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目次
 1.コラム「なぜメルマガなのか」市村
 2.小説「ゴーレム」てって
 3.コラム「嗚呼、文房具達よ」ハヤト
 4.企画「私が水を飲む10の理由」市村
 5.小説「神様」てって
 6.会話「脳科学」てって・市村
 7.批評「2013リリースのCDアルバム個人的BEST5」ハヤト
 8.コラム「本を売る」市村 
 9.小説「悔いの椅子」てって
 10.コラム「美術館の憂鬱」ハヤト
 11.小説「昼下がり」市村

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1.コラム「なぜ、メルマガなのか」市村

その週の仕事はとても忙しかった。客先での常駐作業が始まって初めての案件で、なかなか勝手がつかめず、火曜日締め切りの作業がまだ終わっていなかった金曜日の朝。ふと思った。

そうだ、メルマガをやろう。

「人は忙しい金曜日ほどいいアイデアを思いつくことがある」と、過去に偉人の中の誰かが言っていたとしたら儲けモンだ。実際はそんな言葉は聞いたこともないし、そもそも僕が今ここで考えた言葉なので、名言でもなんでもない。

しかしまあメルマガというものを思いついてしまった。もともと大学時代はmixiの日記をクソほど書いていた。大学に友だちはできないし、毎日が暗闇のような中で半ば周りの人たちに撒き散らすかのようにmixiの日記を書き連ねた。その数はおよそ1000。そしてその後はブログを始め、またまたバカみたいに書き汚した。その数はおよそ1000。更にはPodcastを始めた。なんというか気持ちの問題みたいなところもあるが、その頑張り度をあえて数値化するのならば、その数およそ1000。

そんなこんなでいろいろやってきたのだが、はて最近はどうだろうか。仕事が忙しいとか、結婚して一人の時間がないとか、言い訳を挙げろと言われればいくらでも思いつく。その数はおよそ900。

ブログもPodcastも最近は更新ができていない中で、それでも"なんかやりたい欲"がどんどん溜まっていたのだろう。みんなでできて、でも絵とか書けないから文字だけのやつで、そういえば短い小説とかも書いてたなー、なんかいいやつないかな、、、そして閃いた。そうだ、京都にいこう!

二日後、京都についた僕は有名なあぶらとり紙を使い、フライパンに付着したしつこい油汚れを取りながら思った。

「これならジョイで良い」

ジョイとは、P&G が発売している台所用洗剤である。日本では1995年に発売され、今では「除菌ができるジョイ」、「スポンジの除菌ができるジョイ」、「患者の話を親身に聞いてくれる女医」等、様々な進化を遂げている商品である。なお、3つめのやつは嘘であるが、本当にそういうお医者様がいたら、医者と患者という関係ではなく一人の男として知り合ってみたいものである。

このように、現在では患者にとっても開かれた病院というものが望まれている。医者としても患者に対して分かりやすい説明をし、双方の理解があった上で診療を行うことが重要になってくるだろう。医療の現場でもただ病気を治せばいいという時代は終わりを迎えつつある。今後は情報という観点でも自分にあった病院を選ぶことが重要になりそうだ。


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2.小説「ゴーレム」てって

 自分は例えるとしたら、ゴーレムだと思うの。
 そんなふうに話す彼女の左肩をみつめながら、ぼくはたんたんと担々麺をすすっていた。
 もっと正確さを際立たせるのであれば、君ってドラゴンに似てるよねという冒頭から始まったドラゴンに対する想いとぼくの普段の仕草や発言へのリンク、自分の好きな幻獣のあれこれ、そして自分はゴーレムなんだという淋しそうな声。と肩。ぼくと彼女はラーメン屋さんに来ていて、それはいつもどおりの土曜日の夜で、そういう突飛な話もいつもどおりだった。

