週刊マガジン・ワンダーランド

週刊マガジン・ワンダーランド 第87号


カテゴリー: 2008年03月26日
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   週刊マガジン・ワンダーランド(Weekly Magazine Wonderland) 

   2008年3月26日発行 第87号                            毎週水曜日発行
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【目次】
◇龍昇企画「モグラ町」
 ダメな男たちが奏でる、ユルい漱石的シェイクスピア的日常
 高木 登(脚本家)
◇龍昇企画「モグラ町」
 待ったなしで台詞が飛んでくる 「間」は徹底して削がれて
 小畑明日香(慶応大生)
◇背番号零「明るい部屋」
 コトバの合間に肉の手触り 会話劇に挑戦した第一歩
 木俣冬(文筆自由労働者)

▼次号予告(第88号, 2008年4月2日発行)
 五反田団「偉大なる生活の冒険」(中西理)
 劇団掘出者「チカクニイテトオク」(因幡屋きよ子)ほか。

■web wonderland から===================== http://www.wonderlands.jp/ 

◇「春琴」特集(下)(サイモン・マクバーニー構成/演出)[特別寄稿]
◎最後に付け加わった衝撃シーン 「陰翳礼讃」の世界はどこにもない
 今井克佳(東洋学園大学准教授)
◎身体と言葉−陰翳のポリフォニー
 芦沢みどり(戯曲翻訳家)

◇「春琴」特集(上)(サイモン・マクバーニー/演出・構成)[特別寄稿]
◎観る前には戻れない 上質なドキュメンタリー映像の感覚
 清末浩平(劇作家、劇団サーカス劇場主宰)
◎近代が生み出す光と闇の構図
 水牛健太郎(評論家)
◎「可視的であること」への信仰を相対化
 野村政之(劇団・劇場制作)


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◆龍昇企画「モグラ町」
 ダメな男たちが奏でる、ユルい漱石的シェイクスピア的日常
 高木 登(脚本家)

 男がダメだと思う。統計を取ったわけでもなんでもないが、それはもうけっこ
う以前からの実感で、自分自身が相当ダメだと思っているのに、そんな自分から
見ても相当ダメな男が多いのだ。妬む、やっかむ、ひがむ、拗ねる。それが露骨
に透けて見えるから、こちらも疲れる。そうした連中への憎しみをもって何本か
芝居を書いたこともあるが、そうそう現実が変わるわけもなく、ダメな男は依然
ダメなままだ。

 前川麻子七年ぶりの新作『モグラ町』に登場する男たちは、ほぼ全員がダメだ。
そばにいたらさぞや迷惑不愉快このうえないはずの連中ばかりである。けれど彼
らに対する前川麻子の筆致は優しさと慈しみにあふれている。

 theatre iwatoのコンクリート剥き出しの素舞台中央に楕円状のステージがし
つらえられている。そのまわりには壁際に椅子や給湯セットなどが置かれ、正面
の出入口は木製のブロックでふさがれている。

 開巻、舞台全体に大きく映像が映し出される。それはおそらく中央線沿線のい
ずこかの町だ。商店街、軒の低い家並み、庶民の町のモンタージュ。そこがつま
り「モグラ町」である。小劇場では下手な映像の使い方がしばしば見られて食傷
させられるが、これにはとても感心した。それだけで、そこはもう「モグラ町」
になっていたからだ。

 上映がつづくなか、出入口に置かれたブロックを取り外し、乗り越えながら、
ひとりずつコンビニの袋や紙袋を手にした出演者たちが登場する。彼らはブロッ
クをひとつずつ上手奥の所定の場所に置くと、それぞれ椅子に腰掛ける。そのぎ
こちなさ、不器用さがいい。それはそのまま彼らのキャラクターを暗示している
のだ。下手奥にはギター、ウクレレとパーカッションを受け持つ二人組。彼らの
軽快な音楽に乗って舞台は展開する。

 出番のない役者たちは椅子に座ったままステージを見ている。時には声を上げ
て笑う。小林千里と津田牧子がカップヌードルを食べるシーンでは、全員それぞ
れのメニューで食事がはじまった。冒頭、彼らが持ってきた袋の中に入っていた
のは弁当だったのだ。私が観たのと違う回では歯を磨いた者もいたらしい。物語
の焦点があたる場所にいる以外の人々にも生の営みがある。出番のない役者たち
の姿をそのまま舞台上にさらけ出すことで、そこに現出するのは「町」の感覚そ
のものである。theatre iwatoの無機質な空間が、広がりと奥行きと温もりのあ
る場所に見えてくる。この演出効果には目を見はった。

