KISARAGI

KISARAGI vol.937


カテゴリー: 2017年11月05日
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K I S A R A G I vol.937                              2017/11/05
                                             編集/発行:みやこたまち
                         E-mail:tamachim@yahoo.co.jp
                                  http://mmkisaragi.blogspot.jp/
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通信欄:この月に虫の鳴かざる冬の入り
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今週のお話

◆ "古典へのいざない" [707]
   伽婢子《おとぎぼうこ》[16] 竜宮の棟上げ [6]
   作者 たまさん


◆ 大学ノート狂詩曲 宇祖田都子の話
   第一回 ゼロハリバートンのスーツケース 1     
     作者 宇祖田都子

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古典へのいざない [707]

  伽婢子《おとぎぼうこ》[16] 竜宮の棟上げ [6]                  作者:たまさん

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 竜王は阿祇奈《あきな》に事情を説明した。
「わたしは今、新たに宮殿を建てています。木工頭《もくのかみ》や内匠頭
《たくみのかみ》を集めて玉の礎《いしずえ》を据え、綾《あや》の柱を立
て、虹の梁《はり》と雲の棟木《むなぎ》を組みましたが、上棟式《じょう
とうしき》で読み上げる祝詞《のりと》がありません。――真上《まかみ》
阿祇奈《あきな》殿は学識・道徳に優れた名士と伝え聞き、わざわざ遠方か
らお招きしました。どうかわたしのために一筆、書いてください」
 髪を唐輪《からわ》にした十二、三歳くらいの童子《どうじ》が二人やっ
て来た。一人は斑竹《まだらたけ》の軸に犀《さい》の毛を差した筆と、碧
玉《へきぎょく》の硯《すずり》に、藜《あかざ》の灰に紅花と麝香《じゃ
こう》を練り込んだ墨汁をたたえて捧げ持っている。もう一人は鮫人《こう
じん》(人魚)が織った一丈の絹を持ち、阿祇奈の前に置いた。
(続く)
                                  ★

 竜宮が主人公を呼んだ理由、それは新しい宮殿の上棟式(組み立てた棟木
を上げる前に行う儀式)で使う祝詞を書いてもらうためでした。
 なお、文中の「唐輪」は頭上で二つに分けて輪の形にした髪型で、「稚児
輪」「稚児髷」とも呼びます。
 続きは次回にお届けします。それではまた。

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HP
「かたかご」http://yamanekoya.jp/
 趣味で読んでいる古典文学の現代語訳と参考文献を主に掲載しています

「山猫屋本舗」http://yamanekoya.net/
 写真日記を綴っています

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大学ノート狂詩曲 -宇祖田都子のはなし

第一回 ゼロハリバートンのスーツケース1
                           作者:宇祖田都子
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 ご無沙汰しておりました。宇祖田都子です。みなさま、お変わりありませんか?

 私が、デスク(みやこたまち)から「ちょっとギターを習いにいってくるので、しば
らく連載を頼む」というメールを受け取ったのは、夏の終わりごろでした。

 私は、家の前の坂を下って少し路地を歩いたところにある市営図書館の司書のアルバ
イトを、週に三日か、四日入れていて、その他の日は、地元のお店なんかを紹介するフ
リーペーパーの記者(というと、ちょっとおこがましいのですが)をしていたので、案
外、急がしい日々を送っていたのですが……

 記者の仕事では、近所にあるとてもおもしろい雑貨屋さんや、驚くような有名人の方
と繋がりのあるジャズバーや、全国の画家さんから指名されるほど信頼のあつい額装屋
さんなどにおうかがいすることができ、取材後も懇意にさせていただくことがあり、友
人と趣味で開催している展覧会などにもご協力いただくことができて、とても充実して
います。

 一方、司書のアルバイトでは、あらためて「本って重たいなぁ」なんて感じいってし
まうことが多く、初めのうちは、手は荒れるし、筋肉痛にはなるしで、
「もう、本なんて触りたくないわ」なぁんて恨み言が出たりもしていました。

 数ヶ月もすると、体力もついて、作業にも慣れ、膨大な知識の深海を淡々と泳ぐカグ
ラザメのような感じ(?)、ええ。知識には貪欲なほうですし、図書館にお越しになる人
達を、それとなく観察したりする楽しみも……

 そんな或る日。あれは、春先のことでしたでしょうか。朝からの霙交じりの雨が上がり、
玄関前のスロープが滑るからというので、職員そうでで、シャーベット状の氷をモップで
吸ったり、滑り止めのシートを敷いたりして、あっという間に午前中を終えた日の午後の
ことでした。

 そんな日の午後は、空々しいほど眩しい陽射しが、高窓から差し込んでくるので、
「遮光カーテン閉めたほうがいいかな。でもそうすると暗くなるかな」などということが
気がかりで、つい、吹きぬけの二階に面したガラス張りの学習室に目をやってしまうので
す。

 「宇祖田さん。カーテンをしめてきてください」
 と、主幹の声が聞こえました。
 主幹は、40代後半の、背の高い理知的な顔をした独身男性で、いつも三つ揃えのスー
ツを隙なく着こなしているのですが、どうしても頭のてっぺんの毛が跳ねてしまうようで、
本人は時折それをつまむのが癖でした。
 そんなところがあると分ってから、わたしは主幹のぶっきらぼうなしゃべりかたを微笑
ましく感じられるようになったのですが…… あ、今この話は余分でしたね。話を戻しま
す。

 二階へは、吹き抜けを多く迂回する二本の階段か、エレベーターで昇ります。私はいつ
ものようにエレベーターの前にいったのですが、
「たいへん申し訳ございません。ただいま調整中につき、階段をご使用下さい」
という張り紙がしてありました。

 この張り紙をしたのは、今朝の私です。

 うっかりしていました。エレベーターは故障していて、業者へは来週にならないと連絡が
つかないのでした。ということは、この日はきっと土曜日か日曜日だったのですね。

 それで、私は階段にもどりました。
 契約社員のヒラツカさんが、「何いったりきたりしてんのかしら」という目でこちらを見
ています。

 そこに、毎日13時ごろにお見えになる老紳士が現われたのでした。(20171105)

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星空文庫 過去作品上げていきます https://slib.net/a/20077/
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