古代史探求レポート

絵の中に残された痕跡が語る真実


カテゴリー: 2017年10月10日
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古代史探求レポート 2017年10月11日号
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ここ数日一雨くるごとに、寒くなって行くようです。偏西風が南下するせいだそうですが、移動性高気圧や低気圧が交互にやってくるようになり、そのうち前線ができ停帯するようになります。いわゆる秋雨の時期になるわけです。嫌なのは長雨です。晴れてカラッとしていると気分も良いのですが、雨の日は朝から憂鬱になります。
雨を喜ばないのは、現代の人だけではありません。旱魃で全く雨が降らず農作物に被害が及ぶのは論外として、古代から雨の日は人々に嫌われていたようです。
「雨障(あまつつ)み、常する君は、ひさかたの、昨夜の夜の、雨に、懲(こ)りにけむかも」万葉集に掲載される大伴女郎の歌です。雨が降ると月も出ませんし、男性も女性を訪ねて行きません。帰れなくなり、朝を迎えるのも嫌なのかもしれません。この歌に出てくる男性は雨に濡れて嫌になってしまったようです。雨のせいではないように思いますが、雨とは決して楽しいものでなかったことがわかります。
「秋の雨に、濡れつつ居れば、いやしけど、我妹(わぎも)が宿し、思ほゆるかも」こちらは、大伴利上の歌です。雨に濡れると、みすぼらしい家でもあの女の家が恋しくなるという、本当に失礼な歌ですが、雨の嫌さが出ているように思います。貴族の人々は、異常なほど雨に濡れるのを嫌がったようです。それは着衣が濡れるというだけではなかったようです。
貴族は、仕事をしませんから雨が嫌いなのは当然です。一方で庶民はどうだったのでしょうか。稲作が中心であった民族ですから、雨はなくてはならないものであったことも事実です。藁で竜を作り雨乞いをする風習は、現在でも残っています。農民は、雨だからといって仕事を休むようなことはありませんでした。皆、古代から雨具を着て働いたのです。
雨具の代表的なものは、笠と蓑でした。ご存知のように、これらは稲藁で作ります。乾燥した藁は水を弾きます。この性質を利用して、藁で頭にかぶる笠を編み、全身を覆う蓑を編みました。日本書紀の中では、素盞嗚尊が素行が悪く葦原の中つ国から追放された時の記述として、以下のようなくだりが残されています。
「追放されたのは、長雨の時だったので、スサノオは青草を束ね、それを笠と蓑にして、道中に住む神に、休ませてもらえる宿を願いました。しかし、神々が言うには「お前のやったことがとても悪いことで穢れているから追い出されたのだ。なのに、どうして宿を提供できるか」と言って、拒否したのです。スサノオは雨風が強い中休むこともできず、苦しみながら天から降りて行ったのです。
これ以降、笠や蓑を身につけて他人の家に入ることを嫌うようになりました。また、草を束ねた物を背負って家の中に入るのを嫌います。これを破ってしまうと、必ず祓いをしなくてはいけません。これは古くから残る掟なのです。」
面白いのは、藁ではなく青草で笠と蓑を作っていることです。スサノオのいた世界でも、稲作をしていたはずでしたが、藁を使わず青草を使っています。菖蒲やカキツバタは、水辺に咲きますが長い葉はやはり水を弾きます。これらを原料として笠と蓑を作ったのでしょうか。藁で作るには、前もって干した藁を用意しておかなければなりません。それができなかったということなのかと思います。
注目したいのは、濡れた雨具をつけたまま家に入るのは嫌われていたようだということです。湿気がこもるでしょうし、土間が濡れるので人々はもともと嫌がったのでしょうが、「お祓い」をしなければならないほどの掟として嫌がられていたというのは、感情を超えてしまっています。これはきっと、雨に濡れると邪気を連れてくると言う考えがあったからだと推測するのです。
