知的財産と調査

第39号「特許異議申立て制度に関する誤解」他


カテゴリー: 2017年05月01日
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
平成29年5月1日

            知的財産と調査
                            第39号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 本メールマガジンでは、

 弁理士である著者が、知財に関するニュース、セミナーの情報、書籍の
 紹介の他、特許調査等で役立つ実務上のテクニックをお伝えします。

----------------------------------------------------------------------
■弁理士の角田 朗です。本号もよろしくお願いします。

第39号のメニューは以下になります。

■特許異議申立て制度に関する誤解
■特許情報提供サービスに関する調査報告書
■知財の新刊紹介
■知財に関するQ&A
■編集後記
___________________________________

■特許異議申立て制度に関する誤解
___________________________________

最近、日本の特許異議申立制度に関する誤解が拡がっているようです。
例えば、復活後の特許異議では、取消理由の通知がされるのは10%以下といった
根拠のない噂です。

また、アメリカの無効審判制度IPRは利用が拡大しているが、日本の特許異議は
利用が低迷しているという噂も流れています。

しかし、先日自分のブログにも書きましたが、現行の特許異議制度でも50%以上
の特許に取消理由が通知されています。
http://ameblo.jp/123search/entry-12269166198.html

そして、USPTOの統計を見てみると、2016年においてIPRは申立が1,565件、
アメリカの異議申立制度PGRに至っては申立は24件しかありません。
https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/aia_statistics_december2016.pdf

日本の特許異議は、昨年の1月から11月までの11ヶ月で1,263件です。12/11倍
すると1,379件となり、アメリカのIPRと同程度になります。
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/syutugan_toukei_sokuho.htm

現行の特許異議申立てで、証拠が不十分など取消理由なしで維持決定となった
場合には、3ヶ月程度で結論が出ます。
一方、取消理由ありの場合には、取消理由の通知⇒意見書・訂正請求の機会
⇒申立人による意見書提出機会⇒取消予告⇒再度の訂正請求の機会⇒取消決定と、
多数のプロセスがあり決定まで1年以上かかります。

直近の決定のみ見ていては、特許異議制度の実態は見えてきません。

また、旧異議申立制度は取消率が高く、新異議申立とは別ものと言われる方も
います。確かに新異議制度では、訂正請求の機会が2回以上あり、取消決定が
されにくくはなりました。しかし、取消率が下がった本質は15年前の進歩性
判断基準(同一技術分野論)と現在の進歩性判断基準(論理づけ重視)の違い
でしょう。

同様にアメリカのIRP成功率が高く見えるのも、TSMテストを厳格運用していた
時代の特許が、KSR事件後の非自明性判断基準では無効になりやすくなったと
いう、非自明性の動向が原因です。

異議制度や無効審判制度の変更により、特許の取消率や無効率が変化したの
ではなく、進歩性の動向が影響したのが本質です。

特許異議申立で成功するのは、審査以上の証拠を見つけ的確な進歩性の論理
づけを行う必要があります。そのようなスキルを磨くことが最重要でしょう。
___________________________________

■特許情報提供サービスに関する調査報告書
___________________________________

今年も特許庁より、特許情報提供サービスに関する調査報告書が公表されました。
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/sangyou_zaisan_service_houkoku.htm

昨年度は、高度な特許情報サービスの普及活用に関する調査がテーマになっており、
以下の報告書等が公表されています。

「平成28年度高度な特許情報サービスの普及活用に関する調査」
・公表版
・民間事業者が提供する特許情報サービスの機能紹介
・利用目的に応じた海外特許情報サービスのアクセス方法
・その他 別添資料

J-PlatPatが高度化すると、商用データベースが売れなくなると懸念する声もあり
ます。しかし、上記公表版報告書を読む限り、商用データベースには独自の機能
が多々備わっており、J-PlatPatの高度化で、機能が必要な方が契約しなくなる
とは考えにくいでしょう。
___________________________________

