紳也特急

紳也特急 vol,174

カテゴリー: 2014年02月02日
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 全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を 
        精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース!  
  
性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を 
                                         専門家の立場から鋭く解説。 
                    Shinya Express (毎月1日発行) 

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~今月のテーマ『ノロウイルス』~ 

○『子どもの食べ歩き』
●『なぜ冬場に流行するか』 
○『二枚貝とノロウイルス』 
●『牡蠣とホタテの食べ方の違い』 
○『「生食用」と「加熱用」の違い』
●『無意味な啓発はやめたい』
○『症状がない感染者』
●『手で蛇口を触らない環境づくりを』  

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○『子どもの食べ歩き』
 スナック菓子を食べながらエレベーターに乗り込んできた4歳ぐらいの子ど
もがエレベーターの壁に触ったり、手すりにつかまったりしてはスナック菓
子を手でつかんでは口に運んでいました。その光景を見て思わず両親の顔を
見てしまったのですが、ごく普通の、というかエレベーターに乗る際に扉が
閉まるのを防いだら挨拶をし、降りる際にも会釈をする礼儀正しい方たちで
した。どうしてこう思ったのかわかりますか。
 思わず「ノロ」という言葉を思い浮かべていました。昨今、マスコミで様々
な報道がされていますが、日本人は本当に感染症と上手に付き合うことが出
来ないんだなと思い知らされたので、今月のテーマをずばり「ノロウイルス」
としました。

『ノロウイルス』

●『なぜ冬場に流行するか』
 ノロウイルスによる感染性胃腸炎が冬場に流行することはもはや常識ですが、
なぜ冬場に流行するのでしょうか。ノロウイルスが流行する環境が冬場にある
からです。感染症を理解する上で重要になるのが、そもそもノロウイルスがど
こにいて、どうやって人に感染するかということです。最近の報道で犯人探し
が繰り返されているように、感染している人間が問題だとすると感染している
人間が冬場増える理由を考えなければなりません。
 ズバリ「牡蠣(かき)」が原因です。牡蠣の旬、一番牡蠣がおいしく、スー
パーなどに出回るのが冬場です。読者の方でこの冬に牡蠣を食べられた方はど
れだけいるでしょうか。そうなのです。あなたもノロウイルスに感染している
かもしれません。しかし、牡蠣をほとんど食べない時期であってもノロウイル
スによる感染性胃腸炎が起きています。これはノロウイルスが牡蠣以外に、年
中人に感染する経路を持っているということです。

○『二枚貝とノロウイルス』
 牡蠣だけがノロウイルスを持っているのではありません。二枚貝であるアサ
リ、ハマグリ、シジミ、ホタテなどもノロウイルスを持っています。これらの
二枚貝はプランクトンを食べて生きているのですが、そのプランクトンと一緒
にノロウイルスを食べてノロウイルスに感染します。正確に言うと中腸腺とい
う人間で言えば腸のようなところにノロウイルスを蓄えています。いろんな二
枚貝があるにも関わらず、牡蠣以外の二枚貝が問題にならないのはそれらの食
べ方の問題です。
 アサリもハマグリもシジミも生で食べませんのでノロウイルスを持っていた
としても加熱して食べた人は感染しません。しかし、アサリなどの砂抜きをし
た水にはノロウイルスがいます。その水を触った手を洗わずに生で食べるレタ
スサラダを作ったらどうなりますか。レタスにノロウイルスが付着して、サラ
ダでノロウイルス食中毒ということがおこります。

●『牡蠣とホタテの食べ方の違い』 
 「でもホタテは生で食べるけど大丈夫ですよね」と思った方もいるでしょう。
牡蠣とホタテの食べ方の違いを考えてみてください。ノロウイルスは貝の中腸
腺にいます。生牡蠣は中腸腺を含めた牡蠣の殻以外の全てを食べますが、一般
的にホタテは貝柱とヒモと呼ばれる所だけを生で食べますがこれらにはノロウ
イルスはいません。ホタテの中腸腺は貝柱の周りにある黒っぽいところです。
ここはさすがに生では食べませんよね。すなわち、牡蠣はノロウイルスが入っ
ている中腸腺を生で食べているから感染してしまいます。

