一万字メルマガ

ジメジメした季節を吹きとばせ!梅雨特集!


カテゴリー: 2014年06月15日
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╋■┛ 一万字メルマガ 第6号
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             2014.06.15
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「ジメジメした季節を吹きとばせ!梅雨特集!」

目次 
 1.はじめに 市村
 2.小説「つゆのいちにちめ」市村
 3.コラム「エレ・エス戦争」ハヤト
 4.小説「知らない街より」てって
 5.小説「砂糖は雨で溶けるのだろうか」 まなき
 6.ネタ「AB漫才」市村
 7.小説「 VS 」第1話《 イチ 》 てって
 8.小説「いつつとななつ」 てって
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■1.はじめに 市村

 こんにちわす。今回はちょっとした説明をしたくて、「はじめに」というものを設けてさせてもらいました。というのも、まあ今回から何かしらテーマを決めて、それに関連するコラムなり小説なりを書いていこうということにしまして。今回はそのテーマというものを"梅雨"に決めました。
 このテーマにした理由は今が梅雨だから。もし今が梅雨じゃなかったら、今回のテーマも"梅雨"にはなっていなかったことでしょう。そう考えると、タイミングってすごい大事で、僕らと読者の方も同じ時代に生まれてきたからこそ、こうやってメルマガを読んで頂けているわけでして。いやはや不思議なものですね。
 ひとまず"梅雨"というテーマで記者陣に色々書いてもらいました。説明を先にしておくと、1〜5までが"梅雨"をテーマに書かれた文章で、それ以降はフリーテーマとなっております。なんとなく"梅雨"というものをテーマにしましたが、それぞれ"梅雨"の捉え方が異なっていて面白い出来になりました。雨で外に出かけられない日なんかは、ぜひこれを読んでお暇を潰してください。
 それでは梅雨特集、どうぞ〜!
 
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■2.小説「つゆのいちにちめ」市村
 
 水滴の連射が空から降り注ぐ音で目が覚めた。散弾銃のような水玉がトタンの屋根に反射して、静かな朝は穴だらけになって焦げ跡が残るようだった。僕は心情的に一層重みを増した布団を一思いに跳ね除けると、カーテンを思い切り横に引き、窓の外に光を求めた。
 案の定、朝の朝たるゆえんのその清々しさはどこにもなく、夜がまだ地面にへばりついているかのような薄暗さが辺りを覆っていた。僕は半開きの目でその事実を受け止めると、洗面所へふらゆらと移動する。
愛用している極細毛の歯ブラシにシトラスミントの歯磨き粉をすこし絞り、水をつけて口へ持っていく。まず左の外側からシャコシャコ磨き、右の奥歯まで行ったら今度は折り返して内側を磨く。同じことを下の歯も繰り返す。奥歯は念入りに磨く。そしてすべてを一度吐き出し、コップの水を口に含んでぶくぶくして吐き出す。
 時計を見る。8時20分。あの時計は少しずれていることを思いだす。しかしどちらにずれているかは忘れてしまった。進んでいればいいなと思う。朝の1分は4800円くらいの価値はある。これで実際は8時18分くらいだったならば、突如降り注ぐ2分に僕は歓喜するだろう。
その2分で何をしようか。もう少しだけソファでゆっくりしようか、はたまた冷蔵庫の中の麦茶を飲んで行こうか。膨らむ妄想に胸を踊らせながらテレビをつけた。8時22分だった。世界はなかなかに厳しい。急いで着替えを済ませて、家のドアを開けた。先ほど窓から覗いたその土砂降りが、今度は目の前に現れている。
 水蒸気として空に吸い取られたひとつひとつは、集いそして雲として白を形成する。それらはやがて大きなかたまりになり、さらにさらに膨らんで空と地面を灰色で遮断する。そうやって重みに耐え切れなくなった綿の大群は、ついに自らが含んだ湿度の正体をその下方にこぼした。一滴の連続は時間の経過で土の色の濃さを強め、TVが映した水色の予言は歩道の至るところにたくさんの傘を咲かせるのだろう。
 僕はふと昨日のことを思い出した。帰り道、コンビニの駐車場に一匹の猫を見つけたのだった。猫は僕のことを警戒したような目つきで睨みつけながら、ゆっくりとその体を僕から遠ざけていった。
 「怖がらなくていいんだよ」
 僕がそう話しかけると、猫はその動きをピタリと止めた。経過する数秒。まるでその目は僕を値踏みするかのようにじっと見つめて離さなかった。「よしおいで」。そう言ったか言わないかのその瞬間、猫はさっと遠くへ逃げてしまった。何かを否定されたかのような気分になり、ほんの少し落ち込んで帰路についたのを思い出した。
 あの猫は今日をどう過ごしているだろうか。これに濡れていないだろうか。濡れていてもいいか。僕には関係のない話か。
 玄関から見える景色は暗みを強めた。僕は傘立てから黒く大きめの傘を抜き取ると、手元についたボタンを押して、ワンプッシュで傘を広げた。広がった傘を下から見る。傘の内側にあったのは、僕用の空だった。


