農業文化マガジン『電子耕』

『電子耕』No.405 2018.2.8

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隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」  第405号
-環境・農業・食べ物など情報の交流誌-
2018.02.08(木)発行      山崎農業研究所&編集同人
読者数 954
<キーワード>
環境・農業・健康・食べ物などの情報提供、高齢者と若者、農村と都市の
交流ミニコミ誌。山崎農業研究所&『電子耕』編集同人が編集・発行。
http://www.yamazaki-i.org

□  目  次    □----------------------------------------------------
<巻頭言> どうなる!日本の「田んぼ」と「ご飯」 小泉浩郎
<寄稿> お米の新品種に注目 塩谷哲夫
<お知らせ> 山崎農業研究所所報『耕 No.142』内容案内
<会員著書案内>
 安富六郎著『武蔵野・江戸を潤した多摩川──多摩川・上水徒歩思考』
<編集後記> 「多様性」から「多義性」へ

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<巻頭言> どうなる!日本の「田んぼ」と「ご飯」
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 日本の「田んぼ」と「ご飯」を守ってきた減反政策(生産調整)が、今年度
産(2018年)から大きく変わります。行政(国)は、コメの需要に応じた生産
目標の設定・配分から手を引き、情報の提供と助成金の交付に限ることになり
ました。

 「減反廃止」は、産業競争力会議(2013/10)の突然の発信でした。それを
受け第186回通常国会(2014/01)で「40年以上続いてきたコメの……いわゆる
「減反」を廃止します」と宣言しました。農水省の正式文書は「生産調整の見
直し」としていますが、本音はコメも一般商品と同様に市場原理に基づくべき
ということです。

 現在、196回通常国会開会中ですが、安倍首相の施政方針演説では、減反政
策(生産調整)には全く触れていません。「減反廃止」ではなく「生産調整の
見直し」だから、生産目標配分は、今までどおり地方の組織がその役割を担い、
助成金交付は、今まで以上に厚くしているから特に問題なしとしているのでし
ょうか。

 国がコメの生産目標の設定・配分から手を引けば、農業者への配分は、情報
の周知・調整にとどまり指導力はなくなります。個々の農業者がそれぞれの判
断で対応すれば価格の乱高下は避けられません。

 「水田のフル活用」として高い交付金が予算化されていますが、WTO、TPP11、
そして日米協議のなかでこの高い交付金は早晩問題になります。特に飼料米に
代表される収量に応じた、55,000円から105,000円/10aは、財政当局からも問
題視され、国際的にも自由貿易を歪曲するものと問われることになり、恒久的
な手法とみることはできません。

 減反政策には、需要の単なる足し算・引き算ではなく、日本の「田んぼ」と
「ご飯」への国としての役割と責任を自覚した農政でした。だから40年以上も
農政の柱として位置づけられてきたのです。日本の主食である「ご飯」、農業
者の暮らしを立てる「コメ作り」、環境や文化そして原風景を保全している
「田んぼ」の視点から、いま、何が必要か、特に国の役割と責任が問われてい
ます。市場原理の国際的な荒波に乗り出すことだけが選択肢ではありません。

山崎農業研究所所長
小泉浩郎
yamazaki@yamazaki-i.org

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<寄稿> お米の新品種に注目
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 一昨年来、各県が競って米の新品種を発表し、販売に乗り出した。この動き
は地方の危機感の一つの顕れなのかと思う。

 「主要農作物種子法(種子法)」に支えられて道府県は農業研究機関におい
て優良な水稲・麦類・大豆の新品種づくりに粘り強く努力を続けてきた。その
代表のひとつが、北海道上川農試育成の「きらら397」である。こうした蓄積
を、今こそ農業の生産現場に、国民の主食市場に返していこう――“国民の食
の担い手は地方にある”という決意の顕れがコメの新品種ラッシュなのではな
かろうか。

 先日、上越市柿崎区に移住してコメつくりに励んでいる卒業生K君から「収
穫米販売」注文取りの手紙が届いた。“New・数量限定”の新品種「新之助」
が載っていた。電話すると、「大粒で、ふっくらして、甘みがありますよ。短
稈、晩生で、超多収の可能性があります」との返事だった。早速注文した。

 そうだ、茨城県にも「ふくまる」という大粒種があると思いだした。地元農
協の子会社が農家から預託を受けた水田で作っている。入手して食べてみた。
これもなかなかいける。家族の評判も良い。