 「どうして、ゴーレムだと思ったの? 」

 こんどは右肩をこそりと眺めながら尋ねる。

 「・・・だってさ」

 だってさ、からさきはおしえてもらえなかった。それも、いつもどおりだった。彼女はいつも悩みをひとりで抱えては、ヒントのようなものだけをぼくにくれるのだ。だからぼくもいつもどおり、そのヒントをもらった夜一晩、彼女はなにに悩んでいるのだろうと、彼女のことだけを考える。疲れて寝てしまった彼女の、呼吸で動く肩を眺めながら。

 そうして月曜日頃、気がつくのだ。
 彼女の悩みを考えているあの一晩だけは、ぼくの思考も、彼女だけのものだったと。
 
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3.コラム「嗚呼、文房具達よ」ハヤト 
 
 「あー、消しカス机の上に溜まってんなー。なんかスーって無くなる魔法とかないのかよ。」

浮かべちゃったね、今頭に浮かべちゃったねリチャード(仮名)君!日本にはあるんだよ。スペインのバルでは食べたナッツの殻を床に捨てて、片付けないでそのままにする。
そしてその殻が多いほどお店が繁盛してる証らしいんだけど、そんなこと日本でしたら学校の掃除の時間がいつのまにやら社会問題に発展して「海外は専門の人にやらせてるのに日本はなぜ生徒にやらせるのか」っていう日本と海外の文化の比較を持ち出してくる輩が現れて、
偉い教授とか「私、庶民の目線に立ってます」的なコメンテーターとかでディベートが始まって面倒なことになってしまうのが目に見えているじゃないか!
ちょっと脱線したけど、スーってなるのが魔法じゃないけど、日本にはあるんです!

ミドリの『ミニクリーナー2』が!
車の形をしたボディーに、剥き出しに搭載された2つのほうきがゴミをとる『ミニクリーナー』もゴミをとる際の動きがかわいらしくよかったのだが、2はコロンと丸みを帯びたフルフェイスボディに仕上がっているんだ。
何とも言えないその佇まいは、ポップなカラーリングとあいまって、まるでマカロンが突然変異して車になったような姿になっているんだ!
きっとこれがアルミでソリッドな感じに仕上げられていたら、映画『2001年宇宙の旅』で卓上のゴミを拾うシーンがあった時に使われていたんじゃないか!?

「宇宙って、無重力だから卓上クリーナーとかの前に机」
リチャード(仮名)君、それ以上は言わない約束だろ。

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4.企画「私が水を飲む10の理由」市村

「食べ物は3日食べなくても大丈夫だけど、水は1日飲まないと死んでしまう」
そんなようなことを聞いたことがあります。
それほどまでに人間が生きるのに必要な"水"。
私たちが生きるのに、水は必要なのです。
そんな私が水を飲む10の理由を公開します。


1 喉が乾いたから
そりゃ、喉が乾いたら水を飲むでしょう。
喉がかわいたときにカステラと水があったらどうしますか?
水を飲むでしょう?
喉がかわいたときは、水を飲めばいいんです。

2 お腹が減ったから
たまにこういう人がいます。
「お金がなかったから水で凌いだ」
日本は公園の水が飲める数少ない国です。
無料で飲めるんだから、お腹が空いたときは水を飲みましょう。

3 ハーフタイムだから
サッカー選手はハーフタイムに何をするか。
水を飲んでいるでしょう。
いや、聞いたわけじゃないですよ。
でも水は飲むでしょう。
いや、スポーツドリンクかもしれませんよ。
でも水も飲むでしょう。

4 プレイが一時中断したから
サッカーでケガ人が出たとき、
ケガしていない選手は何をやっているか。
それは水を飲んでいます。
たまにテレビでピッチの脇にボトルが置いてあるでしょう。
それです。

5 せっかくオアシスに来たんだから
例えば砂漠にいたとして。
オアシスがあったら水飲んでいきません?
そのときに喉がかわいてなくても、
せっかくだから飲んでいきますよね。