●市村 @ichimura_LHF
一万字メルマガ編集長。
記事としてはコラム・小説・ネタ企画等、
一番幅広いジャンルで執筆。
ブログ「市村の感想」
http://ichimura11.seesaa.net/
ラジオ「LHFポッド"TAKEOUT"」
http://left-hand-flemings.seesaa.net/

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■3.コラム「エレ・エス戦争」ハヤト

梅雨がやってきた。
梅雨と言えば当然雨が多い訳で、そうなると気軽に外を出歩けなくなる。出かけても建物の中へ、中へと向かっていく。そうすると、

エレベーター・エスカレーター問題、別名エレ・エス戦争が個人的に発生する確率が多くなるのである。

この問題について説明すると、単純にどっちがどっちか覚えられず色々と不便を被るということだ。不便と言っても友達と出かけている時に「あれだ、密閉されてない方で上がろうぜ」みたいな感じになるだけだが、改めて文字で見るとかなりかっこ悪いことになっている。「閉塞感から解放された個人の意思とは無関係の人体移動装置で行くか」と言えば多少は文学的かもしれないが、長過ぎるし結局相手は何に乗るのか確認することになるだろう。

もうこの際行き来は階段にしようという潔い決断もできなくはないが、女の子と一緒だった場合どうだろう。ハアハア息を切らしながら階段を上がる姿は実にセクシーだが、おそらく次にその子と遊ぶ約束はとれないだろう。そう考えると、この問題は解決案を早期に見つけなければならないのである。

どうしたら覚えられるのか。やはり名前に着目するのがいいだろう。
エレベーターはベルトを使っていると考えれば・・・と思ったが、どっちもベルトを使っている感じではないか。
エスカレーターはどうだろう。我々をエスカレートしていくと考えれば・・・と思ったが、どっちもエスカレートしているではないか。
名前ではどうやらピンとくるのが難しいようだ。

では、どっちかを必死に覚える。私がよく使うのは圧倒的にエスカレーターの方なので、こっちを完璧に覚えればいい。と思ったが、なにかしっくりこない。こっちがエレベーターという名前でもいいんじゃないか、そう思えてしまう。そう考えると、納豆と豆腐は文字で考えたら逆な感じもするが、よく定着したと思う。・・・と感心している場合ではない。女の子と遊べるか、遊べないかの大問題なのだ。

そして万策尽きたと思われたその時、私は気づいてしまった。この両者の乗り物の間には、決定的な違いがあると。

・・・『エレベーターガール』の存在に!

そうなのだ、エレベーターガールは箱形の方にしかいないではないか。なぜもっと早く気づかなかったのかと自分を責めたが、地方都市のエレベーターにガールはいない。というか高級デパートぐらいでしか見た事がない。そもそもあまり接する機会がなかったのが、世紀の大発見が遅れた理由だろう。
これに気づいてからというもの、どちらかに乗ろうとする時、必ずエレベーターガールが頭に浮かぶようになった。エレベーターガールって必要なのか?と思った諸君に私は言いたい。「確かに自分でもボタンは押せる。でも、彼女達がいなければこの問題は永遠の議題になっていただろう」、と。