 物語の中心となるのは五人兄弟である。ショウジ(龍昇)、マサシ(塩野谷正
幸)、カツヤ(山本政保)、ブンタ(稲増文)、キンヤ(吉岡睦雄)。上は五十
四から下は三十三。いい大人だ。しかし、彼らの多くはろくに定職にも就かず、
結婚もせず、その日暮らしで、性的な戯れ言を口にしながら、子供のようにブラ
ブラ遊んでばかりいる。彼らの父親の藤次郎(登場せず)は寝たきりで、おそら
く余命幾ばくもない。そんな藤次郎の後妻・サトコ(小林千里)は長男のショウ
ジとたった一歳しか違わず、藤次郎とサトコの娘、高校三年生のアツコ(津田牧
子)は、母親と同い年でショウジたちの幼なじみのヨシオ(吉田重幸)とやがて
出奔していく。

 下町に育った私には、こうした光景はおなじみのもので、ある種の懐かしさも
感じるほどだ。ここに登場する人々の存在感はおそろしく現実的である。「シェ
イクスピアや漱石のかっこいいところを全部外したら、『モグラ町』が出来た。」
(本チラシ)という前川麻子の言葉には批評がある。つまり裏を返せば、われわ
れはユルい漱石的、ユルいシェイクスピア的日常を生きているということなのだ。
「父殺し」と言うのも憚られるような、呆れ返るほかはない藤次郎の死の顛末に
もそれはあきらかで、悲劇でも喜劇でもない、ただ人々が生きているだけの生の
在り様こそが『モグラ町』には息づいている。

 四男ブンタが恋し、恋されていると錯覚するユミコ(渡辺真起子)は、ひどく
迷惑を被ったにもかかわらず彼を許し、しかもそこからあらためて二人の関係を
始めようと語りかける。この「肯定」のまなざしこそが前川麻子の、「作家性」
と言うほど堅苦しくはない、人柄の芸とでも呼ぶべき才気そのものなのだ。

 つらつら述べたが、これは端的に良い芝居だった。ダメ男への憎しみは忘れて
夢中になった。自分の方がむしろダメなんじゃないかと思った。あれから二週間、
カーテンコールで演者たちが奏でた「モグラマーチ」の旋律が頭について離れな
い。(了)

【筆者略歴】
 高木登(たかぎ・のぼる)
 1968年7月、東京生まれ。放送大学卒。脚本家。テレビアニメ「TEXHNOLYZE」
「恋風」「地獄少女」「バッカーノ!」などを手掛ける。劇団「机上風景」座付
き作家として「複雑な愛の記録」「グランデリニア」などを発表、「幻戯(げん
ぎ)」を作・演出。2007年6月退団。
・wonderland掲載劇評一覧:http://www.wonderlands.jp/index.php?catid=3&subcatid=18


【上演記録】
龍昇企画「モグラ町」
 http://www.ryusyokikaku.com/index.html
 神楽坂 theatre iwato(2008/3/6-10 7ステージ)
 http://www.theatre-iwato.com/

 作・演出:前川麻子
 照明:千田実(CHDA OFFICE)
 音楽:渡辺禎史
 舞台監督:杣谷昌洋
 演出助手:小形知巳
 衣装:西篠正晃
 宣伝写真:亀澤俊臣
 宣伝美術:木曽慎一郎
 制作:畑中由紀子
 プロデューサー:龍昇
 助成:日本芸術文化振興会・舞台芸術振興事業

 出演:
 龍昇   :平井家の長男・昇司(ショウジ 54)
 塩野谷正幸:同 次男・将司(マサシ 52) [流山児★事務所]
 山本政保 :同 三男・勝也(カツヤ 50)
 稲増文  :同 四男・文太(ブンタ 42)
 吉岡睦雄 :同 五男・欽也(キンヤ 33)

