三橋貴明の「新」経世済民新聞

市場の「脱ブラック化」が、「人手不足」を解消させる。


カテゴリー: 2016年12月06日
From:藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)



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 『三橋貴明の「新」経世済民新聞』

     2016/12/06


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 市場の「脱ブラック化」が、「人手不足」を解消させる。
FROM 藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)

今、我が国のデフレは深刻な状況に立ち至りつつありますが、その一方で全国各地では「人手不足」が問題視されています。

デフレとはもちろん「需要不足」の問題。平たく言えば、お客さんが少ない状況。そんな状況では通常、失業率が上がり、人手不足とは正反対の「人余り」が生じることになります。

しかし今、現実には多くの業界の経営者が「人手不足」に頭を悩ませています。仕事が増えたので人を雇おうとしても、雇えない――と困っているわけです。

政府はこの状況を改善するために、少子高齢化が問題の背景に存在しているという認識の下「外国人労働者を増やす」と同時に「一人当たりの生産性を上げる」技術開発の取り組みを進めようとしています。

しかし、今、日本で起こっている「人手不足」問題は、ただ単に「少子高齢化」が原因なのではなく、長く続いたデフレからの「脱却」プロセスにおける必然的帰結なのです。

そしてそのための処方箋としては、

  「各企業の『過剰サービス』を消滅させる事」(=企業の脱ブラック化)

が必要であり、そしてそれを実現するために

  「各企業の『過剰サービス』を解消するため(=企業の脱ブラック化)の
   構造政策(規制強化や様々な行政指導等)」

が求められています。

以下、この結論に至る論理を、順を追って解説したいと思います。

(ステップ1)デフレで過当競争が生ずる
日本は1998年、それまでのインフレから一転してデフレになり、それ以後、各企業の業績は悪化、賃金は低下していきます。

そんな厳しい状況では、少しでも業績が悪い企業は倒産し、「勝ち組」「負け組」が産み出されていくようになります。

つまりデフレ下で、あらゆる業界で「過当競争」が生じたのです。


(ステップ2)過当競争が「ブラック企業」を生み出した
そんな「過当競争」下では、各企業は「生き残り」をかけ、多少の無理を厭わなくなりました。

つまり各企業は「倒産するよりはマシ」とばかりに、対価(価格)には見合わない「過剰サービス」を提供するなったのです。

もちろんそのシワは全て労働者に行きます。

労働者は皆「仕事が無いよりはマシ」とばかりに、安い給料で過剰労働サービスを提供するようになっていきます。

つまり日本人は皆、労働者も経営者も、デフレに負けないためにものすごく真面目に頑張ったのです。

しかし、インフレと正反対の「デフレ」下では、日本人のそんな真面目さが裏目にでてしまい、大きな問題を生み出すことになってしまいました。

「ブラック企業」問題です。

「僅かな対価しかもらえないのに、過剰な労働を求められ、強要される」――というブラック企業が、デフレ下で生まれていったのです。
http://blackcorpaward.blogspot.jp/p/blog-page_12.html

(ステップ3)20年デフレが、あらゆる市場を「ブラック・マーケット」化させた
ブラック企業と言えば「ワタミ」や「ユニクロ」が有名ですが、デフレの今、日本企業は多かれ少なかれ皆「ブラック企業」状態です。

そもそも「ブラック企業」は労働者にとっては最悪ですが、消費者・顧客にとってみれば「良質のサービスや商品を安くて売ってくれる企業」。ですから人気が出るのも当たり前。

つまり、ブラック企業は高い「競争力」を持っているのです。

結果、デフレ状況下では、非ブラックな企業はどんどん潰れ、ブラック企業だけが生き残る事になります。こうして、デフレが20年も継続した今日、あらゆる業界でブラック企業が拡大していき、市場そのものが「ブラック・マーケット」化していったのです。

結果、現代の労働者は皆、(サービス残業等の形で)労働時間が長いわりに給料は安く、結果、「実際上の労働単価」が下がってしまうことになっていきます。

(例えば、これはもちろん http://shukan.bunshun.jp/articles/-/6837
この問題も、http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47873
こんな業界も例外ではありません http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48511?page=4)

いわば現代人は皆「貧乏暇なし」状況。

そんな不当な「貧乏暇なし」状態を辛抱することが、労働者の当然の「義務」の様に言われるようすらなってしまったのが、今日の日本の姿です。

(ステップ4)ブラック・マーケットはわずかな需要増にも対応できない
さて、デフレが産み出した「過剰サービスを供給するブラック・マーケット」は、需要が限られたデフレでは確かにその需要を満たすことができるのですが、デフレ以外の状況ではその需要を満たせない、という「構造的欠陥」を抱えています。

そもそもブラック・マーケットは、現有人員をフル稼働させて、ようやく成立している「限界ぎりぎり」のマーケット。ですから、「これ以上の需要に対応する」ことができません。

もちろん、そんなマーケットでも「労働者を増やす」ことができれば「需要増」に対応可能ですが、そもそもそれだけの労働者は(少子高齢化であろうがなかろうが)日本国内にはいません(無論それは、少子高齢化であればなおさら、です)。

したがって、ブラック・マーケットでは、需要が僅かでも増えれば、瞬く間に「人手不足」 となります。

これこそ、20年間もデフレを続けてきた日本が今、デフレ脱却を図ろうとして、あらゆる業界で「人手不足」が叫ばれ始めた背景です。

(ステップ5)過剰サービスの停止が「人手不足」を解消する。
では、この人手不足状況を改善するにはどうすればいいのでしょうか?

