バートランド・ラッセルの言葉366

n.1311 ラッセル『権力』第14章 競争 n.11


カテゴリー: 2018年02月09日
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 「ラッセルの英語」では,英語の学習に参考になりそうな例文をラッセルの著作
  からご紹介していますが,「ラッセルの言葉366」では,日本語にした時の'内容'
  に注目して,ラッセルの発言をご紹介していきます。
  読者と一緒に育てていきたいと思っていますので,誤訳や不適切な訳等がありま
  したら,お知らせいただければ幸いです。

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 ラッセル『権力』(Power, 1938) 第14章 競争 n.11
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 第14章 競争,n.11

 政府がたとえば誰か特定の人物の暗殺を駆り立てるような宣伝を許してよい,とは
私は考えない。というのは,このような場合においては,そういった宣伝によって改
心する(心が動かされる)人はたとえほとんどいないとしても,勧められている行動
が起こるかも知れないからである。市民が法的に死刑(判決)を受けているのでなけ
れば,市民の生命を守ることは国家の義務であり,また,誰かを暗殺することを支持
する扇動が存在していれば,その(暗殺)対象の人を保護することは非常に困難にな
るかも知れないからである。ワイマール共和国はこの点で手ぬるすぎた。しかし私は
,安定した政府は(政府が安定している場合には),ある階級の人々を「法的に」死
刑に処すことに賛成するような扇動(アジ)を禁止すべきだとは考えない。というの
は,そのような扇動(アジ)には合法性を脅かすものはまったく含まれてないからで
ある。(注:特定の個人を対象にしていないこと,また政府が安定している場合とい
う限定があることに注意。たとえば「ブルジョア階級を殲滅せよ!」と野次っていて
も、本当に殺せといっているわけではなく、「法的に」支配階級から引き釣り降ろせ
と言っているだけであり、政府が安定している場合にはあまり害はない、といったニ
ュアンス。ただし、政府が安定していなくて,革命前夜のような状況においては単な
るアジに終わらない可能性があるので別である。)

 政府の観点(見地)から言ってさえ,国家の存立に対する危険を含まない意見に干
渉することには,正当な理由はまったくない。もしある人が,地球は平らだとか,安
息日は土曜日に守らなければならない。(注:キリスト教の安息日は通常日曜日だが
、一部の宗派では土曜日を安息日としている。)といった意見を抱いているなら,そ
の人が全力をあげて他の人々を自分の考えかたに変えさせようとすることは自由でな
くてはならない。国家は,自らを,科学や形而上学や道徳(など)の真理の守護者だ
と,考えてはならない。これまで大部分の場合,そのように(国家は真理の守護者)
考えられてきたし,現在,ドイツ,イタリア、ロシアにおいては,そのように考えら
れている。しかし,それは(それらの国家の)弱さを告白していることであり,安定
した国家は,そのような弱さを免れていなければならない。

Chapter 14: Competition, n.11

I do not think that a government should ever allow a propaganda urging, say,
 the assassination of some particular person. For in this case the action 
recommended may take place even if very few men are converted by the 
propaganda. It is the duty of the State to protect its citizens' lives 
unless they have legally incurred the death penalty, and if there is an 
agitation in favour of some one's assassination it may become very difficult
 to protect him. The Weimar Republic was too lax in this respect. But I do
 not think that a stable government ought to prohibit an agitation in favour
 of making some class of persons legally liable to the death penalty, for 
such an agitation would involve no threat to legality.

There can be no good reason, even from a governmental point of view, for 
interference with opinions which do not involve danger to the existence of
the state. If a man holds that the earth is flat, or that the Sabbath should
 be observed on Saturday, he should be free to do his best to convert people
 to his way of thinking. The State should not regard itself as the guardian
 of the Truth in science, metaphysics, or morals. It has done so at most 
times, and does so at present in Germany, Italy, and Russia. But this is a
 confession of weakness, from which stable States should be exempt.
 出典: Power, 1938.
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