黒田裕樹の歴史講座・メルマガ編

黒田裕樹の歴史講座・メルマガ編 Vol.088 行きづまる日米交渉(その2)


カテゴリー: 2017年12月13日
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    黒田裕樹の歴史講座・メルマガ編
      Vol.088  H29.12.13

        http://rocky96.blog10.fc2.com/

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こんにちは!黒田裕樹です。
通史でたどる歴史講座の「昭和・戦前編」、今回は「行きづまる日米交
渉(その2)」です。そもそも世界情勢というものは、今も昔もほんの
わずかな、それもはるか彼方で起こった小さな出来事によって、それま
での常識が根底から覆されてしまうことが日常茶飯事であることをご存
じでしょうか。

(※文章中の「◎」は、教科書において太字などで強調された重要語句
です。文末にもまとめて掲載しています)

「行きづまる日米交渉(その2)」
http://rocky96.blog10.fc2.com/blog-category-550.html

御前会議の終了後、対米関係の悪化に苦慮していた近衛文麿(このえふ
みまろ)首相は、事態打開のためにフランクリン=ルーズベルト大統領
と直接会談しようとしました。駐日大使のグルーは首脳会談の早期実現
を本国に強く訴えましたが、大西洋憲章で対日戦争に関する協議を行っ
ていたアメリカはこれに応じず、昭和16(1941)年10月2日に
会談の拒否を我が国に通告しました。

ところで、そもそも世界情勢というものは、今も昔もほんのわずかな、
それもはるか彼方で起こった小さな出来事によって、それまでの常識が
根底から覆(くつがえ)されてしまうことが日常茶飯事です。

鎖国の状態が長く続いて平和ボケしていた我が国が、幕末に無理やり開
国させられ、不平等条約を押し付けられたことは大きな屈辱(くつじょ
く)でしたが、我が国はその悔しさをバネとして、血のにじむような努
力によって近代化を成し遂(と)げ、開国からわずか半世紀で世界の一
等国にまで成長しました。

短期間で急成長した我が国を支えたものは何だったのでしょうか。無論
、そこには三国干渉の際に見られたような「臥薪嘗胆(がしんしょうた
ん)」をはじめとする精神論もあったでしょうが、何よりも重要だった
のは、「世界の中の日本の位置付けを正確に分析し、我が国の発展のた
めにあらゆる知恵を絞る」という地道な努力でした。

人間というものは、一般的に戦争など目に見える大きな出来事に心を奪
われがちですが、一つの戦闘行為の裏には数えきれないほどの下準備や
、あるいは謀略などが隠されているものです。それは我が国においても
例外ではなく、動乱の戦国時代を最終的に制した者は、単なる戦上手だ
けではなく、ありとあらゆる謀略を使ったうえで、200年以上の長き
にわたる平和を築き上げた徳川家康(とくがわいえやす)でした。

また、開国など様々な影響を受けた幕末の混乱期においても、幕府や薩
長、あるいは朝廷などの内部で様々な人物が蠢(うごめ)き合い、血で
血を洗う国内での勢力争いを繰り広げる一方で、日本の植民地化を狙っ
た外国による過度の干渉を防ぎきったことにより、明治新政権を誕生さ
せることに成功しました。

さらには明治期においても、超大国だったロシアを内部から崩壊させる
べく、明石元二郎(あかしもとじろう)が革命の裏工作を行ったことな
どによって日露戦争を勝利に導くなど、我が国には、生き残りのために
様々な工作や謀略を駆使してきたという「もう一つの歴史」が存在して
いたのです。

しかし、昭和に入った頃からの我が国においては、敵国と化したアメリ
カやイギリス、あるいはオランダなどを離反あるいは分断させるような
工作や謀略が、政府によって熱心に研究されたような形跡は今も見つか
っていません。

戦国時代や幕末、あるいは明治期において数々の工作や謀略を成功させ
てきた我が国が、なぜこの時期になって先人の経験を生かすことができ
なかったのでしょうか。

その理由として考えられることは、そうした先人の智恵を活用するだけ
の器量、あるいは度量を当時の指導者が持ち合わせていなかったのでは
ないか、ということであり、もっと厳しい言い方をすれば、「当時の指
導者たちは表向き優秀であっても、百戦錬磨(ひゃくせんれんま)の先
人たちに比べればはるかに劣っていた」という見解が成立します。