何はともあれ、もう迷う事はない。「ガールがいない方に、乗ろうぜ!」

●ハヤト @haccyo18
主にお菓子や文房具のコラムを担当。
その独自のこだわりと卓越した妄想力が魅力。
ブログ「ハッチョの聖域」
http://haccyo18.seesaa.net/

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■4.小説「知らない街より」てって

 友人が知らない街に旅立っていった。淋しくはなかった。友人であることが終わるわけではない。二度と遊べなくなるわけでもない。引っ越し祝いを渡し、笑顔で手を振った。淋しくはなかった。しかし、嫌な気分ではあった。それはそうだろう。自分の知っている街から一つ。自分の気に入っていたものが無くなったのだ。そういう嫌な気分だった。

「向こうに着いたらさ、連絡するよ」
「あぁ」

「気をつけていけよ」くらいの言葉はかけてやれば良かったなと、友人の背中を見送るときに後悔していた。だからといって離れた背中に届くような大声でそう告げることもしなかった。こういうもどかしさは、一体何にひっかかっているからなのだろうか。身体の中には無数の骨がある。そのひとつにかもしれない。

 何をするでも無く部屋のベッドで寝転び、何度目かの携帯画面を眺める。届けば音が鳴るのに見てしまう。耳よりも、目の方がせっかちだ。隣の部屋ではごりごりとなにか削る音が響く。

「連絡、こないな」
「どーん」
「おおおおお!?」

 壁が崩れた!? なぜか壁が崩れた。なぜか自分の部屋の壁が崩れた。そして埃がすごい。もともとは壁であったであろう粉達が舞い上がり、その中から一人現れた。誰だろうか。隣には素敵なお姉さんが住んでいる脳内設定だったのだがその人だろうか。よっしゃ。

「こんにちは」
「・・・・・」
「こんにちは」
「こんにちは」

 たぶん違う気がした。見た感じ工事の人が着てるような「作業着だよ」そう作業着を着ていて、防塵マスクと眼鏡を装備し、黄色いヘルメットまでしているものだから素敵かどうかで言えば素敵だが僕の理想はビキニなのでこういうのじゃなかった。あと、舞い上がった埃が若干落ち着いてきた。

「はいこれ」

 壁から出てきた人が、なにやら手紙のようなものを僕に渡した。
 

●てって @tete_LHF
一万字メルマガでは主に小説を担当。
一筆書きのように一行目から最後まで一気に書き上げる。
ラジオ「LHFポッド"TAKEOUT"」
http://left-hand-flemings.seesaa.net/



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■5.小説「砂糖は雨で溶けるのだろうか」 まなき

<梅雨は擦り傷を治さない>

 着ている制服が肌に纏わり付く。湿気で髪の毛は纏まらず、左肘に一昨日できた擦り傷の治りは遅れている。ガーゼと包帯に包まれているまだ新しい傷は、表面が乾燥せずに、組織液を垂れ流していた。
 三日も続く雨には気分が沈む一方だ。一日目は例年より上がっていた気温の反動もあり、雨による涼しさには感謝の念も覚えたが、二日目以降は鬱陶しいとしか感じなくなっていた。

<石橋さんがずぶ濡れだ>

朝のHRが始まる五分前に石橋さんは教室に入ってきた。私の席の隣に座ると、教室の不快で生温い湿度がまた一段と上がったような気がした。石橋さんの制服は透けていて、髪の毛は顔に張り付いている。頭からも体からも水滴が零れ落ち、机には小さな水溜りができていた。
彼女はひどく濡れているショルダーバックを机の横にぶら下げると、タオルで拭くわけでもなく、ただじっとHRが始まるのを待つように黒板の方を向いて座っていた。

