ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

【嶌信彦】時代をよむ 北朝鮮と「対話」の糸口探せ


カテゴリー: 2017年10月23日
2017年 10月 23日 vol.191

==================================
北朝鮮と「対話」の糸口探せ
==================================

■金正恩委員長の人物と思想
北朝鮮の最高指導者・金正恩朝鮮労働党委員長とは一体どんな経歴を持った人物なのだろうか。第2代最高指導者だった金正日総書記の3男で祖父は初代最高指導者だった金日成主席、母は大阪出身の在日朝鮮人の高英姫氏とされる。

1984年1月生まれで、幼少期は日本文化にもふれていた。1996年よりスイスに留学していたが2000年に帰国。金日成総合大学と軍の教育機関・金日成軍事総合大学で情報工学などを学んだ。

当初は長男の金正男や次男の金正哲が後継者になるとの憶測もあったが、2009年に入り金正恩後継が有力視され2011年に父の金正日が死去すると、同年12月末に「金正恩を党、軍、人民の最高指導者とする」と公式に宣言し、以後最高指導者、将軍などと呼ばれるようになった。

2012年の金日成生誕100年に際し、軍事優先の先軍政治を再確認するとともに核ミサイルの開発を優先することを明言している。

権力を握ると人民武力部長、人民軍参謀総長など軍上層部の処分を繰り返し、権力中枢にいた7人のうち5人を粛清、更迭した。この中にはNo.2で親族でもあった張成沢氏もおり処刑した。正恩体制になってから処刑された幹部は100人を超すといわれる。

■アメリカに代価を払わせる
 2017年になるとトランプ米大統領の国連演説に対し「国家と人民の名誉、そして私自身の全てをかけ、わが国の絶滅を述べた米国指導者の暴言に代価を払わせる」と反発。

 独特の髪型、バスケットボール好き、ヘビースモーカーとしても知られ、妻の李雪主との間に3人の子供がいるといわれている。父親の金正日に比べるとバランス感覚に欠けているように見え、暴君ぶりがいろいろと伝えられている。

北朝鮮の核・ミサイル開発は1980年代に始まったとされる。最初はエジプトから旧ソ連製の短距離弾道ミサイル「スカッドB」を入手して、これらを分解し研究を開始した。

その後、86年に寧辺に5000キロ級の原子炉の稼動を開始し、プルトニウムを取り出している模様だ。米国では“北朝鮮の技術力からすると、核爆弾1個あたり4~6キロの兵器用プルトニウムが必要とされるが、北朝鮮では既に50数キロ保有している”と推計している(9月4日付/朝日新聞)。

この結果、年間約80キロの高濃度ウランを生産でき、年に3個の核兵器を作る能力を持ち、2020年までにプルトニウム型、ウラン型を合わせ約50個の核爆弾を持つ可能性もある(同紙)という。

■2年以内に米国に届く核を実戦配備?
 北朝鮮は1993年5月には日本を射程に収められる中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程約1300キロ)を発射。’98年8月には長距離弾道ミサイル「テポドン1」。さらに2006年に「テポドン2」や「スカッド」、「ノドン」を7発発射。

「テポドン2」の改良型の射程は6700キロ以上といわれグアム島はもちろんのことアメリカ西海岸まで届くとみられている。

2006年10月には初の核実験を行なっており、’09年5月には2回目の実験を実施している。さらにその後も13年に小型化、軽量化した原爆実験、そして’16年1月に4回目の核実験で「水爆実験に成功」と発表。同年9月にも核実験を行ない「核弾頭が標準化、規格化された」としている。

2017年に入っても2月以降、中距離弾道ミサイル「北極星2」、5月に同じく「火星12」を発射、そして7月に大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」を2度発射した。火星14の射程距離は1万キロに及ぶとされており、アメリカ全域を射程内に入れることが出来るようだ。今のペースで進むと核爆弾を小型化し、2年以内には米本土に届くICBMが実戦配備されるのではないかと懸念されている。

それにしても北朝鮮の核開発をここまで放置していたのはなぜなのだろうか。むろん、黙って放置していたわけではなかった。国際社会は約25年にわたって止めさせる努力を続けていたが実を結ばなかったのだ。

北朝鮮との核協議は1992年1月にカンター米国務次官と金容淳朝鮮労働党書記が会談して以来、何度も北と国際社会は協議を続けてきた。米朝協議だけでなく関係国を入れた6者協議が2003年にスタートした。

特に2007年の6者協議(米、朝、韓、中、露、日)以来、何度も北の核・ミサイル開発凍結を話合い何度か合意はしたものの、結局最終的には全て北の手によって破棄されてきたのである。特に米ブッシュ政権の強硬姿勢とこれに対応する北の核実験などで会談はしばしば中断された。

