ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

【嶌信彦】時代をよむ


カテゴリー: 2017年04月20日
2017年 4月 20日 vol.152

=================================
デパート混迷 伊勢丹社長突然辞任
==================================
1967年3月に大学を卒業し、私は最初の赴任地・秋田県に向かった。当時の秋田はコメ所として知られ、八郎潟の拓に手をつけており東北ではコメの産地として比較的豊かな県だった。県庁所在地の秋田市には、「木内」「本金」という二つのデパートがあり秋田市のランドマーク的存在だった。

60年代の地方の中核都市には、大体地元資本のデパートがあり、デパートで買い物をするということは、東京でいえば三越や高島屋、伊勢丹へ行くといった感じで特別な気分になったものだ。デパートは百貨店とも呼ばれ、それこそ靴から化粧品、洋服、電気製品、スポーツ用品、食料品、文具などあらゆるものを取り揃えていた。何でもあるので“百貨”店と呼ばれていたのだろう。

■“百貨”店から“50貨”店へ
だがデパート、百貨店は80年代頃から特別な存在ではなくなってきた。特に東京などの大都市では、化粧品、洋服、スポーツ用品などの専門店、外資系のブランドショップが次々と繁華街に専門店を出し、消費者はそちらへ足を運ぶようになった。その結果、デパートは高級品や特別な品を買う店ではなくなっていったのである。

同時に、売場から電気製品やスポーツ用品、文具などは消えて“百貨”を売る店から50貨、60貨の店になっていった。衣料品ではユニクロが全国に店を出し、化粧品は目抜き通りに外資系が軒を並べ始めた。スポーツ用品ではミズノやナイキ、眼鏡などもお洒落な品ぞろえの専門店があちこちに出始めた。さらに、ここ10年では通信販売で簡単に高級品や地方の特産品が手に入るようになってきたため、かつては消費の憧れの場所が普通の店になってきてしまったのだ。

■デパ地下、安売り、福袋の限界
いまやデパートの最大の売り場は“デパ地下”と呼ばれる食料品売場と、年に何回か行われる大安売り、正月の福袋などに狭まってきてしまった。この結果、デパートの売上げはどこも減少し始め、経営が行き詰まったり、支店を次々と閉鎖するところが増えている。地方では量販店と通信販売に押され、かつての街のランドマークだったデパートが消えてしまった都市も少なくない。

そんなデパート戦争の中でひときわ存在感を示していたのが東京・新宿の伊勢丹だった。若者向けの衣料品、ファッション製品を取り揃え一人気を吐いていたのだ。特に業界をあっと驚かせたのは2008年の伊勢丹と老舗中の老舗で、百貨店・デパートの代名詞ともなっていた三越との経営統合だった。世界最大の売上高を誇っていた新宿本店を持つ伊勢丹と富裕層の客を抱える老舗三越の経営統合は百貨店の新たな方向を示すものとして注目された。

■大西社長は一時寵児に・・・
特に12年に三越伊勢丹ホールディングス社長に就任した伊勢丹出身の大西洋社長は、自前の商品開発にこだわり、小型店の積極出店や中国人観光客の急増にも目をつけ、中国カード(銀聯カード)の利用をいち早く可能にしたり、旅行や飲食、婚礼など事業拡大にも積極的に取り組んできた。中でも利益率の高い独自商品を15%まで拡大するなどして売上高を伸ばし13年度は過去最高となる346億円の連結営業利益を上げた。この頃はデパート業界の代表といえば大西社長といった感さえあり、テレビや新聞、雑誌の寵児となったほどだ。

しかし中国爆買いブームが去ると三越・伊勢丹グループもその波に巻き込まれ、営業利益は高島屋グループやJ.フロントリテイリングより大きく落ち込み、その責任を取る形で今年3月末に突然大西社長が辞任した。

今年になって不採算店の閉店や売場面積の縮小、業態転換を図ってきたが、伊勢丹は千葉と東京の二店舗に対し、三越は千葉店、多摩センター店を閉店、松山店、広島店を縮小したり、業態転換を図る方針とされる。リストラは三越の不採算店が中心となり、三越側からの反発が強まっていたともいわれ、一時はデパート業界を引っ張っていた大西氏の花形的振る舞いは4年半で幕を閉じた。大西氏は役員としても残らない。

■ビジネスモデルを見出せない百貨店業界
デパート経営はバブル崩壊後の90年代から苦しくなっており、合併連衡を続けてきたが、結局、本質的なデパート改革論をどこも出せずビジネスモデルを見失っているのが実情のようだ。2016年の百貨店売上高は6兆円を割ってしまい、ピーク時の6割まで減少している。デパートに慣れ親しんできた70代前後の消費者がデパートを見放すようになると前途は深刻だ。その深刻さはすでに地方の中核都市で20-30年前から徐々に表面化していたのである。
【Japan In-depth 2017年4月20日】

◆お知らせ
・先日3刷決定した「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」(角川書店) に描かれているウズベキスタンナボイ劇場建設秘話が本日のフジテレビ 系「奇跡体験! アンビリーバボー」にて主人公の永田様や抑留者のご家族、私、ウズベキスタン協会などが協力し放送され、書籍も紹介される予定です。どうぞご覧下さい。抑留者の方々が植えられた舞鶴の桜も本日満開になりました。
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20170420

・16日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)
 ゲスト:史上最年長棋士として現役を続けている将棋の加藤一二三 九段
 史上最年長棋士として現役を続けている将棋の加藤一二三九段。将棋界の「レジェンド」に、思い出の名勝負を振り返っていただきながら、対局への意欲は衰えず、最後まで戦い抜く道を選んだ理由など
 次週も引き続き加藤様
 http://www.tbsradio.jp/134313 

