【うつのくれた贈り物】~「うつ」からもらった、幸せの法則~

「失敗」は「足場」だから多い方がいい。


カテゴリー: 2012年03月16日
※*※ 第75号 ※*※*※*※*※*※*※*※*※*※*※*

【うつのくれた贈り物】 
~「うつ」からもらった、幸せの法則~

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皆さん、こんにちは。
スマイルコーディネーターの駒村です。

「この前の実習で、うまくいかなくて……次の実習が怖い。」

そういって、娘が泣きました。

彼女は保育士めざして今、大学で勉強中です。
けれど、実習中もほぼ毎日、不安な気持ちや苦しさを和らげるためか毎日電話をしてきました。
結果、実習が終わった時、彼女の中に残ったのは大きな絶望でした。
「充実感」を味わえず、不安なままに終わった実習は彼女にとって大きな「失敗」「挫折」だったのだろうと思います。

春休みになって遊びに来て一緒に車で走っていた時、ふとした折に娘は苦しさを吐き出して泣いたのです。

「あのね。私もね、今でこそこんなに余裕持って生徒の前に立っているけど、最初は泣いてばかりだっだよ………。」

助手席で泣きじゃくる娘に、わたしはそんな昔話をはじめました。

今日は、それをテーマにします。

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★
「失敗」は「足場」だから多い方がいい。
・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

わたしが最初に勤務したのは、養護学校でした。
わたしの主の教員免許は音楽です。それも中学です。
思春期という大人への橋を渡りかけている生徒たちとのやりとりは実習でも勉強してありました。

けれど新卒で赴任して、一番最初の仕事が高等部の女の子の車椅子を押してトイレに連れて行く「トイレ介助」でした。大学で、そんな事教わっていません。車椅子をどう押したらまっすぐ進むのか、そんな事もわかりませんでした。

自分よりも重い女の子を抱えてトイレに乗せ、後始末をする。
やったことないどころか見たこともないことでした。
大学の時には毎日ピアノや声楽のレッスンに明け暮れていたのですから、まったく未知の世界です。

そんな中に教師になり立てでまだほんのひよっこのわたしが投げ込まれたのです。
毎日やることはトイレと教室の往復。
ひたすら車椅子をまっすぐに押すことや、重い女の子を抱えるのに腰に負担の来ない方法を考えていました。
けれどそんな事は誰も教えてくれないし、むろん、大学の教職課程でも教えてもらっていなかったので、車椅子を押すコツを掴むには最初の一週間を要したし、新卒2ヶ月目には腰痛で通院する事になりました。

その上、その年の11月に研究授業をすることになりました。
授業は、「重複障害」のクラスの「音楽」です。誰1人として音程を正しく歌うことも、リズムに合わせて楽器を鳴らすこともできないクラスでの「音楽」の研究授業……。

おまけにただの音楽ではなく、「生活単元」という教科としての研究授業でした。

さらにその学校はその当時の文部省の指定研究校として3年がかりで「生活単元学習」の研究を進めるその初年度で、2年後は国の定める研究発表をすることになっていて……つまり、単なる校内の研究ではなく、その研究が国の「生活単元学習」の成果として記録されていくものであったわけです。指導者としてやってくるのは、生活単元学習についてを専門に研究する大学の教授です。

生活単元、という言葉すら知らなかった私にとっては、目の前にただただ立ちはだかる絶壁がどんどん高くそびえ立つばかりの新卒1年目でした。

結果から言うと、その研究授業(教員になって初めての研究授業)は、悲惨なものでした。
やってきた大学の先生からは酷評をされ、一緒に研究を進めていたグループの先生たちからは批判され、校長からは「バカ」扱いをされました。

これにはいろいろな背景があります。
まず、当時の長野県においては、教員採用試験で成績優秀なものはまず、新卒で「僻地」か「養護学校」へと配属されていました。その持っている免許の種類にかかわらず……むろん、特殊教育の免許がなくても、養護学校に回される……ということは、一応採用試験で優秀だったという証。