<学級委員長の仕事は多い。そしてそのほとんどは雑用だ>

担任が教室に入ってくる。体育の先生のトレードマークとなっているジャージの袖は捲くられていた。
それまで聞こえていた話し声は次第になくなっていく。自らの席を離れて、クラスメートとの雑談に花を咲かせていた者も決められた席へと戻る。日直が号令を下し、HRの開始が宣言された。
出欠を確認していた担任の目がこちらの方を向いた。それまで無表情に読み上げていた出席簿から顔を上げ、私の隣で起こっている奇妙な事件を目撃して眉間に皺が寄っていくのが分かる。
「おい石橋濡れているじゃないか、体操着でいいから着替えてこい」と担任は言った。そして学級委員長も付いていってやれと、隣の私にも声をかける。
 学級委員長たる私がなぜそのようなことを手伝わなければならないのだ、とはならない。学級委員長とは、長とは名ばかりのクラスの雑用係であることは間違いないからだ。
ちょうど戦国時代の士農工商の農民みたいなものだと私は思ったことがある。身分としては侍の次であるのにも関わらず、彼らは搾取の対象であった。
 石橋さんを引き連れ、空き教室で着替えを済ませる。本来ならば更衣室が適切なのだが、今は全クラスがHRの時間であるため構わないだろう。特に手伝うこともない私は彼女の着替える様子を見ていた。
「傘が壊れたの?」と手持ち無沙汰な私は石橋さんに話かけてみた。
「今日は持ってきてないの」と彼女は素肌に張り付いたワイシャツを脱ぎながら答える。
 石橋さんの性格は明るい。私と比べたら、比較の対象にならないくらいに溌剌とした返事を返してくれる。ただ彼女の明るさは例えるなら、こちらがふんわりと山形に投げたボールを、時速百五十キロで投げ返すような明るさである。そして不自然で、私は彼女の返事を聞いて、また彼女の着替えを眺める作業に戻った。

<ルーズリーフに書かれる正しき楷書体>

教室に帰ると一限目の歴史の授業が始まろうとしていた。もうあと一・二年で定年退職を迎える男性教師がこちらに向かって、早く席に着きなさいと促してくる。
私は席に座って、石橋さんに言った。
「良かったら教科書見る?」
学校にほぼ全ての教科書を置いている私と違い、石橋さんが教科書を毎日持ち帰っているのを知っていた。かばんが濡れていたということは、かばんの中身も読める状態ではないだろう。私は彼女と席を繋げて、ルーズリーフを一枚とシャーペンを手渡した。消しゴムについては予備がないため、二人で使うことになる。
ただ彼女については消しゴムが必要のないものに思えた。彼女は黒板に書かれている歴史の事柄や人物の説明を緻密にルーズリーフに書き込んでいく。その文字は丁寧でそして細かい。消しゴムは常に私の机に置かれていた。

<砂糖の結晶は雨では溶けない>

一週間経って梅雨が明け、一週間前石橋さんは学校から消えた。
彼女は歴史の授業が終ると、ふらりとどこかへ消えてしまった。学校から警察に連絡が行き、方々より捜索が行われたが、彼女は発見されることがなかった。
 全体朝礼でも彼女の安否を知っている者は直ちに知らせるようにとの連絡事項が言い渡され、私たちのクラス全員は一人ずつ先生と面談が行われることになった。
彼女は砂糖菓子のように雨に溶けてしまったのか?私は左肘にできた瘡蓋を擦りながら考える。
いやきっと彼女は決めていたのだろう。あの日傘を差さない事とその他多くのことを。
乾燥した傷から手を離し、学級委員長としての仕事に戻る。ショルダーバックが回収され軽くなった彼女の机を掃除していると、中に一枚の紙があることに気がついた。それはあの日彼女が学校に来ていた証拠で、真面目に授業を受けていたことが分かる。白かったルーズリーフには彼女の手で丁寧に細かく明治維新についてや、そこで活躍した人々が年号と共に書き込まれている。
私はそれを四つ折にして、大事に胸ポケットへ仕舞い込む。ルーズリーフの最後には他より少しだけ大きな文字で丁寧に「ありがとう」そう書かれていた。

砂糖の結晶は雨では溶けない。


 
●まなき @suzumana0529
コラムと小説どちらも書ける。
最近はカフェで小説を読むのが日課。

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■6.ネタ「AB漫才」市村

「10回クイズ」
Aねえ、ピザって1回言って?
Bえ、1回でいいの?
Aえ、2回もいいの?
Bいや、もっといいよ
Aもっといいの?
Bうん、いいよ?
Aいや、でもいいよ1回で
Bなんで?
Aだって、あんまり多いと、ほら
Bなに?
A悪いじゃん
Bそうかな
Aうん
Bなんか、ありがとね
Aうん
Bピザ

