古代史探求レポート

千年の時を経て甦った「越」の名前


カテゴリー: 2018年07月10日
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古代史探求レポート 2018年7月11日号
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北陸地方のことを「越国(こしのくに)」と言います。福井県が越前、富山県が越中、そして新潟県が越後です。一つの国であったものを、令制国を整備する時に、あまりにも大きすぎるので、三つに分けたのだと考えられます。都に近い方から、前、中、後と分割するのは、吉備も同じで、備前、備中、備後に分けられました。すると、大宝律令によってということになりますから、701年以降、つまり8世紀のこととなります。
「越」という単独の国が、非常に大きな地域を維持できたのは、畿内との交流が非常に薄かったことの裏返しかと思います。越後に至っては、その大きさも良く分かっていなかったのだろうと推測されます。独立性が高かったと言うこともできるのかもしれません。この地域を日本の一部として強く認識させたのは、継体天皇に他ならなかったのかもしれません。
前にもお話ししましたが、国の名前が漢字2文字で表されるようになったのは、704年に国印が作られる時です。それ以前は、高志国と呼ばれていたようです。これは、古事記の中で、この名前が使われているためです。また、風土記には古志とも書かれていますから、国名として「こし」と呼ばれていたのは確かなようです。つまり、日本の越国は、コシという音から転じて越の字が使われるようになりました。
一方、紀元前600年頃、中国には「越」という国が作られました。ご存知のように、中国には黄河と揚子江という2つの巨大な河川が存在します。黄河も揚子江も海のように広い川幅を持つ大河です。このため、この河が国土を分け、全く違う文化を築き上げ、人種をも分かちました。
現在の中国の中心(こういう表現は問題はあるとは思いますが理解しやすいので敢えて使わせていただきます。)は、漢民族と呼ばれる人々です。現代の中華人民共和国14億人の94%が漢民族です。全世界の2割に相当するほど、巨大な民族として発展しました。
中国の歴史は、様々な民族による攻めぎあいの歴史でしたが、漢民族が勝ち残り自分たちの国を築き、発展させ、ここまで人口を増やしたのです。この漢民族をまとめ上げ、巨大化する礎を築いたのは、紀元前200年頃に登場した秦の始皇帝です。そして、この漢民族の祖先が住んでいたのが、黄河の流域です。つまり、黄河の上流や中流に住んでいた華族や華夏族とも呼ばれてい人々が元になって、漢民族を形成しているのです。
一方、もう一つの大河、揚子江(別名、長江)の流域に住んでいたのは百越(ひゃくえつ)と呼ばれていた人々、つまり越族です。そして、この越族が起こした国が「越」なのです。越は揚子江の南に広く展開していきました。
この越国の更に南にあった国が、越南国です。越は、その地域ではベツと発音されていました。だから、越南で、ベトナムと呼ばれるようになりました。今のベトナム国のことです。現代、日本においてベトナムを漢字で表現する時に、越国と記載するのはこのためです。
日本の稲作は、近年のDNA解析によって、中国の揚子江流域で作られていたものが伝わったということが証明されています。つまり、日本の稲作は、朝鮮半島経由ではなく、中国から直接伝わったようだというのが最新の理解です。稲作は、米だけが伝わっても作ることはできません。その稲作の方法を知っている人が一緒に日本に渡ってこなければ稲作は普及して行きません。
つまり、日本に越族が大量にやってきて稲作を伝えたということになります。
これまで、見つかっている最古の米は、岡山で見つかった約6000年前の物です。これは陸稲ですし、種子が存在したということなのだと思いますが、これを基準に歴史の流れを考えることはできません。最古の水稲跡の遺跡は、佐賀県唐津市の菜畑遺跡で約2600年前ですが、これも、そこに渡来してきた人が残したものと思われ、やはり基準として考えるには無理があるのかもしれません。
ただ、彼らもまた揚子江流域に住んでいた人々であったことは、かなり重要なことと考えます。では、日本、それも全国にまで広まり、それもかなり急速に広まったようですが、これを成し得たのは誰だったのかというと、越国の滅亡に合わせて、大量の人々が渡ってきたことにあるのであはないかと考えるのです。
越国が、隣の呉国と激しい抗争を始めたのが、紀元前520年頃、そして、楚の威王により滅ぼされるのが紀元前334年頃です。日本の中で定義されている稲作を中心とした文化の時代、すなわち弥生時代は紀元前500年頃からのことです。国立歴史民俗博物館が弥生土器付着の炭化米を、放射性炭素年代測定により検査したところ紀元前900年頃のものだという発表をしていることは知っていますが、これをそのまま、日本が稲作文化を享受した時代とするのは、如何なものかとも思います。
日本は日本単独で歴史を刻んでいる訳ではなく、世界の一部として歴史を刻んでいるわけですから、越国との関係性が非常に大きいのが弥生時代の始まりであったと考えて良いのではないかと思うのです。つまり、越国からの大量移民により、稲作が急速に広まったということではないかと考えているのです。