 インターネットで検索してみると、沢山の新米発表・販売の情報がヒットす
る。興味をそそられたのは「大粒」品種が多いことである。「いちほまれ」
(福井)、「雪若丸」(山形)、「里山のつぶ」(福島)、「ひゃくまん穀」
(石川)など。

 最近は農研機構がゲノム育種手法を活かして、食料米から飼料米、飼料稲用
までにわたって、道府県の品種育成に貢献する多様な品種を発表している。そ
れらを活かして、各地で品種開発のスピードが上がっている。実用レベルの生
産シェアを獲得するのはなかなか大変だと思うが、販売戦略も含めた地方品種
の開発・販売に期待したい。それが日本の農業・農村を振興させる道でもある。

山崎農業研究所幹事・東京農工大学名誉教授
塩谷哲夫
yamazaki@yamazaki-i.org

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<お知らせ> 山崎農業研究所所報『耕 No.142』内容案内
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山崎農業研究所所報『耕 No.1420』の内容を紹介いたします。
ご希望の方には雑誌を頒布いたします。
yamazaki@yamazaki-i.org
までご連絡ください。

《土と太陽と》(巻頭言)
土木は自然尊重型に脱皮できるか◎篠原 修

[第43回研究所総会・第41回山崎記念農業賞]
総会挨拶◎小泉浩郎
第41回山崎記念農業賞贈呈式(愛媛県松山市泊町・釣島集落)
選考理由報告◎渡邊 博
現地訪問報告◎山路永司
受賞者挨拶◎池本三嗣

■総会記念フォーラム:
瀬戸内海の小さな島「釣島」から本来の「農業」と「暮らし」を学ぶ
フォーラム解題◎小泉浩郎
離島のマイナスを地域づくりの原動力に◎池本三嗣
柑橘で宝の島“釣島”に◎山岡建夫
記念講演:今、離島は元気です◎大久保昌宏

[特別寄稿]
スイスが食料安保を憲法に盛り込む◎山田 優
日本とブラジルの協力によるセラード農業開発の奇跡(上)◎村田稔尚

〈連載〉“生きもの語り”の世界から(13)
天地自然は無意識の中にもある――農の精神性への着目◎宇根 豊

〈農村定点観測〉
牧草・堆肥も含めた地域資源循環が求められる時代◎福島県・大河原 海
八溝地域のそばの付加価値化への挑戦◎栃木県・小林俊夫
間近に迫る30年問題◎新潟県・吉原勝廣

《随感》
あきらめるな! 光に向かって行け
心に残るノーベル平和賞受賞でのサーロ節子さんの講演◎塩谷哲夫

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<会員著書案内>
 安富六郎著『武蔵野・江戸を潤した多摩川──多摩川・上水徒歩思考』
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安富六郎著『武蔵野・江戸を潤した多摩川──多摩川・上水徒歩思考』
農文協、199ページ、定価1700円〈税別〉)
http://www.amazon.co.jp/dp/4540142631
※山崎農研HPに関連記事を掲載しています。

玉川上水の奇跡「ひとくい川」(第3話)連載  安富六郎 著
http://www.yamazaki-i.org/img/Hitokui_No3.pdf 第3話
http://www.yamazaki-i.org/img/Hitokui_No2.pdf 第2話
http://www.yamazaki-i.org/img/Hitokui_No1.pdf 第1話

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<編集後記> 「多様性」から「多義性」へ
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少し前になるが、環境倫理学の鬼頭秀一さんの講演を聞く機会があった。講演
のなかのキーワードのひとつが「多義性」。鬼頭さんは、道路を例にしてこん
なふうに語っていた。

道路は物や人を運ぶ通路である。しかしそれだけではない。人と人とが出会う
場所でもあり、そこで立ち止まって対話をする場所でもあり、時に祭りの場所
にもなる。道路というのは、多様な意味をもつ多義的な存在であると。

道路を運送、交通の手段として限定してとらえる、それは合理的、近代的な発
想であり、そういった考え方にたって道路は整備されてきた。だがその結果、
何がおこったか。商店街は衰退し、道を歩く人が少なり、街角で語り合う姿を
見なくなった。

