九雀通信

暗い客席


カテゴリー: 2014年09月18日
九雀です。
「まぐまぐ」当局から「そろそろ書かなあきまへんで」とお叱りが来ました。

もっとまめに書けば、書きたいことはいくらでもあったはずなのですが、もう覚えていないことばかりなので、最新の近況を。

落語会で客席の灯りを消すことにしました。
普通、落語会や寄席は、音楽ライブや演劇とは違って、客席は明るいものです。
それを真っ暗にしてやってみようということです。

経緯は以下の通り。

2年前から京都で「仄明るい落語会」というのをやっていました。
電気照明を一切使わず、あるのは高座を照らす蝋燭が1対2本。
今では特殊な演出のようですが江戸時代~明治にかけてはこれがごく普通の寄席の明るさだったわけです。
やってみると高座は充分に明るくて、お客様から見づらいことは全くありません。
ただ大きく違うのは、高座の噺家からお客様の表情がわからないということです。

よく言いますね。
「落語家はお客様の反応を見て話を組み立てる」
嘘です。少なくとも私にはそんなことはできません。
アドリブ的なものやアクシデントに対応した時は別ですが、たいていの場合は
自分が立てたプランに沿って話しています。
まして高座に出てからネタを決めるなんてあり得ない。
だって一言目から、そのネタへの助走としてスタートしているんですから。

結果、「仄明るい落語会」は私にとって、とてもやりやすい高座でした。
集中力が増すんです。
だってお客様の動きが全く気にならないんですから。

ところが、蝋燭を使うには、町火消しへの届け出が要るそうで、
小さな落語会をやるたびに北島サブちゃんにお出まし頂くわけにもいかないので、2年で終止符を打ちました。

でもせっかくならば「仄明るい」雰囲気を残しながら、京都で落語会を続けようと思いまして
護王神社で始めたのが「もぅ少し明るい落語会」。
電気照明は使いますが、客席は暗いまま、高座も少し灯りを落とし目。
蝋燭の時は、その蝋燭がお客様をも多少は照らしますから、前の方のお客様は少しは見えましたが
スポット照明は高座にしか向いていませんので、さらに客席は見えにくくなりました。
結果、私の集中力はさらに増して、とてもやりやすい。

翌朝、妻(三味線弾き)に「暗いとお客様の動きが気にならずに集中してやれたわ」と言いますと
妻「そやね。九雀さん、よう目が動くもんね」

ガビーン。
ドヨーン。
ガックリ。
これは想定外のお言葉。

登場人物の目が定まらないというのは、最低の落語です。
相手役の見えない芸なので、その視線だけで、お客様は見えない人物像を想像するわけですから。
指導している少年達にも「キョロキョロ」は厳に戒めてきたことです。
私自身も、登場人物が相手を「射るように見る」のを心がけてきたつもりでした。
それが、一番近場で、一番回数多く見ている人に「キョロキョロ目が動く噺家」と言う評価を受けていたとは。

さっそく対策を講じました。
と言っても、今までもキョロキョロしている自覚はないわけですし、
またキョロキョロする理由も見当たりません。
でも何となく視界に入るお客様に関しては、「あの人寝てはるるなぁ」「一人遅れて入って来はったな」「立ちはった。お手洗いかいな」など
100人くらいの会場なら全て把握できます。
ということは色々と見てしまっているのかも知れません。
冒頭に申し上げたように、それを知ったからと言って、話を変えるわけではないのにです。

ほな、それを見えないようにしたら良かろう。
全ての落語会を「仄明るい落語会」のようにしてしまおうじゃないか。
この際、高座の時に装着していたコンタクトレンズもやめてしまえ。
もう、これで見たくても見えません。
ただただ、稽古した最善の噺をやるだけのことです。
無我の境地です。
いや「無我」ではない「無・他人」の境地です。

お客様の反応は、賛否が半々・・・より少しだけ「暗いの賛成派」が多いようです。
まぁ明るい落語会は他になんぼでもありますから、こんな落語会、こんな噺家があってもよろしいかいなぁと。

一昨年の5月に、近しいお囃子連3人からの駄目出しで「持ちネタ総入れ替え」を決意して以来の、大きな改革。
それは再び、妻と言うお囃子さんからもたらされたものでした。
まぁ近しい人はよく見ているということでしょうか。

肝腎の「目が動くクセ」がこれで直ったのか・・・あれ以来、妻は何も言いません。
なぜなら、新たな駄目出しをされないよう、彼女と目を合わせないようにしているからです。
家では目はキョロキョロ動いています。
我が家の照明も暗くするべきでしょうか。

<ツイッター>
公演情報 @hataraku_kujaku

<facebook>
「桂 九雀」の名前にて。

<ホームページ>
http://www.rakugokobo.jp/ 落語工房 

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