグアイラウンド合意に基づくカレントアクセス(現
行輸入機会=年間574万トン)の範囲内で、政府が国家貿易によ
って一元的に輸入する。マークアップは、政府が小麦を製粉業者に
売り渡す際に、輸入価格に上乗せして徴収するもの。実質的な関税
に相当し、1キロ当たり45.2円が上限だ。この枠外での輸入に
は1キロ当たり55円の高関税をかけ、無秩序な輸入増を防いでい
る。
 
 交渉関係者によると、政府は、国家貿易制度と枠外税率は維持す
るものの、国家貿易で輸入する小麦と大麦のマークアップを、8年
程度で45%削減する方向で検討する。TPP参加国以外も対象と
なるが、日本が輸入する年間500万トン前後の小麦のうち、米国
とカナダ、オーストラリアの3カ国産で9割以上を占める。大麦も
この3カ国からの輸入が9割以上だ。
 
 また小麦の特別輸入枠は、米国、カナダ、オーストラリアに、売
買同時入札方式(SBS)で設定し、20万トン前後の規模で調整
する。大麦も数万トン規模の輸入枠を設定する方向で検討している。
 
 小麦は国内需要量の約9割を輸入している。マークアップを大幅
に削減すれば、輸入小麦の価格は下がる。現在、国産小麦の取引価
格は、おおむね輸入小麦より安い。だが、その価格優位性が薄れ、
国産の需要がさらに落ち込みかねない。別の交渉関係者によると、
マークアップ削減は米国などが強く求めていた。
 
 国産小麦は、マークアップを財源とする経営所得安定対策で、生
産コストとの差額を補填(てん)している。削減すれば助成額が減
り、国産小麦の生産が継続できなくなる恐れがある。小麦は水田の
転作・裏作、畑作での輪作を支える品目で、国内農業への影響は大
きい。

http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=34112
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 次も同じような解説です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■小麦 輸入差益、45%削減へ

 実質的な関税に当たる輸入差益(マークアップ)が、環太平洋連
携協定(TPP)発効時から9年目まで段階的に45%削減される。

 小麦は政府が一括して輸入し、製粉会社などに売り渡す国家貿易
を行っており、TPP後も維持されることから、無秩序に輸入麦が
流入することはない。

 ただ、マークアップ削減で輸入小麦の価格は下がる。今年10月
現在の政府の小麦売り渡し価格は1トン5万6640円、国産小麦
は主力の品種で5万円前後。

 銘柄などによって異なるが、単純にマークアップ分の1トン約1
万7000円を引くと、5万円を切って、国産麦と同程度か安くな
る。

 近年は世界的な穀物価格の高騰や円安で輸入価格が上がり、品種
改良もあって国産人気が高まっている。TPP後は消費者の選択や
国産の質が試されることになる。

 加工品でもマカロニやスパゲティの関税が9年目までに60%削
減される。輸入が最も多いイタリアはTPPに含まれず、国産小麦
はうどん用が多く、こうした商品に使われる強力系の国産小麦は少
ないが、近年は新品種も登場しているため、競争力をそがれる可能
性もある。

 消費者にとっては小麦関連製品が安くなる利点がある半面、20
11年にパンの消費額が米を上回るなどの状況から、さらに小麦製
品の消費が増えて食生活が変わり、食料自給率が下がる恐れもある。

 十勝の生産者にとっては、マークアップを原資とする補助金が維
持されるかどうかが今後の焦点となる。

http://www.tokachi.co.jp/feature/201510/20151023-0022105.php
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 マークアップを原資とする補助がなくなれば、おそらく国産小麦
の生産は維持できません。

 現状の差別化政策はあくまで雰囲気的なもので、国産小麦を使っ
ているパンの価格が倍以上しても買う、という選択を消費者がする
とは思えません。メーカーも、そうなれば差別化政策なんか忘れた
ふりをするでしょうね。

 上記記事に、TPPに関連した農作物関連の関税撤廃状況がまと
められていました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

TPPの主な関税撤廃・削減品目

( )内は現行制度

●小麦(マークアップ17円/1kg)

マークアップを9年目までに段階的に45%削減 

●マカロニ・スパゲティ(30円/1kg)

9年目までに60%削減 

●甘味資源作物(粗糖71.8円、精製糖103.1円)

ほぼ原稿制度を維持も、加糖調整品で品目ごとにTPP枠を設定

●小豆など雑豆(枠内10%)

低関税の輸入枠(関税割当)の量は維持。枠内関税を撤廃

●ジャガイモ(生、加工用とも4.3%)

生ジャガイモは即時、加工用は6年目で撤廃

●タマネギ(73.7円/1kg 以下で8.5%)

6年目で撤廃

●ニンジンなどその他生鮮野菜(3%)

即時撤廃

http://www.tokachi.co.jp/feature/201510/20151023-0022105.php
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 全体に、今回のTPP交渉では、日本政府はうまく立ち回ってい
ると思います。最終局面ではアメリカ代表に「しっかりしろ」など
と言って余裕をかましていましたが、農作物に関しては日本は例外
的に有利な条件をとっています。その余裕の現れなんでしょう。

 それでも、ある程度の影響は避けられず、「小麦のマークアップ
削減」が最大の影響になると思います。

 単純に考えて、15万円の生産費に10万円の補助をつけて5万
円で売っています。マークアップが半減すれば、補助は5万円に減
って10万円で売るわけですが、これは輸入小麦価格の倍以上にな
ります。

 つまり、国産小麦を食べられるのも今のうちだけかもしれない、
ということです。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 上にも書きましたが、TPP交渉は上出来の交渉結果だったと思
います。農作物についても、即時関税撤廃の太っ腹なところと、旧
態依然の制度を守ったというしたたかなところをうまく使い分けて
います。でも、それが日本全体のためによいことなのかどうか…、
私にはよくわかりません。

 体調の回復とともに、仕事が忙しくなりそうです。引退などと言
っていないで、もう少し仕事しろ、ということなのかもしれません。
孫と遊んでいるのも捨て難いところなのですが。

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