KISARAGI

KISARAGI vol.698

カテゴリー: 2013年04月07日
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K I S A R A G I vol.698                            2013/04/07
                        編集/発行:みやこたまち
                      E-mail:tamachim@yahoo.co.jp
                   http://mgkisaragi.web.fc2.com/wkh/index.html
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◆古典へのいざない【491】     春雨物語[1]   作者 たまさん

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  序

 春雨は今日で幾日になるだろう。静かで趣がある。使い慣れた筆と硯を取
り出してはみたものの、思い巡らしてみても書くべきこともない。物語の体
を真似るは初めてのことであるが、山賤《やまがつ》のような卑しい自分が
何を書けばいいのだろうか。これまで人が書いた昔や今のことに騙されてき
たが、そのわたしがまた嘘と気づかないまま人を欺く。それもまたいいだろ
う。書き綴られた虚言《そらごと》を立派な書物であると押し戴く人もいる
のだからと、筆を進める部屋の外では、まだ春雨が降り続いている。
(続く)
                                  ★

 今回から上田秋成《あきなり》の「春雨物語」の現代語訳をお届けします。
 上田秋成の代表作は壮年期の短編小説集「雨月物語」ですが、この「春雨
物語」は同じ短編小説集でも晩年に完成した作品で、「雨月物語」以上に作
者の人生観や宗教観が色濃く出ているように感じます。
 素人のつたない訳で恐縮ですが、しばらくお付き合いのほど、よろしくお
願い致します。
 それではまた。

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中庭と三階 2
                           みやこたまち
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3 入出力補完の諸問題と、中嶋かえのへの手紙(4月~8月)
3-3
『あなたはいつだって、生きることの意味を考えていたような気がする。そ
れはいまも変わっていないのかな。あなたは生きているということがあまり
うれしそうじゃなかったしね。どうして生まれてしまったんだろうっていう
疑問を、自分に突きつけていたのかなって、思うのね。私は生きていること
の幸せを伝えたかった。悩むってことは、生まれてしまったことに意義を見
出したい存在の意思なんだと思う。 あなたが、見ること、に執着していた
のは、そうね。生まれてくる前の赤ちゃんが、おなかの外の世界を覗いてい
る、みたいな感じ? だったのかしら。あなたが自分のことを、とっかかり
のない完全な球体に喩えて、申し分のない教育を施された結果、いびつさ、
という個性を失った奇形だと言った時、私にはとても奇妙だった。だって、
あなたは、とても個性的だと、私は感じたから。それについて、あなたは他
人の中に自分と自分との差異のことを語った。私は、あなたがもっと外へ自
分をさらけ出すほうがいいんだと思った。あなたは、いつも、完全な球体の
中から、眼だけをぎょぎょろさせていたのね、結局。この世界って、生きて
いることって、いろいろな音や、匂いや、感情が、溢れているわ。眼が不自
由になったあなたに、こんなこと話すなんて、デリカシーが無いかしら? 
でも、眼だけだったあなたより、今のあなたのほうが、世界に広く関われて
いるような気がするの。』
 先生が僕のことについて語るのを聞くことは、なんと官能的な体験だろう。
その声は僕の脳を震わせ、言葉は脳に新たな亀裂と接続とを生み出してくれ
る。先生の率直さが、僕は好きだった。一人の、担任でもなかった生徒を、
救えなかった責任を感じ、学校を辞める潔さも、好きだった。先生は立派だ。
立派な人を目の前にすると、崇めてしまうので、声を聞くくらいがちょうど
いい頃合だ。先生は僕を罵倒するに値するが、そのときその権利を行使しな
かった。裏切りに対する怒りの炎は、埋め火となってくすぶり続けているは
ずで、そのきな臭さを嗅ぎ取る鼻は、僕にはまだ健在だ。(20130407)
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