言葉の森 オンラインマガジン

言葉の森新聞2018年7月4週号■本当に読書第一、勉強第二でいいんですか■これから生まれる新しい教育

カテゴリー: 2018年07月23日
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■■本当に読書第一、勉強第二でいいんですか 
 勉強は第三でもいいぐらいです(笑)。 
 先日、発表学習コースのミニ保護者懇談会で、小学3年生の子の保護者の方から、次のような質問がありました。 
「本当に、読書だけでいいんですか」

 その子は、それまでは、家庭学習である程度難しい算数の考える問題などをする時間があったそうですが、今の家庭学習はほとんど読書だけの毎日だそうです。 
 もちろん、それでいいのです。 

 私の考えは、小学校低中学年で考える問題などやっても意味がないというものです。 
 なぜかというと、それは本当の意味で考える問題ではなく、パズルを解くような考える問題か、あるいは設定がややこしいだけの難問だからです。 

 勉強をする毎日の習慣をつけておくことは大切ですが、それは習慣を作ることが主な目的です。 
 毎日決まった時間に机に向かうことができていれば、短時間でもそれで十分なのです。 

 もちろん、今の学年で、少し難しい問題をテストで出された場合、長い時間勉強をしている子はその問題がすぐに解けるのでテストの成績がよくなります。 
 勉強時間が短く、読書だけをしている子は、解くのに時間がかかるので、大体点数は悪くなります。 
 しかし、ここで目先のテストの点数に目を奪われてはいけないのです。 

 その子の本当の学力がどのへんにあるかということは、小学校のテストの成績ではわかりません。 
 その子の学力は、親子の対話の中でおのずからわかります。 
 親が話したことをそれなりに理解し、自分の考えたことをそれなりに言える子であれば、学力は全く問題ありません。 
 そして、その学力を育てる根本が読書なのです。 

 ということを書いているとき、ちょうど「月刊致知」8月号が届いたので、何気なくページをめくっていたら、偶然次のような記事がありました。 

 今年4月に、川島隆太東北大教授が座長を務める仙台市のプロジェクトで、「読書習慣と学力」の関係を示したデータが出されたそうです。これは、小学5年生から中学3年生までを対象にした3年間分のデータをもとにしたものです。  
 このデータによると、読書時間が長いほど成績がよく、1日に1時間から2時間読書をする子は、読書をしない子に比べてかなり高い成績を残していることがわかりました。 
 そして、1日の勉強時間が30分から2時間未満であっても、1日に10分以上の読書をすれば、読書をせずに1日2時間以上勉強している子供より偏差値が高くなっていることもわかったのです。 
「読み聞かせが明日の教育をひらく」(泡渕栄人)より 

 もちろん、読書は年齢に応じて発展させていく必要があります。 
 それは、先日、「答えのない勉強としての読書――子供の読書生活をどう発展させるか」の記事でも書きましたが、毎読、多読、難読という発展段階です。 

 最初は、何しろ毎日、1日も欠かさずに本を読む習慣をつけることです。これが毎読です。

 次は、何しろ好きな本をたくさん読むことです。これが多読です。 
 中には大人から見てくだらないと思われるような本であっても、本人が熱中しているのであればそれを認めてあげることです。 
 ただし、ここで言う読書の定義は、「字のスペースが絵のスペースよりも大きいもの」としますから、マンガ、学習マンガ、絵本、図鑑、雑誌などは含みません。それらは読書ではなく娯楽として読んでいけばいいいのです。 
 この多読の時期に、その子の読書力よりも難しい本を読ませようとすると、かえって読書の絶対量が減ってしまいます。 

 多読の段階のあとは、難しい本を読むことです。これが難読です。 
 小中学生の場合は、説明文や意見文の本で、高校生以上の場合は古今の名著と呼ばれる古典です。 
 時には、易しい本を10冊読むより難しい本を1冊読む方が時間がかかることがあります。 
 しかし、易しい本を10冊読むよりも、難しい本を1冊読む方が本当の学力につながります。 
 そして、難しい本を1冊読み切ることは、易しい本をどれだけたくさん読んでも代替することのできない質的な変化をその人にもたらすことがあるのです。 

 話は代わりますが、今、寺オン作文コースや、発表学習コースでは、45分の授業のあとに、子供どうしの読書紹介の時間を設けています。 
 まだ始めたばかりですが、子供たちは、先生がいない中、お互いに上手に司会をして読書紹介を進めているようです。 
 こういう本の紹介という企画は、家庭でも、近所の友達数人とグループを作ってやっていくことができます。 

