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言葉の森新聞 2007年11月2週号 通算第1006号

カテゴリー: 2007年11月07日
言葉の森新聞2007年11月2週号 通算第1006号
文責 中根克明(森川林)


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■■読解マラソン集小3の長文一部訂正

 小3秋4番の長文「寝る子は育つ」で、レム睡眠とノンレム睡眠の記述が逆になっ
ていました。 

 読解マラソン集には、現在、訂正したものを掲載しています。 

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(知識よりも考え方を優先するために、レム睡眠、ノンレム睡眠という言葉自体をや
めて、浅い眠り、深い眠りという記述にしました)


■■無駄のある教育

 中2の長文集(10.2週)の中に、「学校とは一点から一点への最長距離を教え
ることである」という一文があります。これは、勉強の本質を表しています。勉強で
大事なことは、答えを出すことではなく、どのように答えを出すかというその方法で
す。答えではなく、答えを出す過程を学ぶことが勉強です。

 私(森川林)の話ですが、昔は、勉強の方法などを知らなかったので、高校生のこ
ろ、解けない数学の問題を何時間も考えて夜の街を散歩したことが何度もあります(
笑)。今考えれば、すぐに解法を見てあるいは聞いて、その解法をまるごと理解する
のがいちばん能率のよい勉強法だと分かるのですが、そのころは真面目に、問題は自
分で考えて解かなければならないと思っていました。しかし、そういう回り道の経験
があるせいか、今でも何か問題があると、自分で考えればそのうちよい答えが出ると
いう考えを持つようになりました。それが欠点になることもあると思いますが。

 「葉隠」という本に、「分からないことの中には、分かるようにしてあるものもあ
り、また自然と分かることもあり、どうしても分からないこともある、それが面白い
ことだ」という言葉があります。これは、自分でよく考えた人の言葉だと思います。
しかし、同じ「葉隠」に、「本当の知恵は他人に聞くことだ」という言葉もあります
。これもまた、真理だと思います。

 教育評論家の和田秀樹氏と、数学者の森毅氏の数学に対する考え方は、対照的です
。和田氏は、解けない問題は考えずにすぐに解法を見て理解せよ、という考えです。
森氏は、解けない問題はむしろ考えることを楽しめ、というような意見です。しかし
、両者の意見は対立しているのではありません。受験勉強のような能率を重視する勉
強では、早く解法を見て理解することが大事です。しかし、ここで能率を上げて余裕
のできた時間を、本当に考える問題を解く時間にあてるということなのです。これが
、無駄のある教育です。

 では、その無駄のある教育とは、どこで行われるのでしょうか。それは、対話と経
験と読書の中においてです。

 小学生のころの勉強は、時間をかければその時間に比例してよくなります。しかし
、そこで必要以上に時間をかけるよりも、能率のよい勉強法を心掛けて、あるいは勉
強はいったん脇に置いておいて、対話や経験や読書の時間を確保することが、家庭で
行う本当の教育になると思います。


■■人間は考える葦である

 今、世の中には変わったことのできる人が増えています。それは、ひとことで言う
と、超能力というものです。またまた、という声が聞こえてきそうですが(笑)本当
です。残念ながら、私(森川林)にはそういう能力は全然ないので、以下の話は安心
して読んでください。

 さて、そういう超能力を持っている人の中に、宇宙人や神様とコンタクトを取れる
人がいます。

 その宇宙人や神様の言っていることは、実に正確で的確で、人間の知らないことま
でかなりよく知っています。ですから、彼らの言っていることを聞いていると、まる
で宇宙人や神様はすべてを知っているかのような錯覚に陥りがちです。

 ところが、宇宙人や神様の知識の出所は、地球人が何万年も前から蓄積してきた知
識のデータベースなのです。また、このデータベースには宇宙人の知識も含まれてい
ます。これらの膨大な情報があれば、普通にものごとを常識的に考える力のある人で
あれば、一見すべてに的確なことを言えるようになります。

 宇宙人や神様は、何かを質問されると、自分でものごとを考えて答えるのではなく
、それらの知識のデータベースにアクセスして答えを言っています。言わば、カンニ
ングペーパーを見ながら喋っているということです。えらくも何ともありません。む
しろ、そういう背景を内緒にして立派なことを言っているところが、人間的に見てレ
ベルが低いとさえ思います。

