ポエムコンシェルジュの選んだ一篇

【ポエムコンシェルジュの選んだ一篇】→ サフィア・エルヒロ『母のヒジャブのある静物』


カテゴリー: 2017年03月02日
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        ポエムコンシェルジュの選んだ一篇



------------------------------------------------   第155号

■ 〔1〕今回の一篇

■ 〔2〕作者について

■ 〔3〕編集後記

■ 〔4〕アンケート

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■ 〔1〕今回の一篇
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1月にトランプ氏が入国禁止にした七つの国にルーツを持つ詩人の詩を何回か続けて紹介します。
政治や犯罪の被害者や加害者として語る報道よりも、
一人一人の人が一生懸命生きていることや譲れる価値観、譲れない価値観を知りたくて、
翻訳をしています。お付き合いいただけると嬉しいです。


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母のヒジャブのある静物 サフィア・エルヒロ 訳・山口勲
 
 
 
 
フランスのビーチではベールをまとう女
が  法律によって
服を剥がされ  かつ「自由にしてくれて
ありがとう」と述べるよう推奨される  写真は

世界を巡って賛同する今こそ
「解き放つんだこの女性たちとあの

人々    あなたの人民を  時代に取り残された
あなたの布  あなたの難民たちとあなたの

爆弾から」  きょう私は母とショッピングモールにいて
母は帽子を代わりにかぶる  赤茶色の髪を覆い

人々の目にその人がいる日常と母の体が溶けこむのを
すこしでも避けるために  私たちはフードコートでもう一人

母と同じ首に巻かないヒジャブを見かける
髪をひとふさずつていねいに隠し

彼女のうなじが赤くそして瞬いている
初めて浴びる太陽の下で



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原文はNarrative Northeastの記事より
still life with my mother's hijab
www.narrativenortheast.com/?p=4433

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昔、ニッセンで買った服を着ていったら、通販で買ったんだよねと
言われてすごく恥ずかしくなったことがあります。
言われるまで全く恥ずかしくなかったのです。
どうしてむきになったのだろうかと、20歳の自分に対して思います。

その時の自分を思い返すと、二つの方向性がありました。
ファッションを気にしないことと自分が特別な人間であることです。
服装がありきたりだと言われた瞬間、特別な人間であることが崩れたので、
私は当たり散らすしかなかったのでしょう。
今思うとお金も服を気にする感性もなかっただけなのですが。

今日取り上げた詩は、女性の服装をめぐる詩です。
ヒジャブはイスラム圏で女性の着る服装の一種です。
クルアーンでは女性は肌を隠すよう規定されているのですが、
この規定を守る方法はいくつもあり、地域によって変わります。
ヒジャブは布で頭髪を隠すというものです。

女性は「時代に取り残された」ヒジャブを禁止されたあとも
それぞれの手段で価値観を守ります。
そしてその女性が語り手の「母」であることは、
帽子をかぶっていないだろう語り手も同じだと暗示されます。

そしてもうひとつこの詩の中で大切なのは
詩の中にどの価値観を守り、どの価値観を譲るかが書かれていることです。
ショッピングモールで見かけた人と語り手の母は
うなじをみせることを受け入れる代わりに髪をていねいに隠します。
ここにあるのは新しい制限の中で自由を探す姿です。
そして自分らしく生きていくという態度です。

「母のヒジャブのある静物」は2016年に実際に
フランスで成立した法律が背景となっています。
ビーチで肌を覆う水着を禁止したカンヌの市長は、本当に
「この規則は女性に恩恵をもたらすように定められた」といったそうです。

このような押し付けられたものに対して言葉と習慣は戦います。
刃を合わせることなく、柔らかく受け止め傷つかないよう反らすのです。
譲れるものは譲ったとしても自分が傷つく必要はない。
それと同時に怒りで自分を傷つける必要はないと
この詩を読んで僕は感じます。

この詩を読みながら思うのは二人の強い自分を持つ人です。
一人は豊島区の男女共同参画の部署で講演されたLalitpurの向田麻衣さん。
もう一人は谷川俊太郎さんです。

向田さんは今ネパールで化粧品を作ることを通じて
ネパールの人身売買被害者の女性の雇用創出と自尊心の回復に取り組んでいます。
彼女は高校時代ネパールに行ったことをきっかけに、一度国際協力から離れています。
貧しいと思っていた国に豊かな生活があったこと、
そして男性を立てつつもおいしいところは自分でとる女性の強さを見たことで
経済的発展の持つ価値について疑いを持ったことがきっかけといいます。

女性が仕事ではなく化粧によって笑顔になる姿を見たことが
再び向田さんをネパールに戻すことになるのですが、
高校時代の彼女が見た女性は情勢の変化にとらわれない強さだと感じます。
そして人身売買や絶え間ない脅しが自尊心を壊された結果、
売春宿から出れなくなる女性もいるという話を聞き、怒りを覚えました。

