KISARAGI

KISARAGI vol.1004

カテゴリー: 2019年02月17日
文字作品投稿メルマガ KISARAGI       (毎週日曜日発行)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

KISARAGI vol.1004                    2019/02/17
                                       編集/発行:みやこたまち
                       E-mail:tamachim@yahoo.co.jp
              KISARAGI:HP http://mmkisaragi.blogspot.jp/
      まぐまぐ内HP:https://www.mag2.com/m/0000007077.html
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

★ 配信システム
KISARAGIは「まぐまぐ」で配信しています
「まぐまぐ」:http://www.mag2.com/

★登録解除の方法
KISARAGIを解除するには、以下のHPのフォームか、
 http://mmkisaragi.blogspot.com/2013/10/blog-post_8402.html
まぐまぐ内のKISARAGIのHPへアクセスして下さい。
 https://www.mag2.com/m/0000007077.html

――通信欄――――――――――――――――――――――――――――――

たまさんの「梅花屏風」完結です。梅の季節にぴったりの不思議で繊細なお話
でした。

――今週のお話――――――――――――――――――――――――――――

◆  古典へのいざない  [773]
    伽婢子《おとぎぼうこ》[82]  梅花屏風 [9]
    作者 たまさん

◆ 大学ノート狂詩曲 宇祖田都子の話
    第六十八回 並木神社縁起4 
    作者 宇祖田都子

◆ 今週の一句 六文風鈴

● KISARAGIについて

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

古典へのいざない [732]
伽婢子《おとぎぼうこ》[82] 梅花屏風 [9]
作者:たまさん

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 山名《やまな》はすぐに品治《ほんじ》を呼んで詳細を尋ね、寺の院主
《いんじゅ》のことをはじめ、子細を聞き出した。その後、品治は梨春
《りしゅん》と対面し、ありのまま話すように頼んだ。
「今となっては、何を包み隠す必要がありましょうか」
 船頭から受けた仕打ちをすべて語り、疑いの余地もなく中納言の北の方だ
ということが判明した。
 梨春はすぐに鞆《とも》の浦に呼び迎えられ、中納言と再会した。二人は
夢のように思いつつも、姿が変わり、衰えた互いの有様を不憫に思った。
 しばらく鞆《とも》の浦にいるうちに京都の情勢が変わり、三好《みよし》
・松永《まつなが》が滅んで足利義昭《よしあき》が台頭した。これを機に
中納言は都に上ろうとしたが、急に病を患ってそのまま亡くなってしまった。
還俗《げんぞく》していた梨春は再び尼になったものの、それから約二十日
後、夢に中納言が何度も現れて誘うようになり、後を追うようにこの世を去
った。
 山名は二人を同じ場所に埋葬した。四十九日後、二つの塚から立ち上った
白い雲が西を目指して行くように見え、異香《いきょう》が山や谷に満ち溢
《あふ》れた。当時の人々は何とも不思議なことだと思ったという。
(了)
                                  ★

 今回で「梅花屏風」は終わりです。ここまでのお付き合い、ありがとうご
ざいました。
 他のエピソードと比べると素朴な内容で、猟奇的な要素はほとんどありま
せんでしたが、恐らく作者が最も伝えたい「仏縁」(仏の導き)が書かれた
作品だったと思います。
 次回からは新しいエピソードをお届けします。それではまた。

――ウェブサイト―――――――――――――――――――――――――――

 かたかご http://yamanekoya.jp/
 山猫屋本舗 http://yamanekoya.net/

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

大学ノート狂詩曲 -宇祖田都子の話
第六十八回 並木神社縁起4 
作者:宇祖田都子

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

第六十八回 並木神社縁起4

 私は、小坂さんから並木神社のことを聞きながら、無意識のうちに、邪馬台
国とか、飛鳥時代とか、そんな古代の景色をイメージしていたのでした。
 「考古学」とか「発掘」とかいうキーワードがあったからかもしれません。
宗教が宗教と名づけられるずっと前の、呪術も科学も医学もみな一緒くたに
なっていた素朴で恐ろしい時代の人々を、どこか遠方の牧歌的景色として眺め
ていたのですが、「昭和」と聞いて、牧歌的景色はどこかへ吹き飛んでしまい、
江戸川乱歩や横溝正史などのドロドロとした日本的怨嗟の臭いに包まれていた
のでした。

「あ、並木さんのお母さんて、並木稔子さんのお母さんのことね」

 小坂さんは、そう言ってストローで吸える限りのレモネードを飲み干して、
グラスに口をつけると勢いよく上を向いて、氷を口の中に送り込みました。
「グっ」と喉が鳴りました。多分、予想以上の量の氷が突入してきたのだと思
いました。