6 六甲だから
六甲でも同じでしょう。
水を飲むでしょう。
だって六甲なんだもの。
それが南アルプスでも同じです。

7 泳ぎがヘタだから
不意の場合ね。
泳ぎがヘタな人はパニックで水を飲んでしまいます。
プールの水は飲みたくないよね。

8 手持ち無沙汰だから
例えば飲み会なんかで、会話に入れなかったりしたとき、
ふと水をずっと飲んでたりしませんか?
しょうがないかもしれないけど、
それが人見知りの宿命なんです。

9 ラストスパートするから
マラソンの最後ですよね。
やっぱり42.195キロ走るのって辛いでしょう。
そういうときは水を飲みたくなるはず。
ここでスパートすれば勝てる!
それなら水飲むでしょう。

10 なんか体にいいらしいから
なんか最近よく言われてますよね。
なんでも水が体にいいらしい。
本当なんですかね。
まあどっちでもいいけど。

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5.小説「神様」てって

 普段はとくに欲しいと思わないもの。そのなにかが急に欲しくなるというのは、つまるところ本能的判断によるものであると証明されている。

 あるとき、無人島に遭難した女が飢えと乾きに苦しめられていたところに大きめの魚が打ち上げられてきた、普段は魚の身を好んで食べ、頭などは捨ててしまう彼女がそのときばかりは魚の頭部がなによりもおいしそうに「みえた」という。その謎を解かせば、魚の頭部、主に目玉やその周りに含まれる成分が、彼女の身体が生きるために必要な成分が多く含まれている部位であったという話なのだが、当時の彼女はそんなことはしらず、ただただ、ただただただ、おいしそうに「みえた」と話す。

 あるとき、スケートリンクという地面のわずかうえに氷を張り巡らし冷房を効かせその状態を保ったままでスケートを嗜むという目的で建てられた建物の中、その氷の上で、裸足の男がいた。僕だ。僕はいまとても靴下が欲しい。この感情はおそらく、無人島に漂流した彼女と同じ、生きるために、身体の奥底に眠る本能的判断によるものだろう。普段ならば靴下なんて外に出るとき以外は滅多に履かない僕ではあるが、まさか室内にいるというにもかかわらず靴下のことをこんなにも心から欲しているとは、これはまさしくそれだろう。

 「あのー」

 なにやらこぎたないおじさんが話しかけてきた。

 「あそこで、靴借りられますよ? 靴下も」

 神だった。

 一見すればスケートリンクで裸足になっているという気の狂った男に、邪険にするのではなく親切に救命方法を提示してくださるとはなんていい人。

 人は、見かけによらないな。

 そう、思った。

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6.会話「脳科学」てって・市村

てって 脳科学者っているじゃん
市村  うん
てって その人が、定期的に甘いものを取れば、食べなくて平気って
市村  そんなこと言ってるの?
てって つまり、ちょっとずつ甘いものを食べていれば、おなかが空かないんだって
市村  へえー、すごいな。
てって うん
市村  それ絶対、裏で歯医者が脳科学者に圧力かけてるよ!
てって どゆこと!?
市村  「いま脳科学ブームだから、脳を絡めてなんか言えば、人は大体信じるから、甘いものをブームにしろよ」的な。
てって 圧力をかけてる!
市村  そういうのがたぶんあるのよ。
てって そんなわけで、いま実験してるんだけど・・・・
市村  実験?
てって だから甘いものを・・・・
市村  あー、てってが人体実験、自分でしているの!?
てって そうそうそうそう
市村  あははは、そんで、
てって あのね、普通におなか空く
市村  あっははは、だまされてんじゃん!
てって 三時間にダース一粒
市村  あーはいはい、ちゃんと計画的に食べてるんだ
てって そうそう、食べ続けることによって、一日何も食べないで過ごせるか、みたいなのを何日かやってるんだけど、
市村  おー、それやれれば、ダース二箱で一日過ごせるんでしょ
てって 過ごせる過ごせる、
市村  なるほどなるほど
てって 過ごせないけどね
市村  騙されてるじゃねえか。

