KISARAGI

KISARAGI vol.1008

カテゴリー: 2019年03月17日
文字作品投稿メルマガ KISARAGI       (毎週日曜日発行)
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KISARAGI vol.1008                    2019/03/17
                                       編集/発行:みやこたまち
                       E-mail:tamachim@yahoo.co.jp
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――通信欄――――――――――――――――――――――――――――――

空気が冷たいですね。足踏み回れ右。春はもうすこし先でしょうか。

――今週のお話――――――――――――――――――――――――――――

◆  古典へのいざない  [777]
    伽婢子《おとぎぼうこ》[86]  地獄を見て蘇《よみがえる》 [4]
    作者 たまさん

◆ 大学ノート狂詩曲 宇祖田都子の話
    第七十二回 手藻蔓空也 1 
    作者 宇祖田都子

◆ 今週の一句 六文風鈴

● KISARAGIについて

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古典へのいざない [777]
伽婢子《おとぎぼうこ》[86] 地獄を見て蘇《よみがえる》 [4]
作者:たまさん

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「それならば、『冥土《めいど》の役人は公私混同し、善悪の報《むく》い
は貧富に左右されるので、念仏の代わりに欲をかけ』という歌は誰が詠んだ
というのだ」
 閻魔《えんま》大王が怒って言うと、新之丞《しんのじょう》は答えた。
「かつて、三皇五帝の頃には天上や鬼神について触れられることはなく、三
代の世になって初めて山川の神を祭るようになり、後漢の時代に仏法が伝わ
ったことで、初めて天上・地獄の因果の理《ことわり》が示されました。こ
れ以後、山川に霊が、神社に主《ぬし》が現れ、あらゆる木仏や絵画が霊験
《れいげん》を示すようになりましたが、一方で人々はこのことに溺れて本
性を失いました。悪事を犯して改めず、咎《とが》を犯して奔放に振る舞っ
ています。強者は弱者を押さえつけ、富める者は貧しき者を見下します。親
に孝なく、君に忠なく、家族の間で争いが起きています。財宝をむさぼり、
淫《みだ》らな欲望を抱き、義《ぎ》を知らず、節を守らず、利に走って恩
を忘れ、ただ金銀を散らして仏事・供養を営めば、いかなる重い罪や咎であ
っても、地獄を逃れて天上に召されるといいます。もしも、これが事実なら
ば、悪人であっても裕福な者は天上に生まれ変わり、貧乏人は善人でも必ず
地獄に落ちます。この閻魔の法廷において、裕福な悪人が盛大な法要を行え
ば浄土に遣わされるというのならば、貧乏な者たちの恨みは避けられません。
これは正しい判決ではなく、私欲に基づく横暴だと言わざるを得ません。わ
たしはこの現状を悲観して一首の狂歌を詠みましたが、そのことで責めを受
けています。閻魔大王、どうかご配慮ください」
 話を聞いた大王は深くうなずいた。
「汝《なんじ》の理《ことわり》は邪《よこしま》ではなく、陳述内容は事
実であると認める。よって、むやみに罪を加えることはできぬ。先ほどの非
難は、孫平《まごへい》が仏事《ぶつじ》・祈祷《きとう》に多くの金銀を
用いたことにより、再び娑婆《しゃば》に戻すと沙汰《さた》したためであ
る。取り急ぎ孫平を引き立てて参れ」
 すぐに孫平は連行され、大王は「孫平に手枷《かせ》・首枷をしてすぐに
地獄に送れ。新之丞は娑婆に送り返せ」と命じた。二人の役人は座を立ち、
新之丞を連れて庭を出た。
(続く)

                                  ★

 主人公は「金を積んで仏に祈れば、悪人であっても地獄に行かなくてすむ
のはおかしい」と閻魔大王に訴え、聞き入られました。どうにか危機は脱し
たようですが、一方で入れ違いで連れて来られた隣に住む男は、あまりいい
結果にはならなさそうです。

 今回の話でわたしが面白いと思うのは、作者・浅井了意は僧侶なのにもか
かわらず、仏教批判に寛容な内容になっていることです(閻魔大王の口から、
仏教徒である必要はないと言い切っています)。作中の登場人物と同一視す
るのは危険ですが、作者は道徳的な価値観の持ち主で、仏教の教えはあくま
で「いい世の中にするための手段の一つ」と見なしていたのかもしれません。

 続きは次回にお届けします。それではまた。


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大学ノート狂詩曲 -宇祖田都子の話
第七十二回 手藻蔓空也 1 
作者:宇祖田都子