雨に濡れると体が冷えてしまいますので、風邪をひいてしまいます。古代、病気は「穢れ」によってなると考えられていましたから、雨がかかることで穢れが移り熱が出たり咳き込むようになると考えられていたのだと思います。だからこそ、「お祓い」が必要になってくるのです。従って、貴族は雨が降ると外出を避け濡れることを極端に嫌がり、農民達は体中を藁で覆って雨に濡れないように身を守ったのです。そして、笠と蓑は外に脱いで干しておかなければならないものであったようです。
イギリスに行くと、雨の日が多いのですが、人々はあまり傘をさしません。小雨なら濡れて歩きます。顔に雨粒がかからないように、新聞などで雨避けをして歩く姿を見かけます。それに比べると、日本人は異常な程雨に濡れることを嫌います。ぽつ、ぽつと降って着た段階で、皆傘をさしだします。この習慣は、古代からの考え方が染みついているからなのかもしれません。
笠と蓑は、明治時代になっても使われていました。笠と蓑の利点は、両手が使えることです。雨の日であっても外で作業をする必要があった多くの農民にとっては、笠と蓑は必需品でした。今は、化学繊維が発達し雨合羽に変わりましたが、200年ほど前までは人々は笠と蓑を藁で編んで使っていたのです。通気性も優れていますし、私は化学繊維の雨合羽よりよほど着心地の良いものだと理解しています。欠点は、かさばることでしょうか。
現代の雨具の代表は、傘ですがこれはいつ頃できたものなのでしょうか。同じ「カサ」ではありますが、笠は頭にかぶるもの、傘は手に持つ雨具として発達してきました。
福岡県若宮市にある彩色古墳として有名な竹原古墳は、6世紀後半に築造されたものであろうとされています。この古墳に描かれた絵の中には、「天蓋(てんがい)」と見られる、長い棒の先に大きな扇がついたものが描かれています。また、奈良の高松塚古墳は極彩色の壁画が発見され、特に描かれていた女子群像は飛鳥美人であるとして有名になりましたが、同じく描かれていた男子群像では一人の男子が天蓋を持って歩いています。こちらは、大きな傘として描かれています。
天蓋自体は、中国で貴人にさしかけ使われていたものですが、その目的は「魔除け」にありました。日よけに使われていたとの説もありますが、中国での天蓋は主目的が魔除けにあったことは事実です。
古墳に描かれた絵にある通り、日本でも早くからこの天蓋(てんがい)が伝わっていたようで、「衣笠(きぬがさ)」と呼ばれていたようです。「きぬ」の音が示すように、傘の部分には絹が貼られていました。欽明天皇の時代に聖明王から仏教とともに仏教道具の一つとして伝わった描かれているものもあるようですが、伝来は古墳に描かれた絵からも分かる通り、もっと古くに伝わっていたようです。
日本人はこれを真似て、かつ工夫を凝らして、新しいものを生み出します。まず、この大きな傘の材質を竹と和紙に変えました。これが平安時代のことです。この時点で、からかさ(唐傘)と言われていた言葉が、和傘に変わったのです。なぜ、平安時代に変わったことがわかるのかと言いますと、平安時代に作られた源氏物語絵巻の中に、大きな和傘をさしかけられている光源氏の姿が描かれているからです。
東京国立博物館には、 時宗を起こした一遍の絵巻物である、国宝の「一遍聖絵(いっぺんひじりえ)」があります。この京都の「空也上人の旧跡・市屋道場で踊り念仏」の絵の中の真ん中左上の台の上に、間違いなく開閉式の傘が精密に描かれています。
開閉式のように見えていると主張しているのは私だけかもしれません。皆さんも是非機会があると確認していただきたいのです。この絵は1299年に描かれたとありますから、鎌倉時代には間違いなく開閉式の傘が作られ使われていたことがわかるのです。(こう言っているのは、私だけかもしれません。)
この傘が、今のように、雨傘として進化するためには、和紙が水を弾かなければなりません。和紙に油を塗ることで、水と油が混ざらない性質を利用して雨傘としたのです。こうして、雨傘として使用され出すのは室町時代に入ってからのようです。
一本の傘が綺麗に開き、閉じるのは不思議だと思われませんか?和傘の作り方を見ると、なる程と理解できるのです。和傘を作るのには、まず、一本の竹をを使います。この一本の竹を縦に細く割って、傘の骨に当たる部分を作ります。一本の竹を細く割いていくわけですから、骨を合わせるとまた一本の竹になります。だから、傘が綺麗に閉じるのです。つまり、閉じた状態で竹に戻るのです。これを作る人を骨師と言いました。
