現代の生活に古代の智恵を活かす

現代の生活に古代の智恵を活かす


カテゴリー: 2012年01月14日
現代の生活に古代の智恵を活かす
平成24年(2012年)1月14日発行
テーマ : 食前の「いただきます」は、現代の日本に残された古代の風習

--ごあいさつ----------------------------
お久しぶりでございます。月刊といいながら、今回、お送りするのが、何ヵ月ぶりかのことになりました。その分、内容は濃いかもしれません。

ケータイ(携帯電話のメール)で、このメルマガ、月刊「現代の生活に古代の智恵を活かす」(無料)をお読みいただいている方には、あまりに長文で、読みごたえがある(読みにくい)かもしれません。今月だけのの大サービスとご理解いただき、ご容赦のほどお願いします。

修生会に電子メールなどでご連絡いただいた方にも、このメールマガジンをお送りするように手配しています。当会の行事のご案内も、このマガジンに掲載することがありますので、ご講読いただけたら幸いです。万一、このマガジンが不要の場合には、このマガジンの下部に「配信停止はこちら」があります。


目次
○行事のご案内
○食前の「いただきます」は、現代の日本に残された古代の風習

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○行事のご案内

・・・阪神淡路大震災・東日本大震災追悼の集い・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
[どなたでもご参加いただけます]

昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆さま方に心からお見舞い申し上げます。

「追悼の集い」では、平成7年の阪神淡路大震災でお亡くなりになった方々と、大きな惨事となった東日本大震災でお亡くなりになった方々をお悼みし、ご冥福をお祈り申し上げます。平穏な私たちの日常のために、皆さまお誘い合わせの上、追悼の集いにお越しください。

・日時 1月17日(火) 午前10時から正午まで
・場所 兵庫県姫路市 修生会本部 道場
    山陽電鉄白浜の宮駅から、徒歩10分
    自家用車、マイクロバスで、姫路バイパス姫路東ランプから2km
    修生会専用駐車場をご利用ください
・参加費 無料
・参考 阪神淡路大震災・東日本大震災追悼の集い(一問一答)
     http://syusei.or.jp/news/319
・1月17日の「瞑想道場」はお休みです


・・・探求会・・・
・・・・・・・・・
1月21日(土)の探求会のテーマは、辰年にちなんで「世界中の龍神」です。
ご興味がありましたら、お気軽にお越しください。
http://syusei.or.jp/gijyuku.html
日時 / 1月21日(土) 午後1時半から午後3時半
場所 / ホテル日航姫路 1階ファウンテン個室
費用 /1万円 (参加時にお支払いください)
講師 / 中澤鳳徳


・・・実践会・・・
・・・・・・・・・
経験豊かな講師が、これまでに知った多くの叡知を皆さんに披露します。存分にご活用ください。
http://syusei.or.jp/gijyuku.html
日時 / 1月28日(土) 午後1時から午後4時
場所 / 修生会本部 道場
費用 / 1000円(参加時にお支払いください)



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食前の「いただきます」は、現代の日本に残された古代の風習
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○「いただきます」が食事の前の決まり文句

私たちは、食事の前に両手を合わせて決まり文句「いただきます」と言ってから、箸をつけます。あまりに当たり前で、不思議でもなんでもありません。ところが、それに相当する言葉や習慣は、海外では見当たらず、日本固有なのではないかと思えます。

何気なく使っている言葉には由来がはっきりしないものも多くあります。そうした言葉は、むしろ私たちの生活にしっかり根付いているのです。その一つが「いただきます」です。

私たちは食卓について、これから食する食べ物を前に「いただきます」と言ってから、食事を始めます。それが一般的です。

しかし、そうではないこともあります。
昔もそうした習慣のない家族もありました。あるいは、家族の中で、家長が「いただきます」と言わない例もあります。現在、家族の誰も「いただきます」と言わない家庭もあると聞きますし、学校の給食で、その挨拶で物議を醸したこともあります。曰く、給食代を支払っているのだから、「いただきます」と言う必要はないと。それらは、一般的ではないと思われています。つまり日本人は、やはりふつうは「いただきます」と言ってから食事を始めるのだと思い当たります。

