ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

【嶌信彦】時代をよむ 中央アジア、地理的優位を生かせるか ―タジキスタン、カザフスタンを訪れて―


カテゴリー: 2018年01月19日
2018年 1月 19日 vol.207

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中央アジア、地理的優位を生かせるか
―タジキスタン、カザフスタンを訪れて―
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 中央アジア5カ国には長い間、関心を持っていたが、タジキスタンだけはまだ訪れたことがなかった。それが2017年11月、国際交流基金(JF)の文化使節の一員として同行させてもらうチャンスに恵まれた。私は日本ウズベキスタン協会の会長を務めているためウズベキスタンには過去数度訪れているし、他のキルギス、カザフスタン、トルクメニスタンも訪問したことはあるが、タジキスタンには縁がなかったのでよい機会だった。

【ペルシャ系イスラムの小国・タジキスタン】
 タジキスタンは、東は中国、北はキルギス、西はウズベキスタン、南はアフガニスタンと接し人口870万人、面積14万3100平方キロ(北海道の約2倍)、中央アジアの中ではキルギスと並んで最も小さな国だ(キルギスは面積が日本の約50%ながら人口は600万人)。宗教はイスラム教スンニ派だが、他のトルコ系の国と違ってペルシャ語系の言葉を話す。
元々、古代からイラン系民族が居住してきた土地であり、9世紀後半にはイラン系のサーマン朝が起こり、13世紀になってモンゴル、14世紀にはティムール朝(ウズベキスタン)の支配を受け、16世紀以降はウズベク系王朝の支配下にあった。19世紀後半からはロシア領となるなど複雑な歴史的経緯を持つ国だったが、1991年のソ連の崩壊でタジキスタン共和国として独立したのである。

 しかし、独立直後から共産党勢力とイスラム勢力の内戦状態が長く続き、最終和平合意が成立したのは1997年6月で、内戦により約6万人が死亡したといわれる。国内が安定するまでに憲法改正、大統領選挙・議会選挙などがあり、タジキスタンの安定と復興支援のため国連の監視団やタジキスタン和平構築事務所(UNTOP)が2007年まで設立されていた。この間の国連活動に関係して日本の秋野豊氏が亡くなられている。
また2011年の9.11事件以降、隣接するアフガニスタン内戦の影響を受け、米軍等の空域使用、軍事施設使用なども許可してきたため国内の安定が他の中央アジア諸国に比べ大きく遅れたのである。

【内戦続いた親日・山岳国】
 天然資源が乏しく国土の93%が山岳地帯ということもあり外国や国際機関からの支援に依存せざるを得ないのが実情だった。ただ、豊富な水力資源、綿花、アルミニウム生産などにより1990年代末からプラス成長となり、最近は6-7%の成長を遂げている。

 タジキスタンでは言語大学を訪問したほかラフモン文科省次官、現地の記者との懇談、バザールの見学、使節団一行のコシノジュンコさん主催のミニファッション・ショーなどを行い親善を深め、秋野氏の慰霊碑にお参りし、献花をした。

 タジキスタン側は極めて親日的で、日本の経済発展に学びたいと熱心に質問を受けた。ただ空港の便などが悪く、両国が密接な貿易関係を結ぶにはインフラの整備などが必要と痛感させられた。概して中央アジア諸国は親日的でもっと日本と強い関係を持ちたいとの希望をもっているが、往来が便利にならないと難しいと感じさせられた。タジキスタン・ドゥシャンベ空港から飛び立った飛行機から見た山々の絶景は忘れ難かった。

【日本の7倍の国土を持つカザフスタン】
 タジキスタンの後、中央アジアでは最大の国土を持つカザフスタン(世界第9位の面積を持ち、日本の7倍でEU12カ国の国土より大きい)を訪れた。1991年にソ連邦の崩壊により独立し、中央アジアの北方に位置してロシアと長い国境線を持つ。石油、天然ガス、ウラン、レアアースなど豊富な地下資源を有し、ロシア、中国などに輸出して中央アジアの中では最も早く成長し、軍縮、不拡散、仲介外交などで存在感を示し、中央アジア初の安全保障理事会非常任理事国に選出されている。また、2017年に国際博覧会(万国博)を開催した。

