Cinemaの王国

[Cinemaの王国 vol.1796]~『斬、』

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☆   「Cinemaの王国」  vol.1795(2018.12.27)
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このメールマガジンは、自腹で年間100本以上の映画を観る(ぽち)が、映画館
で実際に観た映画の感想を書くマガジンです。
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【INDEX】
◆1.今週のこの1本!
  ─『斬、』─
◆2.ぽちのひとりごと
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◆1.今週のこの1本! ~『斬、』~
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●『斬、』
(2018年 日本)(上映時間1時間20分)
監督・脚本・撮影・編集・製作:塚本晋也
出演:池松壮亮、蒼井優、中村達也、前田隆成、塚本晋也
*ユーロスペースほかにて公開中。
ホームページ http://zan-movie.com/
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<ストーリー>
開国か否かで大きく揺れ動く江戸時代末期。貧窮して藩を離れ、農村で農家の
手伝いをしている若い浪人の杢之進(池松壮亮)は、武士としての本分を果た
す願いを持ちつつも、隣人のゆう(蒼井優)やその弟・市助(前田隆成)たち
と穏やかな日々を送っていた。そんなある日、剣の達人である澤村(塚本晋
也)が村にやって来る。澤村は杢之進の剣の腕を見込み、京都の動乱への参戦
を誘う。そんな中、村にならず者たちが流れてくる……。

<レビュー>
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人の命を奪うことを問う塚本晋也監督の異色の時代劇
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大岡昇平の原作を映画化し、戦争の狂気を暴き出した『野火』(2014年)が大
きな話題を集めた塚本晋也監督が、初の時代劇に挑みました。

冒頭に映るのは真っ赤な炎。それは刀の鍛冶、つまり刀の製造場面。続いて、
剣の稽古の場面が映し出されます。稽古とはいっても手持ちカメラを使った迫
力満点の映像。

稽古をする2人のうちの1人が主人公の若い浪人、杢之進です。江戸時代末期、
杢之進は貧窮して藩を離れ、農村で農家の手伝いをしています。武士としての
本分を果たしたいと思いつつも、隣人のゆうやその弟・市助たちと穏やかな
日々を送っています。杢之進と稽古していたのは、その市助。農民でありなが
ら武士に憧れています。一方、姉のゆうはそんな市助の考えに眉をひそめ、杢
之進が彼に稽古をつけることを嫌っています。

そんな中、剣の達人である澤村が村に来ます。彼は腕の立つものを集めて、京
都の動乱へ参戦しようとしていました。そして、杢之進の剣の腕を見込んだ澤
村は、彼を仲間に誘います。ついでに市助も2人に加わることになり、彼らは出
立しようとします。しかし、その直前に村にならず者たちが流れてきます。

そこから先の細かな展開は伏せますが、タイトルにある「人を斬ること=暴
力」が、彼らの前に突き付けられます。そこでは、あれほど暴力を嫌っていた
平和主義者のゆうが、逆に杢之進を焚きつけて人を殺させようとします。それ
に対して杢之進は、暴力の連鎖を恐れて平和的に物事を解決しようとします。

このあたりになると、冒頭からおぼろげながら浮かび上がっていたこの映画の
テーマが明確になります。人の命を奪うとはどういうことなのか。暴力の連鎖
とはどういうものなのか。そして暴力を前にして人間はどう変化するのか。そ
うしたことを観客にグリグリと突きつけます。つまり、この映画は時代劇であ
りながら、戦争、テロなど今の時代に通じる映画なのです。

思えば塚本監督は「野火」で戦争のリアルを描き出し、現在の日本に警鐘を鳴
らしました。今回は、江戸時代の武力のリアルを描いて、同じく日本の現状に
警鐘を鳴らしているのではないでしょうか。

セリフが極端に少ない分、映像で多くのことを示します。刀の触れ合う「カキ
ン」という音が印象的な鮮烈でダイナミックな斬り合いのシーン。その一方で、
杢之進が気配を感じて指を壁から外に突き出し、その指をゆうが口に含む艶め
かしいシーンなどもあります。

暗くて重たい色調で無残に斬られた死体を映した映像は、なまじのホラー映画
よりもおぞましく見えます。それとは対照的に、時折映される美しい朝の陽光、
農村の田園風景や山の中の木々、真っ赤な血の色などの鮮烈な色彩も心をとら
えます。

ラストの蒼井優の慟哭が胸にグサリと突き刺さりました。塚本監督が突きつけ
る様々な問題提起が、彼女の慟哭に集約されています。今の時代に通じる深い
テーマ性を持つ時代劇です。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
(90点)

2018年12月21日(金)ユーロスペースにて。午後1時50分の回
                       (ぽち)

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◆2.ぽちのひとりごと
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*『斬、』は少し前に観て、配信をすっかり忘れていた模様です。遅ればせな
がら・・・。
                       (ぽち)

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