2009.1.14

パワーゾーンを活用した「対人環境の設定」

日常のなかで活用できる心理学の応用として「パワープレイ〜パワーゾーン」について、今回は、綴ってみたいと思います。

「パワープレイ:パワーゾーン」とは、言葉の訳の通り「力の活用:力を活用しやすい位置(場所)」の意味で、欧米のビジネスシーンでは積極的に取り入れられている ビジネス手法のひとつでもあります。

ビジネスマナーのひとつとして、「相手を尊敬する気持ちを座る位置によって表す形」として席次のマナーがありますが、 相手先に訪問の際、外出先での打ち合わせ時等々、席次により相手からの尊敬の念を受けているとのより良い実感を本当に与えられていますでしょうか? または感じていますか?

ひょっとしたら、あくまでも日常的な儀礼的なものとしての対応になってはいませんでしょうか(もちろんマナーですからこれだけでも十分ではあります)
逆を返せば、「思い遣り・もてなしの心」としてのマナーの実施が、果たしてどれ程お相手に届いており、得たい目的にプラスの影響を与えているのか」 をもう一度振り返り、見つめてみようというのも今回の裏テーマとしていえるのかと思っています。


■■□ 「パワープレイ〜パワーゾーン(シート)」とは

社内外問わず、ビジネス上の対人のやり取りにはかならず目的が伴います。
全ての組織行動の原理原則は、利益獲得のための目的に繋がっていることは今更言うまでもないことかと思います。

相手への「心」を忘れることないマナーの精神を基本にしながら、より効果的に目的を果たす事が出来る可能性があるとしたならば、 時にマナー視点による席次のあり方を、目的達成の視点による席次のあり方とすることにも、一考の価値はあるのではないかと思います。

あくまでも「心」を忘れずにという事が前提条件とするポイントのひとつであることは押さえておきたいことですが、 席次ひとつにしてもこれに近づける可能性があり、
これこそが、パワープレイのひとつであるパワーゾーン(シート)の活用だといえます。


ビジネスの対人関係に於いて、目的を達成するためには、先ずは、自分の話しを相手に集中して聞いて貰うことが重要な事であり、 会話全体のイニシアティブ・コントロールが自分の側にあることが鍵となります。
では席次においてこれに導くためにはどうしたら良いのでしょうか?

それは、「相手との位置関係において、相手が自分に集中して頂けるポジションを選ぶこと」だといえます。

一番効果的なパワーゾーンは、
2面の壁により作られた角を背面に出来る位置(場所)

2番目は、
視界が他に奪われる事がない壁面を背面に出来る位置(場所)

3番目は、
視界に動きが入らない背面である位置(場所)となります。

※詳細は、あまりにも長くなるため割愛いたします。

アバウトながら補足すると、視界に動きがある場合、横系の動きは左からの動きの方が安定でき(Gutenberg Diagram)、 縦系の動きの場合は、上から下、奥行きに関しては、手前から奥へ向うことが、同じく安定した動きと捉えられます (奥行きを感じる深さ等によっても効果のあり方は変化します)。


ひと言でいうならば、「意識の集中と拡散(開放)のイニシアティブ・コントロールを行うこと」が、パワープレイのひとつであり、 「相手からの集中を得やすい位置(場所)」が、パワーゾーン(シート)と言われるポジションとなり、 これを対人関係の様々なシーンで効果的に活用することにより、ビジネスの目的を効果的に達成させるために有効であると考えられています。


多少、脱線気味にパワープレイの一例をあげるならば、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「最後の晩餐」が挙げられます。
キリスト教の聖書に登場するイエス・キリストの最後の日の晩餐で「12弟子の中の一人が私を裏切る」 とキリストが予言した時の情景を描かれたものといった有名なあの絵画の構図です。
これは、一点透視図法(視点の前に架空のキャンバスがあるとして、キャンバスに平行なすべての平行線群は平行線として描かれ、 キャンバスと垂直に交わる直線はすべて1つの消失点へと収束するように放射線状に描かれる・・・難しい表現ですよね)により、 中央に座るキリスト(消失点)に全てのモノが集中して向かうように構図調整をして描かれているモノだと言われています。

絵画の主題であるキリストに自然と視線が集中出来るような構図調整は、正しくパワープレーの考えに合致するものであり、 キリストが描かれている位置こそが、パワーゾーンと言えるポジションなのです。


