黒田裕樹の歴史講座・メルマガ編

黒田裕樹の歴史講座・メルマガ編 Vol.046 中国とロシアの動向(前編)


カテゴリー: 2017年02月22日
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    黒田裕樹の歴史講座・メルマガ編
      Vol.046  H29.02.22

        http://rocky96.blog10.fc2.com/

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こんにちは!黒田裕樹です。
通史でたどる歴史講座の「大正編」、今回は「中国とロシアの動向(前
編)」です。一般的な歴史教科書において悪名高い「二十一箇条の要求
」ですが、その真実はどのようなものだったのでしょうか。

(※文章中の「◎」は、教科書において太字などで強調された重要語句
です。文末にもまとめて掲載しています)

「中国とロシアの動向(前編)」
http://rocky96.blog10.fc2.com/blog-category-518.html

我が国は第一次世界大戦において、イギリスの要請に応えるかたちでド
イツに宣戦布告し、その結果として、ドイツが租借(そしゃく、他国の
領土の一部を一定の期間を限って借りること)していた青島(チンタオ
)の攻略に成功しましたが、その後に中国国民党の袁世凱(えんせいが
い)政府が、我が国が青島から撤退することを要求してきました。

正規の戦争において獲得した権益の返還を求められたのであれば、相手
国に対してその代償を求めるのは当然の権利です。かくして、我が国は
大正4(1915)年1月に、袁世凱政府に対して、中国における満州
や内蒙古(ないもうこ)などの、日本の権益の強化と保全を目的とした
内容の文書を提出しましたが、これが後に「◎二十一箇条の要求」と呼
ばれるようになりました。

提案した主な内容は、山東省におけるドイツの権益を日本が継承するこ
と、南満州や東部内蒙古における日本の優越権の承認、旅順(りょじゅ
ん)・大連(だいれん)および南満州鉄道の租借期間の延長、日中合弁
事業の推進などでした。

中国との交渉は難航の末に、我が国が最後通牒(さいごつうちょう)を
出したこともあり、同年5月に提案の大部分を中国に承諾させましたが
、これら一連の動きが諸外国にねじ曲げられて伝えられたことが、我が
国の立場を後々まで悪化させる原因となってしまったのです。

中国に対する我が国からの提案内容そのものは、当時の国際情勢から考
えても不当な要求をしたとは決して言えず、また提案を受けた側の袁世
凱自身も、大筋では妥当(だとう)な内容であると考えていました。

しかし、少しでも我が国からの干渉を逃れたいと思った袁世凱は、極秘
のはずだった提案内容を外部へ漏(も)らしたほか、我が国からの提案
を「要求」と捏造(ねつぞう)して、我が国の「不当」を喧伝(けんで
ん、盛んに言いふらすこと)しました。

この動きに対して中国世論は敏感に反応し、袁世凱が「要求」を受けい
れた5月9日を「国恥(こくち)記念日」としたほか、以後の排日運動
の活発化をもたらしてしまいました。

しかも、こうした中国の「捏造」による悪影響が、日中両国間のみなら
ず、海外においても「欧米列強がヨーロッパ戦線にかかりきりになって
いたことに乗じて、日本が中国に権益拡大要求を強引に押し付けた」と
いう印象が定着してしまったのですが、その原因を中国とともにつくっ
た国こそがアメリカだったのです。

嘉永(かえい)6(1853)年にペリーが我が国に来航して以来、ア
メリカは我が国に対して一定の理解を示し続けた国でした。だからこそ
、我が国は日露戦争の終結へとつながったポーツマス条約の締結を、ア
メリカのセオドア=ルーズベルト大統領に斡旋(あっせん)してもらっ
たのです。

しかし、我が国が日露戦争に勝利したという事実は、アメリカをして我
が国に警戒感を植え付けせしむ結果をもたらしましたし、さらに戦争後
に鉄道王ハリマンの提案を我が国がはねつけたことも、満州など東アジ
アでの権益を狙っていたアメリカの対日感情の悪化につながりました。

かくして、アメリカは我が国に対して敵意をむき出しにするようになり
、アメリカ本土における日本からの移民に対して厳しい政策を行うよう
になったほか、中国が喧伝した「二十一箇条の要求」を「利用」して、
アメリカ政府が中国を支援することを表明したり、アメリカの新聞各紙
もこぞって我が国を非難したりしました。