また、そうなってしまった流れとしては、現場での経験よりも筆記試験
を中心とした「机上の考え」が優先される傾向があり、これは現代にお
いても全く変わっていません。

先人の経験を日本民族の智恵として生かせなかった理由は何であったの
かということは、現代の私たちにも突き付けられている重要な課題では
ないでしょうか。

頼みの綱だった首脳会談が幻に終わり、対米交渉の外交期限も近づいた
昭和16(1941)年10月12日、近衛首相は◎東條英機(とうじ
ょうひでき)陸軍大臣らと話し合いましたが物別れに終わり、同月18
日に第三次近衛内閣は総辞職しました。

ところで、これまでに述べた歴史の流れを振り返れば、「アメリカが我
が国を大東亜戦争に追い込んだ」という見方も成立しそうですが、これ
は「日本が一方的に侵略した」という「自虐史観」と表裏一体をなすも
のでしかありません。

我が国は、最終的にアメリカと大東亜戦争を戦うことになりましたが、
実はソ連と戦争する可能性もあったことをご存知でしょうか。その分水
嶺となったのは「北進論」と「南進論」の選択であり、またその決め手
となったのが、「ソ連によるコミンテルンの謀略」でした。

当時の軍部や国民から多くの期待を背負って誕生した近衛内閣でしたが
、国家総動員法など国家社会主義に基づく様々な施策(しさく)を行っ
て国民への統制を強めた一方で、外交面においては南進論を押し進め、
日米交渉を暗礁(あんしょう)に乗り上げさせたのみならず、対米開戦
を行うかどうかという重要な政治的判断を行うこともなく、最終的に「
政権を投げ出す」という無責任な形で内閣崩壊となったのです。

第三次近衛内閣の後任には、陸軍大臣だった東條英機が首相に選ばれま
した。この背景には、対米開戦の最強硬派であった陸軍を抑えるために
は、そのトップたる東條こそがふさわしく、また東條自身が天皇のご意
向を絶対視する人物であったことから、昭和天皇が願っておられた戦争
回避に最も有効であろうという思惑があったとされています。

こうして誕生した東條内閣でしたが、新内閣発足と前後して、日本国内
でとんでもない謀略事件が発覚していました。いわゆる「◎ゾルゲ事件
」のことです。

昭和16(1941)年秋、特別高等警察(=特高)は、ソ連のスパイ
組織が日本国内で諜報活動並びに謀略活動を行っていたとして、ゾルゲ
や尾崎秀実(おざきほつみ)らを逮捕しました。

ゾルゲはドイツの新聞記者として昭和8(1933)年に来日し、ドイ
ツ大使の信頼を得るなどして巧みに様々な情報をスパイ活動によって入
手するようになりました。また、近衛文麿のブレーンとして活躍した尾
崎秀実とも親しくなり、両者は連携してソ連(=コミンテルン)のスパ
イとして暗躍するようになりました。

我が国が日華事変(=日中戦争)の泥沼化や対米交渉の行きづまりなど
によって、北進か南進かの決断を迫られた際にも、ゾルゲと尾崎は協力
して南進へと国論を傾けさせ、北進によって、ソ連がドイツと我が国に
よって東西から挟撃(きょうげき)されるという事態を防ぐなど、我が
国の重要な政治的あるいは外交的決断の多くに関わったと考えられてお
り、その影響は極めて大きかったと言わざるを得ません。

なお、尾崎は昭和16(1941)年10月14日に、ゾルゲは同月1
8日にそれぞれ逮捕され、二人とも後日に死刑に処されていますが、二
人の逮捕が第三次近衛内閣の総辞職(10月18日)とほとんど同じ時
期であることは、単なる偶然なのでしょうか。

諜報活動が明らかになった場合、その当事者、すなわちスパイにすべて
の責任を被(かぶ)せてしまうことは歴史上よくある話で、実際には当
時の国民が知っていた事件の内容よりもはるかに大がかりなものであっ
たのは間違いないことですが、いずれにせよ、ゾルゲ事件の発覚が東條
内閣の成立時と重なっていたということが、その後の外交交渉が極めて
難しいものであることを暗示していたと言えるでしょう。

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  今回の重要語句(教科書において太字などで強調されたもの)

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◎東條英機
◎ゾルゲ事件

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  最後までお読みいただき、有難うございました。
  次回(Vol.089)は12月20日に発行します。
  「行きづまる日米交渉(その3)」

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◎発行責任者:黒田裕樹(大阪府内の公立高校非常勤講師)

◎公式サイト:黒田裕樹の歴史講座
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