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7.批評「2013リリースのCDアルバム個人的BEST5」ハヤト

1.  James Blake『Overgrown』
 今年1番聴いたと思う。前作よりも歌が前に出ている印象があるが、ボーカルと他の音の絡みが絶妙過ぎる。独特なメロディラインが病みつきになること間違いなし。音の配置の妙。

2.  Atoms For Peace『Amok』
 レディオヘッドのトムがリズムにおける理想を具現化する為作ったようなバンドの、執拗なリズムへの執着。肉体的で体が自然と揺れる1枚。音自体はイージーリスニング的にも聴ける。

3.  Adrian Corker『Raise』
 たまたまタワレコで試聴して何となくよかったから買ったけど、いい買い物だった。ピアノやストリングスを基調にシンセサウンドがそっと身を寄せる。ピアノって素晴らしい楽器だなと改めて思い知らされた。静かな夜の空気に乗せたい。

4.  なのるなもない『アカシャの唇』
 8年ぶりのソロアルバムだが、ブランクを全く感じさせない。流れるようなフロウはより深化し、やわらかな光が注ぐようなトラックに身を委ねる。ビシバシ言葉が入ってくのがヒップホップの魅力だけど、それとはまた違う心地よさを感じれる。

5. Sigur Ros『Kveikur』
 最近のはちょっと多幸感が強過ぎる感じがして暗いの好きな俺としてはちょっと避けてたけど、このアルバム最高っす。底なし沼にはまったみたいにズブズブに音に沈めてくれる。隕石が地球に落ちる時に頭の中で鳴る音ですねこれ。


 上記のアルバム以外にも 、Oneohtrix Point Never『R Plus Seven』や、Darkstar『News From Nowhere』、Washed Out『Paracosm』等もよかった。個人的にかなり競っていました。
 
 ちょっと残念だったのが、凛として時雨『i'mperfect』かなあ・・・正直カオスの度合いは前回のが限界だったのかなと。今回のはただ音がむちゃくちゃ鳴ってる、という印象を受けてしまった。まあいい曲はあったし、ライブはすんごいよかったのだけれど。期待が強いだけに、という感じです。

 今年リリース以外にもレンタルで取り込んでた中で気に入っていたのを改めて買ったり、ふとした出会いで買ったり。けっこーちょこちょこ買ってました。お金に余裕がある限りはなるべく買いたいなあ。来年もいい音楽と出会えるのを楽しみにします。

