><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><>><><><><><><><><><><><><><><> K I S A R A G I vol.194 2003/06/15発行 編集/発行:みやこたまち ★ E-mail:tamachim@yahoo.co.jp http://miytako.hp.infoseek.co.jp ><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><>><><><><><><><><><><><><><><> マトリクス2 リローデッド を見ました。アクションに吃驚仰天。時々、少林 サッカーみたいに見えたけども、楽しかった。それからフランスの短編アニメの 賞を、「頭山」が獲ったとか。原作がいいからねぇ。古典落語万歳。 それでは、今週もたまさんから、お願いします。今回から長編に取り組まれると のこと。古典のおもしろさにどっぷりと浸かる楽しみを、どうぞ。 ---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---* |連載|小説| ◆古典へのいざない【51】 とりかへばや物語[1] 作者: たまさん ---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---* いつの頃であったか、権大納言《ごんだいなごん》で大将を兼任している人がい た。容貌・学識・態度を初めとして、人柄や世間の評判も並々でなく優れていたの で、他人から見れば何一つ不満があるような身分であったが、心中は人知れぬ悩み で尽きる事がなかった。 奥方は二人いた。一人は源宰相《げんさいしょう》の娘である。大将はそれほど 深く愛情を掛けてはいなかったが、初めての妻であったのでおろそかにはしていな かった。そのうちに玉光るような男君が生まれたので、いよいよ大切にするように なった。もう一人は藤中納言《とうちゅうなごん》の娘である。この人にもとても 美しい姫君が生まれたので、限りなく大事に育てたのであった。 権大納言は、二人の夫人がそれほど美しくない事を不本意で口惜しく思っていた が、今はそれぞれの子どもが美しく成長するので、どちらの夫人からも離れる事が 出来ず、落ち着いた関係を続けていた。 二人の子どもの容貌はどちらも優れていた。二人の顔はよく似ていて、取り間違 えそうなくらいであった。同じ場所であったのなら色々と不都合もあったであろう が、別々の場所で育てられたので特に問題は無かった。二人の顔が似ているとは言 っても、若君は上品で気品高く、女性のようななまめかしさを感じる一方、姫君は 華やかで気力に溢れ、幾ら見ても見飽きる事のないほどの愛嬌は類が無いほど素晴 らしかった。 (続く) ★ 今週からは「とりかへばや物語(今とりかへばや)」をご紹介します。 この作品は、平安末期に成立されたとされる長編で、女装をする兄・男装をする 妹を主人公としたドタバタ恋愛物です。題名の「とりかへばや」は、現代語に直す と「取り替えたい」という意味になり、普通ではない子どもを持ってしまった親の 気苦労が伺えます。 参考文献は後ほどまとめてご紹介しますが、「とりかへばや物語」の二次作品と して名高い、氷室冴子の「ざ・ちぇんじ!」か、これを原作とした山内直実の同名 コミックを読んでおくと、この世界に入りやすいかと思います。現代人の感覚に合 わせて設定やストーリーを上手く脚色していますので、古典に興味がない方にもお 勧めです。 簡単に文量を計算したところ、今のペースで訳を書き続けると一年ほど掛かるよ うです。長いお付き合いとなりますが、よろしくお願いします。 ------------------------------------------------------------------------ ジャンル:古典レビュー メール :miztam@nifty.com HP :【山猫屋本舗】http://homepage3.nifty.com/miztam/ ------------------------------------------------------------------------ 題材からして、おもしろそうな、「とりかえばや物語」。温故知新なんて言葉自体 が温故知新だと思われるやもしれませんが、歴史は積み重ねられているのですね。 どのように展開していくのか、1年間目が離せませんよ。 続きまして、夏目漱石の『それから』に触発されて作ったということになっている 『そののちのこと』です。今回、二章開始。そして二章完結です。 ---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---* |連載|小説| ◆そののちのこと【6】 作者:みやこたまち ---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---* >二章 >穂積信夫の生活は、何度目かの停滞期に陥っていた。 >まだ、青年と呼ばれる人生の一時期にありながら、彼の精神は老境のそれに酷 似していた。 >例えばそれは、軟禁状態に置かれている捕虜の精神に似ていたかもしれない。 >金の為に動く必要は無かった。こうした境遇は、彼の天分に属していた。 >外界と自分との軋轢に神経を痛めつけられ、理想と現時との格差に絶望を繰り 返しながら、一日一杯の酒、半時の平安のみを慰めとして生きる一般大衆の生活。 >明らかに彼はそうした大衆とは一線を隠した世界に暮らしていた。 >彼は広大な敷地の古びた屋敷に住んでいた。取り巻く庭は四季を通じて五感を 楽しませた。飽くことなく巡る天体のそれぞれの瞬間を敏感に反映し、その度に 新しい感動、鮮烈な印象をもたらすこの小さな世界。 >他人という元凶のいないこの完成された世界を、彼は完成された状態で譲り受 けたのだった。 >第二章完 ------------------------------------------------------------------------ ジャンル:小説 メール :tamachim@yahoo.co.jp HP :【電網 昼行灯】http://www1.odn.ne.jp~cak87430/index.html ------------------------------------------------------------------------ 書見棚 その6--*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---* ここは、みなさまの本棚のなかで今、目に入ったものを御紹介いただく棚です。 投稿が無い週は私の本棚で目についたものを紹介します。今週は 「平成の都市伝説」 トーキョールーマーズ撰 です。 何しろ、都市伝説好きなのもんですから、その手の本は常に探しておりまして、 出来うればそれぞれの伝説が二三行で纏められている手軽なものがよろしい。 筆頭は白水社のシリーズなのですが、最近トントご無沙汰で、これが今のところ 一番最近買った「伝説」本です。ネットの話題も豊富で、なるほど、そっちから 拾えば事欠かないのかと開眼しつつも、やっぱり「本」が好き。なわけで。 これはクラブハウス刊。玉石混交ですが、暇つぶしには最適な本の一つです。 ------------------------------------------------------------------------ お知らせ(継続募集中) 怪談も近頃は季節を問わなくなりました。しかし、やはり旬というものはあるも ので、これからが本番、ということになりはすまいか? いやきっとそれが一番いいんだと、考えまして、以前やっていた「貘食」を、 「貘食譚」というシリーズにします。恐い話、不思議な話、都市伝説、新解釈 御伽話、創作、実話、受け売り、なんでもいいので、御投稿下さい。 それではまた次週お目にかかりましょう。 _/_/ KISARAGIについて _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ■配信システム KISARAGIは「まぐまぐ」:http://www.mag2.com/で配信しています。 ■登録解除の方法 KISARAGIを解除するには、次のアドレスへアクセスしてフォームに記入を。 -->http://miytako.hp.infoseek.co.jp _/_/ 発行者について _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 編集者 みやこたまち E-mail :tamachim@yahoo.co.jp WebPage:http://www1.odn.ne.jp/~cak87430/index.html ------------------------------------------------------------------------ 前編集者 仙ちゃん E-mail :slowhand@sea.plala.or.jp WebPage:http://www7.plala.or.jp/slowhand/ ------------------------------------------------------------------------ 初代編集者 牧瀬佑樹(マッキー)/スタック作家 E-mail :macky@livrer.jp WebPage:http://www.livrer.jp/ ------------------------------------------------------------------------