ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

【嶌信彦】時代をよむ


カテゴリー: 2017年05月09日
2017年 5月 9日 vol.156

=================================
トルクメニスタン訪問記
天然ガス輸出で潤う国
==================================
 先日、国際交流基金の要請で中央アジアのトルクメニスタンを訪問した。文化交流の名目で市内を見学するとともに、美術学校、美術館、科学アカデミー、絨毯博物館、ミニファッションショーなどを見学させてもらった。

 そのほか、日本との外交関係樹立25周年の式典に参加し、4日間の滞在中、メレドフ副首相兼外相(57)、アガムィラドフ教育相(53)、女性のオラズムハメドヴァ文化大臣(43)らと、それぞれ1時間以上にわたって面談した。

【3大臣と各1時間以上懇談】
 メレドフ副首相は思慮深い知識人という印象で、日本の茶文化に興味があるらしく「茶道は技術ではなく、水を飲むこととは違い、客や茶文化に対する敬意があることを感じた。現代の若者は物事をシンプルに考える傾向があるので、茶の文化を若者に教えるべきだと思っている。茶は日常生活の中に文化や伝統行事を見せてくれているように思う。
このほか生け花、着物の歴史、日本人の色彩感覚、デザイン、寿司の握り方やほかの料理法にも特別な考え方があるようで興味深かった」などと語り、東京にトルクメニスタン文化センターを設置したいし、今後は日本との間で交互の訪問日程を作ることも計画している――など、日本文化に大いなる関心を持っているようだった。

 アガムィラドフ教育相は、好々爺然とした穏やかな人物だった。同教育相によると、現在4つの大学で日本語を第二言語として採用し、今年から10校の中学校で日本語を教え始めたという。また今後は、自国の若者たちを日本の専門機関や高等教育機関に留学させたい、と日本に強い関心を寄せていた。

 さらに、民族衣装姿で現れたオラズムハメドヴァ文化大臣は「トルクメニスタン人は70以上の楽器を作った平和を愛する我慢強い国民だ。シルクロードは数千年の歴史の中で貿易や文化に国際的役割を果たしてきたと自負している。日本の自然や文化、伝統も素晴らしいし、食事は特に素敵だ。食べ過ぎないように気をつけている」と魅力的な笑顔で微笑んだ。
3大臣とも日本の技術や産業、発展過程に大いに敬意を示したが、それ以上に日本の文化や伝統に関心を持ち、何度も「今後、展示会やシンポジウムなどを実施したい」と強調していたのが印象的だった。さすがシルクロードの国とあって、自分たちの文化に誇りを持つとともに協力をしたがっているように見えた。

【人口540万人の小国、面積は日本の1.3倍】
 トルクメニスタンは中央アジア5カ国のうちの1つで、カスピ海の東に面し、北西にカザフスタン、北東にウズベキスタンと接し、南はイラン、アフガニスタンが隣国となる。人口は540万人と中央アジア5カ国の中では小国だが、国土面積は日本の1.3倍と広い。宗教はイスラム教スンニ派が多く、穏健なイスラム国で、過激派や麻薬の流入を警戒している。
資源は世界4位の埋蔵量を誇る天然ガスが中心を占め、ロシア・中国・イランにパイプラインで輸出している。資源に特化した国づくりを行ってきたため、経済面は資源価格が高騰しているときは良いが、最近はアメリカのシェールガスなど競争相手も増えてきたため、一時ほど儲かってはいない。

 このため、日本などから資源加工技術などを導入したり、ガス加工案件、中小企業技術の育成に力を入れている。また、土地の約80%は農業活動のために使用されており、小麦と綿花生産が中心で、ほかに果物、野菜、家畜がGDPの農・畜産業生産のうち約20%を占めている。トルクメニスタンに在留する日本人は商社や技術関係者などわずかにとどまり、40人に満たない。日本との貿易額も、建設と鉱山用機械など輸出は約800億円で、輸入は美術・骨董品など3億円程度。
2016年に安倍首相ら一行が中央アジア5カ国を訪問した際に訪れている。1人当たりGDPは2016年で6,694ドル(IMF推計)。

【数千年の興亡の歴史と旧ソ連からの独立】
 トルクメニスタンはトルクメニスタン人77%、ウズベク人9%強、ロシア人7%、カザフ人2%、朝鮮系0.7%を擁する多民族国家で、古代のころからオアシス都市として繁栄していた。国土の70%以上は砂漠地帯だが、イランと国境を接する地域には山々が連なり、景色は悪くない。医療費と教育費は原則無料となっている。 