■■□ 実施活用の一例

重要な契約のお返事を頂きたい最終打ち合わせの場面。 会議室は、ドアを開けて入口奥に片面が全面窓ガラスの眺望の良い環境の部屋になっています。

この場合、先ずは壁側にポジションを取って座ることで、お相手が自分に向ける集中力を高める事が出来ます(横に広がるどの位置に座るかも重要です)
窓側では、相手の視界の先に、飛ぶ鳥や、走る車、流れ行く雲、光の移り変わり等々、結して目的に必要ではない外の動きや変化をダイレクトに受けやすく、 集中して欲しい話しに余計な要素が入り込んでしまう環境であるため、「意識の拡散(開放)」のポジションになってしまいます。
逆に壁を背負い、相手の視界のなかで動くものは自分だけといったポジショニングが取れれば、相手の集中を削ぐ事はなく、 これだけでも、十分なイニシアティブ・コントロールが図れるポジションであるといえます。

さらに、最後の説明にとプロジェクターやホワイトボードによる解説は、着座した席から少し離れた部屋の2面の壁の角に立ち 熱弁(これも重要ですよね)を揮うことで、自分に対する相手の集中を最大限に引き出すことが可能になります。
一通りの説明が終わり、当初の席に戻り、最後のクロージングへ・・・

ここでは、「意識の集中」のポジションを時間の流れのなかで確保しながら、「集中と拡散(開放)」の緩急の変化を伴いながらも 目的に適うポジショニングとなっています。


あくまでも大雑把な一例ではありますが、相手に対して、環境と云う広いキャンパスのなかで、自分の目的に応じて、 自分自身をどのように描き見せるかの構図調整を行なうことがパワープレイのひとつの形だとお伝えしたいと思います。

尤も、一番肝心なお話しの内容が相応のモノでなければならないことは自明の理ですので「より効果的に」が今回の主題となります。
また、自分がパワーゾーンを選択すると言う事は、逆に相手に集中し難い環境を選ぶことにも繋がる事になりますので、 相手の背後にある余計な雑事に気を奪われない精神力や集中力が求められるといった注意も必要となります。

  
たったこれだけ?と言われそうですが、たったこれだけなのです。


言葉を替えてポイントを解説するならば、

自分を一番際立たさせる背景をキャンパスとして背負う事により、より効果的に自分の目的の達成を図ることが可能になる

そしてそれは、

相手に集中して貰いやすい環境作りであり、会話(目的)のイニシアティブ・コントロールを取りやすくなる」ことだとも云えます。


■■□ 日本流のビジネスマナーとの狭間においては

パワーゾーン(シート)を意識すると、時にビジネスマナーの席次のルールを逸脱してしまうケースに悩む場合があります。
当然にTPOを踏まえた活用をしない限り、目的を果たす事は難しいモノになってしいますし、逆効果になってしまう危惧さえも残ります。

私の実際例で言うなら、先ずは、ビジネスマナー逸脱の非礼を詫び、そうさせて頂いた理由をお話し、許しを頂戴するようにしています。
あまりにも立場の違いや年齢的な開きがあるような場合は、実施を差し控えていますが、殆どの場合、しっかりと説明をすれば、ご快諾を頂けています。

ex.「今日は、最終のお打合せと云うことでもあり、許される全てのことを使ってでも、○○さんに私の説明を届けさせて頂きたいと思っております。 それゆえ、この席次の失礼を上回るお話しをお伝えさせて頂きたいと踏まえておりますので、どうか悪しからずお許しを願いたいと存じます。〜・・・」


■■□ 経験からの応用編

キャリアカウンセリングの実施の際、来談目的の概要をメールや電話で事前にお聞きしている場合も多くあります。
事前に確認している来談目的の概要やクライエントの種々の属性・その他の印象等々の間接情報をもとにしながらも、 当日、ドアを開けてお迎えした際に感じる直接的な印象を踏まえ、カウンセリングの実施場所を決めるようにしています。
小社では、カウンセリングルームとセミナールームの2箇所があり、 緊張が高いと感じるクライエントには、大きな部屋での対応を、集中拡散傾向を感じる場合は、小さな部屋での対応を選ぶような活用をしています。
また場合によっては、小さい部屋を話合いのベーススペースとして、PCによる職業検索やトレーニング実施の際は、大きい部屋に敢えて場所を動かしたりと、 「集中と拡散(開放)」の環境効果を考え、パワープレイ発揮の位置(場所)の使い分けをしています。 当然にインテークの初顔合せなのか、2回目以降の対応なのか等でも、部屋の選択・席次の使い分け等の実施も同様に行います。