 家庭で孤独に問題集を解くような勉強をするよりも、友達と読んでいる本を紹介し合うような勉強の方が、その子の本当の実力につながっていくのです。

 読書好きな子であれば、誰でも、夢中で読んでいて、近く呼ばれても気が付かなかったというような経験を持っています。 
 また、親に早く寝るように言われても、どうしても続きが読みたくなり、隠れて読み続けたというような経験を持っています。 
 こういう経験があることが、多読の目安です。 
 親や先生に言われて、しぶしぶ薬でも飲むかのように読んでいるときは、まだ多読の段階に達していないのです。 
 しかし、これをすぐに多読にさせようとするのではなく、まず毎読(毎日読書)を気長に続けていくことです。  

■■森林プロジェクトと寺子屋オンライン――これから生まれる新しい教育 
 先日7月11日(水)20:30より、Zoom会議室で7月の森林プロジェクト交流会を行いました。 
 その前半の中根からの報告部分の動画です。

▽森プロ交2018年7月 
https://youtu.be/q1_4QGme-7s

 森林プロジェクトの目標と寺子屋オンラインの可能性について、約15分説明しています。 
 これからの日本の教育に関心のある方はぜひご覧ください。

 さて、オンライン教育のツールは、現在、大きな技術革新が進んでいます。  
 これからの教育も、仕事も、このオンラインツールの活用なしには考えられなくなると思います。 

 しかし、大事なのはツールよりも、ビジョンです。(カタカナ語が続きますが) 
 これまでの教育は、ひとことで言えば受験のための教育でした。 
 それが、子供たちの教育にさまざまな歪みを生み出してきました。 

 もちろん、その受験のための教育は、ある程度までは子供たちの学力形成に大きく寄与する時代がありました。 
 しかし、今は、その利点よりも弊害の方が大きくなっています。 
 その弊害とは、ひとことで言えば、学ぶこと自体にあまり意味のないことを、ただ点数の差をつけるためだけに学ばされる度合いが大きくなってきたことです。 

 ところが、その受験のための教育の良し悪しを論じるより以前に、受験という制度そのものが今大きく変化しつつあるのです。 
 それは、これからのオンライン教育の仕組みを活用すれば、入学者に定員を設ける受験そのものが必要なくなってくるということです。 

 現在でも、既にMOOCなどのシステムでは、誰もが世界中のどこからでもほとんど無料で、世界の最高水準の講義を受けられるようになっています。 
 学ぶための手段や方法が大きく改善されたために、その手段や方法を手に入れるために行われていた受験は、これから急速に必要ないものになっていくのです。 

 すると、大事なのは、手段を手に入れることではなく、何を学びたいかという本人の意欲の方になってきます。 
 その意欲を育てるのが、これからの教育の主な目標になっていきます。 
 今、言葉の森では、オンラインシステムを使った、「寺オン作文コース」と「発表学習コース」を行っています。これは、既に30年以上の実績のある電話通信による作文指導と並行して行っているコースです。 

 この寺子屋オンラインと名付けた教育は、従来の学校や塾での勉強のような、先生が教えることを中心とした教育ではありません。 
 確かに対象が小中学生ですから、教える授業はあります。しかし、教えたことが定着したかどうかをテストして、教えたとおりのことができればそれで完了という教育ではありません。 

 そうではなく、教えたところを出発点として、自分から学問を深めそれを創造的に発表していく教育です。 
 この勉強には、従来の知識の詰め込みによる勉強とは違った楽しさや苦しさがあります。 
 その楽しさとは、自分らしい創造性を生かす楽しさで、苦しさとは、創造的に取り組むことによる苦しさです。 

 わかりやすい例で言うと、従来の勉強の典型は漢字書き取りや計算練習です。 
 この勉強はもちろん誰にとっても必要なものですが、今の受験教育の中では、間違えやすい漢字や間違えやすい計算問題が中心になって教えられるようになっています。 
 そのための知識の詰め込みには、それなりに楽しさと苦しさがあります。 

 一方、新しい勉強の典型は作文です。 
 作文は、覚えた知識を再現するようなやり方で書くことはできません。どういうテーマであっても、そこに自分なりの実例や意見の創造が必要になります。 
 だから、作文の勉強には、創造できないときには苦しさがあり、創造できたときには楽しさがあります。 

 この作文の勉強と同じようなスタイルの勉強を、国語、算数数学、理科、社会の全教科にわたって行っていくことがこれからの教育の大きな方向になっていきます。 
 それは、今、言葉の森では、寺オン作文コースと発表学習コースで行っています。 

 そして、それらの教育を担うのが、森林プロジェクトで理念と方法を共有する講師たちという関係で考えているのです。  

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