「並木さんのお母さんが、並木さんの奥さんのお母さんってことは、並木さん
は並木家の婿養子だったということなのね」

 と、私は確認するように自分にむかってつぶやきました。

 あの、スタジオでのレクチャーの途中、手藻蔓さんが、並木さんの結婚写真
を説明しときの違和感が、ようやく解消しました。そして、あのレクチャーは、
たしか梅雨の走りの時期だったのだなと思い出し、それから三ヶ月くらいしか
経っていないことが、不思議でした。
 それ以来、手藻蔓さんとは会っていませんでした。
 もう、十年もあっていないような気がしていました。そうして、このまま十
年が過ぎ、二十年が過ぎた後でも、やっぱり、十年もあっていないんだなと思
うのでしょう。

「じゃ、並木神社は並木さんの奥さん家の神社だったのね」

 と、私は目の前で口の中の氷をハフハフしている小坂さんに質問ともつかな
い、いわば確認をつぶやきました。小坂さんは、頷きながら、無理やり氷を噛
み砕いています。
 頬が氷の形に出っ張り、それがしだいに細かくなっていく様子や、砕かれ溶
けた冷たい水が、少しずつ喉を降りていくところまで見えるようでした。露わ
になった小坂さんの喉元は、案外白くてほっそりとしていました。

「んっと… 並木さん、旦那さんの方、ややこしいな。並木喜寿郎さんね。ミ
ヤコちゃんにノートを託した人。その人も考古学とか民俗学とかの研究をして
いて、その、折口信夫門下で…」

 『ノートを託されたのは手藻蔓さんなんだけどな』
 と私は心の中で訂正していました。神社のお話や、並木さんと手藻蔓さんの
家の関係(家族や神社の行事の写真担当をしていたつながりがあると、あのレ
クチャーの日に言っていた記憶があります)から考えても、興味の方向性から
いっても、私はまったく無関係な、暢気な部外者。通りすがり。名乗るほどの
者でもない者。でしかないのです。

 ちょっと、スーツケースを仲介しただけの異邦人。

 だから、だからです。だからこそ私は、「お家の事情」には関わりたくな
かったのです。もしスーツケースの中身が、相続とか家族の記録とかいうもの
であったならば、私は即座に手藻蔓さんにお返しして、一切かかわらなかった
はずでした。それが、大学ノートだったから。そこに「ぼい~~ん」なんて書
かれていたから。私は引き込まれてしまったのでした。
 ただ、それだけの理由でした。並木神社の事情なんて、本当はどうでもよい
ことだったのでした。

 ですが、主幹も、小坂さんも、手藻蔓さんも、「並木神社マター」に、
どっぷりと嵌まり込んでいるのです。「○○沼」という言い方でいえば、
「並木神社沼」に首まで浸かっているのです。そして、私もそちらに誘われて
いくような気がしていました。(20190217)
  
――ウェブサイト―――――――――――――――――――――――――――

星空文庫 https://slib.net/a/20077/
ショートショートガーデン https://short-short.garden/author/808354

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

――今週の一句――――――――――――――――――――――――――――

   春空の乱れのままのとんびかな 六文風鈴

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

――投稿随時募集中――――――――――――――――――――――――――


http://mmkisaragi.blogspot.jp/2013/10/blog-post.html

このメールマガジンは、投稿によって全てが成り立っています。
あなたの「文字による作品」を投稿して下さい。

★投稿はkisaragi HP の投稿要綱
 http://mmkisaragi.blogspot.jp/2013/10/blog-post_6740.html

★または、直接のメールでも大丈夫です。
みやこたまち宛 E-mail :tamachim@yahoo.co.jp

――ご投稿の際には、お手数ですが、以下の内容をお送り下さい――――――

タイトル(必須):
種別:ショートショート/短編/中編/長編/エッセイ
ジャンル:(時代、現代、SF、冒険、推理、ファンタジー、など……)
作者名(ハンドル可;必須):
メールアドレス(必須):
HPアドレス&名前:
一行コメント:

――投稿時の注意―――――――――――――――――――――――――――

★一行の最大文字数は全角で35文字(原則)までです。
 それを超えるものはこちらで修正させていただきますのでご了承下さい。
★長編の分割掲載時の区分などにつきまましては、ご相談ください。
★「文字による作品」とは、文字の連なりによって表現されたものです。
 ジャンルは問いませんが、公序良俗、特定個人への誹謗中傷、特定団体への
 勧誘等、編集発行者の判断により、掲載をお断りする場合もございます。
★投稿作品の著作権は各作者に帰属します。

――<運営よりお知らせ>―――――――――――――――――――――――

メルマガの配信ドメインが変更になります。
全てのメルマガが受信できるよう、以下のドメイン全ての受信設定をお願いい
たします。
・mag2.com
・mag2official.com
・mag2-tayori.com
・mag2tegami.com
・mag2premium.com

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

――編集発行者について――――――――――――――――――――――――

編集者 みやこたまち

E-mail :tamachim@yahoo.co.jp

WebPage:http://mgkisaragi.web.fc2.com/index.html

―――――――――――――――――――――――――KISARAGI――

KISARAGI

発行周期: 週刊 最新号:  2019/02/17 部数:  50部

ついでに読みたい

KISARAGI

発行周期:  週刊 最新号:  2019/02/17 部数:  50部

他のメルマガを読む