2008.11.12

相手との「距離と向き」〜試験対応と日常の応用〜

キャリア・コンサルタントの実技(2次)試験は、 カウンセラーとクライエント用の2脚のイスをカウンセリングを行うためにセッティングをすることから開始となります。

小社で試験対策の実施シュミレーションを行う際にもイスのセットから開始をしますが、全くの我流?か、マニュアル?通りの対応で、 その意味を踏まえていないと感じる事が度々あります。

対人関係に於ける、相手との「距離と向き」は、日常生活のなかでも活用が出来るモノなので、堅苦しい心理学の話しではなく、 今回は、試験対応と日常での応用として記してみたいと思いました。


■■□ 相手との距離を考える

文化人類学者のエドワード・T・ホールが提唱した「プロクセミックス(proxemics;近接学)」理論(人の個人的距離や社会的距離を著した理論)によると、 人間を取り巻く「なわばり」には4つの距離(実際は、更に各項が、近接相と遠方相に分かれるため8区分)に区別できることが示されています。
円滑な人間関係の形成のために4つに区分された距離を上手く利用する事により、より良いコミュニケーションを図る事が可能になります。

1.密接距離  45cm 以内(intimate distance)親密・接触・恋人ゾーン
  心身ともに触れ合える距離
2.個人距離 45〜120cm(personal distance)対人・プライベート・友人ゾーン
  手を伸ばせば触れることも可能な距離
3.社会距離 120〜360cm(social distance) 社会的・フォーマル・知人ゾーン
  人間関係は成立するが、細かい表情は見えない距離
4.公共距離 360cm 以上(public distance) 公的・大衆ゾーン
  相手と個人的関係は成立しない距離


試験対応

一般論的には、「2.個人距離」を基本的な距離として、1m 位の距離をイスとイスとの間に取る事が望ましいかと思います。

ただし、体格的に縦・横に大きい・広い方については、これに拘らず、1m+αの多少の距離を取る事が必要になります(体格的に逆の場合:距離は短く)。
また、カウンセラー側の特徴として、身振り・手振りが大きい癖を持っている方も、
同様に多少の距離を取った方が良いかと思います。

ポイントは、「相手に圧迫感を与えず、安心が出来て、適度な親密感を得る」ための距離を取ること。となります。

ヨシダ目のようにチビ&横に広い場合・・・余談はさて置き、肝心なことは、一般的な距離を目安として、自分なりの距離を知ることに尽きます。
クライエントの心理状態は、身体言語として「手や足」にも良く現れるものですので、大きく目線を動かさなくても、自然に全身が目に入る位の位置が良いかと思います。

身近に居る方々に協力をして貰い、ポイントを踏まえた自分なりの距離を探してみて下さいね。


実際のカウンセリングにおいては、性別・年齢等、ある程度の情報がご来社時に分かっており、テーブルを挟んでのお話しが通常になりますので、 イスだけのセッティング程、神経を使う事はありませんが、それでもクライエントが異性の場合は、相対する距離にはかなり神経を使っています。
また、状況によっては、資料等を取ってくるとかの理由を作り、適時、距離の修正・調整を図る場合もあります。


試験の場合、どのようなクライエントなのかを事前に知ることは出来ませんし、中座をして距離の調整を図る事も出来ません。
一度、セットした距離を替えることは不可能になりますので、本来は、クライエントを全ての中心として諸事対応を行ないたいのですが、 先ずは、自分に取っての平均的な距離のポジションを確立し、イスの座面に座る位置や身体言語表現で微調整を行うようになれればと思います。

・・・実際は、これに印象管理が含まれるのだから・・・相手との距離ひとつを取ってみても、以外と奥深いですよね。



応用編

「お相手とどれくらいの距離にいると一番落ち着くか」の親密度の確認の観点で、4つの区分を利用してみます。
お相手との現状が分かれば、対人距離(ヒューマン・スペース)を利用して、その人との壁を乗り越えることも可能になるといえます。
ポイントは、対人距離の違和感を払拭させる「慣れ」と、親密度を高めるための「意味(意義)」を作り出すことです。

例えば、社会的距離の近接相と思えるお相手との関係をもっと深めたいと思うなら、個人的距離の遠方相を意識して機会を多く作ります。
「そんなこと今更云われなくても自然にいつもやっているよ」と聞こえて来そうですが、段階を飛び越えてしまった時に関係性が壊れやすくなることの 経験もあるのではないかと思います。

一例として、ビジネス上において、社会距離の近接相を保ち、この距離に立って人を見下すと威圧的効果があるとされています。
また、家庭生活等では、お互いが違和感無く各々別のことが出来る距離とされるのが、社会距離の遠方相となります(これは使える!?)。


<参考詳細>

2.個人距離 45〜120cm(personal distance)