 宇宙人や神様は、いろいろなことを知っていますが、これから起こる新しいことは
知りません。未来は、人間にとってと同様、宇宙人や神様にとってもやはり未来なの
です。ときどき、未来の世の中を見てくる人がいますが、あれは本当の未来ではあり
ません。未来のシミュレーションです。本当の未来は、人間が作らなければ生まれて
きません。

 パスカルは、人間は考える葦である、と言いました。大宇宙のほんのわずか一滴の
露で折れてしまうかもしれない弱い葦です。しかし、その葦は、自分がそういう葦で
あることを知っています。倒れながらも、自分がそういう葦として倒れることを知っ
ている葦は、宇宙のすべての力に匹敵する偉大さを持っています。

 これから、世の中は大きく変化していきます。そのときに大事なことは、宇宙人で
あろうが神様であろうが、他人の意見を盲信しないことです。特に、神様のように、
自分を神様だと言っているような相手には、絶対に対等に接するべきです。人間が単
に神様に従うような形で生まれる理想の世界は、「動物農場」の世界です。私たちは
、宇宙人も神様も地球人も、みなそれぞれの自主性を持って、民主主義の土台の上に
理想の社会を作っていくべきなのです。

 ところで、私は、まだ宇宙人や神様と会ったことがありません(笑)。これからも
、たぶん会わないでしょう。

 しかし、世間で、「宇宙人が……」とか「神様が……」とかいう話があまりに多い
ので、その人たちに、もっと広い視野でものごとを見てほしいと思って、ごく常識的
な原則論を書きました。


■■基本に忠実に(モネ/いとゆ先生)

 「読書の秋」、「スポーツの秋」、「芸術の秋」、秋にもいろいろありますが、私
にとっての秋は、やはり「食欲の秋」でしょうか。

 9月の3連休を利用して、私の家族、主人の母、主人の妹夫婦の総勢7名で神奈川
県の丹沢渓谷にキャンプに行ってきました。紅葉にはまだ一足早かったようですが、
川辺の風がとても心地よく、体中に自然のパワーを充電して帰ってきました。

 大人数だったので、毎回の食事の用意が大変でしたが、アウトドアで食べるごはん
は本当においしいので、張り切っていろいろなメニューをそろえました。その中で、
とても好評だったのが、義母の作ったビーフシチューです。

 義母は、主婦歴40年、仕事でときどきお料理教室を開いているほどの料理の達人
です。私は、側でアシスタントをしながら、しっかりとその腕前を拝見させてもらう
ことにしました。

 きっと、鼻歌など歌いながら手際よく作り上げてしまうのだろうなと思っていたら
、義母は「ちょっと待ってね。」と言ってデミグラスソースを手に取りました。そし
て、パッケージの裏に書いてある「ビーフシチューの作り方」を熟読し始めたのです
。

 「あれれ?」肩すかしをくらったような気持ちで様子を見守る私に、義母は

「料理で一番大事なことは、レシピどおりに作ることなのよ。」と、微笑みました。

 「へぇぇ〜っ!」と、私はビックリ。何せ私の料理ときたら、食材の切り方「ま、
適当に」、調味料の量「まぁ、これくらいで」、火にかける時間「おいしくなるまで
」と本当にいい加減で、レシピなどあまり見たことがなかったからです。そのため、
作るたびに料理の味がちがい、「この前の方がおいしかったのに。」と子供たちに文
句を言われることもよくあります。

 義母は、計量カップで水や赤ワインの量をきっちりと計り、煮込む時間を時計でチ
ェックしながらシチューを仕上げていきます。夕暮れどきのキャンプサイトには、お
いしそうなにおいがたちこめて、通りすがりのキャンパーたちがのぞきこんでいくほ
どです。

 そして、できあがったシチュ−は、牛肉や野菜のうまみが引き出されていて、まる
で三ツ星レストランで食べるような完璧な味でした。自己流のアレンジもいいけれど
、まずは基本に忠実にというのが大切なことなのだと実感しました。



 さて、10月になってみなさんが作文を書くときの「項目」が変わりましたね。こ
の「項目」は、言わば料理のレシピのようなものです。1つ1つの項目にそって書い
ていくことで、みなさんの作文を書く力を引き出すことができるように作られていま
す。しっかりと項目を確認しながら、作文の達人を目指してがんばってくださいね。


■■『頭の良い子が育つ家』(もんぴぃ/おのぴ先生)

