三橋貴明の「新」経世済民新聞

「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第丗五話


カテゴリー: 2017年06月24日
From 平松禎史@アニメーター/演出家

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 『三橋貴明の「新」経世済民新聞』

     2017/6/24


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「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第丗五話
From 平松禎史@アニメーター/演出家


◯オープニング

ここのところ、日本の政治経済から「国益」ということばがどこかへ行ってしまっているように感じます。

「もり・かけ問題」と揶揄される森友・加計学園の問題は、国民経済がビジネスになってしまったなれの果て、起こりべくして起こったのではないかと思わずにいられません。


第丗五話『「国家」「国益」という枠組み』

◯Aパート

「国家」「国益」というものを考えてしまう今日このごろ、今年二月に投稿したブログを不意に思い出しました。
後述しますが、先日のコミュニティバスでの出来事がそのきっかけでした。

二月のブログから引用します。

× × ×

ボクは雨の日などにコミュニティバスを使うことが多いです。
路線バスも使うことがありますが、コミュニティバスのほうが好きです。

コミュニティバスでは、お客がバスに乗ってくる時に運転士に「よろしくお願いします」と声をかけ、降りる時には「ありがとうございました」と声をかける人を多く観察できます。

年配の人に多く、特に子供連れのお母さんに多いのは躾も兼ねているのだろうと想像できます。

席の譲り合いや荷物などが当たらないような配慮、乗り合った人との世間話も時々聞かれます。
こうした空間は居心地がよくてホッとします。

ところが路線バスではこうした姿を見ることが少ないのです。
お年寄りや子供連れのお客でも声をかける人をめったに見かけなくなる。
気遣いの程度は変わりませんが、路線バスは通勤電車のように目的地まで運んでくれる乗り物に徹している感が強く、人々のふれあいと言ったものは少なくなってしまいます。


なぜこういう違いが生じるんでしょう?
両者を比較してみましょう。

【コミュニティバス】
・小さなバス
・駅を起点に住宅地の狭い範囲を巡回する

【路線バス】
・大きなバス
・町をまたいで広い道路を長距離移動する

いかがでしょう。
コミュニティバスは運転士と目線が近く、向き合って座っても客同士が近い。
住んでいる家のすぐ近くを巡りますから、ただの乗り物を越えて人々が意識を共有しやすいと思えます。

対して、路線バスは大きくて運転士は高い位置にいる。シートが個別になっているのでお客同士は分離している。
家から離れた広い通りを直線的に走りますから、乗り物以上の親しみを持ちにくいのではないかと思えます。


自分たちが生まれ育ち、自分たち(祖先)が作ったと意識できる「ふるさと」と、政治家などが作った制度で動く「国家」に似たような違いを見出すことができます。

もちろん、だから路線バス(国家)は軽んじて(理解できなくて)良いという話ではありません。

狭い地域に感じる共有意識を国家にまで広げられるかがキモです。

× × ×

地域で得られる利益と国家で得られる国益はつながってなくては変なことになります。


◯中CM

先日、雨の日に乗ったコミュニティバスでこんな出来事がありました。
以下はツイッターに投稿するために情報をギリギリまで削ぎ落とした文章です。

『コミュニティバスで駅に向かう途中、運動部の高校生が6人ほど乗って来た。席が2つ空いてる。ボクの斜め前に座ってたおじいさんが「空いてるから座りなさい。年寄りが乗って来たら譲れば良い。」と。しばらく顔を見合わせて「失礼します。」と2人座った。バスが笑顔になった。』

出来事としての最低限の情報なので、もう少し事実を加えましょう。

おじいさんは鼻にチューブを挿していて、そのチューブは車輪の付いた細長い入れ物につながっていました。
あとで調べてみると、肺が弱っていて酸素を取り込むのが困難な人が使う酸素ボンベのようです。

高校生たちはみな女子高生でした。道具らしいものを持っていなかったので陸上部でしょうか。
みな元気の良い明るい生徒たちだった。

おじいさんが下りる時、高校生たちは口々に「ありがとうございました」とお礼を言っていました。


上で書いたおじいさんのことばは、ほぼ正確におっしゃった通りです。
文字にしてみて気がついたのは、硬い感じの命令調なんですよね。
でも、現場で聞いたおじいさんのことばには優しさがあり、お互いに顔を見合わせる子供たちをニコニコと見ている表情に愛情を感じました。

文字にすると命令文なのに、おじいさんの言い方や表情でまったく嫌な感じがしない。
子供たちもその心持ちを正確に受け取っていたのです。
しかし、その場をご存じない読者の皆さんに伝わったでしょうか。

文字にした時に、心持ちの重要なところが抜け落ちてしまうのですが、日本人はもともと文字を持たなかったため、その意識そのものが時々抜け落ちて、誤解や恣意的な用法が表れてしまうことがあると思います。
長らく使っていてよくわかっているつもりでも、実はわからないことが多く含まれています。