以上の経緯を踏まえれば、その回答は極めて単純です。

各マーケットが、各企業の供給の『サービス水準』を引き下げ、『価格に見合った質』の商品やサービスを提供するようにすればよいのです。

すなわち、(デフレの徒花である)「過剰サービス」をやめる――これこそが、今日の人手不足を解消する最も本質的な対策なのです。

そうすれば、労働者に「余裕」が生まれ、その「余裕」を使って「需要増」に対応することが可能となり、人手不足状況は消滅するのです。

一番わかりやすい例は、接客業。「安い客」には最低限のサービスだけを提供し、「高い客」に良質なサービスだけを提供するようにすれば、従業員に余裕が生まれ、限られた従業員でより多くの需要に対応することが可能となります(これはもちろん、生産性と賃金双方の向上を意味します)。

運送業についても、「高い荷主」に対しては迅速性・定時性をもって対応し、「安い荷主」に対しては迅速性・定時性を保証せずに配送すれば(一台あたりの積載率を上げることが可能となり)、運転手に余裕が生まれ、限られた運転手でより多くを運ぶことが可能となります(もちろん、あまりに安い荷主は断る、という方法が一番の処方箋です。いずれにせよ、これによって生産性と賃金の双方が向上します)。

建設業についても、「不十分な支払い」しかしない顧客に対しては「必要な支払いをしなければ、建設工事を完遂させない」という態度で接し、「十分な支払い」をする顧客に対しては、その工事を完遂させればよいのです。こうすれば、あらゆる顧客が必要最低現の支払いを行うようになり、結果として、価格が上昇すると共に、限られた労働者でより多くの建設需要に対応することが可能となります。

最後に製造業につい言うなら、「過剰に安い製品」の製造に費やしていた時間を減らせば(つまり、その製造を縮小すれば)、安い製品の製造に取られていた労働者の時間を縮小でき、その時間を増加した需要に分配していくことで、より多くの需要に対応することが可能となるのです。

すなわち、客(需要)が増えて来たら、

1)	これまで「安い客」のために費やしてきた時間(過剰サービス時間)を削り、
2)	それを通して労働者の余裕を生み出し、
3)	その余裕を使って、需要増に対応していく、

という方針を採用することで、その需要増に対応していけるのです。しかも、こうすれば一人当たりの労働者が生み出す供給量(つまり生産性)も増進すると同時に、賃金も増進します。

かくして、今日のデフレ下での「人手不足の解消」のためには「過剰サービスの停止」が必要不可欠なのです。そしてそれができれば、生産性もあがり、賃金も上がっていくのです。


(ステップ6)「過剰サービスの停止」を促す構造政策を
言うまでもなく「過剰サービスの停止」は、ブラック企業の「脱ブラック化」を意味するもの。ですが、それは決して容易ではありません。

なぜなら、今日の自由な市場メカニズムにおいては、ブラック企業の方が高い競争力を持つからです。だから一部の企業が脱ブラック化しても、結局勝ち残るのは「ブラック企業」。「脱ブラック企業」は、競争で淘汰され、結果、「ブラック・マーケット」はそのまま継続してしまうのです。

つまり「ブラック・マーケット」は、民間の力だけでは到底脱却しえない、厄介な代物なのです。

そこで求められるのが、「政府の力」。

過剰な競争を抑制し、不当な低価格(ダンピング)を抑制する構造政策(適切な制度設計・規制強化と行政指導)を、それぞれの業界の特殊性を踏まえながら、それぞれの業界ごとに検討し、展開していくのです。

現内閣が進める「成長戦略」の根幹には、こうした「脱ブラック・マーケット」政策がおかれなければなりません。

今日の人手不足問題は決して単純な問題ではなく、その背後には、20年間続くデフレによって生み出された「ブラック・マーケット」という構造的問題が横たわっているのです。

だから、外国人労働者の導入に象徴される安易かつ軽率な「人手不足対策」が進められてしまえば、今日のブラック・マーケット構造が延々と継続されるどころかますます深刻化してし、労働者の労働環境も改善されず賃金も上がらないばかりか、日本経済の需要増への対応力も失われ、デフレから脱却する力そのものが喪失されることになるでしょう。

デフレ脱却のためには、マクロな需要拡大のための財政政策を徹底推進すると同時に、その需要増に対応するための構造政策、すなわち、外国人労働者の導入に象徴される安易かつ軽率な人手不足対策とは全く異なる「ブラック・マーケット構造を是正する構造政策」が強く求められています。

政府には、正しい状況認識に基づく、正しい構造的経済政策を展開されん事を、心から祈念したいと思います。





ーーー発行者よりーーー

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