「いただきます」は「いただく」に由来します。「いただく」は「食う・飲む・受ける・もらう」の謙譲語です。自らがへりくだっているのです。これは目上から物をもらうときに、自分の頂に掲げることに由来するとのことです。何に対してへりくだっているのかを私たちは考えもしません。それほどに、食事の前にして、「何かに対してへりくだる」ことに違和感なく過ごしてきたのです。

では、だれに「いただきます」と言っているのでしょうか。作ってくれた人に対して? お百姓さんに対して? 料理人に対して? 食べ物に対して? 神様に対して? いずれもありそうなことです。


○海外に「いただきます」が見当たりません

私たちは英語を中学校のときから長く勉強しています。日常で使える英語の勉強もしているはずです。軽快に「ハロー」「バーイ」「シーユー」を使う人たちもいることでしょう。では食事の時の「いただきます」は?

欧米では食前にお祈りをいたします。それから、家族では「Let's eat(さあ、食べよう)」や客人ならば「Looks delicious.(おいしそう)」「Thank you for the meal.(食事をありがとう)」となるのです。決まり文句がないので、そうした挨拶をせずに食べはじめることもあります。

スペイン、ハンガリー、ベルギー、ドイツ、フランスでは、食前の言葉は、それぞれの言葉で、「召し上がれ(good appetite)」です。

日本語の「いただきます」に相当する決まり文句がないようです。


○食事の前のお祈り

食事前の祈りGraceは、明瞭な宗教上の作法です。キリスト教徒は、食事まえにお祈りをします。その祈りで神に感謝します。その感謝は、全ての被造物を創られた創造主である神に向けられます。旧約聖書で人間以外の動植物は、人間が管理し、自由にしてよいと、神が命じています。ですからそれらに感謝する必要もないし、人間が動植物をとって食べる事に何ら罪はないのです。

旧約聖書に由来しますから、キリスト教だけではなく、もちろんユダヤ教でも、イスラム教でも同じです。


○熊送りの儀式、イヨマンテ

アイヌ民族には、「イヨマンテ(霊送り)」という儀式があります。アイヌの人たちは、殺した動物の肉を食し、皮や骨も利用します。その動物の霊を神のもとへ送るのです。殺した後、その動物の魂を神の世界(カムイモシリ)へ送り届ける儀式がイヨマンテです。

小熊を捕らえると、村で大事に育てます。小さいうちは布団の中で人と一緒に寝ます。人間の子供と同じようにして育てられます。食事も残飯ではなく、人間と同じ物です。一年くらいたつと、イヨマンテをするのです。

熊ばかりではなく、どのような動物も大事にしています。鹿、鮭、鳥も、イヨマンテをします。

熊は神様で、神様が熊の肉や毛皮を衣として人間世界に降りてきてくれたと考えるのです。ですから大事にもてなして、感謝して、盛大なお祭りをするのです。そして神様からのおみやげである熊の肉体をありがたくいただき、霊(神様)を神の世界カムイモシリへお返しするのです。


○命をいただく

真宗大谷派では、食前に「み光のもと、我今幸いにこの清き食を受く いただきます」と言います。目前の食に向かって「あなたの命を私の命としていただきます」と言うことだといいます。人間が生きていくのに他の動植物の命を絶って生き長らえるために、それらのものに感謝するのだといいます。

『華厳経』にある食前に唱える言葉は、

「若飯食時 当願衆生 禅悦為食 法喜充満」

人々よ、食事をするときには、悟りの智慧を養い保つ食事であることを心得て、
真理が得られる喜びが心身に満たされるようにと願わなければならない。

この言葉がそのまま受け取れるように、「み光のもと、我今幸いにこの清き食を受く いただきます」も、そのままにとらえてよいのではないかと私は思います。


○食べ物に対しての孔子の態度

中国には「礼」があります。儒教から派生したもので、年齢順に「どうぞお食べください」というもので、世界共通のマナーだと思えます。

孔子は、食事にこだわりがあり、またお供えには厳粛に臨んでいます。論語・郷党篇には、次の文があります。

[白文]8.食不厭精、膾不厭細、食饐而曷魚餒而肉敗不食、食悪不食、臭悪不食、失壬不食、不時不食、割不正不食、不得其醤不食、肉雖多不使勝食気、惟酒無量、不及乱、沽酒市脯不食、不撤薑食、不多食。祭於公不宿肉、祭肉不出三日、出三日不食之矣、食不語、寝不言、雖疏食菜羹瓜祭、必斉如也。 