それでも父親の金正日政権の下では段階的に北が核を破棄することで合意したこともあった。一時はこの合意に伴ない北朝鮮は核施設の凍結、核の無能力化も約束、段階的に核廃棄することで合意したのである。

しかし2008年に金正日総書記が脳卒中で倒れ、その後を告いだ金正恩は権威を高めようとして再び強硬路線に変え、2009年に2回目の核実験を行なった。2011年末に金正日総書記が死亡すると金正恩は「核開発と経済改革を同時に進める」と宣言。

 一方、米国でオバマ政権が登場すると、北朝鮮の挑発に対し「北が具体的な非核化への行動をとらない限り対話に応じない」とし、6者協議も開かれなくなった。この間のアメリカ側などの北朝鮮に対する放置が、逆に北のミサイル開発の時間を与えたのではないかという批判も多い。

北朝鮮はその間、開発をやめる条件として北朝鮮を敵視しない政策の保障や在韓米軍の撤退などを求めているため、一層対話再開が難しくなってしまった。

■注目される米トランプ政権の対応
 ただ、2017年のトランプ政権の登場で状況は少し変わりつつあるかもしれない。トランプ氏は登場するや否や「北朝鮮を爆撃で火の海にしてやる」といい、軍事シナリオを含めたあらゆる方策がテーブルにあると北を脅すディール(取引)に出ている。これに対し北もグアムや日本への攻撃も示唆している。

この間、トランプは中国とロシアに北へもっと圧力をかけるよう要請したり、安保理の経済制裁などを次々と強化し、石油関連輸出を3割削減するなど国際的締め付けの輪を広げている。こうした「圧力」路線に中国、ロシアは反対の意向を示し、対話すべきだと強調している。

しかし実際には中国、ロシアとも追加制裁に賛成しながら話合いの糸口を探している。また、トランプ政権と北は水面下では様々な接触、交渉を行なっている模様で、案外トランプ大統領の“脅しのディール”はある程度、功を奏しているようだ。

 両国の言葉のやりとりをみていると一触即発の状態にあるようにみえるが、共に全面戦争は避けたいのが本音なのだ。

もし戦争になれば、10万の単位で犠牲者が出るし隣国の中国やロシアへ難民が押し寄せる可能性も強い。また北が中国などに向けて核を発射する危険も皆無とはいえない。さらに在韓米軍のアメリカ兵や日本への攻撃、グアム島への攻撃も否定できないわけで、金正恩政権の正常な判断をどこまで期待してよいのかわからない怖さもある。

安倍首相は、最近“国難”という言葉を何度か使っているが、どこまでリアリティをもって言っているのかよく掴めない。本当に戦争となれば国難騒ぎではなくなってくるだろうから、北への“圧力”を口にするだけではなく、一方で北が対話に応ずる条件や土俵づくりを中国、ロシア、東南アジア諸国などに対して行なっていくのが真の外交だろう。

時間はあまりないのだ。北が2年以内にアメリカへ届く小型ミサイル爆弾の開発に成功すれば事は一段と厄介になる。期限は2年もなく、ここ1年が正念場で日本もその時間軸の中で本気で動かなくてはなるまい。

【シンポジウム開催のお知らせ】
私が会長を務める日本ウズベキスタン協会主催のシンポジウム「動乱のアジア どうする日本 ―米朝衝突、習近平・中国など―」を11月15日に開催します。

朝鮮半島情勢、米朝関係に詳しい重村智計氏(元早稲田大学教授。毎日新聞記者としてソウル特派員、ワシントン特派員、論説委員などを歴任)、米欧、北朝鮮の第一人者田中均氏(日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長・元外務省)中国が専門の富坂聡氏(拓殖大学海外事情研究所 教授、ジャーナリスト)をゲストに、司会は嶌信彦。

緊迫する北朝鮮情勢と米朝関係、本当に戦争が引き起こされるか、10月に行なわれる中国共産党大会で中国はどんな方針を打ち出すのか、日本は“圧力”一辺倒の方針で正しいのかなどじっくり掘り下げた討論会になる予定です。

定員は先着150名。締め切りは11月10日。 多くの方のご参加をお待ちしています。詳細は以下リンクを参照下さい。
http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/201710061
【Japan In-depth 2017年10月22日】

◆お知らせ
・26日18時に振替 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』
 ゲスト:国際NGO「WCS」(野生生物保全協会)技術顧問 西原智昭様
 衆議院議員選挙の開票特別番組のため番組がお休みでした。その振替として26日(木)18時からの放送に変更となりますのでご注意下さい。
 コンゴ共和国の熱帯雨林に生息するマルミミゾウをおよそ20年にわたって調査研究、保護活動の実際やその意味などについてお伺いする予定です。 
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/201710231

