平成20年度、政府の「成長力底上げ戦略」の一環として『ジョブ・カード制度』 がスタートしました。
同制度の推進に向けて、厚生労働省委託事業として(財)社会経済生産性本部が、「ジョブ・カード講習」を全国約50箇所において実施するとのことで、その初回である、4月21・22日の中央研修(2日間)に先日、参加して参りました。

今回は、ジョブ・カード制度:講習会に参加して見えてきた、発表された報告・関係書のみでは理解し難かった諸点について、ポイントをまとめてみました。


はじめに

中央研修(2日間)の実施は、現在のところ今回のみ予定されているようで、以後の予定の有無についてはハッキリとは分かりません。
今後においても実施されることを想定し、あくまでも今回の実施状況として以下を記します。

 【テーマ】

  1日目:「ジョブ・カード制度の目的・仕組み・効果的に機能させる実務力を身につける」
  2日目:「ジョブ・カード制度の説明やカード作成を指導する力を身につける」


ジョブ・カード制度に係るための受講修了登録証の発行を受けるには、地方研修と名付けられた、1日(目)の「ジョブ・カード講習」への参加のみで問題ありません。

2日目は、一般求職者はもとより、ジョブ・カード制度への関与を希望する、キャリアコンサルタントの方々へ、「制度解説のレクチャー実施希望者のための実践講座」との位置付けなのかと思っていましたが、実際には、テーマに対するファシリテーション(スキルUP)の方法論について、1日目の振り返りをもとに、実施されたというものでした。

2日目の講習修了者に於いては、1日講習のみの方々と「付与される管理ナンバーに違いはある」とご説明がありましたが、実務推進上の実態差は特にないようです。
よって、以後の募集・参加の際は、1日目の理解を深める付加価値付けの時間として捉え、検討されてみたら良いのかと思います。


       「ジョブカード講習」サイトはこちらをご覧下さい。  
        ジョブ・カード制度の諸事項はこちらを参照下さい。

 


 ジョブ・カード制度・講習:参加レポートのまとめ 


ジョブ・カード制度に携わるための資格

上記にも記しましたが、ジョブ・カード制度に関わるキャリアコンサルタントは、(財)社会経済生産性本部が実施する「ジョブ・カード講習」を必ず受講しなければなりません。
ジョブ・カード講習」受講後、制度の推進に活用される受講者リストへの登録に同意した場合、『登録証』 が発行され、はじめて業務に携わることが出来るようになります。


関係機関

  制度推進機能(厚労省委託先)

   (財)社会経済生産性本部 : 社会労働部内 「ジョブ・カード講習」事務局 

  実施推進先(20年度 地域ジョブ・カードセンター及び拠点)


全国47都道府県の商工会議所(地域ジョブ・カードセンター及び拠点商工会議所)がこれにあたります。
一部の地域では、地域ジョブ・カードセンター(中心機能)の設置のみで、拠点商工会議所を未設置の場所もあり、全国各地で違いがあります。
上記の他にハローワーク・ジョブカフェ・民間有料職業紹介事業者においても同様の活動実施が行われるとのことです。


キャリアコンサルタントの主な役割

  1.初期:キャリアカウンセリング(キャリアコンサルティング)の実施
  2.職業経験・能力のたな卸し実施〜履歴書・職務経歴書の作成指導・補助
  3.職業能力開発プログラム受講推薦の判断
  4.ジョブ・カードの完成のための個別項目の確認・承認・作成(該当欄)


活躍の場・報酬

民間有料職業紹介事業者も含めて、ジョブ・カード制度にキャリアコンサルタントとして係りが生まれた場合でも、その活動に対しては、国からの活動助成金や補助金等の交付は一切ありません
あり得るのは、ジョブ・カード制度の実施・推進先と何らかの労働契約の締結により、労務提供の対価報酬として支給されるモノが全てとなります。