 ※ 特にパワーゾーンを意識している時は、こちらから相手に座って頂く場所を    指定するようにしています。


また、過去からの経験で言うならば、

人事面談に於いては
査定結果の伝達〜期待事項の伝達時等には、相手からの集中を望むためパワーゾーンを活用して対応を図ったり、 社員採用時の面接では、相手にパワーゾーン(シート)に着座して貰い、こちら側の求職者に対する集中を高めつつ、 求職者の人事(自分)の話しに対する集中度合いの確認を選考判断の対応要素のひとつとしてみたりもしていました。

通常のマネージに於いては
ブレーンストーミングの実施には、窓を背にした位置関係に自分が座り会議進行を行い(カーテンによる調整も有効的)、意見集約のホワイトボードは、 パワーゾーンに置き、最終的なまとめや指揮命令の伝達は、尤も集中しやすい壁側の角の位置から伝えたりもしました。
クレーム対応の際、初回は、お相手にパワーゾーン(シート)にお座り頂き、相手の主張に集中出来るようにし、2度目は自分がパワーゾーンに座り、 より自分の主張を届けやすくしたりもしていました。

プライベートに於いては
高価な買い物をしたい時の揉み手の相談時や、言い訳無しのお詫び(具体的にはNGで・・)の際は、パワーゾーンのポジショニングを使ったりもしています。

また、環境設定の上でベストポジションの確保が出来なかった場合、目的達成を早計に求めないようにしたり、相手との距離や向き等でこの微調整を行ったりも しつつ、パワープレイの有効的な活用を常に意識しています。


■■□ 最後に

パワープレイの一部として、パワーゾーンの活用について綴って参りましたが、当然の事ながら、この最適な位置(場所)を知る事と併せて、 相手との距離や身体の向き等を有効活用し、 自分自身に対しては、印象管理を行うことで、より効果的な活用が描ける複合要素を含むものでもあります。

パワープレイは、スピリチュアルなモノでも、投資リスクが伴うモノでもなく、意識すれば日常的に活用できる方法のひとつですので、 利害関係の低い日常的なケースから徐々にでも試してみてはどうかと思います(慣れれば直ぐにパワーゾーンの場所の理解は出来ます)

私自身、パワープレイの考え方に出会い、ビジネス場面を中心に日常生活においても長年実施をしてきましたが、たったこれだけのことが、 結果に大きな作用をもたらせていると実感したことを何度も経験しています。
結して夜の帳のなかで、パワーゾーンを意識して飲んだりはしていま・・・千変万化の世の中・組織・人心・時間・環境・状況のなかで、 イニシアティブ・コントロールを取れるポジションを上手く活用し、大きなキャンバスの中で目的を持つ主役の自分を上手く描き、 有効的な訴求を相手にしてみて下さいね。



対人関係に於いて、マナーや常識や慣習はとても大切なことです。
しかし、「ここ一番!」が必要な場面においては、日常の常識さえも見つめ直すことにより、引き寄せられる「何か」を掴むことが出来るかも知れません。
キャリア・コンサルタント(カウンセラー)や人事においては、ファシリテーターとしてグループダイナミックスを活用する場面も多々あるかと存じます。

今回は、その際のひとつのヒントとして綴らせて頂きました。



career wing
仕事を通じて、“自分「らしさ」の実現”を追求する、キャリア形成支援のトータル・ソリューション・サービス
ヨシダの徒然 < 編集後記>

鬼の霍乱か齢のせいか年末に引いてしまったた風邪をこじらせ、急に高熱が出て1日入院をする状況になっていました。
持病のアーノルドケアリ症(小脳奇形)があるため、傍にいる方々からは「?」と言われがちですが、かなり体調変化や熱には意識をしているのですが、 今回は、自己管理が及ばず・・・

医者曰く、今年の風邪は、一気に症状の悪化があり得るようです。
どうかみなさんに於かれましては、ご自愛を頂きたいと存じます。




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Career wing  tadashi yoshida


特定非営利活動法人 キャリア・コンサルティング協議会 会員
特定非営利活動法人 日本キャリア開発協会(JCDA)所属

厚生労働省指定キャリア・コンサルタント能力評価試験合格
キャリアカウンセラー

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