紳也特急

紳也特急 vol,230

カテゴリー: 2018年10月01日
 …………………………………………………………………………………………
 ■■■■■■■■■■■  紳也特急 vol,230 ■■■■■■■■■■

 全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を
        精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース!

性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を
                                         専門家の立場から鋭く解説。
                    Shinya Express (毎月1日発行)

…………………………………………………………………………………………

~今月のテーマ『正解依存症』~

●『保健室のつぶやき』
○『「正解」とは何か』
●『「社会通念」とは何か』
○『「病気にならない」という正解』
●『「人に迷惑をかけない」という不正解』

…………………………………………………………………………………………


●『保健室のつぶやき』
 携帯もメリットデメリットがありますが、スマホの普及のおかげで、リス
トカットや境界性人格障害がグンと減ったと保健室で実感しています。一部
の子たちは家庭での孤独を薄めるため、ずーっとLINEをつなげっぱなしにし
て、寝るときもLINE、朝起きてLINEで「おはよう」。まるで兄弟が同じ部屋
にいる、というような感じで、ずーっとLINEで同じ時間を共有。
 スマホのなかった時代の人間からは信じられない(というかそんな煩わし
いことしたくない)ことですが、彼ら彼女らにとっては、夜という時間を乗
り越えるための大切なツールです。
 一方で、スマホのなかった時代には、夜がくるたびリストカットをしてい
たであろう子たちが、LINEで誰かとつながって寂しさを癒し(紛らわし?)、
自分が一人ではないことを知る。スマホこそリアルという子たちが一定数い
ます。

 もしこの養護教諭の先生が感じておられるように、リストカットや境界性
人格障害が減っているとすれば、LINEが人と人をつなぎ、これまで問題とさ
れていたことが解消される方向に向かっていることになるので、SNSはそれ
なりにいい側面もあるととらえるべきです。もっとも「素人が勝手に決めつ
けるな」という専門家の声も聞こえたような・・・(笑)。
 一方でSNSのトラブルがあるのも事実ですし、SNSにつながっている時間を
調査すると、夜中までLINEをやっている、さらにTwitterでつぶやいている
子たちはSNS依存症、ネット依存症と診断されることでしょう。ゲームに費
やす時間が多いとゲーム依存症や最近WHOが国際疾患分類に追加した「ゲー
ム障害」と言われるのでしょうか。専門家と言われている先生は「ゲーム
障害が“疾患”になったことで、今後は研究が進むだろう。今がスタート
ラインと思う」とコメントしています。でも、これって絶対「変」です。
病院で患者が来るのを待っている人たちにとってはそうかもしれませんが、
若者たちに接し続けている人にとって既に「事件は現場で起きている」の
です。
 専門家の先生もそうですが、どうも日本人は一定の枠に物事や価値観を
当てはめ、結果として大事なものを見失っているように思えてなりません。
「ずっとLINE」が「不正解」で、「LINEを上手に使う」のが「正解」になっ
ていないでしょうか。本当の「正解」は別のところにあるのですが、その
ことに気づかない、気づけない社会になっています。そこで、今回のテー
マを「正解依存症」としました。

『正解依存症』

○『「正解」とは何か』
 「正解」を広辞苑で引くと、「(1)正しい解釈。正しい解答。(2)結
果として、よい選択であること」とあります。「正しい」を引くと「(1)
まがっていない。よこしまでない。(2)よいとするものや決りに合ってい
る。法・規則などにかなっている。きちんとしている」とあります。
 ではお聞きします。皆さんは「正解」の、「正しい」人生を生きてきま
したか。人に後ろ指をさされることを一度たりともしたことはないですか。
それこそテストでとなりの「正解」が見えて「コピペ」したことはないで
すか。結局、「正解」とは理想ではあるものの、「正解」を追い求めると、
だんだんつらくなります。なぜなら、現実の世界では自分がその「正解」
にたどり着けないことを繰り返し経験するからです。ところが、自分では
なく、他人に、自分の家族に、子どもに、それこそ患者に、生徒に「正解」
を求めると、それにこたえられない人を「ダメな人」と切り捨てることで
自分を保つことができます。

