エニアグラム アソシエイツ 通信

エニアグラム アソシエイツ 通信

カテゴリー: 2014年01月06日
====EA Network==========謹賀新年=========

     エニアグラムアソシエイツ通信
     Enneagram Associates Communication Network
                                           2014 01/06  
==================新年2号==========

2014年 ごあいさつに代えて 

神が万物を創造したとするならば、
人は万物を名づけ、分類することから始めた。
それが世界を認識することの事始め。

事象だけではなく、人もまた分類され、
類型として理解される。

医学の始祖として知られる古代ギリシャのヒポクラテスは、
人間のからだの中には血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁という
四種類の体液が流れているとし、その体液のバランスが
崩れると人は病気になると考えた。ヒポクラテスの四体液説は、
万物の根源(アルケー)は火・土・水・空気の四元素からなる
と考えたエンペドクレスの四元素説の影響を受けている。

エンペドクレスの万物の根源(アルケー):
 火・土・水・空気

ヒポクラテスの四体液説を受け継いだガレノスは、体液は
人間の気質にも影響を与えるとし、体液と気質の相関関係
から、気質の四類型を導き出した。気質は肉体の中の体液
の組み合わせによって決まるという説で、血液の多い人
(多血質)は楽天的、粘液が多い人(粘液質)は鈍重、
黄胆汁(黄胆汁質)は気難しい、黒胆汁(黒胆汁質)は
陰うつな気質だと考えられた。
ちなみに、黒胆汁はメランコリーの語源である。

<四体液と気質の関係>
血液:春  熱・湿・・・多血質:楽天的
黄胆汁:夏 熱・乾・・・黄胆汁質:短気
黒胆汁:秋 冷・乾・・・黒胆汁質:陰鬱
粘液:冬  冷・湿・・・粘液質:鈍重

中世後期、この四類型説はアラビアの占星術と結びつき、
星と気質には関係があると考えられるようになり、
人間の運命(宿命)は星によって導かれると信じられる
ようになった。とりわけ、黒胆汁は土星と関係が深いと
され、土星の影響下に生まれた者は陰うつな気質を持つ
メランコリー者ということになる。
15世紀の画家デューラーは「メランコリア」と題された
一連の作品で、当時盛んだった占星術とメランコリーの
結びつきを表現している。デューラーにおいては、
それまでマイナスの意味合いが強かったメランコリーに、
芸術家のイマジネーションと創造性の源であるとの意味
合いが加わった。

ガレノスの気質の四類型説は近代にまでおよび、
次に着目すべき類型論が現れるのは20世紀になってから
のこと。ドイツの医学者クレッチマーが提示した三類型
である。クレッチマーは体格と気質の相関関係を、
やせ型・肥満型、・闘士型の三つに分けて説明する。
やせ型は四肢が細長く、胴周りが薄い、脂肪のつきにく
い体型。肥満型は体全体に脂肪がつきやすく、柔らかい
体つきで、太りやすい体質ではあるが、必ずしも太って
はいない。闘士型は筋肉質で、四肢や胴周りの肉づきが
よく、硬く引き締まっている。
 
<クレッチマーの三類型>
・細長型:分裂気質:
    物静か・非社交的  
・肥満型:循環気質:
   社交的・温厚 明るいが時に落ち込む 
・闘士型:
 粘着気質:頑固、融通が利かない、
 時に爆発的に興奮 

クレッチマーに続き、アメリカの心理学者ウイリアム・
シェルドン(1899-1964)は、外胚葉型(やせ型)、
内胚葉型(肥満型)、中胚葉型(闘士型)の三類型
を導き出した。シェルドンはチューリヒに遊学して
いたがあり、クレッチマーやフロイト、ユングとも
面識があったらしい。シェルドンは一般の人々の
身体の生理学的特質と行動心理学の関係から、
次の三つのタイプを導き出したが、これは
クレッチマーの三類型とほぼ一致している。
シェルドンの研究は、人間の気質の三つの領域は
胎児の最初の細胞の三つの層に由来する身体構造
に密接に関連しているという考えに基づいている。

<シェルドンの三類型>
・内肺葉型:(内臓緊張型)
 社交的で生活をたのしむ
  ・・・消化器官がよく発達
・中胚葉型:(身体緊張型)
  積極的で大胆な
  ・・・筋骨がよく発達
・外肺葉型:(頭脳緊張型)
  非社交的で生理的に過敏な
  ・・・皮膚と神経系がよく発達

エニアグラムの類型論は、南米ボリビア出身の
オスカー・イチャーゾによって体系づけられた。
イチャーゾはロシア・コーカサス生まれの思想家
グルジェフの影響を受けた人物で、その活動は1960年代
アメリカで注目されるようになった。エニアグラムの
図形はグルジェフが西欧社会にもたらしたものだが、
この図に9つの性格タイプを配したのはイチャーゾ
である。イチャーゾ、グルジェフともに、
神秘主義的な色合いが強く、思想家であるばかりでなく
実践かでもあった。アカデミックな心理学の領域では
扱われていない。