■知財の新刊紹介
___________________________________

1.「ビジネス法体系 知的財産法」
http://lexisbookstore.jp/book/000734.html
法律の逐条的な解説ではなく、実務に関係する法令やビジネス上の留意点に
ついて詳解を試みるなど、実務に沿った構成となっています。

2.「理工系の基礎 知的財産」
http://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/book_data/search/9784621301647.html
理工系の学生・研究者に必要な特許の知識や、情報化社会において自衛に必要な
著作権の基礎知識等を解説しています。

3.「新欧州特許出願実務ガイド」 
https://www.amazon.co.jp/dp/4806529915
欧州特許出願手続に特有の実務を詳しく解説し、EU特許パッケージ等の最新
欧州関連状況を解説した近刊です。

4.「世界のソフトウエア特許 改訂版」 
https://www.hanketsu.jiii.or.jp/store/top_f.jsp
ソフトウエア特許に関する動きと法律・裁判例・審査基準を集め、それらに解説
を加えた改訂版です。 

5.「知的財産権法概論(紋谷)」
https://www.hanketsu.jiii.or.jp/store/top_f.jsp
一つの知的財産権に多くの権利が関係しており、複雑といわれる知的財産権を
理論的・体系的・横断的に解説した唯一の書とのことです。

6.「判決でみる営業誹謗行為」 
http://www.taiyo-g.com/shousai196.html
現在の企業活動を含む社会システムにおいて不可欠であるインターネットを
手段として使用した事案に着目し、不正競争防止法における営業誹謗行為の
判決例を整理したとのことです。
___________________________________

■知財に関するQ&A
___________________________________

Q:先行技術調査を行う場合に、特許分類の下位(下位分類)を含める必要が
ありますか?

A:原則として下位分類を含めて検索する必要があります。先行技術調査や
無効資料調査では、発明の具体例(下位概念)が記載されていても、発明が
認定されるからです。

例えば、請求項が金属製フレームの場合、先行技術にチタンフレームが開示
されていれば金属製フレームが認定されます。したがって、先行技術調査では、
原則として下位分類を含めた検索が必要です。

デフォルトで下位概念を含めた検索を行うデータベース、指定により下位分類
が含まれるデータベース、下位分類を含めた検索ができないものなど、データ
ベースにより仕様が異なります。検索前に特許分類表の下位分類とデータベース
の仕様を確認する必要があります。

他の方が行った検索式を見ていると、先行技術調査にもかかわらず、下位分類
や下位概念のキーワードが漏れていることが少なくありません。特許調査も
特許実務の一分野ですから、特許実務に関する知識が重要です。
___________________________________

■編集後記
___________________________________

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Patentfieldという米国の会社から、研究者向けの特許分析ツールがリリース
されました。
https://patentfield.com/

特許分類を使った複雑な検索はできませんが、研究者がキーワードで手軽に
検索や分析ができる点を売りにしたシステムと思われます。現状、USとJP
の公報が収録されています。

セマンテック検索(概念検索)では、AIを用いているとのことです。
無料のプランもありますので試してみたいと思っています。

最近、図形商標検索などAIを使ったシステムがブームになっていますが、
従来のシステムに比べて、それほど性能が高い訳ではないようです。

AIやIoTなど新しいIT技術により、世の中が便利になるのは間違いない
でしょうが、流行に踊らされず物事の本質を見極めて行きたいと思います。

ご感想・ご意見等、ありましたら、いつでもご連絡下さい。

                              (角田)
___________________________________

メールマガジン「知的財産と調査」

☆発行責任者:角田特許事務所
☆公式サイト:http://www.tsunoda-patent.com/
☆問い合わせ:info@tsunoda-patent.com/
☆登録・解除:http://www.mag2.com/m/0001621127.html