つまり、わたしが養護学校に採用されたのは「採用試験で優秀な成績」をおさめた期待の新人だ、ということであり、校長も無論それを「期待」して採用するわけです。1年目の最初から研究授業をすることになったのも、すでに決まっていたようなものでした。

さらに、養護学校の生活単元学習というのは、普通学校においての生活学習とか総合学習のようなものですが、普通学校においてもまだその名がでてくる前の時代であり、教科学習しか知らなかった当時の学校の先生たちにとってはまったく未知のジャンルの教科でした。

だからこそ、国が指定して研究校を定めて研究していたわけなのでしょうが、他の数学とか国語のように前からみんなが知っていて研究を深めていた教科ではなく、まだ誰もが手探りで何もわからない状態。研究グループの先輩教師たちでさえも正しくその指導法を理解しているものはいませんでした。

研究会も、雲を掴むような状態。
まして、新人でまだ「先生」という仕事にさえ不慣れで車椅子の押し方1つ知らなかった新卒1年目のわたしには、まったくちんぷんかんぷんなものでした。

それが、授業者に祭り上げられて、まわりの先生たちから「自分たちもわからないから一緒にやろう。ちゃんと自分たちが責任とって考えるから。」という言葉に自分なりに一生懸命に勉強した知識も加えて組み立てた授業でした。

けれど、その授業を国から派遣された指導の教授に酷評された途端に、周りの人たちはすべてをわたしの「未熟」が失敗の原因とし、わたしを批判してその問題を収束させたわけです。そして校長は「新卒がまだ未熟で思ったよりもバカだった」と他の人たちの前で平然と言ってのけたのです。

そういう「大人の事情」のすべてを知ったのは、それから半年して新しい新卒がやってきて一年先輩になってからのことでしたから、当時はかなり激しく打ちのめされました。自分の失敗や未熟さが、研究授業の失敗を招いたのだ……そう思い、自分がなんてダメな人間でバカなのだろう?とかなり自分を責めました。

教職に対して、真剣に向き合ってきたつもりでした。
慣れない、未知の養護学校でも、自分なりに新しく知識を深め、子ども達への理解を深め、頑張って来たつもりだったのでなおのこと、その頑張りが踏みにじられ、地に堕ちた状態でわたしは教職自体にもかなりの恐怖心さえも覚えたのでした。

その「失敗」体験がわたしにまずもたらしたものは、挫折と失望と自信喪失でした。
教職1年目、わたしは1人の家にかえっては、涙を流したことが数限りありませんでした。
けれど、その涙はその後のわたしにとって、決して無駄なものにはならなかったのです。

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教職2年目に、またもや研究授業をすることになりました。
1年目にあんな結果でみんなにその責任を押しつけられて、なのにまた懲りずにわたしに向けられるその意図がどこにあるのかはもうどうでもよくなっていました。

1年目の「大失敗」と「名誉失墜」のあの事件の裏にいろいろな「大人の事情」があるとわかった後。
とにかくわたしは、自分なりに、自分のやるべきことを一生懸命にやるだけだ、と思ってひたすら学びを続けました。
子ども達を見て、子ども達がのびるために、そのために自分のできる精一杯をしよう。だから、自分が出来る事を増やすために、少なくとも自分の無知が理由で子ども達をのばせない、なんてことがないように、いろいろな本を読み、研究会や講座を受講して学びを深めました。
持っていなかった養護学校の教員免許をとるための単位取得にも頑張りました。

そして、2年目に再び研究授業をすることが決まった時、私の心の中に生まれた気持ちがありました。

1年目には訳がわからず、まわりの言うようにやってきたけれど、自分自身がまだ自信を持てずに勉強不足だったことも確か。だから、今年の研究授業では自分なりにしっかりとやるべき事を見据えて、誰にも文句を言われない授業をやろう………と。

生徒を見て、つけるべき力やそれを支えるための力を分析し、そしてそのために必要な技能や知識を蓄えさせるためにかなり早くからいろいろな単元を組んでいろいろな教材を子ども達のために用意しました。
一年間かけて培ってきた生徒達との信頼関係、それをもとに、生徒ができない部分を補いながらもできるだけ自分たちで取り組めるように教材を研究して準備し、そうして研究授業に向けての単元をその上に組みました。