 先日『頭の良い子が育つ家』という本を見つけました。中学受験に成功した家庭を
例にとり、頭の良い子が育つための条件を住宅環境の中で考えるという内容なのです
が、その中で目を引いたのが合格する子は個室で勉強しないで、ダイニングやリビン
グルームといった家族が集まる場所で勉強するということでした。大事なのは家族と
の豊富なコミュニケーションだというのです。

 最近の中学入試の問題は記述式で解答するものが増えてきており、知識を詰め込む
だけでは対応しきれない、そこでは文章を使って説明する能力が必要だというのです
。そのためには親子の対話を通してその力をつけるのが一番なのだそうです。

 頭の良し悪しはともかく、コミュニケーション能力の必要性は確かに感じます。人
に囲まれながらの生活は、必ずしも自分の思い通りにはなりません。何か嫌なことが
あっても我慢したり、軽くうけながさなければならないことも多いです。だからとい
っていつもだまっているのではなく、これだけは譲れないという自分の主張のために
はあらゆる手段を使ってでも相手を説得しようとする気概も必要でしょう。

 今は核家族化が進んでいて、以前のように生まれながらにして大家族に囲まれ、様
々な人との関係の中でそれらの能力を身につけられるような機会を持てなくなってし
まいました。ですが、このままではいけないと思います。今よく話題になる「きれる
大人、きれる子供」そのどちらもコミュニケーション能力の欠如がその根底にある気
がしてなりません。

 相手や状況を受けれることと自己主張をすること、その両立は時として難しいこと
かもしれません。しかし他人とコミュニケーションをとることの楽しさを家族関係を
とおして学ぶことはとても意義のあることだと思います。


■■「なぜ、物は落ちるのか」(うさぎ/きら先生)

 読書の秋です。といっても、忙しい学校生活を過ごすみなさんにとっては、読書の
チャンスはむしろ長期の夏休みだったかもしれませんね。私は、年中同じようなペー
スで本と向き合いますが、若いころに比べるとかなり遅読になっています。途切れ途
切れに読むからかもしれません。そのせいか、文芸書を読むことが減り、実用書や論
説文を読むことが多くなりました。(長文に疲れる年齢になったのかもしれません)

 しかし、夢中になれる本に出会うとうれしくてたまらないのは、本の種別を問わな
いのですね。先日も、初めて知ったことがらに「目からうろこ」のうれしさを体験し
ました。「なぜ、物は落ちるのか」という考察をめぐる論説文に、次のようなことが
ありました。

 「なぜ物が落ちるのか」と問われたら、ニュートン力学を学んでいる私たちは、万
有引力の法則にしたがって説明をすることでしょう。引力が働いているから、物は加
速度運動によって落下するのだと、理科で教わったとおり理解しているはずです。「
引力」という言葉は、小さい子どもでもちゃんと使えるところがすばらしい、いきわ
たった知識です。私は、この偉大な発見こそが、物の落下に関わるいちばん古い科学
的考察だと思っていました。それ以前はもう、曖昧模糊の迷信の世界だと思い込んで
いたのです。

 ところが、科学の眼はもっと古かったのです。ギリシャの哲学者であるアリストテ
レスが「なぜ物が落ちるのか」という疑問にきちんと答えをだしていました。アリス
トテレスは森羅万象を、土・水・空気・火の四元素で説明できるとしました。四つの
元素は下からこの順で階層をなしているのが本来の位置であり、なんらかの事情でそ
の位置が乱れたときにはチャンスを見て元に戻ろうとするというのです。だから、も
ともと「土」で出来ている茶碗は、他の元素よりも下に位置するべきであるから、落
ちるというわけです。同じように彼は、地震についても、その揺れは地下にあった蒸
気が勢いよく地上へ吹き出すために起こるのであると説明しています。「空気」は上
から二番目の本来あるべき位置へかえるというわけです。

 なにやら「土」や「空気」に心が備わっているみたいで、キツネにつままれたよう
な気がしないでもないですが、地震は地下で大ナマズや魚が暴れたから起こるといっ
た昔ながらの神話のような話とはちがって、理論的つまり科学的といえないでしょう
か。私は、自分が抱いていた「科学的」のイメージが揺れ始めたように思って、感動
したのです。
 科学的とか非科学的といって、私たちはとかく分別したがります。どういうわけだ
か、科学的だと安心で有意義であったりして、非科学的だと不安で値打ちを感じなか
ったりします。しかし、それは真実でしょうか。私たちは科学的かどうかの境界線に
ついて、真剣に考えたことがあったでしょうか。「科学的」とは、どういうことなの
でしょうか。下手をすると、電力で動くものが「科学的」だという程度の安易な分別
をしてしまっているのではないでしょうか。