[書き下し文]食(いい)は精(しらげ)を厭わず、膾(なます)は細きを厭わず。食の饐(い)して曷(あい)せると、
 魚(うお)の餒れて(あされて)肉の敗れたるは食らわず。色の悪しきは食らわず。臭いの悪しきは食らわず。壬(じん)を失えるは食らわず。時ならざるは食らわず。
割(きりめ)正しからざれば食らわず。その醤(しょう)を得ざれば食らわず。肉は多しと雖も、食(し)の気に勝たしめず。唯酒は量なく、乱に及ばず。沽酒(こしゅ)と市脯(しほ)は食らわず。薑(はじかみ)を撤てず(すてず)して食らう、多くは食らわず。公に祭するときは肉を宿(しゅく)せず。祭の肉は三日を出でず。三日を出でたるはこれを食らわず。食らうに語らず、寝ぬる(いぬる)に言わず。疏食(そし)と菜羹(さいこう)と瓜(うり)と雖も、祭るときは必ず斉如たり。 

[口語訳]孔子は、精白されている米を好み、膾の肉は細かく切っているものをお好みになった。
飯が饐えて味が悪くなったり、魚が傷んでいたり、肉が腐っていたりすれば食べなかった。色の悪いものは食べず、臭いの悪いものはお食べにならなかった。
煮加減が悪ければ食べず、季節外れのものは食べず、切り目が正しくなければ食べず、だし汁が一緒に出なければ食べられない。
肉を多く食べたとしてもご飯の量を越えることはない。お酒の量は決まっていないが、酔っ払うまでは飲まない。(自分で作った酒以外の)市場で買った酒や乾し肉はお食べにならなかった。生姜を捨てずにお食べになったが、多くは食べなかった。主君の祭祀に出される肉は、その日のうちに食べ切って残さなかった。家の祭祀の肉は三日以上は残さず、三日を越えればお食べにならなかった。食事中には学問を語らず、就寝中には寝言を言われなかった。粗末なご飯や野菜の汁、瓜でも、祭祀で神にお供えするときには恭しく厳粛な態度をされていた。 
『論語 郷党篇』本松良太郎

孔子は、食べ物について事細かく配慮しています。食べ物に礼を尽くしているとも言えるかもしれません。しかし食べ物を食べることでの命のやり取りを意識しているようには見えません。


○神道での意味付け

明治以降、日本の神道は、仏教を切り離し、国家神道に姿をかえました。戦前の小学校では「天皇陛下とお百姓さんに感謝いたしましょう いただきます」と唱和していたようです。

神社神道の学校では、お伊勢さんの崇敬のために
「給つもの ももの木草も天照らす 日の大神のめぐみ得てこそ いただきます」
つまり「いただきます」は、太陽の神様である天照大神(あまてらすおおみかみ)に対して感謝します。

「朝夕に もの食うごとに豊受の 神の恵みを思え世の人 ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」は、穀物の神様である豊受大神(とようけのおおかみ)に対して感謝します。


○まとめ
わたしたちは、食事の前に「いただきます」と言います。その決まり文句は、あまりにふつうのことです。その習慣は、子供の時からいつのまにか覚えたものです。宗教的な儀式だという意識もないのです。

わたしたちにとって「いただきます」が、当たり前なのは、私たちになじむからです。そしてその言葉の意味するところは、どなたかに対して、自らがへりくだって、その食べ物を食させていただこうと言うことなのです。その名を言うことすらはばかる自分より偉大な方、つまり神様に対してです。

神事に続いて行われる直会(なおらい)は、神様にお供えしたものを、人が一緒にいただきます。それによって神様の加護を賜ろうとするのです。

わたしたちの当たり前の決まり文句「いただきます」は、偉大な方から授かった食べ物を食させていただくことを表しています。それは、かつては人類の共通の意識だったのだと思えます。それが日本の日常生活に残されたのです。わたしたちは「いただきます」をふだんから使い、そしてまた子孫に残したいものです。

 中澤鳳徳


○感想やお励ましの言葉など、どんなことでもお聞かせいただけると嬉しく思います。
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