・公共機関等からの実施要請があった場合、対価報酬額等は、個別に設定されるものと思われます。

・有料職業紹介事業者は、収支モデルとしては描き難いため、積極的な実施は経営的に難しいかと思われます。

・講習修了した登録者が、無/有料サービスとしてジョブ・カードの発行・運用に携わることは任意で可能です。


責任

・キャリアカウンセリング(キャリアコンサルティング)の実施に際しては、個人情報が記載された写真入りの登録証をクライエントに明示しなければなりません。

・ジョブ・カードの各書類に於いては、実施対応を行なったキャリアコンサルタントの氏名・所属・電話番号・ジョブカード講習修了番号、および、実施日等の情報記載が求められています。

・職業能力形成プログラムへの推薦判断・最終的な許否判断・記載情報の詐称、企業側からの提訴等々については、基本的に法的責任の発生は無いとのことです。

・厚生労働省指定試験の合格証明書等の提出を求められるため、特に女性に関して、活動名称等の使用では、登録証の発行が出来ないであろうことから、使用は難しいかと思われます。

・クライエントに対しては、毎回同じカウンセラーが対応するとは限りません。


実務ポイント

・ジョブ・カードの内、特に「様式2.職務経歴 様式5.キャリアシート」の作成が重要ポイントになります。

・職業形成支援プログラムへの推薦是非の判断は、完全にキャリアコンサルタントの判断に委ねられることになります。

    ジョブ・カードの全体構成

        様式1.総括表1.2.(履歴書左右ページに該当)
        様式2.職務経歴
        様式3.学習歴・訓練歴
        様式4.免許・取得資格
        様式5.キャリアシート
        様式6.評価シート  (職業能力訓練実施:企業側記載)


【様式2.職務経歴】

パート・アルバイト等の就業歴も含んだ記載が対象になることから、就業希望先の企業・業界に馴染む内容で、エンプロイアビリティを高める記載表現の使用と職業能力の洗い出し・棚卸しが求められるかと思います。

 

【様式5.キャリアシート】

キャリア形成上の課題、支援のポイント」「キャリア意識の形成プロセス」「その他の特記事項」以上の3点について、記載が求められます。
キャリアカウンセリング(キャリアコンサルティング)のまとめとして、その場で直ぐに記載を行い、クライエントにジョブ・カードをお渡しする必要があるため、限られた時間内でクライエントとのやり取りに適正な合意形成が成されていないと、記載そのものが出来ないばかりでなく、場合によっては、種々の不信感を生んでしまうことの懸念もあり得ます。


参考までに、厚労省による実際のキャリアコンサルティングの実施検証テストの結果においては、74分/1回(平均)とのことでした。
ひとりのクライエントに対する支援の対応時間・回数等は、実施環境毎に違いがあるかとは思いますが、この数字をもとにするならば、支援対応には、相当にコア実務に集中していかない限り、実行は難しいかと思われます。


ジョブ・カード制度の目的・メインスキルとして、キャリアコンサルタントに求めらるのは、前回のメルマガの通り「職業支援」そのものです。
非常に僭越な物言いになり恐縮ですが、キャリアカウンセラーとして、「職業支援」に関する自分自身の業務に自負と責任が持てぬ場合は、敢えてこれに関与をしないとの判断も必要なのではないかと思います。


実績数値の報告

キャリアカウンセリング(キャリアコンサルティング)の有効性の判断指標になるであろう、かなり詳細な12項目について、実施月の翌10日までに「ジョブ・カード関係相談実施結果報告書」の提出が求められています。


その他

ジョブ・カードは、今までの履歴書・職務経歴書のフォームに置き換わって、新たに国が書式を設定したと捉えることも出来るかと思います(実態上)
職業能力形成プログラムの受講とは別に扱う事が出来るため、今後の就職活動支援の際は、ここにあるフォームおよび項目をマスト事項として捉え、職業支援の際に活用していくことを検討した方が、クライエントに取っても将来的なロスが少ないのかと思います(企業側の認知向上・理解が前提)。

国・厚労省の推奨として、大学等の教育機関に対して、国内基準としての書式統一やキャリア教育の際に利用促進を行う予定の有無について、厚労省サイドの言質は取れませんでしたが、本制度の進捗状況によっては、必然的にその流れになるのではないかと予測致します。


