><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><>><><><><><><><><><><><><><><> K I S A R A G I vol.185 2003/04/06発行 編集/発行:みやこたまち ★ E-mail:tamachim@yahoo.co.jp http://miytako.hp.infoseek.co.jp ><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><>><><><><><><><><><><><><><><> 地元には開催日に必ず雨が降るという祭りがあって、晴れたら整式に挙行され るはずの儀式があるのだが、毎年公民館の二回の略式のものしかできないと夏に なくなった曽祖父が言っていたのを、暮に入院した祖母が書き残していたらしい です。それでは、KISARAGI185はじめます。 まずは、「たまさん」作 『古典への誘い 第43回』です。前回で「花桜折る中 将が終了しています。今週からはどんなお話になるのでしょう? ---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---* |連載|小説| ◆古典へのいざない【43】 作者: たまさん 貝合わせ[1] 〜「堤中納言物語」から〜 ---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---* 九月の有明の月に誘われて、蔵人《くろうど》の少将は、指貫《さしぬき》 の裾をいかにも格好よく引き上げ、供として小舎人童を一人だけ連れて歩いてい た。 夜が明けても、少将の姿を隠してしまいそうなくらいに朝霧が立ち込めていた。 「どこか風情のある家で、戸の開いているところはないだろうか」 と言いながら歩いて行くと、木立が美しい家から、ほのかに琴の音が聴こえて きたので、すっかり嬉しくなって邸宅の周囲を巡った。 門の脇などに崩れた築地がないかと見てみたが、どこにもそのような場所はな く、少将はがっかりした。どんな女性がこのように弾いているのだろうと、無性 に好奇心がそそられるが、どうしようもないので、いつもように小舎人に歌を歌 わせた。 行く方も忘るるばかり朝ぼらけ 引き留むめる琴の声かな (朝ぼらけに、行く先を忘れ、足を引き留めてしまうほどの 素晴らしい琴の音色ですね) もしかしたらそのうちに人が出てくるかもしれないと、胸をときめかせていた が、そうした気配はない。残念に思いながら通り過ぎて行くと、可愛らしい四五 人の童が走り違い、小舎人や下使いが綺麗な小破子のようなものを捧げ持ち、美 しく飾った文を袖の上に置いて、出入りしている家がある。 (続く) ★ 今週からは、引き続き「堤中納言物語」から「貝合わせ」をご紹介します。前 回の「花桜折る中将」と同じように、この物語の主人公もかなりの「好き者」で す。どうにかして素敵な女性と巡り合いたいと、朝早くから京の街をぶらぶら歩 いていたところ、何やら騒がしそうにしている家の前に来ました。 この続きはまた来週という事で、宜しくお願い致します。 ------------------------------------------------------------------------ ジャンル:古典レビュー メール :miztam@nifty.com HP :【山猫屋本舗】http://homepage3.nifty.com/miztam/ ------------------------------------------------------------------------ 貝あわせ、風雅ですね。時折それようのセットを販売しているのをみかけます が、蒔絵など施されていたりして、爛熟よのぉ・・・と感じてしまいます。 古のプレイポウイの顛末、楽しみですね。 それでは続いて、宇祖田都子さんのIV5Mをお願いしましょう。今回のは、ちょ っと眩暈するような話題だそうです。 ---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---* ◆Inter_View 5 minutes【143】 Guest/無限愛好家 晴渉素螺氏 作者:宇祖田都子さん ---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---* before minite めくるめく無限の世界。本日のゲストは無限愛好家 晴渉素螺氏です。 first minute M:無限って聞くと、数学って感じから離れるんですけれども、実はとてつもな く奇妙なことになるそうですね。 A:人間は「数」という美しい体系を知り、完全なる神の姿として数字を扱って きました。しかし、その蜜月を破壊したのが「無限」でした。 M:ゼロの発祥がインドだというのは何かで読んだことがありますが、「無限」 の発祥はどこなんですか? A:紀元前500年程のギリシヤでしょう。ピュタゴラス、ご存知ですか? second minute M:中学校で習いますね。ピタゴラスの定理。そのピタゴラス? A:そうです。彼らは数をあがめていましたが、対象は整数でした。ところが皮 肉なことに、彼のもっとも広く知られている例の定理において、その二辺の比を 整数で表すことができないという恐ろしい事実に直面するのです。 M:直角三角形の斜辺の二乗は他の二辺の二乗の和に等しい。でしたか。 A:そうです。