次に紙をこの骨に貼っていきます。骨と骨の間に紙を畳まなければ傘は綺麗に閉じません。先端に行けば行くほど、間隔は狭くなりますから、紙を畳めるように織り込むのも大変な作業です。これを担当する人を貼り師と言いました。そして、できた傘に油を塗って乾かします。乾くとその上から、漆(うるし)を塗りました。これを担当する人を仕上げ師と言いました。こうして、分業体制がとられ、専門の職人が傘を作るようになったのです。
戦国時代に入ると、呂宋助左衛門(るそんすけざえもん)がルソンとの貿易を行い、豊臣秀吉に数々の珍品を献上したのですが、その中に唐傘がありました。この唐傘には、現代でも使われている「ろくろ」と呼ばれる骨を束ねて部品が付いていたと言われています。私は、一遍聖絵に描かれた傘にもこの「ろくろ」が見られることから、ルソンがもたらす前から日本に存在していたと考えます。ちなみに、あまりにも贅沢な生活を送っていたルソンは家屋を没収されてしまいます。但し、処罰される前に彼自身は日本を脱出したようです。
江戸時代に入ると、和傘はどんどん進化をとげます。大坂の大黒屋が、安くで買えるようにと値段を抑えた傘を作り、これが「大黒屋傘」として広まり江戸に伝えられました。それを、大きな商人がお店に買いに着てくれた客のために何本も買い入れました。帰るとき、雨が降ると自分のところの判を押した傘を貸し出し「判傘」と呼ばれ、その後それが流行し、番号の付いた傘を貸したものですから、転じて「番傘」と呼ばれるようになったそうです。今では、普通の和傘を番傘と言うように変わりました。
その後、「雨雨降れ降れ母さんが、蛇の目でお迎え嬉しいな」と歌で歌われる、軽い「蛇の目傘」が作られるようになりました。蛇の目と言われたのは、上から見ると開いた傘の模様が、蛇の目のように見えたからだそうです。
明治になると、洋傘が輸入されるようになり、日本でも洋傘の製造工場が作られるようになりました。広げた形がコウモリのようになるため、蝙蝠(コウモリ)傘と呼ばれていました。明治初期には、一時期、傘を持つ姿が刀を持つ姿に似ていたことから、大阪府などは一般の人が蝙蝠傘を持つことを禁止する法律まで出されたこともあったのです。
今では、撥水性を度外視したビニールで作る安価な使い捨てのビニール傘、ワンタッチで開くジャンプ傘や、3段にも4段にも小さく折れる傘などに進化を続けていますが、最近は、傘をさすこともなく雨を防いでくれる器具まで売り出されています。雨具の進化は、まだまだ止まらないようです。
和傘を使うのは、最近ではお相撲さんぐらいになりました。京都の町に行くと、まだ、和傘を使っておられる人も多く見受けられます。紙でできているからこそ、雨の当たる音が「パラパラ」と聞こえ、私は非常に情緒があっていいように思います。今でも、「雨がパラつく」って言いますよね。パラパラは、日本の音なのです。
和傘は、確かに普段持ち歩くには不便なものです。傘はまだまだ進化していくのだと思いますが、和傘も愛して雨を楽しめるようになりたいと思っているのです。
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<<編集後記>>
政権選択選挙だと言って、希望の党は200人を超す立候補者を立てました。しかし、党首の小池さんは出馬しません。都知事を続けるのだそうです。政権選択と言いながら、自分が総理大臣につくことを放棄しているのです。無責任にも程があると思うのは私だけでしょうか。じゃ、誰が総理になるのですか?若狭さんなのでしょうか?それとも、民主の前原さんなのでしょうか?「勘弁してくださいよ。」と言いたくなります。
あまり国民を馬鹿にしていると、手痛いしっぺ返しを食らうことになると思います。
民主の仲間がいたところには、対立候補は立てないと言っている枝野さん。小池さんよりも期待されているのに、甘すぎるのではないでしょうか。

<発行者> 株式会社歴史探求社
<公式サイト> www.rekitan.co.jp
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