 また、他の中央アジア諸国と同様に、1991年の旧ソ連崩壊とともに独立し、前ニヤゾフ大統領は「積極的中立政策」(等距離、全方位外交、実利重視)を掲げ1995年に国連総会で「永世中立国」として承認された。2006年、ニヤゾフ大統領死後に大統領選挙が行われ、ベルディムハメドフ大統領代行(前副首相兼保健・医療工業相)が後継大統領となり永世中立国を維持している。ニヤゾフ大統領時代から独裁政治色が強い。

 トルクメニスタンは紀元前6世紀にはアケメネス朝ペルシャ、前4世紀にはアレキサンドロス大王の遠征により支配された。その後、ギリシャ系のバクトリア王国、イラン系のクシャーナ王朝、紀元後にはササン朝ペルシャなどの支配下に入り6~7世紀に入ると突厥(トルコ系民族テュルク)に支配される。8世紀になるとアラブのウマイヤ朝、その後オアシス都市連合体、9世紀後半はイラン系サーマン朝、10世紀にはトルコ系遊牧民カラハン朝が支配した。
さらにその後もめまぐるしく宗主国が変わり、11世紀にはセルジュークトルコ、12世紀にはカラキタイ、13世紀になるとチンギス・ハン率いるモンゴル軍が占領、チンギス・ハンの死後はウズベクのチムールが強大な帝国を作った。チムールの死後はヒヴァ、ブハラ、サファヴィー朝などに侵略されるが、1868年にロシアが本格的に中央アジアに進出し始め、ロシアはカスピ海東岸からも上陸し、トルクメニスタンのアシュガバット(現代の首都)も占領。
1991年旧ソ連の崩壊で中央アジア諸国が個別に独立するまで、ロシアの支配下にあった。このため、中央アジア諸国は固有のウズベク語、トルクメン語などと同様に現在もロシア語を共通言語としている。

【白いビルだけが立ち並ぶ首都】
 中央アジアは旧ソ連領となったカザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスタン(頭文字から「加藤タキ」とすると覚えやすい)の5カ国からなるが、ロシアは旧ソ連邦やカスピ海沿岸部、さらにウクライナなどを含めたコーカサス一帯を再び旧ソ連邦と同様の国々に組み込みたいと思っている。

 トルクメニスタンは、ガス輸出を中国のパイプラインなどに繋げ潤っているが、独裁体制は不変で、首都アシュガバットに並び建つビル街(官庁街、高層住宅街など)は白色で規制されており、美しくはあるが人の匂いがしない。朝夕以外の昼間や夜は人通りがほとんど見られず、無気味ですらある。首都の官僚たちの多くは高層住宅に住んでいると聞いたが、道沿いに店はなく必需品はビルの地下の店にあるという。
バザールや小じんまりした商店街に行くと人の姿は見かけるが、概して人影が少ない。人口540万、首都アシュガバットで約70万人というから、もともと賑やかさがないのかもしれない。

 小中学生は薄い赤、高校生は濃い赤の制服を着ており、男子学生は白いシャツにネクタイ姿だった。首都は実にきれいで清潔な感じだったが、ウズベキスタンのタシュケントのような人の賑わいが見当たらず街の様子は寂しかった。首都で働く日本人はほとんどが単身赴任で、仕事以外の娯楽が少ないようで、年に何回か国外へ出る休暇が数少ない楽しみになっているようだ。

 交通はドバイ、ヨーロッパ経由などで待ち時間を入れて片道20時間以上。4泊6日の旅だったが、4泊以外は機中泊が2日。近いようで遠いシルクロードの旅だった。
【TSR情報 2017年4月28日】

ブログには現地で撮影した画像を合わせて掲載しております。
ご興味のある方は以下リンクを合わせて参照ください。
http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20170509

◆お知らせ
・1990年4月から27年間本番組に出演しておりましたが、3月28日をもって出演を終了いたしました。長きにわたって聞いてくださった皆様には感謝申し上げます。今回お届けする3月21日以降の番組の放送内容のまとめは3月28日放送分まで引き続きオフィシャルサイトやSNS、メルマガ等にてお届けいたします。

また、4月15日から新たに有料メルマガ「鳥の目、虫の目、歴史の目」を開始いたしました。初月は無料となっておりますので、ぜひこの機会に合わせて登録いただけると幸いです。次回は今週金曜日配信予定です。何卒よろしくお願いいたします。

「鳥の目、虫の目、歴史の目」に関する詳細は、以下URLを参照ください。
http://www.mag2.com/m/0001678876.html

・7日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)
 ゲスト:日本パラリンピアンズ協会会長の河合純一様 音源掲載 二夜目
 視覚障害者が初めて普通科公立中学校教師になったときの話や、中学校を辞めて大学院に進学して分かったと云う障害者に対する偏見や、「障害は個性」という考え方、「目が見えずに泳ぐことは人生に似ている」と感じたというそのときの思いなどについてお伺いする予定です。
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20170508
 前回音源も番組サイトにて公開中。

