友人と一緒にオフィスに訪れてくれた大学4年になったばかりの彼は、将来自分が目指したい仕事の方向性を持っていました。その仕事に就いた時の自分の夢を未来をキラキラとした表情でとても楽しそうに語ってくれました。

友人がエントリーシートの加筆修正を行なっている時間を使い雑談をしていたのですが、「方向性がハッキリしているなら、就職活動に不安はないね」この言葉を境にして、彼の表情は、何とも辛そうに一転したのでした。

彼の表情を曇らせた理由は、大学で実施した「自己分析」の結果が、自分の目指そうと思っていた方向性と大きくズレた内容であり、これ以降、自分自身に対する疑問や不安が膨らみ、就職活動に際してブレーキになってしまっている。とのモノでした。


友人の付き添い的に訪れた彼とは、その日にまとまった時間を取る事が出来ず、後日、ゆっくり話しをしようと約束をしました。
それまでにメルマガに自分の思いを綴るので、時間があれば一度読んで欲しいと伝え、書き上げたものが前回のメルマガでした。

 


実は、この彼以外でも大学のキャリアカウンセリングがある種の切っ掛けとなり、就職活動の歩みを止めてしまったクライエントとの出会いも過去に何人かありました。

 自己分析が出来ていないから、就職活動を開始できない
 30歳・40歳・50歳の自分が全くイメージできず、キャリアデザインが描けない
 自分自身を活かせる職業・会社がない
 カウンセリングの時間が短すぎて毎回毎に指導内容に戸惑いが増えてしまう  etc


これらは結して、大学のキャリアセンターにご勤務されるキャリアカウンセラー諸氏の活動を否定しているのではありません。
また、前回のメルマガの内容も、キャリアカウンセリングそのものを否定しているのではありません。


キャリアセンターにご勤務されるキャリアカウンセラーの総数に対し、担当する生徒(クライエント)数のアンバランスとも思える情況、物理的な時間や組織としての制約等々のなかで、ひとり々への行き届きの部分における大きな無理や、カウンセラー個々に生まれているジレンマがあることも、小社の学校関係者から何度も聞かされていました。


クライエントへの最適な効果を考えた時に、厳しい勤務の状況下の中にあっても、キャリアカウンセリングを通じて多くの学生諸子が「自己キャリア」を深く考え、これを切っ掛けに社会への接点を持ち、歩みを遂げていることをも重々承知しているつもりです。

その上で、いま一度、若年者(学生)のキャリアカウンセリングにおける、原点・基本・目的・手段等を見つめる時期にあるのではないかと強く感じるのです。


キャリアカウンセリングは、あくまでも個人的には、手段であると踏まえています。
キャリアカウンセリングの目的は、クライエントが「自分らしさを求め・行動に移せるようになる」ための切っ掛け作り。だと思っています。
語弊を恐れずに極論を言うならば、キャリアカウンセラーとしてのマインドを忘れずに目的の達成が可能なら、単純な話し相手としてでも、コーチやメンターとしてでも、全く構わないと思っています。


ただし、主客逆転のキャリアカウンセラーの満足感を満たすための支援だけは、結してしてはならないのだと思うのです。
キャリアカウンセラーとして、あまりにも安易に自己分析や適性・適職診断等を実施していないのか。との思いに至るのです。
その結果が、クライエントにとって人生への影響力を少なからず持ってしまうことに意識が希薄なのではないかと感じたのです。
無意識の行為でもクライエントの人生に作用してしまう行為の関係であることにもっと々注意を払っていかなければならないのだと自戒も込めて思うのです。


「自己実現を遂げる・自分らしく歩む」ことは、昔も今も何も変わりはないことだと思います。
ただし、現在の若年者を取り巻く社会情勢や環境変化は、誰も経験のないほどのとても大きなものだと思います。
この時代だからこそキャリアカウンセラーとしての機能・職責が果たせるのだとも思います。
しかし、彼等のなかに「自分探し」の名の下に、キャリアカウンセリングへの依存心や、自己キャリアを築き上げるための行動に対して、逃げの意識を芽生えさせてしまっているならば、早い時期に対応修正し、認識を切り替えていかなければならないのと思うのです。


リアリティ
現実の社会のなかで「生きる・働く」ということはどういうことなのか

シュミレーション
不確実性の時代に描く、キャリアデザイン・キャリア形成の意義への理解はあるのか

コンサルテーション
上記を踏まえ「自己分析・適性/適職診断」等は、何のために・いかにあるべきものなのか


上記は、キャリアカウンセラーにとっては、基本中の基本事項なのだと思いますが、クライエントの視線や感受情況から、もう一度、キャリアカウンセリングの現状を振り返り・見つめ直してみることが必要なのではないかと強く思い、学生の彼に・自分自身に・若年者支援に当たられているキャリアカウンセラー諸氏に向けての私見が前回のメルマガとなりました。

 


先週のメルマガ発行後、彼は共働きでいらっしゃるご両親に自己分析の結果と、彼が考える将来のキャリプランについて、今現在の心境と併せて初めて相談をしました。

        「自分が必死になって頑張れる仕事を選べば良い」
        「結して途中で投げ出したり、諦めたりはするな」

父親に初めて誘われて行った近所のスナックで言われた言葉だとの事でした。

 

「自己分析の結果に捕われずに、自分が目指したかった方向にもう一度、向かっていきたいと思います」

この翌日に晴々とした本当に嬉しそうな声で自分の決心を電話で伝えてくれました。

 

 


彼が伝えてくれた決心ほど強い気持ちを、自分のキャリアカウンセリングを通じて導く事が出来たのかは分かりません。
キャリアカウンセラーを仕事としている限りは、誰に対しても一定以上のアベレージを出さなければならないと思っています。

 


キャリアカウンセリングを通じて生まれてしまった彼の悩み。

その裏側にある現実を見つめ・考え・行動することが、

唯一自分に出来ることだと胸に刻みました。

 


Career wing    tadashi yoshida
特定非営利活動法人 日本キャリア開発協会(JCDA)所属
厚生労働省指定キャリア・コンサルタント能力評価試験合格 キャリア・カウンセラー

 


【後記】

救急医療の現場で、溢れる患者への最大限の受入対応ができるようにと、総合検診医と専門医のコラボレーションとワークフローの改善により、あらたな救急医療体制が構築され、多くの患者が救われつつあるように、キャリア形成支援の現場においても、新たな対応モデルの構築を進めても良いのかなぁと思ったりもします(まだ時期尚早ですかねぇ)


前回のメルマガ発行後、キャリアカウンセラーなのにキャリアカウンセリングを否定するのか、その真意は何かとお尋ねやお叱りを何人かの方々よりメールで頂戴いたしました。
お伝えし切れているのか分かりませんが、そのアンサーとして今回のメルマガを綴らせて頂きました。


真正面に向き合った時の父親・母親の言葉には、やはり凄い力が込められるものだと今更ながら実感しました。