話がそれました。。。
コミュニティバスでの出来事には、いろんなことを考えさせてもらいました。
小さな狭いところで共有される感覚が「国家」という大きな枠組みに適切に拡大されていくことが、過去から現在へ、未来へとつながれば良いと思います。


◯Bパート

上記エピソードはホームドラマのヒトコマのようで現実味がないかもしれません。
しかし、現実の政治界隈では醜悪なドラマのデキゴトが連続していて、こちらの方に現実味を感じてしまう異常な状況です。

地域社会には暖かさを共有する人々でも、国家に対しては共感を持てないでいるのは、歴代政府のせいでしょうか。

日本が歴史的に西欧近代的な意味で統一国家ではない時期が長かったからだと思っていますが、特に「保守」を口にする人々が言う「統一国家」「単一民族」「万世一系」などは、建国されたとされる紀元前660年前からそうだったと信じているかのようです。

このあたりは「日本書紀」と「古事記」では齟齬があります。
「日本書紀」では王権の連続性を明確にしているのに対して、「古事記」は国津神から天津神へと支配者が変わったことを伺わせます。
葦原中津国(地上)におりたニニギノミコトの子を宿したコノハナサクヤヒメは、夫から「自分の子ではない。そこいらの国津神の子ではないか」と疑いをかけられ、火の中で生み成す「ウケヒ(誓約…一種の占い)」を行って天津神の子であることを証明します。
そのニニギの孫が神武天皇です。

「古事記」の記述には、我々の国の源は「どこまでたどってもわからない何か」を含め持つ、不確かな緊張感を持ちます。

中国王朝式に王権、天皇の連続性を記した「日本書紀」との違いであると三浦佑之教授は述べています。

「日本書紀」本文ではニニギの三子のそれぞれに役割が与えられているのに対して、「古事記」では次男のホスセリは名前が出るだけで語られません。
河合隼雄氏の本「中空構造日本の深層」では、件のホスセリや、造化三神のアメノミナカヌシ、イザナミノミコトの次男ツクヨミがアマテラスとスサノヲにはさまれて事績不明な存在になっているのは、対象的な二極の中間に位置するものを中空化することによってバランスをとっていると解説します。


どうやら、古来より日本人は、枠組みの中を円滑にするために「よくわからない何か」を含め持つことを必要としたのかな、と思えてきます。
二極の直接対立を避けるために。

近代以降、現代は「よくわからない何か」を認めない潔癖な風潮、二極対立構造が強くなっているように思います。
西欧近代の唯一神的な思想の流入が影響しているんでしょうか。

豊洲市場施設の地下にあった「地下空間」…正確には地下ピットですが、「盛土がなく空間だった!」と動揺する様、福島第一原発事故の「放射能」恐怖、年々強まるタバコ排除・・・などなど見ると、どこまでも清潔に、どこまでもわかりやすく、正か邪か、白か黒か、0か100か、といった風潮が強まっているように思えます。
これらは、なにも「戦後」に限ったことでなく、GHQの仕業などでもなく、日本人の心に古代から持つせめぎあいを示しているのではないか。

古代より日本人は、どちらでもない中間を通して両極を含め持つことによって安定しようとし、せめぎあい、変化し続けてきた。

日本人は革命的な急変を好まない、というのも実は実体ではなく、革命的な急変と現状維持とそのどちらでもない中間とでたゆたっているのではないでしょうか。



◯エンディング

どちらにも偏らないこと。
バランスをとること。
そのためには、長く続けてきた良きもの(経路)を振り返り、疑ってみることが必要になってきます。
チャンネル桜の討論では「保守」を標榜する司会者や登壇者がこれに強く反発する場面がありました。

日本の「保守」の基礎である本居宣長以来の国学は「古事記」を重視していますよね。
その「古事記」には「統一的」な「一系的」なつながりに「危うさ」を含めもたせています。
それだけこの日本という「国家」を守っていくのが難事業だということかもしれません。

20年にも及ぶデフレ不況が、損か得かのビジネス感覚で「国家」「国益」を歪ませるのに大いに役立っている。

構造改革・規制緩和の「国家戦略特区」において
「国家」「国益」という枠組みが、『「総理・内閣」主導の枠組み(首相官邸ページより)』にすり替わり、「プロセスに一点の曇りもない(安倍総理会見より)」と言えてしまう状況は、もはや狂っていると言わざるをえないでしょう。

国民の多くが「国家」「国益」を理解していないと嘆くなら、「国家」「国益」を理解していると思えないリーダーたちを正面から見据える必要があるでしょう。

鏡に自身を映して見るには、正面から見据えなければいけません。



◯後CM

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