  近接相(45〜75cm)
相手に触れ・捕まえたりが出来る距離であり、相手の表情が良く分かる。
恋人や夫婦がこの距離に入ることは自然であるが、他者がこの距離に入ると誤解が生じる。

  遠方相(75〜120cm)
両者が手を伸ばせば相手に触れることが出来、お互いの細かい表情を確認しながら対話ができる距離であり、 個人的な要件からビジネスミュニケーションの際にまで利用される。

3.社会距離 120〜360cm(social distance)

  近接相(120〜210cm)
身体的な接触の限界を超えた距離であり、仕事をする時に仲間との間におく距離。

  遠方相(210〜360cm)
形式的な仕事上の距離であり、他人を気にせず仕事が出来、他者の迷惑にならない距離。



■■□ 相手との向きを考える

議論や説得などを行う時に、座る位置(向き)はどのように相手への影響をすると思いますか? アメリカの心理学者スティンザーは、小集団の生態を研究した結果として、次の三つの「スティンザー効果」を報告しています。

会議では、以前論議を戦わせた相手が参加している時は、誰でもその人の正面に座る傾向がある。
ある発言が終わった時、次に発言するのは、その意見の賛成者の場合よりも反対者である場合が多い。
議長のリーダーシップが弱い場合は、会議の参加者は正面にいる人と話したがり、 逆にリーダーシップが強い場合は、隣の人と話したがる傾向がある。

本題から反れたように感じるかも知れませんが、相手と向き合う位置関係には、

   正面に座った人とは対立しやすい
   隣に並んで座った人とは同意見になりやすい
   90度のL字型に座った人とは相談しやすい

   正面・・・>> 真剣・対立・緊張・圧迫
   横 ・・・>> 親愛・親密・協力・同調
   斜め・・・>> 相談・友愛・柔和・共生

という効果が、心理学的に検証されていることです。


正面に向かい合って座る位置は、お互いに視線をそらし難く、緊張感の高まりやすい、対立的な位置取りといえます。
横に並ぶのは、心理学的には協力的な位置と言われますが、反面、体が触れやすくなるので親しい間柄でないと、かえって不自然になる場合も多いと言えます。
カウンセリングを行う場合は、初対面の人などと向き合う時にもリラックスできる最も自然な位置取りである、斜めに向かい合う位置がベストポジションといえます。
特に90度のL字型(含む、ハの字)を「カウンセリング・ポジション」と呼び、ビジネスシーンに於いても多用されています。

余談になりますが、スティンザー効果の応用は、国会でも利用されているモノと耳にします。 自分なりの戦略的?活用を描いてみることも一考の価値があるのではないでしょうか。



■■□ 試験対応の答えとして

イスとイスとの間に1m 位の距離を取り、クライエントに斜めに向き合えるように、 90度のL字型(ハの字)となるようにセッティングを行う事を基本形として踏まえ、 自分自身の特徴を元に微調整を行うようにしてみて欲しいと思います。



■■□ 距離と向きを踏まえた応用

>>> 会議の席上/議長として会議運営を円滑に進める

いくつも席が空いているにも関わらず自分の正面に座る人がいたら、自分の意見に対し、反論される可能性が高いため、あらかじめ対抗策を考えておく。
自分の意見と同じ意見が出されたら、他人に発言をされる前にすぐさま賛成意見を述べ、賛成意見を増やしておく。 (反対意見を言われてしまってから賛成意見を増やすとなると、かなり手間がかかる)
隣同士の私語があれば、リーダーシップが強すぎる可能性があるので、少し参加者の発言に耳を傾けるようにする。 正面の人と私語を始める人がいる場合は、リーダーシップが弱すぎる為、会議全体を力強く引っ張るようにする。

>>> 上司に仕事のミスの報告を行う

正面に立っての報告は、逆鱗に触れる危険性大!目指すは、斜めの位置から!

>>> 大好きな相手に意を決しての真剣な告白

斜めの位置で告白を行い、言葉の余韻が残ったまま正面に向き合い見つめる
   (商談でも同じ使い方が描けます)



・・・限りなく応用は出てくるも、チョッと長かった!ですね・・・

ヒューマン・スペースを意識して、スティンザー効果と相手への向き合い方を考察してみる事により、 試験の対応は元より、日常生活における対人関係をより円滑に進めることが可能になります。


相手との「距離と向き」・積極的に試してみませんか!




career wing
仕事を通じて、“自分「らしさ」の実現”を追求する、キャリア形成支援のトータル・ソリューション・サービス
ヨシダの徒然 < 編集後記>

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Career wing  tadashi yoshida


特定非営利活動法人 キャリア・コンサルティング協議会 会員
特定非営利活動法人 日本キャリア開発協会(JCDA)所属

厚生労働省指定キャリア・コンサルタント能力評価試験合格
キャリアカウンセラー

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