ロシア政治経済ジャーナル

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            ロシア政治経済ジャーナル No.1
                           1999/04/25号
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まぐまぐ読者の皆様こんにちは。
ロシア政治経済ジャーナルに登録していただき、ありがとうございます。

このメールマガジンは、モスクワ在住の著者が、ロシアで起こっている政治、
経済、ロシア人の生活などの情報を発信するものです。

日本では知ることのできないロシアの情報をお伝えできればと思っています。
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★ベレゾフスキーの運命は?

去る4月6日、ロシアの最高検察庁は、ロゴバスグループ総裁
ボリス、ベレゾフスキーの逮捕を決定した。
その決定をパリで聞いたベレゾフスキーはインタビューに答え、
「これは政治的陰謀だ!」と名指しでプリマコフ首相を非難。
「私はロシアが無法国家ではなく、法治国家であることを信じる」
と言って、4月18日にモスクワに戻ってきた。

新聞にもよく登場するこの男、いったい何者なのだろうか?
なぜ彼の挙動が一々新聞で報道され、大騒ぎされるのか?

▼ベレゾフスキーの正体

まずは彼の経歴を見てみよう。1946年生まれのユダヤ人。
モスクワ林業技術大学卒。応用数学博士。ロゴバス社長。96年10月より、
安保会議副議長。98年4月よりCIS執行書記。
この経歴だけみても、彼のすごさはわからない。

彼は自動車ディーラー会社、ロゴバスの社長である。
その傘下に、アフトバス銀行、統一銀行。
シブネフチ、東シベリア石油などの石油会社がある。
その資金力で、アエロフロートの株を買い占め、
経営を自由にできる立場にある。
さらに恐ろしいのが、国営の放送局「ロシア公共テレビ」、
民放「TV6」、「独立新聞」雑誌「アガニョーク」などを使って
情報を自由にコントロールできることである。
またつい最近まで、CIS執行書記という、(独立国家共同体のまとめ役)
政治的にも重要なポストについていた。

こういう人物が仮に日本にいたとしたら、どう表現されるだろうか?
この人物はトヨタの社長であり、同時に三和とさくら銀行を持って
いる。さらに出光と日石を所有し、JALの経営を好きにできる。
NHKとフジテレビ、読売新聞、週刊新潮を使って好きな情報をながし、
情報をコントロールしている。
経営者でありながら、政治もしており、(こういう職はないが)
「アジア連邦執行書記」という要職についているので、会うのは
各国の首脳クラスばかりである。
(名前を挙げた会社は適当に書かせていただきました。)

ベレゾフスキーは、これらの仕事を同時に行なう正に「世紀末の怪物」なのである。

▼ベレゾフスキーの台頭

どうしてこういう
スーパーリッチがロシアにいるのか、簡単に説明しておこう。
90年代初め、ガイダルの民営化によって、国の所有物を
「ただ同然で」手にした人々がいた。なかには自動車会社、
石油会社、ガス会社などを国からプレゼントされた人々もいた。
それが新興財閥の起源である。(詳しくはWebサイトを
ごらんください)

92年、改革の失敗によってエリツィン大統領の支持率は急降下し、
エリツィンは民衆に代わる支持基盤として、財閥を取り込むことにした。
ガスプロムの元総裁チェルノムイルジンが首相になり、
ベレゾフフスキーは「エリツィン一家の親友」になる。

今まで金にはクリーンだったエリツィンも、
徐々に泥沼にはまっていった。

そして大統領と新興財閥は「もちつもたれつ」の関係に。
事実、96年の大統領選挙でエリツィンが勝てたのも、
新興財閥がメディアを駆使し、「共産党の恐ろしさ」
を宣伝してくれたおかげである。

つまりベレゾフスキーは、第一に民営化で儲け、
第二にエリツィンと癒着して成長してきたことになる。
もちろん彼に商才があることに間違いはない。
(なぜあなたはそんなに儲けたのか?と聞かれると、
ベレゾフスキーはきまって「頭がいいから」と答える)


▼宿敵プリマコフ登場

この世の春を謳歌し、既にロシアに敵なしと思っていたベレゾフスキーに、
突然強敵が現れた。プリマコフ首相である。

1998年8月17日のルーブルの切り下げにはじまった、
深刻な経済危機の責任をとって、キリエンコ首相が解任されたのは
8月23日のこと。
キリエンコは、新興財閥からも厳しく税金を徴収していたので、
彼の解任はベレゾフスキーにとっては素晴らしい出来事だった。