前に秩父で谷川俊太郎さんのライブに行ったときのこともよく覚えています。
観客から差別語として使えなくなる言葉が増える現状について問われた彼は
使わずに書く。そのことに煩わしさは感じないと即答したのです。

その後、私も作品を作るときに何度か彼を思い出しました。
差別語を使わないととても長くなるという行があるとき、
長い言葉を使うために新たな言葉づかいをつくる楽しさがありました。

制度でも言葉でもそれは枠組みでしかなく自分自身は別にあるということ。
100%幸せであるかというと疑問はあるのですが、
その幸せであるかどうかも自分で作るのでしょう。

<参考文献>
Guardian紙より、ダルフールのファッションの紹介。(結構鮮やかなことに驚きます)
https://www.theguardian.com/world/gallery/2013/mar/27/darfur-fashion-sudan-gallery

フランス南部でイスラム教徒用の水着「ブルキニ」禁止、これって性差別じゃないの?
http://www.huffingtonpost.jp/2016/08/18/burkini_n_11581110.html

Lalitpur 向田麻衣さんのインタビュー
http://citizen.jp/xc/special/story/interview3.html


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■ 〔2〕作者について
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サフィア・エルヒロさんは1990年生まれのアメリカに住む詩人です。
3月1日に第一詩集『The January Children』を出版しました。

Bustle誌で2017年期待の詩集として昨年から取り上げられていたこの詩集の著者である彼女は
アメリカで生まれたスーダン人なのですが、アメリカでもスーダンでも疎外感を感じてきたと言います。
NYUの卒業生で、2016 Sillerman First Book Prize for African Poetsを
受賞したことで、詩集を出版しました。

朗読のパフォーマンスでも知られており、Youtubeで多くの映像を見ることができます。

今回の翻訳では作者本人と、中学からの同級生、秋山さんに多くの示唆をいただきました。
ありがとうございました。

第一詩集 The January Children (African Poetry Book) (English Edition) 
http://amzn.to/2lcm9yD

15 Of The Most Anticipated Poetry Collections Of 2017
https://www.bustle.com/articles/199789-15-of-the-most-anticipated-poetry-collections-of-2017

POET SAFIA ELHILLO ON WHY THE TORTURED ARTIST MYTH IS SOMETIMES BULLSHI
http://www.projectinkblot.com/interviewproject/2013/12/17/poet-safia-elhillo-on-why-the-tortured-artist-myth-is-sometimes-bullshit

動画:Safia Elhillo - "Self Portrait With A Yellow Dress"
https://www.youtube.com/watch?v=95Q9Zgc-HyY


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■ 〔3〕編集後記
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○詩誌 て、わた し創刊の件
これまで、少しずつ英語の詩の翻訳をしてきました。
もっと英語のうまい方が紹介してくれるといいなと祈っていたのですが
結局自分で日本の詩と世界の詩を紹介する冊子を作りました。

3月19日に正式版を刊行予定です。送料込み¥850円となります。
ご予約を下記ページから受け付けておりますので
いいね!いただいたり、メッセージいただけるとうれしいです。
https://www.facebook.com/tewatashi/


今回は、「声とよりそう女性詩人」をテーマに、
朗読の舞台で活躍する詩人を取り上げています。
日本人では
ポエトリースラムジャパン全国大会に出場した石渡紀美さん、
ユリイカで注目された古崎未央さん(崎の大の部分は立です)
そしてAnti-trenchで活躍する向坂くじらさんを取り上げています

また、英米の詩人として、
Youtubeで10万人以上に閲覧された子育ての詩を書くホリー・マクニッシュさん
パレスチナ人として初めてトニー賞を受賞したスヘール・ハマッドさん
BBCから世界に影響力のある100人の女性に認定されたエミティサル・マフムードさん
を取り上げております。

お問合せ、お待ちしています


○詩誌びーぐる 第34号に掲載いただきました。
全国の大型書店等に配本されています。お手に取ってくださった際
気にしてくださると幸いです。

○2月26日 千葉詩亭 第44回ありがとうございました。

2月26日(日)に千葉詩亭 第44回を開催いたしました。
多数のお客様にお越しいただきました。
ありがとうございました

ゲストのおちょこさんから
「そういう場を作れる主催者に感心した。」という言葉をいただきごくうれしかったです。
https://www.facebook.com/yumiko.tonegawa.7/posts/1346356962088031?pnref=story

次回は4月16日(日)
場所はいつもと同じく
Treasure River Book Cafe
(千葉市中央区登戸1-11-18 潮第2ビル102)
17:30開場 18:00開演となります。


○イベント情報探しています

読者の方に関西在住の方がいらっしゃいました。
関西で開催されている詩のイベント、勉強会や、朗読会などに
いらっしゃりたいとのことでしたが、
現状の関西の情報をしりません。アンケートにてご教示いただけるとうれしいです。

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■ 〔4〕アンケート
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私の励みになりますのでいただけるとうれしいです。
https://goo.gl/forms/qePQcBtCknUOpr8F2

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■奥付
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