エニアグラムと現代心理学・精神医学との接点は、
イチャーゾの弟子であった心理学者・精神科医の
クラウディオ・ナランホによってもたらされた。
ナランホはチリ出身で北米に移住した人物。これまで、
ワークショップ、ブログ、メールマガジンその他で
何度も繰り返したことだが、エニアグラムの類型論に
関しては、ナランホの著書『性格と神経症』Character
 and Neurosisu: An Integrative View(1994)の
なかに、ほぼ語りつくされているといっても言い過ぎ
ではないと思う。
エニアグラムを知るにはナランホを読むべし!なのだ。

そうすると、より知的好奇心旺盛で探究心のある読者
は、現代心理学や精神医学のみならず宗教思想・
哲学的な文献などにも、自ら当たらなければならない
という必要性を感じるようになるだろう。

ナランホはその著書の序説において、グルジェフの
思想への関心と影響がありながら、
同時にシェルドンの思想と研究に関心を持ち、
肯定的に受け止めていることを明らかにしている。
ナランホは、エソテリックな方面からの洞察と、
科学的なアプローチという両面から、パーソナリティ
(性格)構造を追求してく。エソテリックとは、
選ばれた少数者に伝えられる秘儀ないしは
神秘的な教えを意味する。

シェルドンの研究はその方法論が批判され、否定的に
とらえられる向きもあるようだが、ナランホはその
ことを承知しながらも、その後、性格研究の主流
となってくる因子分析よりも、この類型論のほうが
経験的にきわめて妥当であるという見解を示している。
ナランホは英国のハンス・アイゼンクや米国の
レイモンド・キャテルの論文も研究している。

イチャーゾのエニアグラムはナランホを通して、
北米に広がっていく。
そして、1970年代、エニアグラムは個人の自己啓発
のためのツールとして注目されるようになった。
日本に紹介されたのは1980年代後半のことだ。

さて、類型論の流れに話をもどそう。フロイトによる
無意識の発見は、20世紀最大の発見とされるが、
フロイトの弟子でのちにフロイトと袂を分かった
ユングは、内向型・外向型について言及。
現代では、「内向的な感じの人」とか、「外向的で
ものおじしない」といったように、内向・外向は
ごく一般的な言葉として使われているが、性格の
傾向を表すこの言葉はユングにさかのぼる。

ユングは”Psychologishe Typen”『心理的諸タイプ』
を出版(1921年初版)。彼は「人間心理には、
多くの個々の差異のほかにタイプの違いもある」とし、
タイプの違いに関して、まっさきに注意をひいたのが
内向型・外向型と名付けた二つのタイプであると述べ
ている。

内向型・外向型の違いは、内向型は、関心の向きが
客体から離れて主体へ向かうのに対して、外向型は、
関心の向きが客体へと向かう。両者ではエネルギー
の向きが違っている。ユングの考えでは、人はみな
内向・外向の二つのメカニズムを備えているが、
たいていどちらかに偏っているのであり、相対的に
優位な方がそのタイプということになる。
習慣となった構えが、タイプとしてとらえられる。

ユングはこの二つのタイプは、個々の心理的な機能
によっても区別されると考え、「思考」「感情」
「感覚」「直感」の4つの精神機能をあげた。
これらの機能の一つが習慣的に優位にな
ると、それに対応したタイプが成立する。

フロイトが『夢判断』を表した時、学界には受け入れ
られなかったが、ユングは大いに評価した。
フロイトに触発され、フロイトの弟子となり、当初、
両者の関係は良好であった。しかし、無意識の存在
やその抑圧についての解釈をめぐって、対立が生じる。

ユングは自らの経験から、タイプの違いが人
間関係の葛藤にも影響するだけではなく、
ときに学問的な見解の相違や対立をも招くと考えた。
ユングはフロイトを「外向型」、自らを「内向型」
とみなしていた。

その間の事情は『無意識の心理』(人文書院)
”Uber die Psychologie des Unbewussten”1948
 (初版 1916)のなかに反映されている。

「人間には相異なる2つのタイプがあって、一方は
客体に興味を持ち、他方は自己自身(主体)に興味を
持つのではあるまいか。」
「その結果、一方が見るものと他方が見るものとは
二つのちがったものになってしまい、それぞれ全く
違った結論にたっしてしまうのではあるまいか」
ユング『無意識の心理学』

昨年のエニアグラムサロンのなかで、エニアタイプ
について理解しておられる参加者に、ご自身は
ユングの言う内向型・外向型のどちらと思わるか、
内向―外向を横線にして表し、その中心から、
ご自身がどのあたりにいるかを示してもらった
ところ、面白い結果が出た。

 もっとも内向的・・・タイプ5
 内向的・・・タイプ4、タイプ9
 やや内向的・・・タイプ6

 もっとも外向的・・・タイプ7
 外向的・・・タイプ3、タイプ2、タイプ8
 
 内向的・外向的?・・・タイプ1
 あるいはやや外向的・・・タイプ1 

 ※タイプ1は外向型と思われる。
 
ユングによれば、どんな人間も純粋に内向的、
純粋に外向的ではなく、内向型にあっては外向性が
心のどこか奥の方に未発達の状態で眠っており、
外向型にあっては内向性が未発達の状態で眠って
いるという。内向型の外向性と外向型の内向性の
出方は違っているということだ。
ユングの『タイプ論』を踏まえたうえで、
エニアグラム図の内側の線の結びつきによって
示される各タイプの内面の動きを見ていくと、
各タイプの心の動きがよりイメージしやすく
なるかもしれない。