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 西の道路に面した吹き抜けのガラス窓に、上から雲が降りてきていた。日陰
になれば、発掘も少しは楽なのだろうかと、私は思った。
 アンティークなソファーセットに、ローテブルを介して向かい合わせで座る
と、私と手藻蔓さんとの距離は、案外遠い。私は時折左にあるガラス張りの
パーティションから、1階の様子を見下ろして、店が混雑してきたら、すぐに
中座して降りていかなければならないと、考えていた。
「元気そうで何よりだね」
 と手藻蔓さんが、白い歯を見せる。木綿のカッターシャツを細身のブラック
ジーンズにラフに突っ込んで、トルコ石を象嵌したベルトのバックルが涼しげ
だ。髪が少し伸び、頬が少しこけている。だが、瞳に宿る光は強く、以前とは
見違えるほど活気に溢れているように見えた。いや、もともと、彼は活動的な
性質だったのである。並木さんからスーツケースを譲り受けたあとから、調子
を崩していただけなのだ。
 それが何によるものなのかを、今の私は想像することができた。
 「ぼい~~ん」にあたったのだ。彼は、真正面から「真実」を追い求めて、
その呪詛を受けたのだ。そう。今の私には、そういうことなのだと理解できる。
 だから、彼が以前の彼に戻れたということは、彼もまた、あの大学ノートを
解明することができたのだ。そのアプローチ方法は、私とは違った、たぶん、
正道を通って。
「手藻蔓さんも。ずいぶん長い旅だったようですが。お元気そうです」
「ああ。インド、トルコ、パキスタン。トルメキスタン、カザフスタン。
ヨーロッパとアジアの境界線をうろうろしたよ。おもしろいものをたくさん見
つけたから、この店もにぎやかになるよ」
「私、緒初瀬さんを手伝うことにしたんです」
「うん。聞いた。君がここに入ってくれるなら、僕も安心だし、楽しみだよ。
君は少し人とは違ったアプローチで物事を見ているところがあるから。きっと、
個性的な店に生まれ変わるだろう」
 なんだか、見透かされている気がしました。そして、以前はあんなに性急に
「大学ノート」のことを説明したがっていたのが嘘のように、彼からその話題
が出ることはありませんでした。
「長いことお借りしてしまって、すいませんでした。スーツケース、あそこに
置いてありますから」
 と私は水を向けてみた。手藻蔓さんは、ゼロハリバートンのスーツケースを
一瞥し、「ああ」と言った。
「並木神社の資料として、精査した上で展示することになると思うよ」
「手藻蔓さんの監修ですか?」
「まぁ、調査に加わるというか、学芸員のような立場かな。そうそう。僕はも
う、手藻蔓じゃないんだ。小坂さんから聞いてない?」
 私は何か聞いていたでしょうか? きょとんとした顔をしていると、手藻蔓
さんは、揉み手しながら言いました。
「僕は並木さんの養子になったんだ。だから、並木空也という名前になった。
ゆくゆくは、並木神社を継ぐ立場なんだ。跡取りがいなかったから、並木さん
も、並木さんのお姉さんも喜んでくれたよ」
 私はそう聞いて、そういえばそんなことをどこかの誰かから聞いたような気
がしたと思いました。そして、そういう展開になることは、必然だったのでは
ないかとも思いました。
「もともと、並木さんのところとは、お父様の代から、行事の写真撮影などで、
ふるくからおつきあいがあったんでしたね」
「そうそう。僕も並木さん、あ、父とは小さいころからなじんでいてね。奥様
も知ってたし」
「お姉さまがいらっしゃったとか?」
 私は小坂さんが言っていた「車椅子の静かなお姉さん」のことをたずねてみ
ました。手藻蔓さ、いえ、並木空也さんは、一瞬、表情をこわばらせたように
見えました。
「そう。日本に来る途中で、ミヤンマーに滞在していた父と合流して。伯母は
長いことあっちに住んでいて、僕も会うのは初めてだった」
「並木神社には、女系の血脈が途絶えてしまうのですね。そういえば、並木さ
んも婿養子でした。それでも代々御霊を継承していくというのは大変なこと
だったのでしょうね」
 空也さんは、居心地が悪そうにソファーの上でもぞもぞして、チャイをグイ
と飲んで、
「ま、うちのことはさておき」
 と話題を転じた。
「都子さんの今年の展示内容には、僕はとても興味をもっているんだ」
「それは、ありがとうございます。大学ノートをお借りして、私もとってあり
がたかったんです。こんな風に形にできるとは思っていなかったので」
 私は、こちらの方向からさらに、空也さんに迫ってみようと思った。
(20190316)
 
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ショートショートガーデン https://short-short.garden/author/808354

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――今週の一句――――――――――――――――――――――――――――

   雉吃る朝の厨の慌し 六文風鈴

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発行周期:  週刊 最新号:  2019/03/17 部数:  50部

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