ベレゾフスキーは、キリエンコの後任にチェルノムイルジンを押していた。
チェルノムイルジンは同じスーパーリッチ仲間だから、
彼の利権も守ってくれるだろう。

ところがここで誤算が起こった。
下院がチェルノムイルジンを承認しなかったのだ。

次にエリツィンが首相に指名したのは、共産党一押しの外相プリマコフだった。
プリマコフは91年KGBの第一副議長、
同年12月から対外情報局長官を務め、
96年1月外相についた、全く新興財閥軍団とは
関係ない道を歩いてきたクリーンな政治家だ。

しかも彼には、長年培ってきたKGB人脈があり、
検察、警察、内務省にも影響力は絶大。
下院の最大勢力共産党から支持されているから、政権は安定している。
35歳の前首相、ベレゾフスキーからみたら「まだ子供」
のキリエンコとはわけがちがう。

▼ベレゾフスキー対プリマコフ

昨年の9月、プリマコフが首相に就任したとき、
ベレゾフスキーは露骨に反対を表明した。
プリマコフの恐ろしさを知らなかったのか、
あるいは、自分の絶対的な影響力に増長したのか、
とにかく二人の関係は、はじめから犬猿の仲になった。

その後プリマコフは大々的な「汚職摘発キャンペーン」を展開。
次々とベレゾフスキーの「同じ穴のムジナ」が摘発されていく。

経済においてはルーブルのさらなる暴落、インフレを
おさえ、「プリマコフを次期大統領に!!」という声は
日に日に高まっていく。
「誰を、次の大統領のしたいか?」の世論調査でも、
共産党のジュガーノフ委員長を抑えてトップにたった。
共産党はもちろんのこと、最近ではレベジ、クラスノヤルスク
州知事、ルシコフ、モスクワ市長までもプリマコフ支持を表明している。
さらに、エリツィンは弾劾されるのが怖い。
それを止めることができるのは、共産党に支持されている
プリマコフだけだから、彼に頼るしかない。

99年の2月ころから、ベリゾフスキーの旗色は悪くなっていった。
彼が直接、間接に影響力を行使している
会社に、警察の手が入り始めたのだ。

アエロフロート、シブネフチ(石油会社)、ロシア公共テレビ。
さらに「ベレゾフスキーは警備会社に依頼し、エリツィン一家の電話を
盗聴している」などというスキャンダルもとびだした。

ベレゾフスキーは「これは政治的陰謀だ」などと
言ってはいたが、割合におとなしくしていた。

彼が切れたのは3月4日のことである。大統領令で、CIS執行書記
を解任されてしまったのだ。

自分の会社には警察が毎日やって来る。
今までせっせと貢いできたのに、エリツィンに裏切られた。
「ここで反撃にでなければ、全てを失う」
と激しい危機感を感じたのだろう。
自分の思いのままになるメディアを
総動員して、プリマコフに逆襲を始めた。

それ以降、今に至るまで、ロシアのメディアでは毎日のように、
プリマコフ批判が流されている。
プリマコフもバッシングに疲れ、エリツィンにマスコミに
関する愚痴を言ったらしい。
9年近く非難を受け続けているエリツィンに、
「そんな事を気にしていたら、私はどうなるのだ?」
と言われて、納得したとか、しなかったとか。

プリマコフが首相に就任してから、半年続いていた二人の戦いにひとまず
決着がつくときがきた。4月6日、ロシアの検察庁は「不正な資金運用、
違法に資金を海外に流していた事など」を理由に、
ベレゾフスキーの逮捕を決定した。
4月18日ベレゾフスキーは帰国すると、「ロシアの法律に従う。
私は何も違法なことはしていないのだから、怖れていない。」
と言いつつ空港を去った。

4月19日、最高検察庁で第一回目の尋問が行われる予定だったが、
ベレゾフスキーは姿を現さなかった。
中央病院で、去年受けた背中の傷の検査を受けているというのが、
表向きの理由だ。

彼の取り調べを担当している、ニコライ、ヴォルコフ判事は
「彼が100%でてくるとは思っていなかった。
いつでも来ない理由は考え出せる」
「尋問の準備はできている。私たちのところには
スイスの司法機関から受け取った資料がある。」
「必要であれば、病院で尋問をすることもありえる」
と自信たっぷりに語った。

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○電子メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」1999/04/25
  解 説: 北野 幸伯 ( tgkitano@cityline.ru )
  編集発行者: 池田 昌之 ( ikeda@orc.ru )
 Home Pages: http://www1.freeweb.ne.jp/~kitada/
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