 吉田重幸 :昇司と将司の幼なじみ・福田善男(55)
 小林千里 :藤次郎の後妻・智子(サトコ 55) [U・フィールド]
 津田牧子 :藤次郎と智子の娘・敦子(アツコ 18)
 渡辺真起子:S区土竜特別出張所職員・下山由美子(40)

 音楽:
 ワイトロックベイビーズ 山中洋史(ギター、ウクレレ)+フジッ子(パーカッション)

 前売3300円 当日3700円 学生3000円


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◆龍昇企画「モグラ町」
 待ったなしで台詞が飛んでくる 「間」は徹底して削がれて
 小畑明日香(慶応大生)

あーおもしろかった。圧倒されるんじゃなく、笑いたいとこで笑えて、終始伸び
伸びとした気分で見られた。こういう演目があるから芝居はやめられない。

汚物の多いストーリーである。
独身の五人兄弟がいる。兄弟の母が死んだ後に来た義母と、義母が産んだ高校生
の義妹がいる。父親は寝たきり、だがまだ義母とセックスしているらしい。義母
と義妹は「あの兄弟全員童貞だったりして」「やめてよ気持ち悪い」と話す。兄
弟は平均年齢四十代。スロット狂いだったり出会い系にはまってたりしてる。血
がどろーっと濃い。流れるときも糸を引きそうだ。

木箱を場面ごとに役者が組み合わせて演じる形式や、極端に間を詰めた台詞回し
があるからエンターテイメントとして見られる。『モグラ町』という題だが町を
思わせる具象を少しでも残していたら爽快感はなかっただろう。濃い上に不純物
の混ざりやすい血縁関係を描くために、町の風景や台詞の間は徹底して削がれて
いて、それはすなわち思い入れを削いだということなのだと思う。兄弟の幼なじ
みのよっちゃんや、兄弟の一人が惚れる吉岡さんが登場するのもいい。義妹は高
校卒業と同時によっちゃんと駆け落ちして、吉岡さんは付き合う前に嫁にされそ
うになって、状況は結構、待ったなしで変わっていく。変わらないもんもある、
が、いいもん、ではない。

『モグラ町』の思い出は澱んでいる。澱んだ思い出に足をとられながら生きる兄
弟がいる。
「俺はさ、あのときからずっと、ずーっと!」
「やめられないんだよ。痴漢。」
待ったなしで台詞が飛んでくる。次々状況が変わる一方で、誤解を訂正できない
まま何十年も立ち止まっているところもある、そういう、ある町の、ある家族の
物語だ。

言葉を音として捉える演出家なのかなと思う。
音響ブースを舞台下手隅に設け、かつ全部を生音演奏でやる、という手法からも
思ったけど、同時に役者がしゃべって台詞が重なる場面が何回かあった。

「あれ、台本には普通にだーっと書いてある。そことそことそこで入って!って
言われてしゃべるの。」

あのシーン、台本はどうなってるんですか?と公演後に役者の一人に伺ったらこ
んなことを話してくれた。(小林千里さんありがとうございました)もうみんな
こんな感じだったけどねえ、と前のめりになって見せてくれたが、
「こことこことここで台詞入って!はい行くよ!」
という演出家は指揮者みたい、な気がした。最初から台本を二段組で書く平田オ
リザよりももっと即興的で柔軟な、楽団の生演奏みたいな作り方。そういえばカー
テンコールは役者全員が生バンドに合わせて太鼓やトライアングルを叩く演出だっ
たのだ。舞台装置の木箱は一カ所に積まれて、役者はみんな木箱の上にのっかる。
走る船のように見えた、けど他の人には違って見えたかもしれない。説明はされ
ない。的確だなー。「演劇でしかできないこと」を分かっているから、演劇も映
画も小説もがっちりできるんだろう。
媒体の違うものに進出している人は強い。強いっていうか、違う。下世話なもの
をさっぱり描くのは本当に技術が要ることだ。
ごちそうさまでした。

【筆者略歴】
 小畑明日香(おばた・あすか)
 1987年横浜市生。慶大文学部在学中、国文学専攻。売文屋、役者。『中学校創
作脚本集 (2)』(晩成書房)に脚本収録。2007年10月Uフィールド+テアトルフォ
ンテ主催『孤独な老婦人に気をつけて−砂漠・愛・国境−』(マテイ・ヴィスニ
ユック作)に出演。wonderland執筆メンバー。
・wonderland掲載劇評一覧:http://www.wonderlands.jp/index.php?catid=3&subcatid=18