知的財産と調査

RSSを登録する
発行周期 ほぼ 月刊
最新号 2018/06/04
部数 227部

このメルマガを購読する

ついでに読みたい

知的財産と調査

RSSを登録する
発行周期 ほぼ 月刊
最新号 2018/06/04
部数 227部

このメルマガを購読する

今週のおすすめ!メルマガ3選

日本株投資家「坂本彰」公式メールマガジン
サラリーマン時代に始めた株式投資から株で勝つための独自ルールを作り上げる。2017年、億り人に。 平成24年より投資助言・代理業を取得。現在、著者自身が実践してきた株で成功するための投資ノウハウや有望株情報を会員向けに提供しているかたわら、ブログやコラム等の執筆活動も行う。 2014年まぐまぐマネー大賞を受賞。読者数3万人。雑誌等のメディア掲載歴多数。 主な著書に『10万円から始める高配当株投資術』(あさ出版)『「小売お宝株」だけで1億円儲ける法』(日本実業出版社)
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

●人生を変える方法【人生をよりよくしたい人必見!誰にでもできる方法を組み合わせました。】
■「人生(自分)の何かを変えたい!」と思ってる方、まずは最初の1分から始めましょう!今日は残っている人生の一番初めの日です。今、「人生を変える方法」を知ることで、一番長くこの方法を使っていくことができます。コーチングで15年間実践を続けてきている方法なので、自信をもってお勧めできます。「人生を良くしたい!」と思うのは人として当然のこと。でも、忙しい生活の中で人生(自分)を変えることって諦めてしまいがちですよね。誰かに変える方法を教えて欲しいけど、その方法を知っている人は少ない。だからこそ・・・。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

生きる意味は仏教に学びなさい
あなたは何のために生きていますか?なぜどんなにお金があっても幸せになれないのか。あなたの人生をむなしくする心の闇とは?今この瞬間に幸せを感じ、後悔のない人生にする方法。本当の生きる意味とは何か。仏教史上初のウェブ通信講座を開設して年間受講者数日本一、5万部突破のベストセラー『生きる意味109』の著者・長南瑞生が、現代の葬式法事の仏教界では失われた、生きている人を心から幸せにする仏教の秘密を分かりやすく公開。発行者サイトでも隠された仏教の教えを知る秘密を無料プレゼント中。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

今週のおすすめ!メルマガ3選

生きる意味は仏教に学びなさい
あなたは何のために生きていますか?なぜどんなにお金があっても幸せになれないのか。あなたの人生をむなしくする心の闇とは?今この瞬間に幸せを感じ、後悔のない人生にする方法。本当の生きる意味とは何か。仏教史上初のウェブ通信講座を開設して年間受講者数日本一、5万部突破のベストセラー『生きる意味109』の著者・長南瑞生が、現代の葬式法事の仏教界では失われた、生きている人を心から幸せにする仏教の秘密を分かりやすく公開。発行者サイトでも隠された仏教の教えを知る秘密を無料プレゼント中。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

●人生を変える方法【人生をよりよくしたい人必見!誰にでもできる方法を組み合わせました。】
■「人生(自分)の何かを変えたい!」と思ってる方、まずは最初の1分から始めましょう!今日は残っている人生の一番初めの日です。今、「人生を変える方法」を知ることで、一番長くこの方法を使っていくことができます。コーチングで15年間実践を続けてきている方法なので、自信をもってお勧めできます。「人生を良くしたい!」と思うのは人として当然のこと。でも、忙しい生活の中で人生(自分)を変えることって諦めてしまいがちですよね。誰かに変える方法を教えて欲しいけど、その方法を知っている人は少ない。だからこそ・・・。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

【六単塾】1日数分で英単語・英文をあきれるほど覚える方法
「英語をやり直したいけど面倒なことはしたくない」「英会話したいけど時間がない」「TOEICスコアが急に必要になった」そんなあなたに。1日10分、たった6単語で英語が話せるようになるためのメルマガを1日1通お送りします。登録は2秒で終了。今すぐ登録してくださいね。
  • メールアドレスを入力

  • 規約に同意して

他のメルマガを読む

ウィークリーランキング