「ファミレス」
Aいらっしゃいませ。お客様お一人ですか?
Bはい、でもあとから大勢来ます
A何人くらいですか?
Bけっこう多いと思います
A何人くらいですか?
B3人くらいです
Aじゃあ大丈夫です

「ファミレス2」
Aいらっしゃいませ。お客様お一人ですか?
Bはい、でもあとから一人来ます
A本当ですか?
B本当じゃないと思います?
Aはい
Bそれでは証拠を見せましょう。はいこれ。
Aなんですかこれは?
B真実証明書です
Aそんなのあるんだ

「強盗」
A強盗だ。金を出せ
Bいくらです?
Aぜんぶだ
B店のぜんぶですか?それとも私のも含めてですか?
Aおまえのはすぐ出せるところにあるのか?
Bいや、かばんの中のさいふの中です
Aじゃあ店のだけでいい

「医者」
A次の方どうぞ
Bはい
Aどうしましたか?
B熱があって喉が痛いです
A熱は何度ありました?
B37.8度です
Aじゃあ口を開けてください
Bはい
Aああ、喉の奥が赤いですね
Bそうですね、よく言われます
Aよく言われますか?
Bはい
Aじゃあこれは生まれつきか

「医者2」
Aお薬出しときますね
Bはい
A朝・昼・晩、食後に3回飲んでください
Bわかりました
Aそれではお大事に
Bあ、すいません
Aはい?
Bあと吐き気と頭痛もあるんです
A遅え

●市村 @ichimura_LHF
一万字メルマガ編集長。
記事としてはコラム・小説・ネタ企画等、
一番幅広いジャンルで執筆。
ブログ「市村の感想」
http://ichimura11.seesaa.net/
ラジオ「LHFポッド"TAKEOUT"」
http://left-hand-flemings.seesaa.net/


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■7.小説「 VS 」第1話《 イチ 》 てって


 沸き上がる歓声。
 幾度も切られた身体は、
 沸騰している気がした。
 敵の振り下ろす剣に、
 僕の顔が反射して映る。
 酷い顔だ。
 負ける。
 そう思った。
 避ける。
 しかし、
 また新しい熱が身体を走る。
 さらに激しさを増す歓声が、
 僕の鼓膜を叩いた。

 闘技場では、戦うだけでお金が貰える。だからこそ僕のような素人(戦いを本業としていない人)も参加してくることが少なくない。しかしそういった参加者の多くは、再び参加することは無かった。この闘技では「相手を破壊したら勝利」となる。特にそれ以外のルールはなく、また必要なかった。なぜ、それはこの闘技で使われる身体のおかげである。
その身体は「 VS 」と呼ばれている。「 VS 」は使用者の身体の一部に差し込むことで「闘技専用の身体」を作ることが出来る。その身体を使って闘技を行うので死者が出ることは無い。だからどんな卑怯な手を使おうともそれは勝つための手段であり、観客にとってのエンターテイメントでしかなく、命を奪うという倫理にも触れることは無い。
まさに戦いを娯楽とするために産み出された最高の技術である。しかし、この身体には使用者にとってのみ欠陥があった。それは、痛みである。

 胸を貫く青い剣。
 激しい電流が、
 身体に流し込まれたみたいだ。
 力が入らない。
 なのに、
 全身が震えている。
 引き抜かれる。
 強く落下したはずなのに、
 もうなにも感じなかった。
 空気を濁らせるほどの歓声。
 決着を知らせる龍の咆哮。
 あの龍は、
 そのためにいたのか。
 暗くなる視界を迎えながら、
 最後にそんなことを思った。
 
 開発者はTVでこう言った「痛みが無ければ面白くない」。そして見る側も同意した。人間は残酷だ。ゲームのように平然と戦っている姿では面白くない。傷つき苦しみながらそれでも戦う姿が面白いのだ。そうして、闘技場が出来、闘技を行う者には相応の金銭が支払われることになった。
勝者には、莫大な賞金と名誉となるランクが与えられた。そして敗者は「死の傷」というトラウマを心に残した。だから、敗者の多くは再び闘技に参加することは無い。あの痛みが、そして死を迎えたときの自分の心「死の傷」が、恐ろしくて。