○『「生食用」と「加熱用」の違い』
 スーパーで牡蠣を買うと「生食用」と書かれたのと「加熱用」と書かれたの
が売られていることは知っていると思います。ではその違い、基準を知ってい
ますか。
「生食用カキ」の食品衛生法上の基準はノロウイルスということへの認識がな
い中で作られていますので、ノロウイルスについては業者任せになっています。
しかし、業者の姿勢、基準も牡蠣の産地で異なります。
 北海道厚岸産の牡蠣は、紫外線を照射して殺菌された清浄海水の中で48時間
蓄養しているとのことです。
http://jf-akkeshi.com/guide/guide02.html
 岩手県漁連では生食用牡蠣の生産地は山田地区、気仙地区、上閉伊地区とし
 た上で、以下の安全策をとっています。。
◆24時間以上かけて殺菌海水により浄化したものを選別、梱包のうえ出荷し
ています。
◆採取海域ごとにノロウイルスの検査を毎週実施しています。
◆疑陽性(陽性)の場合は、出荷を自粛し、再検査のうえ陰性を確認し出荷し
ています。
http://www.jfiwategyoren.or.jp/kaki.files/kakit3.htm
 「広島かきかき鮮魚村では安易に生食をすすめません。お客様の健康を第一
に考え、加熱してからのお召し上がりをおすすめ致します。」というように良
 心的に書いています。すなわち、生食用として出荷する牡蠣については川から
海に流れ込む生活廃水等のことを考え、清浄海域(生食用指定海域)というの
 を設けています。これは結構科学的にも納得できる説明です
http://www.galaxycore.jp/kakikaki_kaki_tyudoku.html
 結局のところ、完全にノロフリーな牡蠣は存在しないので、食べたい人はそ
のことを覚悟して食べましょう。ちなみに、私は高校生の頃にタイで生牡蠣を
食べ、帰国の飛行機の中でかなり長時間トイレにいた記憶があります。しかし、
それ以降一度も生牡蠣で下痢したことはありません。ただ運が良かっただけで
しょう。

●『無意味な啓発はやめたい』
 よくマスコミは「吐いたものの処理の仕方」を一所懸命説明していますがも
う少し実用的な報道をして欲しいものです。一番びっくりしたのが、ノロウイ
ルスの集団食中毒が出た学校で教員が手袋だけで便器やドアノブなどを拭いて
消毒していたことでした。そんなことをしても次に便器を、トイレを使った、
ドアノブを触った子がノロウイルスを持っていたら何の意味もなくなってしま
います。それにあれだけトイレの中で壁やいろんなところを触っていれば、そ
の教員の服などに付着したノロウイルスを別の所にばらまく可能性があると思
わなかったのでしょうか。そもそもトイレにはノロウイルスがいると思って行
動するようにしなければ意味がありません。

○『症状がない感染者』
 同じようにノロウイルスを食べてしまっても、発病しない、下痢もしない、
気持ち悪くもならない人もいれば、ひどい下痢と嘔吐で苦しむ人がいます。こ
れは本人のノロウイルスに対する免疫力の問題です。当然のことながらノロウ
イルスに感染している人であれば便からノロウイルスを排泄しています。その
人が、すなわち全ての人が気をつけなければならないことは、大便を出した後
に肛門の周囲に着いているノロウイルスを、下痢をしていたら周囲に飛び散っ
たかもしれないノロウイルスをトイレの外に持ち出しているという意識を持つ
ことです。ウォシュレットなどを使うと水でノロウイルスがかなり流されるの
でいい方法ですが、水で飛び散る可能性も念頭に置く必要があります。トイレッ
トペーパーで大便が残らないようにふき取るでしょうがそれだけだとノロウイ
ルスは肛門周囲に残り、下着に着きます。家で下着を洗濯籠に入れているとす
ると、下着についたノロウイルスが洗濯籠の他の衣服に付着し、その衣服を洗
濯機に移す人の手にノロウイルスが付着する可能性があります。
 もちろん水洗トイレのノブにも、ドアノブにも、手洗いの蛇口にも前の人が
残したノロウイルスが付着している可能性があります。冗談でよく言うのです
が、男性が立ちションの後で手を洗うのは非常に不潔な、ノロウイルスを付着
させる可能性がある、非科学的な習慣です。尿には原則細菌はいませんので、
仮に尿の跳ね返りがあっても、他人のノロウイルスをもらうよりははるかに清
潔です。

●『手で蛇口を触らない環境づくりを』 
 子どもたちに「手洗いをしましょう」と教育して、指の間、爪の中まで丁寧
に洗う指導をしながら、最後は自分で蛇口をひねって「手洗い終了」とさせて
いるのはあまりにも滑稽な映像です。自動水洗でなくても、肘や足で蛇口をし
めるレバーに切り替えている映像が流れるのであればいいのですが、「手を洗っ
てまたノロ付けて」ではノロウイルスは防げません。
 病院の手術室では手洗いは徹底されていますが、実は不思議と手術室以外で
は医療機関の中でも感染症対策は結構いいかげんです。外来の処置の際に手袋
を渡してくれる看護師さんの中には、患者さんに触れる表側を、それも手袋の
指の部分を自分の手で触って私に手渡してくれる人がいます。それではその看
護師さんの手に付いた病原体が手袋の表面に付き、そこから感染が広がります。
敢えて医療機関の恥をさらけ出すのは、日本では感染症対策が非常に未熟であ
り、皆さんの周りの情報を鵜呑みにしないでいただきたいのです。
 ちなみにこの季節、マスクをしている人が後を絶ちません。他の人のくしゃ
みで飛び散ったインフルエンザウイルスが付着したところを触った手でマスク
の表面を触っているのは、まるでインフルエンザの患者さんがまき散らしたウ
イルスを自分のマスクに付着させて、それを吸い込もうとしているようにしか
思えないのですが・・・。
  お大事に。

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発行周期:  月刊 最新号:  2019/03/01 部数:  860部

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