 知らないものに出会うと不安でたまらなくて、いったいなんであるのか確かめずに
はおられない。これが科学の精神の始まりだと思うのです。そうだとすれば、今自分
が知っている「科学的説明」の数々をそのまま鵜呑みにして唯一無二だと思い込むこ
とは、科学の精神に照らしてどうなのでしょう。

 じつはこのアリストテレスの説を読んだとき、感動のあまり、娘たちに話して聞か
せたのです。その反応は、見事に二分割。

娘1「そのくらい知ってたよ。ギリシャの哲学者たちは、朝から晩まで考えてばかり
いて理屈をつくって居たんだと思う。理屈はどこかで破綻したから、近代科学が生ま
れたんだよ。」

娘2「へえ、すごいね。なるほど、茶碗は土だからか。そんな説明のしかたもあった
んだね。じゃあ、鉄の球はどうなるのかなあ。」

このうけこたえ、果たしてどちらが科学的だと思われますか? 

 私たちは、いろんなあたりまえについて、ちゃんと自分で考えてみるべきではない
でしょうか。

                                 きら


■■限られた人生で……(イルカ/かこ先生)

 限られた人生で、大事なことは、「何をするか」ではなく「何をしないか」である
。

<<え1479み>> 「名言の木」という名言を集めたものが教材の中にあります。こ
れは、その中の一つですが、私達現代人はあまりにも忙しすぎて、「何をしないか」
と考える以前に「何をするか」ということの方を考えてしまいがちです。「何をする
か」というより、「何をするべきか」と言った方がいいかもしれません。今日は何を
しなければならないか、何を優先して片付けなければいけないか、朝起きてから夜寝
るまでずっとそのことばかり考えているような気がします。「何をしないか」などと
言われても、そんなことできない! と思ってしまうかもしれませんね。それはなん
だか寂しいような気もします。

<<え1475み>> 今月の小学生の課題の中に、「秋を見つけたこと」というものが
あります。皆さんは、どんな秋を見つけたことがありますか。本当に、純粋な気持ち
で秋を感じているのでしょうか。毎日勉強に、仕事に忙しく、分刻みで行動するよう
な私達は、本当に「ああ、秋だなあ」と感じることがあるのだろうかと思ってしまい
ます。この名言は、現代人の生活そのものを皮肉っているようにも思えてなりません
が、忙しいその手を、その頭を一時でも休めて空を見上げてみる。夏の雲から秋の雲
に変わっている空、いつもよりなんとなく高く遠く感じる空。心地よい風の中には、
ひんやりとした空気を感じ、キンモクセイのほのかな香りが漂う。そんなことすら感
じられなくなってしまっている今の私達の生活は、決して健康的とは言えないのかも
しれません。

<<え529み>> 先日、新聞に中学一年生の一割が鬱にかかっているという記事が
ありました。大人ではなく、中学一年生です! この現実が何を物語っているのか、
これはただごとではない事態であると私は感じました。忙しすぎる生活や人間関係が
ストレスを生じさせ、人間本来の正常なリズムを奪ってしまっているのかもしれませ
ん。この子達が大人になったら、どうなってしまうのでしょうか。恐ろしい結末が待
っているかもしれません。それは決して大袈裟ではなく、ある意味で警告を発してい
るのかもしれません。

<<え1474み>> 人生ですべきことはたくさんあります。将来を見据えて、今のう
ちにしておいた方がよいということもあります。もちろん寿命は決まっているのです
から、その間に出来る限り、しかも悔いの残らないように楽しい充実した人生を送り
たい、誰もが心のどこかでそう思っていると思いますが、あまりにも余裕のない人生
もつまらないものです。今していることを思い切ってやめてみる。一日でもいい、一
時間でもいい、三十分でもいい。頭の中から全てを追い払って、何も考えずに自然と
向き合ってみる。なにも山や海に行かなくても、身近にある空や風や景色でいいので
す。そうやって頭を空っぽにすることで、本来の自分を取り戻すことができるかもし
れませんし、何かを発見することができるかもしれません。大人も子供も、現実から
逃避することは不可能です。「今日はこれをやめよう」と思うこともできないかもし
れませんから、せめて窓を開けて、四季の移り変わりを肌で感じたいものです。



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