職業訓練の実施先が評価記載を行う、「様式6、評価シート」の評価項目については、入社前・新入社員研修におけるマストポイントとして捉えることも出来るのかと思います。
学生の就職活動支援等においても、評価項目をチェックデジットとして置き換え、各項目に対して課題形成やブラッシュUPに転用することも検討が出来ます。


勝手な思いではありますが、キャリアコンサルタントの国家資格化と併せて、国内のキャリアカウンセリング(キャリアコンサルティング)の大きなターニングポイントになることだと思います。
ジョブ・カード講習の参加には、費用も掛かりませんし、この変化に身を寄せてみるのも十分な価値があることではないかと思いました。

 


徒然なる所感

講習会にて種々の説明を受けたジョブ・カード制度の運用面については、本当に残念な事ではありますが、あまりにも詳細の詰めがなされていないことに驚きを隠せませんでした。
正直に言って個人的には、国・厚生労働省に対する、憤り・怒り・諦め等々 ある意味、ネガティブな感情を抱いてしまう自分もいました。
ただし、これは、対人援助事業者の立場から湧き上がるモノだとも思っています。


しかし、例え運用上の問題が多くても、キャリアカウンセリング(キャリアコンサルティング)の実施結果として、多くの方々のキャリア形成・職業支援のプラス効果・結果に繋がることは疑う余地のないことかとも思いますし、制度の背景や理念にも理解と納得はしています。

実施目標数的にも公的機関等に於ける、キャリアカウンセラー(登録者)の採用予定が増加するかと思いますし、キャリアカウンセリング(キャリアコンサルティング)やキャリアカウンセラー(キャリアコンサルタント)の社会認知もこれにより広く浸透していくと思いますし、当然に活動機会も増えていくと思ってます。

例え現状に不備があったとしても、既に国が決定した施策ですので、よっぽどのことがない限りは、現状の形で3年間は走らざるを得ません。


この段においては、国内に訪れたこの大きなプラスの変化の一歩にのみ目を向け、全ての問題に関しては一旦、心も目も感情も前向きに横に置き、多くの改善課題は、クライエント・キャリアカウンセラー、これに携わる関係者の全てにとって、より良い形となるための制度運営の第二フェイズに向けた、知恵の集積期間と考えて歩んでいかなければならないのだと思います。

 


採用面接での大切な要素のひとつは、「就業への取り組み意欲と姿勢」。
求め・与えられた環境や機会のなかでどれ位の自己発揮が出来るのか。


ジョブカードの取得者は、

当初3年間で総計50万人程度、5年間で100万人程度を目標

として設定されています。


5年間で100万人の笑顔に向き合えるなんて、メッチャ素敵なことですよね。

クライエントの笑顔を糧として、ジョブ・カード制度の歩みに寄り添っていきましょう!

 


Career wing    tadashi yoshida
特定非営利活動法人 日本キャリア開発協会(JCDA)所属
厚生労働省指定キャリア・コンサルタント能力評価試験合格 キャリア・カウンセラー

 


【後記】

小社においては、どのように対応していくか愚行を繰り返しましたが、ジョブ・カード制度自体にまだ認識が浅いであろうことから、全段階として、一般クライエント・講習参加を考えるキャリアカウンセラー諸氏に対して説明会の実施を行っていく予定です。
HP「Wing column」にてご案内をしていきますが、個別のお問い合わせも受け付けさせて頂きますのでお気軽にご連絡下さい。

人生も半ばを過ぎたせいなのか、最近あまり体調が芳しくありません。
かといってGW満喫という訳にもいかず・・・
フォーカシングにより、毎日、身体と対話をしているのですが、変化を受容れることの難しさをここでも感じたりしています。
カウンセリングは、終わりなき旅・・・正しくと思ったりするのでした。

時を同じくして、厚労省が経済成長に弾みをつける戦略として検討している「新雇用戦略:トライアル雇用制度」の原案を自民党に示したようですね。
今後3年間を雇用対策の重点期間に設定し、企業の試験的な雇用の拡大などで、2010年までにフリーターの数をいまより11万人少ない170万人に減らすといった目標とのことです。
やはり変化の時なのかと、強く感じるニュースでした。