==================================
嶌信彦オフィシャルサイト   http://www.nobuhiko-shima.com/

「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」特設サイト
http://navoi.nobuhiko-shima.com

嶌信彦公式ツイッター https://twitter.com/shima_nobuhiko

嶌信彦公式Facebook    https://www.facebook.com/nobuhiko.shima.1

NPO法人日本ウズベキスタン協会サイト http://homepage2.nifty.com/silkroad-uzbek/
==================================

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

RSSを登録する
発行周期 ほぼ 平日刊
最新号 2018/07/19
部数 1,624部

このメルマガを購読する

ついでに読みたい

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

RSSを登録する
発行周期 ほぼ 平日刊
最新号 2018/07/19
部数 1,624部

このメルマガを購読する

今週のおすすめ!メルマガ3選

サラリーマンで年収1000万円を目指せ。
高卒、派遣社員という負け組から、外資系IT企業の部長になった男の、成功法則を全て公開します。誰にでも、どんな状況、状態からでも自分の力で人生を変えるための情報と知性を発信しています。人生を意のままにするには、脳みそとこころの両方が進化しなければなりません。そんな進化とは何か?をお届けする四コママンガ付きメルマガです。2014年から4年連続でまぐまぐ大賞部門賞を受賞しました 学歴やバックグラウンドに拘わらず、人生を思いのままに生きるために必要な考え方が書かれた、「良書リスト」も希望者に差し上げています。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

親鸞に学ぶ幸福論
【あなたを幸せにさせない理由はただ一つの心にあった。その心がなくなった瞬間に人生は一変する】と親鸞は解き明かします。 「本当の幸福とは何か」はっきり示す親鸞の教えを、初めての方にもわかるよう、身近な切り口から仏教講師が語ります。登録者にもれなく『あなたを幸せにさせない5つの間違った常識』小冊子プレゼント中。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

日本株投資家「坂本彰」公式メールマガジン
サラリーマン時代に始めた株式投資から株で勝つための独自ルールを作り上げる。2017年、億り人に。 平成24年より投資助言・代理業を取得。現在、著者自身が実践してきた株で成功するための投資ノウハウや有望株情報を会員向けに提供しているかたわら、ブログやコラム等の執筆活動も行う。 2014年まぐまぐマネー大賞を受賞。読者数3万人。雑誌等のメディア掲載歴多数。 主な著書に『10万円から始める高配当株投資術』(あさ出版)『「小売お宝株」だけで1億円儲ける法』(日本実業出版社)
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

今週のおすすめ!メルマガ3選

右肩下がりの時代だからこそ、人の裏行く考えを【平成進化論】
【読者数12万人超・日刊配信5,000日継続の超・定番&まぐまぐ殿堂入りメルマガ】 ベストセラー「仕事は、かけ算。」をはじめとするビジネス書の著者であり、複数の高収益企業を経営、ベンチャー企業23社への投資家としての顔も持つ鮒谷周史の、気楽に読めて、すぐに役立つビジネスエッセイ。 創刊以来14年間、一日も欠かさず日刊配信。大勢の読者さんから支持されてきた定番メルマガ。 経験に裏打ちされた、ビジネスで即、結果を出すためのコミュニケーション、営業、マーケティング、投資、起業、経営、キャリア論など、盛り沢山のコンテンツ。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

●人生を変える方法【人生をよりよくしたい人必見!誰にでもできる方法を組み合わせました。】
■「人生(自分)の何かを変えたい!」と思ってる方、まずは最初の1分から始めましょう!今日は残っている人生の一番初めの日です。今、「人生を変える方法」を知ることで、一番長くこの方法を使っていくことができます。コーチングで15年間実践を続けてきている方法なので、自信をもってお勧めできます。「人生を良くしたい!」と思うのは人として当然のこと。でも、忙しい生活の中で人生(自分)を変えることって諦めてしまいがちですよね。誰かに変える方法を教えて欲しいけど、その方法を知っている人は少ない。だからこそ・・・。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

サラリーマンで年収1000万円を目指せ。
高卒、派遣社員という負け組から、外資系IT企業の部長になった男の、成功法則を全て公開します。誰にでも、どんな状況、状態からでも自分の力で人生を変えるための情報と知性を発信しています。人生を意のままにするには、脳みそとこころの両方が進化しなければなりません。そんな進化とは何か?をお届けする四コママンガ付きメルマガです。2014年から4年連続でまぐまぐ大賞部門賞を受賞しました 学歴やバックグラウンドに拘わらず、人生を思いのままに生きるために必要な考え方が書かれた、「良書リスト」も希望者に差し上げています。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

他のメルマガを読む

ウィークリーランキング