Cinemaの王国

[Cinemaの王国 vol.1625]~『幼な子われらに生まれ』

★☆★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆★☆
★☆
☆   「Cinemaの王国」  vol.1625(2017. 8.30)
★☆
☆★☆             http://cinemaking.movie.coocan.jp/
★☆★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
=======================================================================
このメールマガジンは、自腹で年間100本以上の映画を観る(ぽち)が、映画館
で実際に観た映画の感想を書くマガジンです。
=======================================================================
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
【INDEX】
◆1.今週のこの1本!
  ─『幼な子われらに生まれ』─
◆2.ぽちのひとりごと
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆1.今週のこの1本! ~『幼な子われらに生まれ』~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●『幼な子われらに生まれ』
(2017年 日本)(上映時間2時間7分)
監督:三島有紀子
出演:浅野忠信、田中麗奈、鎌田らい樹、新井美羽、南沙良、水澤紳吾、池田
成志、宮藤官九郎、寺島しのぶ
*テアトル新宿、シネスイッチ銀座ほかにて全国公開中
ホームページ http://osanago-movie.com
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
<ストーリー>
互いに再婚同士の田中信(浅野忠信)と妻の奈苗(田中麗奈)は、奈苗の連れ
子である2人の娘とともに幸せに暮らしていた。そんな中、奈苗の妊娠が発覚し、
長女が「本当のパパ」に会いたいと言い始める。一方、信は前妻・友佳(寺島
しのぶ)との間の娘と定期的に面会していた。ところが、友佳の再婚相手は末
期ガンで余命わずかだと宣告される……。

<レビュー>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
家族という存在の厄介さとかすかな希望
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
重松清の同名小説の映画化です。

夫・田中信と妻の奈苗は再婚同士。信には前妻・友佳との間に娘がいます。冒
頭は、信がその娘と面会して、遊園地で楽しく遊ぶシーン。実に仲の良い親子
でほほえましくなりますが、そこには娘が今は妻のもとにいて、たまにしか会
えないという事情が色濃く反映しています。

そんな信が自宅に帰ると、妻の奈苗が前夫・沢田との間にもうけた2人の娘がい
ます。次女は再婚時にまだ小さかったので、信を本当の父親だと思っています
が、長女はそうではないことを知っています。

そんな中、奈苗の妊娠が発覚。それを機に、長女は「やっぱりこの家、嫌だ。
本当のパパに会わせてよ」と言い出します。それに対して、奈苗は沢田がDV
男で娘にも暴力をふるったことから、会うことに反対します。そのあたりから
家族崩壊の兆しが見え始めます。

というわけで、この田中家の人々を中心に、家族に様々な問題を抱えて葛藤す
る人々を描いたドラマです。

何といっても秀逸なのが、『ヴァイブレータ』『共喰い』などで知られる荒井
晴彦による脚本です。原作の小説はかなりのボリュームのようですが、消化不
良感はまったくありません。それどころか、主要な人物の揺れ動く心理を繊細
にすくい取っています。

良き家庭人に見える信ですが、ところどころに違和感や戸惑いが見え隠れしま
す。たとえば、妻の連れ子である長女に接する時の態度は、実の娘と接する時
とは明らかに違います。そんな心の亀裂が、妻の妊娠発覚とそれによる長女の
傷心によって、一気に表面化します。

一方、妻の奈苗の態度は一見、能天気にも見えますが、その裏では前の結婚が
いまだに手ひどい痛手となっていることが、少しずつ見えてきます。

そして、信の元妻・友佳は再婚相手が末期ガンで余命わずかとなり、心が乱れ
ます。久々に会った信に対して、心の内をぶちまけるシーンが胸にグサリとき
ます。

三島有紀子監督の演出もなかなかのものです。特に映像。かつて信と友佳が破
局を迎えたシーンや、奈苗と長女が前夫からDVを受けるシーンなどは、手持
ちカメラを使ってリアルに描くなど、場面場面に適した映像を使ってドラマに
深みを加えています。

ドラマが進むにつれて、信はにっちもさっちもいかなくなります。もがけばも
がくほど長女の心は頑なになり、仕事もリストラされてしまいます。そして、
ついに彼は「この結婚は間違いだったのではないか?」と思い詰めます。

そんな中、転機となったのは、実の娘から、血のつながらない義父の死を前に
しても悲しめないと打ち明けられたこと。そして、まもなく義父危篤の報せを
受けた彼女を病院に送り届けることになります。これをきっかけに、信は長女
を奈苗の前夫・沢田(つまり長女の実父)に会わせる決意をします。

そこでは沢田の心理が巧みに描かれます。それまでは典型的なダメ人間で、
「奥さんや子供なんて煩わしい」と言い放ち、長女との面会も金銭を条件にし
た彼が、それとは違う心根をチラリチラリと見せます。

この映画には安易な結末は用意されていません。それでも、かすかな光らしき
ものは見えています。もがき苦しみ、自分をさらけ出して、互いにぶつかり合
った家族たち。それがけっして無駄ではなかったことを示唆しながら、映画は
幕を閉じます。

揺れ動く心理を巧みに表現した浅野忠信をはじめ、田中麗奈、宮藤官九郎、寺
島しのぶの絶品の演技もこの映画の魅力です。血のつながらない父と娘の親子
関係を中心に据えているとはいえ、それに限らず様々な家族に共通するテーマ
を持つ映画だと思います。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆☆(+1/2★)
(94点)

2017年8月27日(日)テアトル新宿にて。午後4時の回
                           (ぽち)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆2.ぽちのひとりごと
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*あ! あさっては1日で映画が安い日だっけ。
                           (ぽち)

~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~◇~
☆このメールマガジンは
■『まぐまぐ』  http://www.mag2.com/  ID:0000021508
の配信システムを利用して発行しています。
====================================================================
■週刊「Cinemaの王国」  vol.1625(2017. 8.30)
●編集発行人:ぽち
●登録・解除はこちらからお願いします。
   http://cinemaking.movie.coocan.jp/mailmaga/moushikomi.html
 (発行者自身による解除、アドレスの変更等は一切行っておりません。ご面
  倒でもホームページまたは上記メルマガサイトからお願いします。)
☆本誌に掲載されている評価、感想等はあくまでも個人のものであり、特定の
団体、個人等を中傷する意図はありません。掲載された内容に起因するトラブ
ルには一切関知いたしません。また、記事の無断転載はお断りします。
●Copyright(c)1999-2017  ぽち
====================================================================

Cinemaの王国

発行周期: 週刊(毎週金曜+不定期の水曜) 最新号:  2018/12/12 部数:  1,014部

ついでに読みたい

Cinemaの王国

発行周期:  週刊(毎週金曜+不定期の水曜) 最新号:  2018/12/12 部数:  1,014部

他のメルマガを読む