鳥越憲三郎という歴史学者がおられます。彼は、いくつかの書物に非常に面白い逸話を紹介されています。「かつて、広州の中山大学を訪れた時、歴史学系の先生たちに迎えられての歓談の際、倭人の「倭」の古音は「ヲ」woであったと聞かされた。その時の感激は大きかった。それは「倭」が越人の「越」の古音「ヲ」woに通じることに気づいたためである。物部一族の名門で愛媛県の越智国造をはじめ、越智姓の人たちの「越智」(ヲーチ)は、今でも古音のまま伝えられているのである」と述べられています。
言われてみれば、私が数年前、駅で転んで手の平の骨を折ったことがあったのですが、その時、私の懇意にしている医者の紹介で見ていただいたのが、地元の越智形整外科の先生でした。越智形整外科は「おち」と発音しています。
鳥越氏の論は、倭というのは辺境の地を意味し、倭人とは原始的な人々を言ったというものです。このため、中国においても、当初倭人は各地におり、それが、どんどんと外部へ外部へと追い込まれて行ったのだと言われるのです。
例えば、論衡に記載されている「成王の時、越常、雉を献じ、倭人、暢を貢す」の倭人は日本ではないとされます。論衡の成王は、紀元前1000年頃に存在した周の王ですから、縄文時代の真っ只中で日本が中国に朝貢していることになりますので、確かにあり得ないことと考えられます。
山海経の中に記載された「蓋国は鉅燕の南、倭の北に在り。倭は燕に属す」の倭も、もちろん日本のことではなく、山東省にあった倭族の国々のことであるとされています。山海経は最古の地理書で紀元前300年ごろに作られた書物です。日本の位置が正しくないことになりますしい、燕に属していた痕跡など皆無です。この倭族は、周に討たれ、斉に攻められ、呉に滅ぼされ、最後は越に攻略されて滅びたと書かれています。
倭人は、遥か昔から存在し、中国にも認識されていましたが、彼らは決して日本人のことではなかったのです。
また、次のようにも記載されています。「彼らは南方の越に討たれたので、南へ逃れることはできなかった。さりとて西には非倭族である強国の楚がおり。北には朝鮮半島の北部まで領有する同じく非倭族の燕がいて、しかも平壌近くまで要塞を築いていた。そこで朝鮮半島の中・南部へしか亡命することができなかった。」そして、彼らが日本に渡って倭となったと言われているのです。
しかし、多くの人々は戦いに敗れた後は、勝者に吸収されていったでしょうし、逃げるしかなかったのは王族だけであったのではないかと思います。それこそ、周、斉、呉、越に攻め込まれその度に支配者が変わっていった段階で、それでもまだ生き延びて朝鮮半島に逃げなければならなかったというは、あまり現実的でないように思います。
私は、それよりも越の人々が、日本にやってきたと考える方が、もっともっと素直なのではないかと思います。それこそ、越国の動乱と滅亡に合わせて、越を逃れて渡ってきた人々は、「ヲ」であると名乗り、それが倭として認識されていたのではないかと考えます。
例えば、魏志倭人伝に記載された「男子は大小となく皆ゲイ面・文身す」と書かれていたことで、倭人伝の倭人達も同じく原始的な人間としての共通点であると理解されていますが、ゲイ面・文身していたのは、北九州地域ならびに、壱岐、対馬の人々達で、皆、海中に潜って魚を取っていた人々です。つまり、彼らは稲作農民では在りませんでした。
弥生時代を作ったのは、稲作の民です。漁労で暮らす縄文系の人々では在りませんでした。つまり、真の倭国を形成していた人々は別に存在し、それが越からやってきた稲作農民達であり、彼らはゲイ面・文身をしていたわけではないと思われます。
「今から、三、四十年まで「首狩り」を続け、恐れられ蔑視されて「倭」と呼ばれていた部族が、雲南省とミャンマーの国境に沿う両地の山岳地帯に住んでいる。ミャンマー側では今でも「首狩り」を続けていると言われる。」また、倭という名前が、あまりに差別的なので、別の字を当てて「ワ」と呼ばれている裸で暮らす少数民族も紹介されています。
倭は、最も下等な人間として理解されていたようです。ただ、これは漢民族からみた差別用語で在り、最も東の端に住む日本に対して、その言葉で呼ばれ続けたのは仕方がないことであったと思います。
日本は長きに渡って大倭であったり、ヤマトであったり、その呼び名には変化や工夫をこらし、「ワ」であることから外れようともがいていました。白村江の戦いに敗れたことを契機として、別国としての日本を名乗りこれまでの倭を完全に捨てることを決断できたのは、良いことであったのかもしれません。
しかし、私達の倭は「越」であったとしたらどうでしょうか。名乗った途端に、警戒され潰されていたのは間違いないかもしれません。越と名乗り直せなかったからこそ、倭を受け入れたのではないかとお推測するのです。生きるための術として国名を変えたのではないでしょうか。倭を日本と変えた時と同じように、越ではなく倭であることを受け入れたのかもしれません。
北陸の越国は、越とは関係のない偶然の産物ではありますが、越の国が甦ったと喜んだ人々がいたかもしれません。今から1300年前に、約一千年の時を経て、越の名前は日本の中で甦り、その名は現代迄続いているのです。少し、感慨深いですよね。
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<<編集後記>>
西日本全域に及んだ豪雨による災害、皆様方の地域はいかがでしたでしょうか。被害を受けられた皆様に、心からお見舞い申し上げます。
酷暑の中、かたずけや再建でご苦労されていると思います。是非とも無理なさらないよう、また、くれぐれもご自愛くださいませ。


<発行者> 株式会社歴史探求社
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