それを正方形を対角線で分割した直角三角形に当てはめるとです ね、斜辺はルート2となるんですが、これはヒトヨヒトヨニヒトミゴロ以下無限 に繰り返される数字の羅列となります。整数では表せないものがある。それは無 理数と呼ばれています。そのことをピタゴラス学派は門外秘としたのです。それ をばらした弟子は、不思議な死に方をしたそうです。 third minute M:それから数学は変わったのでしょうか。 A:無理数の発見は幾何学を生みました。実際、単純で美しい基本図形のもろも ろの関係性は、無理数なしではあらわせないからですね。たとえば、円周率など です。 M:無限というのは、終わらない小数点以下の桁数だったんですね。 A:数学上では、そうです。しかし実は無限の概念というだけなら、歴史はさら にさかのぼります。ユダヤ教のカバラといわれる数秘術の中に出てくるんです。 forth minute M:概念として、というのはつまり文学的というか、観念的なものとして? A:神には始まりも終わりもなく、不偏するという概念です。それはつまり、無 限ではないかという研究が出てきたわけです。カバラは数字の体系だけに、その あたりに敏感にならざるをえず、しかも唯一神の教義も成立させなければならな いという究極的な命題に取り組んでいたのです。 M:究極的といいますと? A:「すべてを含むという集合は可能か?」という問題です。1200年代から1500 年代には、数学者よりもむしろ幾何学に才能を発揮した聖職者が、無限について の研究に従事していたんです。無限と神との整合をとりたかったのです。それは 、無限と一との整合をとるための探求といえるでしょう。現在では無限を表す記 号として、アレフというものが使われています。ヘブライ語のアルファベットの 最初の文字であり、その文字を頭にもつ言葉として、ユダヤ教における無限を記 した書物の名、一という数、そして神があるのですから、この共通性には何かを かんじませんか? final minute M:そして、無限は解明できたのでしょうか? A:この問題を考えた最高に属する数学者は精神を病み、常識とあまりにかけ離 れた結果に、自らが間違っているとして成果を葬ってしまったりしてきた中で、 「無限」の性格と構造とはかなりわかってきています。ガリレオによる「可能無 限」と「実無限」の区分。さらに集合論における成果として「可算無限」の定義 。そこでは、部分と全体とが等しいことがわかっていたりですね、無限に繰り返 した結果が有限に収まる「収束」という性質。そして、無限の最大の理解者であ り同時に被害者でもあったカントールの労作による「無限の階級付け」など。枚 挙に暇がないほどです。しかし、そこで明らかになる無限というものの世界は、 実に奇妙で、刺激的なのですよ。 M:本来はその辺りをおうかがいすればよかったのですが、今日はお時間です。 どうもありがとうございました。 after minute 私は生活するうえで、無限を生み出す装置は可能だと思います。でも無限を見る ことは出来ないんですね。宇宙の果て、時間の始まりと終わり、そんなことを考 えると、考えている心が無限になったような錯覚に陥り、それから悲しくなって きます。 <<次回のお客様は、カヴァーガール 千種愛子氏です>> ------------------------------------------------------------------------ 種別 :小説短編 ジャンル:架空対談 作者名 :宇祖田都子 メール :cak87430@geocities.co.jp HP :非所持 ------------------------------------------------------------------------ 「数学者」の話は面白いものが多いですよ。数式がなるべく出てこない、または 皆目理解できない数式の羅列、美しい幾何学の本、そして、数学者の頭の中につ いては私も好きなほうです。 以上、KISARAGI でした。また自修、お目にかかります。それでは、また。 _/_/ KISARAGIについて _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ■配信システム KISARAGIは「まぐまぐ」:http://www.mag2.com/で配信しています。 ■登録解除の方法 KISARAGIを解除するには、次のアドレスへアクセスしてフォームに記入を。 -->http://miytako.hp.infoseek.co.jp _/_/ 発行者について _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 編集者 みやこたまち E-mail :tamachim@yahoo.co.jp WebPage:http://www1.odn.ne.jp/~cak87430/index.html ------------------------------------------------------------------------ 前編集者 仙ちゃん E-mail :slowhand@sea.plala.or.jp WebPage:http://www7.plala.or.jp/slowhand/ ------------------------------------------------------------------------ 初代編集者 牧瀬佑樹(マッキー)/スタック作家 E-mail :macky@livrer.jp WebPage:http://www.livrer.jp/