こころをつなぐ、相続のハナシ

無効ではないけど家族を困らせる遺言書とは?


カテゴリー: 2017年06月14日
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こころをつなぐ、相続のハナシ
2017年6月14日号 
(毎月第2、第4水曜日発行)
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【無効ではないけど家族を困らせる遺言書とは?】

遺言書をつくるときは、
法的要件を満たす必要があることは
もちろんです。

しかし、実はそれだけでは
十分とは言えません。


「無効」というわけではなくても、
家族を困らせる遺言書は、
いくつも存在します。


今日は、その中の一つ、

「万が一の想定が
漏れていいる遺言書」を
ご紹介します。

具体的に見てきましょう。


~~~~


太郎さんは
妻に先立たれ、

太郎さんの子は、
長男の一郎さん、二男の次郎さん
の二人です。


太郎さんは、
「長男の一郎はよくできた息子で、
家を継いでもらいたい。

一方の二男は40歳を超えた今も
定職につかず、
顔をあわせば金の話ばかり。

できるだけ次郎には財産を残さず、
太郎にきちんと残してやりたい」

と考え、
遺言書を作成しようと考えました。


太郎さんの財産は、
評価額約3,000万円の自宅土地建物と、
預貯金が3,000万円程度。

この自宅には、一郎さんの妻と、子の一夫さんと、
三世帯で同居しています。



太郎さんは、全部一郎に相続させると
の内容で作成するつもりでしたが、

専門家に相談をしたところ、
二男には遺留分として、1,500万円相当の
取り分があると教えられました。


遺留分を無視した遺言書も作成できて、

遺留分は請求されない限り
渡す必要はない、
ということでしたが、

お金に執着のある次郎のこと、
遺留分は必ず請求するはずです。


自分の亡きあと、
次郎から一郎に対して
遺留分の請求をして

一郎に面倒をかけるよりは・・と考え、


不服ではあるが、
しぶしぶ、遺留分は次郎に残す遺言書を
作成しました。


作成した遺言書は、

長男の一郎さんに不動産と預金1,500万円を、
二男の次郎さんに、遺留分相当額である
預金1,500万円を相続させる、

という内容です。

公正証書で、文章もきちんと
整えてもらい、
これで一安心、と思っていました。

・
・


そして数年後。

思いもよらぬ出来事が起こります。


なんと、長男の一郎さんが、
不慮の事故で、
かえらぬ人となってしまったのです。


まさか息子に先立たれるとは
思っていなかった太郎さんは
すっかり意気消沈し、

徐々に、認知症の症状が
出始めました。


そして、それから数年後、
太郎さんは、
息を引き取ったのです。



実は、更に大変なのは
ここからでした。


一郎さんの子である一夫さん(太郎の孫)が
手続きをしようと
家の中を探していると、

太郎さんの遺言書を見つけました。


そこには、

父である一郎さんを
いかに太郎さんが誇りに思っていたか、

いかにこの家を継いでもらうことが
重要か・・。

こういった太郎さんの想いもしっかりと
綴られていて、
涙なしには読めません。



遺言書には自分の名前は出てこないが、
父の一郎氏がもらうはずだった財産は、

当然、自分が引き継ぐはずだ。


そう考え、太郎さんの四十九日も過ぎたころ、
一夫さんが手続きに出向いたときのことです。

衝撃の事実を告げられました。



「この遺言書では、残念ながら、
一夫さんに名義変更をすることは
できません。」



一瞬事態が呑み込めませんでしたが、
質問したところわかったのは、
次のようなことでした。


・遺言書で「一郎に相続させる」と
書いてある財産は、

一郎さんが、遺言を書いた太郎さんより
先に亡くなったからといって、

自動的に一郎の子である
一夫のものになるわけではない。


・「一郎に相続させる」と書いてある財産は、
遺言書には書いていなかったことになり、

他の相続人と話し合って
行き先を決める必要がある。



つまり、せっかく太郎さんが、
一郎さんのためにと残してくれた
自宅土地建物も、預貯金も、

もう一人の相続人である次郎さんと
話し合って、

どちらがもらうかを
決める必要があるのです。



次郎さんが、自宅や預金を
一夫さんの名義にすることに、

すんなり同意してくれるとは思えません。

一夫さんは、困り果ててしまいました・・。


~~~~

さて、このようなケースは、
実際に、少なくありません。


一夫さんは、次郎さんと合意ができるまで
手続きを行うことができず、

場合によっては争いに発展してしまいます。


これは、遺言書を書いた
太郎さんの本意ではないはずですよね。


では、どうすれば良かったのでしょうか。



太郎さんが、遺言書をつくる段階で、

「もし、自分よりも先に一郎が死亡したら、
一郎に相続させると書いた財産は、
すべて一郎の子である一夫に相続させる」

という一文を盛り込んでおけばよかったのです。


このような一文さえあれば、
今回のような事態が起きても、

一夫さんは、次郎さんの同意なく
手続きができたはずでした。



自分より先に子が亡くなるなど、
考えたくもないことかと思います。


しかし、可能性が誰でもゼロでは
ない以上、

万が一に備えた一文を
しっかり入れておくことで、

後のトラブルを予防できるのです。


「こんなことまで遺言書に書いて、
お父さんって心配性だったんだね」と、

笑られるくらいで良いのです。



また、万が一のことがあった際に
書き直せば良いのですが、

今回のように、想定しえない事実があった後は
意気消沈する方が少なくありませんし、

遺言書の書き換えにまで、
なかなか頭が回りません。

また、認知症になってしまえば
原則として遺言書の書き直しは不可能です。


そのため、最初に作成する段階で、

様々なケースを想定して、
盛り込んでおく必要があるのです。


このような不測の事態に備えた記載を
「予備遺言」と呼びますが、

予備遺言のない遺言書であっても、
作成することは可能です。


また、安易に
「長男が先に亡くなったら、
その子供にいくから大丈夫でしょ?」

と考えて、

「別にそんな記載はいらない」
と言うケースも
少なくなりません。


ここで、リスクを説明せず、
言われたままに作成する専門家は、

ちょっと危険です。


この例のように、
遺留分についてだけ説明して、

予備遺言については
言及しない専門家。

非常に、恐ろしいですね。



遺言書を作る際はぜひ、
法的な要件のみではなく、

様々なケースに対応できるのか、
しっかりと検討して作成してください。


もちろん、ひとりで考えていては
想定が漏れてしまう可能性もありますから、

ぜひ、相続に詳しい専門家に相談して、
本当に安心できる遺言書を
作成するようにしましょう。

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