●『「社会通念」とは何か』
 愛媛県伊方町にある四国電力伊方原発3号機の運転を差し止めた2017年
12月の広島高裁の仮処分決定について、同じ広島高裁が2018年9月25日に
四国電力の異議を認め、前の決定を取り消しました。「あれ?正解はどっ
ち」と思いますよね。細かいことはさておき、この取り消しを命じた裁判
長は、伊方原発から約130キロ離れた熊本県阿蘇山の破局的噴火について、
「頻度は著しく小さく、国は具体的な対策をしておらず、国民の大多数も
問題にしていない」と指摘し、「発生の可能性が相応の根拠をもって示さ
れない限り、想定しなくても安全性に欠けないとするのが社会通念」と判
断したようです。
 「社会通念」を広辞苑で引くと、「社会一般で受け容れられている常識
または見解。良識。」となっています。では、そもそも「社会」とは何な
のでしょうか。広辞苑には「(1)人間が集まって共同生活を営む際に、人々
の関係の総体が一つの輪郭をもって現れる場合の、その集団。諸集団の総
和から成る包括的複合体をもいう。自然的に発生したものと、利害・目的
などに基づいて人為的に作られたものとがある。家族・村落・ギルド・教
会・会社・政党・階級・国家などが主要な形態。」とあるのは、ま、そう
かなと思います。
 しかし、次のような解釈もあります。(2)同類の仲間。(3)世の中。
世間。家庭や学校に対して利害関心によって結びつく社会をいう。裁判官
がもし「同類の仲間」や「利害関心によって結びつく社会」をひいきして
いるとすれば大問題です。そして、そもそも「社会通念」という言葉を使っ
た時点でこの裁判官は失格と言わざるを得ません。まさしく裁判官なりの
「正解」に判決を導いたのでしょうが、結果的には「社会通念」という言
葉を理解していなかったと言わざるを得ません。この裁判長も、必死に正
解を探し求めた結果、「社会通念」という言葉にたどり着き、それが「正
解」と勘違いをし、とんでもない判決を出したと言えます。
 ちなみに、ここで言っていることは「原発反対」とか「原発賛成」と
いった話ではなく、あくまでも「正解依存症」というものを解明するた
めの論点とご理解ください。

○『「病気にならない」という正解』
 私はよく「エイズになって何が悪い」と言っていますが、この言葉は
なかなか理解されません。確かに「コンドームを使えばHIV感染は予防で
きる」というのは「正解」です。「早期に検査を受ければエイズ発症を
未然に防ぐことができる」というのも「正解」です。しかし、「正解」
通りの行動がとれない人がいます。好き好んでHIVに感染する人はいませ
ん。感染した人たちにとって一番大事なことはHIVと共に、その人が望む
生活を享受し続けられるような社会をつくることです。感染予防をあま
り強く言いすぎると、「感染することが悪いこと」という考える社会通
念をつくってしまう懸念があります。実際、「いいエイズ(薬害)」と
「悪いエイズ(性感染)」という発想があっという間に蔓延したのが日
本社会でした。
 「生老病死」という言葉に学べば、「病気」は「生まれること」、
「老いること」、そして「死ぬこと」と同じレベルでその人の人生の中
の必然的な出来事です。その現実とどう向き合い、どう生き続けられる
かを他人ごと意識ではなく、自分ごととしてとらえられるような社会通
念をどうつくるかが問われていますが、本当に難しいです。

●『「人に迷惑をかけない」という不正解』
 よく、大人たちは子どもたちに「人に迷惑をかけるな」と教えます。
これって一見「正解」です。しかし、人に迷惑をかけたことがない人な
んていません。となると、「人に迷惑をかけない」というのは一人ひと
りの行動結果から検証すると「不正解」になります。
 「もやもやしたら… 相談してみようよ!」や、「一人でなやんいる
あなたへ ~SOSを出していんだよ!~」を小中学生への自殺予防のメッ
セージとしている自治体があり、それが大人気で各方面で参考にする動
きが広まっています。でも「相談する」とか、「SOSを出す」といった
「正解」に基づく行動がとれない子たちが増えているという現実が見え
ていない人たちにはぜひ自分自身が「正解依存症」になっていることを
ぜひとも実感してもらえればと思います。ちなみに、10歳~14歳の自殺
は2008年~2012年と2013年~2017年の5年間で比較すると、男子で1.35
倍、女子で1.71倍と増えています。
 一人ひとりがつながるためにできることは何かを考え、そして行動し
続けたいと思います。



………………………………………………………………………………………… 
■御意見・御質問、お問い合わせ 
☆岩室先生宛の質問も t.watanabe49@gmail.com 受け付けています。 
………………………………………………………………………………………… 
■登録/解除の方法 
http://www.mag2.com/ 
「紳也特急」(マガジンID:0000016598)は、 
上記URLよりいつでも登録/解除可能です。 
………………………………………………………………………………………… 
…………………………………………………………………………………………

紳也特急

発行周期: 月刊 最新号:  2018/12/01 部数:  828部

ついでに読みたい

紳也特急

発行周期:  月刊 最新号:  2018/12/01 部数:  828部

他のメルマガを読む