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8.コラム「本を売る」市村

 漫画・小説・雑誌。昔から本が好きで、ブックオフに行くと100円の本を勢いで10冊くらい買ってしまって。そして結局読まないということも多々ありました。大学生のときは特にそのきらいがあって、溜まりに溜まった本が未だ居候していたおばあちゃんの家の本棚に放置してあります。社会人になって、今の奥さんと同棲するようになり、イタズラに本を買い漁ることはなくなったものの、それでも集めている漫画があれば買ってくるし、読む小説が無くなれば新しいものを買ってきてしまいます。
 時に日本には年末の大掃除というイベントがありまして。今年は奥さんから「本棚の本をなんとかせよ」というミッションを与えられました。これは良い機会なので、売ってしまおうと。今までは「後で読むかもしれない」とか「これは良い本だった」と思う本は残しておこうと考えていたのですが、これはその考え方そのものを変えていかねばならぬと。というわけで基準を「手元になくてはならない本」という一つに絞って仕分け作業に向いました。
 さあそうして本をどんどん仕分けしていきます。「これはいつか読もうと思ってたやつ! しかし売る」「これは面白かったなー! しかし売る」「これは家に代々伝わる家宝! しかし売る」とまあ、こんな感じで本を本棚から抜き取っていきました。
 一通り作業が終わるとひとつ問題が。これ、売るにしてもどうやってブックオフまで持っていく?仕分け作業も最後の方は調子が出て来たこともあって、その量がそこそこになってしまいました(あとあと聞いたら55冊でした)。どうしようかなーと迷っていたところ、奥さんから名案が。これで行けば?と持って来たのはスーツケース。新婚旅行で使って以来の大型のスーツケース。そこに本を詰める詰める。
 ぎゅうぎゅうになったスーツケースをなんとか閉めて、よし出発しようと思ったそのとき。なんだこの重さは。スーツケース特有の、取っ手を傾けての前だけ片輪走行みたいなやつをやろうとすると、片手に襲いかかるとてつもない重力。まるで捨てられる本の呪いまで上乗せされたかのようなその重みに、いやいやいやいやと冷や汗をかく僕と奥さんだったのです。
 まあそんなこんなでめちゃくちゃ重いスーツケースを両手を使った四輪走行でなんとかブックオフまで運んで売ってきました。55冊で1600円になりました。思った以上に高く売れたと思ってます。こんな大変な思いをしたことで、なんかもうあんまり本を買うのやめようかなーと思ってしまいました。
 モノを増やすっていうのはある意味でリスクというか、片付けるのに手間はかかるし、処分するのはもったいないし、売ろうとすると呪いをかけられるし。一方で買わないことの威力ってすごいなと。だってお金減らないし、モノ増えないんですよ。こんなことってあります?いやーいいことに気づけましたよ。はははー。

 そして僕は電子書籍に出会う。

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9.小説「悔いの椅子」てって

 お正月が過ぎたというのに僕はまだ去年のままだった。

 あたりまえだ。

 お正月を迎えようが、大晦日を置いていこうが、人間そうそう変わるものではない。一年の節目を迎え受け入れたとしても、身長が飛躍的に伸びるわけじゃなし、性格が格段に明るくなるわけじゃなし、周りの人からラブラブな態度をとってもらえるわけじゃなし、闇の力に目覚めるでも無ければ、空から女の子も降っては来なかった。そういつもと、いつもと変わらずに、むすっとむくれた生徒とにらめっこをしていた。

 ねむい。

 そうつぶやくのは何回目だろうか、そう気になるほどに彼女はねむいねむいと言葉を落とす。しかし口ではそう言うものの、顔にはそう表すものの、態度にはそう出すものの、手はさくさくと動いていた。どうやら得意なところらしい。解き終わったあと、こっそり自慢げな顔をしていた。その顔はかわいく、いつも明るそうにしていればいいのにと思わなくもなかったが、もしかしたら普段みせている気怠そうな顔からのギャップ効果というやつかもしれない。そう考えると、このままのほうがいいのかもしれないと思う。

 ねむい。

 どうにか、出来るようになってほしいと思う。それも強く。この気持ちはなんだろうと、合唱曲よろしく考えたこともある。しかしよくわからなかった。彼女が出来るようになったところで、僕になにかメリットがあるわけではない。まぁ、だから、いいのかもしれない。理由は、出来ない彼女が出来るようになったらいいから、なのだ。自分にとってなんの利益がなくとも、いやむしろ無いからこそ、気負わずに、僕を費やせるのかもしれない。

 僕自身、なにかを変えようとは、とくに思ってはいなかった。変わってほしいと思う事柄はいくつかあげられるが、そのどれもが、どれもこれもが、まぁ、変わったらいいなくらいだからか、いっこうに変わる気配をみせない。なんだろうか、僕は、変化が嫌いなのかもしれない。

