F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-

【F.M.Letter No.142】


カテゴリー: 2018年04月30日
◇フード・マイレージ資料室 通信 No.142◇
 2018年4月30日(月)[和暦 弥生十五日]発行
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◆ F.M.豆知識  
◆ O.カレント  
◆ ほんのさわり 
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 GWに突入。少なくとも前半は好天との予報です。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は弥生十五日の配信です。
 今号では福島の「食」の、いわゆる「風評」被害について考えてみました。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるようなデータをコツコツと紹介していきます。

-回復していない福島産米の価格-

 東日本大震災と原発事故から7年以上が経過し、多くの人の関心が薄れつつあるなかで、福島県産農水産物に対するいわゆる「風評」被害は現在も解消されていません。
 その状況は品目等によって千差万別なのですが、ここでは特に米の価格に着目します。

 リンク先の図96は、福島県産コシヒカリの相対(あいたい)取引価格の推移を示したものです。なお、相対取引価格とは、全国の出荷団体等と卸売業者間の取引価格です。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/04/96_aitai.pdf

 これによると、震災前は全国全銘柄平均とほぼ同水準にあった中通り、浜通り地方のコシヒカリの相対価格(全国全銘柄平均=100)は、2011年以降、大きく低下したことが分かります。その後、最近は上昇しているものの、特に浜通り産については震災前の水準にまで回復したとは言えません。

 他の品目をみると、例えばキュウリについてはほとんど価格差は解消されています。これらに比べて、全量全袋検査までして最も安全性が高いとも考えられる米が苦戦している状況は注目されますが、この背景には商品としての季節性、保存性、産地の代替性といった要因があるものと考えられます(「ほんのさわり」欄参照)。

[出典]
 農林水産省「米の相対取引価格・数量、契約・販売状況、民間在庫の推移等」
 http://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/soukatu/aitaikakaku.html

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。

-2017年度 福島県産農産物等流通実態調査(農林水産省)-

 農林水産省は、2018年3月、福島県産農産物等の販売不振の実態と要因を明らかにするため、主要品目の流通実態を調査した結果を公表しました。

 米、青果物(桃、きゅうり等)、畜産物(牛肉、牛乳等)、きのこ、水産物(かつお、ひらめ等)20品目について、生産・流通・販売に携わる事業者及び消費者を対象として、ヒヤリング及びアンケート調査(インターネット及び店頭)を実施したものです。
 また、統計データにより福島県産農産物等の販売量や価格の変化についても分析されています。

 その結果によると、消費者の2割弱が福島県産のイメージとして「安全性に不安がある」としていること、消費者から小売業者への産地照会は減少しておりクレームはほとんどないこと等が明らかになりました。
 逆に、応援するためにむしろ福島県産を積極的に購入する動きがあることも分かりました。

 また、価格については、全体として震災前の水準にまで回復していないものの、その様相は品目によって様々であることも明らかとなりました。
 特に米については、産地の競合が激しくなっているため、福島県産の取扱数量は震災前の6分の1程度になっているという小売業者がある一方で、食味に比較して安価であるため中食・業務用向けの引き合いが強くなっているという状況も判明しています。

 さらに、販売不振を払拭するため、インターネットによる直接販売に取り組む生産者や、田植え体験ツアーを実施している小売業者の事例等も紹介されています。

 なお、本調査に基づき、復興庁・農林水産省・経済産業省は、2018年4月27日に連名で小売業者等に対して指導・助言等に関する通知を発出しています。

[参考]
 2017年度 福島県産農産物等流通実態調査結果について(2018年3月28日、農林水産省)
 http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/ryutu/180328.html

 福島県産農産物等流通実態調査結果に基づく指導、助言等について(2018年4月27日、復興庁・農林水産省・経済産業省)
 http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/ryutu/180427.html

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。

-五十嵐泰正『原発事故と「食」-市場・コミュニケーション・差別』(2018/2、中公新書)-
 http://www.chuko.co.jp/shinsho/2018/02/102474.html

 著者は1974年千葉・柏市生まれの筑波大学大学院人文社会系準教授(都市/地域社会学)。
 原発事故でホットスポットとされた千葉・柏市で「安全・安心の柏産柏消」円卓会議事務局長を務められた時の経験は、編著『みんなで決めた「安心」のかたち』(亜紀書房)としてまとめられています(これも多くの示唆に富む本です)。

 本書では、東日本大震災から7年以上が経過し、「風化」と「風評の残存」が同時進行するという複雑な状況にあるという認識の下、まず、福島県産農水産物の「風評」被害が市場の中で固定化されていくメカニズムが分かりやすく分析されています。例えば、季節性や保存性、あるいは代替産地の有無の点でキュウリと米は違う状況にあることがデータに基づき明らかにされます。
 そして、悪いイメージの固定化を超えるための実践的な情報発信のあり方(楽しさなど興味の喚起等)について考察されています。

 また、福島県産品を忌避する一部の消費者を安易に勉強不足と批判し、科学的知識を振りかざすようなことはすべきではないとし、価値観を共有しながらの個人対個人のコミュニケーションにこそ信頼回復の可能性があると指摘しています。

 著者は、デリケートな「風評」被害の問題をたんねんに解きほぐしていく作業を続けた後に、「必要なのは、相互の選択への尊重と不介入という共生の作法だ」「この放射線リスクをめぐる『食』の分断は、否応なく多様性を増す日本社会が成熟していくうえでの、重要なレッスンでありステップでもあるようにも、私は感じている」という結論に達しています。

 福島の食や「風評」被害の問題に関心のある方のみならず、多様性が尊重される社会の構築について関心のある方にも、多いに参考になる力作です。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 碧野圭さん『駒子さんは出世なんかしたくなかった』トーク&サイン会[4/24]
 http://food-mileage.jp/2018/04/24/blog-98/

○ 堅田香緒里さんのベーシック・インカム(脱成長MTG)[4/26]
 http://food-mileage.jp/2018/04/26/blog-99/

○ 五十嵐泰正さん『原発事故と「食」』トークイベント@ゲンロンカフェ[4/29]
 http://food-mileage.jp/2018/04/29/blog-100/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 丸木美術館51周年開館記念日
 日時:5月5日(土・祝)12:00 ~17:30
 場所:原爆の図丸木美術館(埼玉・東松山市下唐子)
 主催:原爆の図丸木美術館
 (詳細、お問合せ等↓)
 http://www.aya.or.jp/~marukimsn/top/0505.html

○ ふくしまオーガニックコットンプロジェクト報告会2018
 日時:5月10日(木)14:00~17:00
 場所:地球環境パートナーシッププラザ(東京・渋谷区神宮前5)
 主催:ザ・ピープルほか
 (詳細、お問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/230144687725451/

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*今号のコツコツ小咄
「非正規労働者の待遇改善を考えるなら、ベルリンやミュンヘンの取組みが参考になりますよ」
「どんな内容ですか?」
「同一(ドイツ)労働、同一(ドイツ)賃金」

 コツコツ小咄は、まとめて拙ウェブサイトにも掲載してあります。
  http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.143は5月15日(火)[和暦 卯月朔日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  http://food-mileage.jp/
 ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
  http://food-mileage.jp/category/blog/
 発行システム:『まぐまぐ!』 
  http://www.mag2.com/

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