これらの「攻撃」に対して、我が国は明確な対策を講じることが結局は
できず、我が国に関する「意図的につくられた不当なイメージ」だけが
独り歩きする結果を残してしまったのです。こうなった原因の一つとし
ては、元老(げんろう)がその威厳によって我が国を支えていた明治の
頃と比べ、政党が自己保全のために政争を最優先することが多かった大
正時代には、軍事や政治の安定したバランスが崩れていたことが挙げら
れます。

それにしても、海外からの謂(い)われなき非難に対して、抗議の姿勢
を明らかにしないことが、いかに自国にとって命取りになるかというこ
とがよく分かる実話ですね。現代においても「南京大虐殺」や「従軍慰
安婦」といった荒唐無稽(こうとうむけい、言うことがでたらめで根拠
のないこと)な話だけでなく、現実に危機となっている「北方領土」「
竹島」あるいは「尖閣(せんかく)諸島」といった領土問題への杜撰(
ずさん)な対応など、枚挙(まいきょ)に暇(いとま)がないのが残念
な話ではあります。

さて、1916(大正5)年に袁世凱が急死すると、中国は軍閥割拠(
ぐんばつかっきょ)の時代となり、多くの軍閥が独自の活動を見せるよ
うになりましたが、第二次大隈重信(おおくましげのぶ)内閣の後を受
けた寺内正毅(てらうちまさたけ)内閣は、軍閥のうち北京政府に積極
的に関わろうとしました。

寺内内閣は西原亀三(にしはらかめぞう)を北京に派遣(はけん)して
、袁世凱の後継となった段祺瑞(だんきずい)政権に対して巨額の借款
(しゃっかん)を与えました。これを◎西原借款といいます。

借款の総額は、当時の金額で約1億4,500万円にものぼりましたが
、寺内内閣がこれほどまでの巨額を北京政府に貸し付けたのは、中国に
おける政治・経済・軍事など、様々な影響力を拡大しようとする思惑(
おもわく)があったと考えられています。

しかし、その後に借款の大半が償還(しょうかん)されずに焦(こ)げ
ついてしまったことで、我が国はほとんど成果が挙げられなかったどこ
ろか、北京政府と対立していた南方革命派の反感を買ってしまい、むし
ろ反日の風潮が拡大してしまいました。

西原借款は、我が国の多額の財貨を消失させたばかりか、かえって中国
における反日感情を高めるという散々な結果となってしまいましたが、
我が国の歴史教科書の多くが、なぜか借款が大失敗に終わったという事
実を書いていません。約100年前の中国への投資が、結果として我が
国を苦境に陥(おちい)らせたという史実を学ぶことは、今もなお続く
中国(=中華人民共和国)への莫大な投資に対する「貴重かつ重要な教
訓」になるはずですが…。

日露戦争後に国交を修復した我が国とロシアは、明治40(1907)
年から三次にわたって日露協約を結び、お互いの利害関係を調整しまし
たが、第一次世界大戦で両国が共に連合国側に属したことによって、関
係はさらに深くなりました。

大正5(1916)年、我が国とロシアは第四次日露協約を結び、極東
における両国の特殊権益の擁護を相互に再確認したほか、両国の軍事同
盟的な関係を強化しました。また、翌大正6(1917)年にはイギリ
スとの間に覚書を交わして、山東省におけるドイツの権益を我が国が継
承することを承認させました。

一方、我が国の中国進出に対して最も警戒し、かつ批判的であったアメ
リカとの間においても、同じ大正6(1917)年に、前外務大臣の石
井菊次郎(いしいきくじろう)とランシング国務長官との間で◎石井・
ランシング協定が結ばれ、中国の領土保全・門戸開放の原則と、中国に
おける我が国の特殊権益の保有とを確認しあいました。

しかし、この協定が結ばれた当時は、アメリカが第一次世界大戦に参戦
している時期であり、アメリカが我が国と協定を結んだのは、自国が参
戦中に、中国大陸に対して日本が余計な手出しをしないように抑え込も
うと考えたのが主な目的でした。それが証拠に、この協定は大戦終了後
の大正12(1923)年に早くも破棄(はき)されています。

このように、我が国とアメリカとの関係は常に不安定であり、資源を持
たない我が国にとって生命線であった満州など中国における権益を、ア
メリカが脅(おびや)かすようになりましたが、これらの権益は、「あ
る大国」が滅亡したことによって、さらに危機的な状況を迎えてしまう
ようになったのです。

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  今回の重要語句(教科書において太字などで強調されたもの)

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◎二十一箇条の要求
◎西原借款
◎石井・ランシング協定

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  最後までお読みいただき、有難うございました。
  次回(Vol.047)は3月1日に発行します。
  「中国とロシアの動向(後編)」

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