教案も細部にわたって検討し、自分の立てた指導案に、さらにたくさん赤線を引き、予想される質問をすべて洗い出してどんなことにも答えられる準備をして、「事前研究会」に臨みました。

1年前はわたしに対して「バカ」と言ってはばからなかった当時の校長が、その事前研究の後で舌を巻いていた、と他の先生から聞いた時には心の中で「やった!」と思いました。そして本番の研究授業は、生徒たちがとても素晴らしく活動してくれて、見に来た先生たちもともに感動を共有できるものになったのです。

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車を運転しながら、わたしはこの話を娘に淡々と話しました。
娘はただ、黙ってそれを聞いていました。

最初のうち、ずっと口から漏れていた嗚咽の声は、次第に小さく消えていきました。

新卒1年目にものすごく苦しかったあの経験。「大人の事情」に翻弄されたという裏の事情はあったにせよ、やはり自分がまだ未熟だったことも否めません。ですから、わたしは「大人の事情」のせいにして自分の失敗を棚に上げるつもりはありませんでした。

あれだけの大きな「失敗」と、そこに続く「挫折」。
けれど、それによって見えたのは、自分の未熟さとその先の可能性でした。

自分の力が至らないことから起こったことは、自分を磨けばいくらでも取り戻せるのです。
そうして、自分の力が至らないところを知ることができたことで、自分の足りないところが見えたのです。

「ここを頑張れば、もうこういう失敗はしない」

それが見えたことが、教職1年目でそれを知ることができたことが、さらに、自分の机上の知識などはまったく実社会で役に立たないことを知らされたことが、わたしの2年目の成長と成功につながったのです。

失敗のない人生などはありません。
2年目が成功したらといって、その先もう何も起こらないなんてありえません。
けれど、わたしはこの1年目の失敗と挫折があったから、それ以降の失敗は「ここが自分には足りないんだ」と知るきっかけとして捉え、自分を伸ばすチャンスと捉えることができるようになっていました。

失敗すれば失敗するほど、その「次にはじゃぁどうしたらいい?」の道がはっきり見えてくるのです。
失敗したことは、二度と繰り返さないことで、漠然としていた「道筋」が次第に絞られてくるのです。

もし、「ビギナーズラック」で、1年目の研究授業を無難にやり通してしまったら、わたしはそこから先「偶然の幸運」に頼るしかない道を進むことになったのでしょう。けれど、あの失敗と挫折によってわたしは、人に胸を張って「この道を行くべきだ」と言い切れる力をつけるためのきっかけをもらったのです。

娘は、多分、想像だにしなかったでしょう。
毎日自分がうまくいかなくて自信を失うたびに、電話で相談に乗ってもらう母親が、やっぱり自分と同じようにたくさん泣いたことなど……。

かつて、tomorrowという歌にこんな歌詞がありました。
「涙の数だけ強くなれるよ……」と。

人は、失敗するものです。
失敗して、挫折や自信喪失、哀しみ、痛みなどを感じます。
そうして涙を流します。

けれど、その流した涙は絶対に、次につながる力になるのです。
 
哀しみを深く、強く持った人ほど、その笑顔は輝きます。
人に対して失望を多く持った人ほど、人には優しくなれるのです。

失敗は、数多い方がずっといいのです。
その分だけ、成功につながる本当の道がどんどんくっきりと見えてくるはずですから。
哀しみも、苦しみも、多ければ多いほどに、それを乗り越えた時の喜びや感動はより輝きます。
大きな物事に取り組めば取り組むほど、失敗の数も増えるでしょう。
けれどそれは、神から見放されているわけではなく、たくさんのヒントをもらっているのです。

失敗は神さまからのヒントです。

失敗は、成功へのヒントです。
失敗は、成功への足がかりです。

たくさん失敗しましょう。
そうしてそこから、次につながるヒントを見いだしましょう。

いつか気が付いたら、失敗の上に大きな成功が待っているのが見えてくるに違いありません。

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それでは、また次の「幸せ」まで。~See You.~

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