ユングは内向型・外向型という尺度に加え、
思考・感情・感覚・直観の四つの精神機能の違いから
8つの類型を導き出した。ユングの8類型と、
エニアグラムの9タイプの関連については、ナランホ
の先の著書にも言及され、米国エニアグラム研究所の
ドン・リチャード・リソ&ラス・ハドソンの著書に
おいても対比されている。両者の見方には相違点
もあるが、いずれにおいてもユングの8類型と
エニアタイプは、ぴたりとは重ならない。ユングに
関心がなければ、あえてその対比に着目する必要も
ないかもしれない。

ナランホに話を戻すが、ナランホは新フロイト派の
カレン・ホーナイの研究に敬意を表している。
ホーナイは神経症の研究から対人関係の葛藤について
の著書を表している。エニアグラムの9類型は、
ホーナイの対人態度との関連で共通の三つ組に
分類されることがある。リソ&ハドソンも、
ホーナイの三つ組について詳しく言及している。

<ホーナイの三つ組み>
人に向かっていく・・・
 自己主張型=タイプ3、タイプ7、タイプ8
人から離れ・・・
 遊離型=タイプ4、タイプ5、タイプ9
人に合わせる・・・
 追従型=タイプ1、タイプ2、タイプ6

そこから先はエニアグラムのタイプ論に入っていく
ので、ここではひとまず置く。
そして、エニアグラム図を西欧社会にもたらした、
グルジェフの思想に戻りたい。

エニアグラムの9タイプは、思考・感情・本能
の三つのセンターのグループに分類される。
この思考・感情・本能の分類は、グルジェフから
きている。センターとは「中枢」のこと。
三つの精神機能は身体の三つの部位、すなわち
思考=頭、感情=胸、本能=腹に対応している
と考えられている。センターの三つ組みは、
リソ&ハドソンのエニアグラムでは非常に
重要なものとみなされており、詳しく説明される。

<センターの三つ組み>
 思考センター
 ・・・タイプ5、タイプ6、タイプ7
 感情センター
 ・・・タイプ2、タイプ3、タイプ4
 本能センター
 ・・・タイプ8、タイプ9、タイプ1

グルジェフは思考と感情においては、高次の思考と
高次の感情があるが、通常、人は低次の思考と
低次の感情を使っていることが多いとしている。
精神的成長への道は、いかにして高次思考・
高次感情とつながるかというところにある。
グルジェフは人間に可能な精神的成長と発展へ
の道を探り、そのために「ワーク」と呼ばれる
実践的な方法を行った人物であった。
リソ&ハドソンのエニアグラムでも、
グルジェフの『第四の道』について言及される。
エニアグラムの実践的取り組みは、グルジェフの
第四の道につながっているともいえるのだ。

2014年のあいさつに代えて、長々と取り留めも
なく書いてしまったが、結論めいたこと、
というよりもむしろ、本来は冒頭に置くべきで
あった内容について、少し触れておきます。

紀元前1000年期、ドイツの哲学者ヤスパースが
「枢軸の時代」と名付けた時期がある。
その時期に、人類の歴史の非常に深い切れ目が
あるといわれる。そのころ、人類の歴史において、
というよりも人類自身に、それまでとは質的に
異なる何かが重大な変化が生じたらしい。
紀元前500年を中心に、その前後300年を見渡すと、
世界各地にほぼ同時に、偉大な思想家や宗教家が
現れ、宇宙や世界、人間についての深い洞察を行
い、深い思想や宗教的な教えの根幹につながる
考え方を説いた。東洋では孔子、老子、荘子など
が現れ、インドではシッダールタが、イスラエル
ではイザヤ、エレミアといった大預言者、
ギリシャではソクラテス、プラトン、アリストテレス
などの哲学者が現れている。現代にまで影響を
及ぼす重要な思想や洞察はこの時期に出尽くして
いる。

宗教心理学者のゲルト・タイセンによれば、
この時代は人類が「内なる自己」を発見した時代
だという。「内なる自己」の発見によって、
人類は自分と自分に属するものではないあらゆる
ものとの区別を学んでいく。

「内なる自己」の発見は人類に何をもたらし
ただろうか? 自己を超えたものの存在・
火存在への問い、「自分とは何か?」という
自己自身が何者であるかの問い、内なる魂に
ついての問い、内なる自己のさらにその奥に
ある謎・・・。
そこから、自己への洞察は前心理学的な心理学
となってくる。

エニアグラムが、古代の賢人たちの
「人間とは何か?」についての深い洞察の上に
成り立つ心理学であるというとき、
それはこの時代まで知恵の源泉をさかのぼると
いうことを意味している。 

 2014/01/06 中嶋真澄


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  E-mail: info@enneagramassociates.com
  http://enneagramassociates.com

 

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