 僕が闘技場の「 VS 」を使用した部屋のベッドから起き上がれたときには、試合が終わってから4時間が経過していた。歩くときの足も、部屋から出るときにドアに触れた手も、震えていた。上手く歩けなくて、引き摺るように闘技場から出た。もう日が半分ほど沈み、暗い赤色に空を染めていた。

 「 よう 」

 声が聴こえたから、
 顔を上げた。
 先程戦った敵が、
 目の前にいた。
 傷は残っていないはずなのに、
 切られた場所から、
 血が噴き出した気がした。

 「 な・・・ん です か 」

 「 さっきはどうも 」

 彼はそれだけ言うと、すれ違うように闘技場へ戻っていった。全身が熱い。呼吸が上手く出来ない。嫌がらせだろうか。試合開始に宣言された彼の名前とランクを思い出す。

 「 イチ ランクはキング 」

 青く薄い鎧を着た戦士だった。

●てって @tete_LHF
一万字メルマガでは主に小説を担当。
一筆書きのように一行目から最後まで一気に書き上げる。
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■8.小説「いつつとななつ」 てって


 五月七日はいい日だ。

 そんなふうに思いながら、通勤のために毎日通る道を今日も歩いていた。どうして五月七日がいい日なのか、僕の誕生日だから? かわいい彼女の誕生日だから? 天皇の誕生日だから? いや、特別何かがあるというわけではなく、こう、暑くもなく、寒くもなく、のほほんのとしていていいなと、そう思っての思いだったわけです。視界の下の方には、ハルジオンが咲いていて、横一面にはぞうぞうと広がる緑色、そして上の方には雲の少ない青空。これ以上何を望もうか。

 と、格好をつけたらお腹が鳴った。

 格好悪いタイミングで食物を望んでしまった。おそらく神的な何かが見ていたに違いない。こんなタイミングでお腹が鳴るなんて意地悪、誰かが僕の脳内台詞を読み取り、ベストなタイミングで僕のお腹ぐースイッチを押さなければ有り得ないはずだ。よって神的な何かは存在する。証明完了。

 おぉ、神的な何かはいたのか。

 まぁ、昔からうすうすいるとは思っていたけれど、なかなか姿を現さないし、誰も証明しようとしなかったからあやしいなと思い始めてきたところにこれだ、いたわ。しかしいたところで、いたことが証明できたところでこちらから何か確実な手段で通信することが出来ないので、何も変わらない。携帯会社がんばれ、次に発明すべき電話機能は神的ななにかとの交信だ。

 そして僕は、仕事場に着く。

 出勤を記録するためにタイムカードを機械に通す。タイムカードを切る、という表現があるが、うちの会社は電子カードに記憶させるタイプなのでいまひとつしっくりこないので「通す」という表現を皆に定着させようと作戦を進行中だ。具体的には誰かと出勤のタイミングがかぶったときにわざと「先にタイムカード通しますね」と声に出しながら通すようにしている。皆に定着する日は近い。きっと。

 自分のデスクに腰を下ろす。パソコンを立ち上げ、文章作成ソフトを起動する。

 さて、今日はどんな話を作ろうか。
 
 
●てって @tete_LHF
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◆編集後記◆
 つーわけで第6号でございます。今回は"梅雨"をテーマにみんなで色々書きました。思うんですけど、てっての4「知らない街より」って"梅雨"関係あります? それをてってに聞いたら、「関係あるかどうかは読者次第! ただ僕にはある!」だそうです。ふーん。
 これから毎号テーマを設けてやっていこうと思うのですが、実はもう次号のテーマは決まっております。それは「サッカーW杯」です。もうこれを配信する日はW杯が開幕しておりまして、個人的にはめちゃくちゃ楽しんでいます。これを記事にしちゃおうかと思います。まあそのことをてってに言ったら、「W杯・・・始まってたのか」だって。こんなに騒がれてるのに知らなかったんかい。

編集長・市村

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