 椅子を引いたまま、時間とともに抜け出す彼女。

 一月が終わろうとする月日に、友達の小説を読む。

 そして思う。

 変化が嫌いなこの僕はきっと、銃で撃たれても死ねないのだ。

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10.コラム「美術館の憂鬱」ハヤト

美術館へ、行ってきた。
別に絵など詳しい訳ではないが、凄い人の絵などが安い値段で見れる。
なんと素晴らしいことか。
ただ、
気になる。
学芸員が。
何となくこっちを見ているような気がする。
それが自分の好みの女性であればなおさら気になる。
ただ、話かけるのも気が引ける。
作品の鑑賞のポイントなどを聞けばよいのだろうか。
いっその事、その女性も美術品として思い込んでしまおうか。
そうすればじーっと観察しても問題は無い。必要なのは強い精神力だ。
そんなアバンギャルドな思想と、作品に集中するんだという思考が錯綜する中、
またも気になるものが現れてしまった。
消化器。
普段は特に気にならない、というか全く注意を払わない存在である消化器が、
すっごい気になってしまうのだ。
周りの壁のグレーと同じ色に仕上げられたケースに、
「消化器」と力強く赤で書かれて隅に置いてある消化器の、あの存在感。
他の作品と同じように何かしらタイトルが与えられていたら。
例えば「非日常の咆哮」などとタイトルが与えられていたら、
あの消化器は間違いなく作品として認められ、ご来場の皆様に様々な解釈を
与えたに違いないのだ。
「消化器ってのは火事っていう非日常のなかで使用するものだ。『メメント・モリ』、
つまり自分がいつか死ぬ事を忘れるなっていうラテン語を暗に示しているのかもしれないな」
などと解釈してもらえたのかもしれないのだ。
美術館は全ての概念にアートを宿してしまう。
ああ、美術館て素晴らしい。

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11.小説「昼下がり」市村

 微かに聴こえる飛行機の音が空に散らばっていた午後の3時。時計の短針がてっぺんを超えて昼を下がろうとするのとは反対に、暖かなまどろみを携えた夏の始まりは、雲の動きに同調するかのように緩やかに時間を進めていた。
 冷蔵庫のドアを開けて、中から数日前にコンビニで買ったカフェラテを取り出す。特に喉が渇いたというわけでもないのだが、かといって他に何もすることもないので、そういえば飲んでいないカフェラテがあったなあと思い、冷蔵庫を開けてみたのだった。
 飲み忘れられたカフェラテ。
 確か会社の帰り道だった。その日は仕事が忙しく、何日かぶりの残業になってしまったのだった。なんとか仕事を片づけ22時には退社したものの、夜ごはんを食べる時間もなかったため、最寄り駅からの帰り道にコンビニに寄った。適当な菓子パンを2つほどカゴに入れ、そして思い巡らすお飲み物。なんとなく甘めのコーヒー飲料が飲みたいなと、選んだのがカフェラテだった。
 家に帰り、コンビニ袋ごとテーブルの上に置いてスーツを脱いだ。汗でシャツがくっついて少し気持ち悪かった。Tシャツとハーフパンツに着替えると、ぼくはDVDレコーダのリモコンを手に取り、番組を選んだ。撮りためていたバラエティ番組を流して、買ってきたパンをもしゃもしゃ食べた。
 カフェラテは飲み忘れた。
 そんなカフェラテを、今飲んでいる。あの日の味はもうしない。いや、べつにあの日に飲んでいたって"その日の味"なんてしなかったのだけれども。
 
 窓を開けていると、風の切れ端がゆるやかに体にぶつかってくる。それはとても心地の良い風で、この風がいつまでも続けばいいと思ってしまう。それでも思いとは裏腹にその連続はふとした瞬間に途切れて終わる。
 音と音の間に沈黙が充満しているように、風と風の間に吹いている無風を、このときだけは感じることができる。次の風までの間の数秒。秒針がまるで一秒を引き伸ばしたかのように、わずかに居座った瞬間を感覚器官が捉えることができる。そしてその起き抜けに見る夢のような微かな実体も、新たに吹く風に飛ばされて散らばってしまう。煙よりも軽く。

ふと思う。ぼくがもしも風だったなら。
この風を感じることはできなかったのだろう、と。
風でなくてよかった。

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