【ライバルはウズベキスタン】
 ただ人口は1790万人でウズベキスタンの3030万人よりずっと少ない。中央アジアではこれまで欧米などからウズベキスタンが中心国とみられてきた。しかし、最近のカザフスタンの成長には目を見張るものがあり、国際社会もウズベキスタンよりカザフスタンを注目するようになってきた。ところが、カザフスタンの官僚などによると、最近のウズベキスタンの成長に脅威を感じているようで、再び中央アジアの盟主の座をウズベキスタンに取られるのではないかと懸念しているという。
ウズベクの民族的優秀性や内陸国という不利益な面があるにも関わらず着々と成長し、欧米や日本などは中央アジアの拠点地としてウズベキスタンに代表事務所などを置いているからだ。

【中国が重視する中央アジア】
 今後の中央アジアは、国際的にみてもますます重要性を増してくるように思われる。中国はその点に早くから注目し中央アジア、東南アジア、西南アジアなどを巻き込んだ「上海協力機構」を設立し求心力を集めている。また、中国は上海協力機構とは別に現代の“シルクロード構想”(一帯一路)を公表し、欧州と中国を結ぶ新シルクロードの建設を着々と進めようとしている。

 北のルートにはヨーロッパからカザフスタンを経て中国へ、従来のシルクロード・ルートは欧州から鉄道で文物を運び、さらに西アフリカからパキスタン、バングラデシュなどに港湾を建設し、新たに海のシルクロードを建設しているのだ。アフリカの鉱物資源などをインド洋を通って東南アジアのミャンマーなどに陸揚げし、その後は鉄道で中国へ運ぶ大構想だ。その資金調達はアジアインフラ投資銀行などを通じて行う考えだ。
アジアのインフラ作りには中国の労働者を派遣し、居住させる手法で、いまやアフリカ、インド洋沿いに多くのチャイナタウンも出来ている。

【一帯一路とアジアインフラ投資銀行で社会主義強国をめざす】
 ただ中国のやり方はかなり強引なようで、資金と労働力をぶち込み建設するやり方には地元の反発もかなりあると聞く。

 中国の戦略は、一帯一路の新シルクロード建設で公共事業を世界的規模で行い、その資金はアジアインフラ投資銀行で募集する。アジアとヨーロッパをつなぐ新シルクロードで物流の覇権を握り、周辺国を巻き込む。

 一方で、南シナ海一帯の島々に港湾や航空用の滑走路を作り太平洋をアメリカと分割統治しようと目論んでいるようにみえる。さらにかつては陸軍国であった中国を海洋国、空軍力強化、サイバー強国、宇宙なども見据えた世界戦略で覇権国を目指そうとしている。

 いまや世界の覇権国争いはかつての米・ソに代わり米・中に変化してきた。特に中国は“中国の夢”として社会主義強国を目指すと宣言している。これまでの改革開放路線を維持しながらも中国らしい特色として“社会主義強国”をスローガンとし、社会主義にこだわっている。具体的には国内の富裕層と貧困層の二極化を解消し中間層を増大させることで社会の安定を目指す一方で、あくまでも欧米流の社会とは別の社会主義色をにじませるということのようだ。
このため、今後も社会の腐敗追及には力を入れ、これをテコに習政権の求心力を維持していこうとする意図が伺える。 
【TSR情報 2018年1月15日】

※中央アジアの地図と人口等の比較表をブログに掲載しておりますので、ご興味をお持ちの方は以下を参照下さい。
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20180119

◆お知らせ
・21日(日)TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30~)
 ゲスト:『男はつらいよ』や『渡鬼』でお馴染みの俳優の前田吟様
 映画『男はつらいよ』で寅さんの妹さくらの夫の博を演じてきた前田様。寅さんこと故・渥美清さんとの思い出や『男はつらいよ』の舞台裏についてついてお伺いする予定です。
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/201801191 

・日本ウズベキスタン協会「嶌信彦の出前講座」は次回2月3日(土)14時から開催
 ウズベキスタン協会主催の出前講座は、嶌が時流の政治・経済・社会問題等の話題を分析・解説するものです。
 テーマは近日発表いたします。
 開催概要及び過去のテーマは以下を参照下さい。
 http://nobuhiko-shima.com/2017uzbekucourse.html

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「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」特設サイト
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