この講演から数日後、哲学者の内山節さんと話した際、この「多義性」を話題
にしたところ、彼は田んぼや森林を例に語りはじめた。

田んぼはかつて稲を作るだけでなく、魚を捕る場所でもあった。畔豆を作る場
所でもあり、地域によっては畔に桐の木を植える林業の場でもあった。それが
田んぼイコール稲をつくる場所と限定されるようになったとき、農業がつまら
なくなった。森林もそう。森林イコール木を育てる場所ととらえられるように
なったとき、林業もまたつまらなくなくなった……。

「多義性」は「多様性」とはちがう。たくさんの存在がそれぞれ違うのが「多
様性」だとすれば、ひとつの存在が多様な意味をもつのが「多義性」である。

自然をとらえるばあい、まずは、個別の多様性に注目するのは言うまでもない。
問題はそれとの関わりかた、関係の結びかただと思う。自然を機能性の点から
分割してとらえ、課題ごとに個別に対処するのにとどまるのではなく、その多
義性に注目し、それらをつなぐような関わりかたを考えることが大切なのでは
ないだろうか。

2018年02月07日
山崎農業研究所会員・田口 均
yamazaki@yamazaki-i.org

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山崎農業研究所編・発行/農山漁村文化協会発売
『自給再考──グローバリゼーションの次は何か』
(発売:2008/11 定価:1,575円 )
http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_4540082955/
たくさんの書評・紹介記事をいただいています。感謝・感謝です。
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◎辻信一さん(文化人類学者、ナマケモノ倶楽部世話人。明治学院大学教授)
グローバルの次は何? ~卒業するゼミ生諸君へ
http://www.sloth.gr.jp/tsuji/library/column64.html
◎戎谷徹也さん(大地を守る会)
ブログ:大地を守る会のエビちゃん日記 “あんしんはしんどい”
「自給率」の前に、「自給」の意味を
http://www.daichi.or.jp/blog/ebichan/2008/12/16/
◎吉田太郎さん(長野県農業大学校教授、執筆者)
キューバ有機農業ブログ 自給再考の本が出ました
http://pub.ne.jp/cubaorganic/?entry_id=1822182
◎関良基さん(拓殖大学政経学部)
ブログ:代替案 書評:『自給再考 -グローバリゼーションの次は何か』
http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/cb22650fa39384bdd22b61440fa81fa0
◎大内正伸さん(イラストレーター・ライター)
ブログ:囲炉裏暖炉のある家 tortoise+lotus studio「書評『自給再考』
http://iroridanro.net/?p=15533
◎ブログ:本に溺れたい グローバリゼーションの次は何か
http://renqing.cocolog-nifty.com/bookjunkie/2009/01/post-841e.html
◎森川辰夫さん
NPO法人 農と人とくらし研究センター/資料情報
http://www.rircl.jp/shiryo.htm
◎日本農業新聞/書評
(2009/01/19 評者:日本農業新聞編集委員 山田優)
http://yamazaki-i.org/
(画面トップの「書評はこちらから」よりアクセス下さい)
◎小谷敏さん(大妻女子大学)
日本海新聞コラム「潮流」/「自給」の方へ(2009/01/31)
http://blog.goo.ne.jp/binbin1956/e/c895f6619b30ba7725e264b4daa75219
◎白崎一裕さん((株)共に生きるために)
月刊とちぎVネットボランティア情報vol.158/しみん文庫
http://yamazaki-i.org/
(画面トップの「書評はこちらから」よりアクセス下さい)
◎塩見直紀さん(半農半X研究所、執筆者)
ブログ:半農半Xという生き方~スローレボリューションでいこう!
立国集。
http://plaza.rakuten.co.jp/simpleandmission/diary/200812270000/

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◎お願い「<読者の声>の投稿規定・メールの書き方」
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1、件名(見出し)を必ず書いて下さい。「はじめまして」は省略して、言い
たいことを具体的に。
2、氏名・ハンドルネームは、文末ではなく始めのほうに。
3、1回1テーマ、10行位に。
4、ホームページを持っている人は、文末にURLを。
5、JIS X0208 規格外の文字(機種依存文字)のチェックを。
http://www.csj.jp/learned-society/check/new_but/jisx0208-sjis.html
インターネットで使えない丸数字や半角カタカナ、括弧入り略号などは文字化
けの原因です。

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次回  406号の締め切りは02月19日、発行は02月22日の予定です。

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<本誌記事の無断転載を禁じます>
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発行周期: 隔週刊 最新号:  2018/12/30 部数:  685部

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