==================================
嶌信彦オフィシャルサイト   http://www.nobuhiko-shima.com/

「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」特設サイト
http://navoi.nobuhiko-shima.com

嶌信彦公式ツイッター https://twitter.com/shima_nobuhiko

嶌信彦公式Facebook    https://www.facebook.com/nobuhiko.shima.1

NPO法人日本ウズベキスタン協会サイト http://homepage2.nifty.com/silkroad-uzbek/
==================================

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

RSSを登録する
発行周期 ほぼ 平日刊
最新号 2017/11/21
部数 1,593部

このメルマガを購読する

ついでに読みたい

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

RSSを登録する
発行周期 ほぼ 平日刊
最新号 2017/11/21
部数 1,593部

このメルマガを購読する

今週のおすすめ!メルマガ3選

川島和正の日刊インターネットビジネスニュース
■読者数32万部超、日本一の個人メルマガ(まぐまぐ総合ランキング調べ) ■9年連続で年収1億円以上になり、70か国以上を旅行して、 190平方メートルの豪邸に住んで、スーパーカーに乗れるようになり、 さらに、著書は、日本を代表する超有名人2人に帯を書いてもらい、 累計50万部のベストセラーとなった、現在香港在住の川島和正が、 最新のビジネスノウハウ、自己啓発ノウハウ、健康ノウハウ、恋愛ノウハウ さらに「今チェックしておくべき情報リスト」などを配信中!
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

右肩下がりの時代だからこそ、人の裏行く考えを【平成進化論】
【読者数12万人超・日刊配信5,000日継続の超・定番&まぐまぐ殿堂入りメルマガ】 ベストセラー「仕事は、かけ算。」をはじめとするビジネス書の著者であり、複数の高収益企業を経営、ベンチャー企業23社への投資家としての顔も持つ鮒谷周史の、気楽に読めて、すぐに役立つビジネスエッセイ。 創刊以来14年間、一日も欠かさず日刊配信。大勢の読者さんから支持されてきた定番メルマガ。 経験に裏打ちされた、ビジネスで即、結果を出すためのコミュニケーション、営業、マーケティング、投資、起業、経営、キャリア論など、盛り沢山のコンテンツ。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

【六単塾】1日数分で英単語・英文をあきれるほど覚える方法
「英語をやり直したいけど面倒なことはしたくない」「英会話したいけど時間がない」「TOEICスコアが急に必要になった」そんなあなたに。1日10分、たった6単語で英語が話せるようになるためのメルマガを1日1通お送りします。登録は2秒で終了。今すぐ登録してくださいね。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

今週のおすすめ!メルマガ3選

井出ひろゆき 最速不動産オーナーへの道
日本で唯一の不動産満室コンサルタント。 普通の人を不動産オーナーにする スペシャリスト&不動産オーナーに満室コーチング行い、 口コミで無料面談は、常にキャンセル待ち状態。 30代OL、   90日で家賃年収756万円。 40代会社社員 150日で家賃年収1586万8000円。 過去最短でコンサル開始後144日で 20代高利回り2棟家賃年収1456万8千円を記録!!
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

首都圏不動産インサイドニュース
不動産業者がゼッタイ言わない最新の業界ウラ事情をリアルタイムで暴露します!!不動産投資で儲けよう!と意気込んでいるあなた。家族を守り夢を叶える手堅い不動産投資ですが数億円の借金を負う100%自己責任の事業。海千山千の業者相手に知識武装は万全ですか?「まかせっぱなし」は命取りです。かく言う私も業者ですが、不動産に携わる者として不幸な投資家さんをゼロにしたい。本気です。業界経験13年のプロとして真実だけをお伝えします。業者と対等な立場で戦ってください。決して損はさせません。村上しゅんすけ
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

ダメおやじの全財産をかけた崖っぷちFX通信
【1日に数万人が熟読する人気FXブログのメルマガ版】 相場歴30年以上のダメおやじがFXノウハウを大公開! 毎朝配信!毎日の経済指標情報や攻略法を無料で解説しています。 ●損切りがうまくできない、利食いが浅い ●ポジポジ病(ポジションを不要に持ってしまう) ●コツコツドカーン(小さく勝っても大きく負ける) ●エントリータイミングわからない ●メンタル面が弱い このようなお悩みがあれば購読してみてください。 FX初心者から経験者まで、FXの悩みをこのメルマガで解消します。 期間限定でメルマガ内で数万円相当分のFX情報商材をプレゼント中!
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

他のメルマガを読む

ウィークリーランキング