・14日より本メルマガとは別にまぐまぐ様の有料メルマガの配信を開始しました。
 本メルマガは、従前どおり他の媒体等に掲載いただいたものを中心に配信を続けてまいります。新たに開設する有料メルマガにつきましては、そこでしか配信しないコラムを配信いたします。初月無料ですので、ぜひご登録いただけると幸いです。
 タイトル:ジャーナリスト嶌信彦「虫の目、鳥の目、歴史の目」
 開始日:4月14日(金)
 初回タイトル:「森友学園問題の深層は? ―安倍政権にボディブローか―」
 配信:毎月第二金曜日配信予定
 金額: 540円(税込)
 http://www.mag2.com/m/0001678876.html

 現在、まぐまぐ様の著名クリエーターの作品を見られる新コンテンツプラットフォームmine(マイン)への寄稿を開始しております。
 今後こちらも活用してまいりますのでご期待ください。
 https://mine.place/user/c95caba7-d0d8-47e7-aab0-df5611cc90e9

==================================
嶌信彦オフィシャルサイト   http://www.nobuhiko-shima.com/

「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」特設サイト
http://navoi.nobuhiko-shima.com

嶌信彦公式ツイッター https://twitter.com/shima_nobuhiko

嶌信彦公式Facebook    https://www.facebook.com/nobuhiko.shima.1

NPO法人日本ウズベキスタン協会サイト http://homepage2.nifty.com/silkroad-uzbek/
==================================

ついでに読みたい

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

RSSを登録する
発行周期 ほぼ 平日刊
最新号 2017/04/26
部数 1,528部

このメルマガを購読する

ついでに読みたい

今週のおすすめ!メルマガ3選

相馬一進の、1億稼ぐビジネスの本質|マーケティングと心理学
・天職で1億稼いだ相馬一進が、お金、自己啓発、仕事について、 心理学とマーケティングの側面から語る本格派メールマガジン。 ・著者の相馬一進は、ダライ・ラマ14世や、『7つの習慣』の スティーブン・コヴィーや、リチャード・ブランソンなどの、 海外セミナーへの日本人ツアーを企画、集客した実績を持つ。 ・最先端の起業・副業のノウハウや、マーケティングの原理原則、 生活の中からストレスを減らす方法、モチベーションの心理学、 複数の収入源を持つ方法、働く時間を減らす秘密などを配信中。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

川島和正の日刊インターネットビジネスニュース
■読者数32万部超、日本一の個人メルマガ(まぐまぐ総合ランキング調べ) ■9年連続で年収1億円以上になり、70か国以上を旅行して、 190平方メートルの豪邸に住んで、スーパーカーに乗れるようになり、 さらに、著書は、日本を代表する超有名人2人に帯を書いてもらい、 累計50万部のベストセラーとなった、現在香港在住の川島和正が、 最新のビジネスノウハウ、自己啓発ノウハウ、健康ノウハウ、恋愛ノウハウ さらに「今チェックしておくべき情報リスト」などを配信中!
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

一緒に歩もう!小富豪への道
富裕層むけ、富裕層入りを目指す方むけの究極の資産防衛メルマガ!一国だけに資産を集めておくのは危険な時代がやってきました。海外ヘッジファンド、貴金属、不動産からアンティーク・コインまで、金融不安に負けない世界分散ポートフォリオを、経験豊富なファイナンシャル・プランナーが誠意をもってご案内します。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

今週のおすすめ!メルマガ3選

日本株投資家「坂本彰」公式メールマガジン
サラリーマン時代に始めた株式投資から株で勝つための独自ルールを作り上げる。2009年10月、130万円だった株式資産は2015年に5000万円を突破。定期預金などを合わせた資産は1億円に。 平成24年より投資顧問業(助言)を取得。現在、著者自身が実践してきた株で成功するための投資ノウハウや有望株情報を会員向けに提供しているかたわら、ブログやコラム等の執筆活動も行う。 メールマガジン「日本株投資家 坂本彰 公式メールマガジン」は2014年まぐまぐマネー大賞を受賞。読者数2万人。雑誌等のメディア掲載歴多数。 2016年12月1日『「小売お宝株」だけで1億円儲ける法』が日本実業出版社より発売!
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

サラリーマンで年収1000万円を目指せ。
高卒、派遣社員という負け組から、外資系IT企業の部長になった男の、成功法則を全て公開します。誰にでも、どんな状況、状態からでも自分の力で人生を変えるための情報と知性を発信しています。人生を意のままにするには、脳みそとこころの両方が進化しなければなりません。そんな進化とは何か?をお届けする四コママンガ付きメルマガです。2014年から3年連続でまぐまぐ大賞部門賞を受賞しました 学歴やバックグラウンドに拘わらず、人生を思いのままに生きるために必要な考え方が書かれた、「良書リスト」も希望者に差し上げています。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

ダメおやじの全財産をかけた崖っぷちFX通信
【1日に数万人が熟読する人気FXブログのメルマガ版】 相場歴30年以上のダメおやじがFXノウハウを大公開! 毎朝配信!毎日の経済指標情報や攻略法を無料で解説しています。 ●損切りがうまくできない、利食いが浅い ●ポジポジ病(ポジションを不要に持ってしまう) ●コツコツドカーン(小さく勝っても大きく負ける) ●エントリータイミングわからない ●メンタル面が弱い このようなお悩みがあれば購読してみてください。 FX初心者から経験者まで、FXの悩みをこのメルマガで解消します。 期間限定でメルマガ内で数万円相当分のFX情報商材をプレゼント中!
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

他のメルマガを読む

ウィークリーランキング