【上演記録】
龍昇企画「モグラ町」
 http://www.ryusyokikaku.com/index.html
 神楽坂 theatre iwato(2008/3/6-10 7ステージ)
 http://www.theatre-iwato.com/

 作・演出:前川麻子
 照明:千田実(CHDA OFFICE)
 音楽:渡辺禎史
 舞台監督:杣谷昌洋
 演出助手:小形知巳
 衣装:西篠正晃
 宣伝写真:亀澤俊臣
 宣伝美術:木曽慎一郎
 制作:畑中由紀子
 プロデューサー:龍昇
 助成:日本芸術文化振興会・舞台芸術振興事業

 出演:
 龍昇   :平井家の長男・昇司(ショウジ 54)
 塩野谷正幸:同 次男・将司(マサシ 52) [流山児★事務所]
 山本政保 :同 三男・勝也(カツヤ 50)
 稲増文  :同 四男・文太(ブンタ 42)
 吉岡睦雄 :同 五男・欽也(キンヤ 33)

 吉田重幸 :昇司と将司の幼なじみ・福田善男(55)
 小林千里 :藤次郎の後妻・智子(サトコ 55) [U・フィールド]
 津田牧子 :藤次郎と智子の娘・敦子(アツコ 18)
 渡辺真起子:S区土竜特別出張所職員・下山由美子(40)

 音楽:
 ワイトロックベイビーズ 山中洋史(ギター、ウクレレ)+フジッ子(パーカッション)
 前売3300円 当日3700円 学生3000円


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◆背番号零「明るい部屋」
 コトバの合間に肉の手触り 会話劇に挑戦した第一歩
 木俣冬(文筆自由労働者)

 背番号零による初の会話劇という挑戦は、コトバとコトバの合間に肉の手触り
をふと浮き上がらせた。

 開幕直後、ガツンと不穏な音がする。無機質な音ではなく、何かイヤな手触り
を喚起させる。
 その予感通り、舞台が明るくなると、上手には女性が倒れている。そして、彼
女の前には男性が立っている。

 再び暗転が開けると、なにごともなかったように、その部屋で数人の登場人物
が会話している。上手に冷蔵庫、中央に本棚、机、下手にソファ。すべてがほど
よく使い込まれた印象。
 そこは何かの事務所として使われているようで、そこで働いている瑛太の弟・
達巳が彼女・千鳥を連れて東京からはるばるやってきたことが会話の中で説明さ
れる。
 ソファには、美しい女性エリコが黙って座っている。彼女がいることにまるで
気づかないように不躾に横に座る千鳥の様子に、この空間の異様さが伝わってく
る。

 兄・瑛太は、この部屋で、数人の仲間とバイオ的な実験を行っている。実験の
せいで、近所の環境に変化が起きていると噂され警戒の的になっている。後にわ
かることだが、彼の恋人エリコは行方不明になり、バラバラになった肉体の一部
がみつかっただけであるという。
 誰とも触れ合わない、謎の女性は、どうやらこの部屋に残った彼女の思念なの
かもしれない。

 瑛太は何度も冷蔵庫をのぞく。
 冷蔵庫から漏れる灯りは不思議に魅惑的だ。
 最初は、実験のサンプルが入ってその中に、何が入っているのかは最後までわ
からない。
 後半になって瑛太は言う。
〈この中にあるのは、ただの肉です。タンパク質です。それでも顔がほころびま
す〉

 「タンパク質」というコトバの選択に興味が湧いた。瑛太の職業柄のコトバな
のかもしれないが(同僚が持ってきたミカンを〈糖度14度です〉と言うのもおも
しろかった。)、肉というコトバよりもなぜか妙に「生命」を感じさせてドキリ
とした。

 一方・弟・達巳は、実は神経を病んでいて、暴力事件を起こして会社をクビに
なっていた。その上、千鳥に子供ができたと思い込んでいるが、実際みごもって
いない千鳥は本当のことを言い出せず苦しんでいた。

 クライマックスで、達巳は、自分の中にあるものがあふれ出てしまう恐怖に苦
しんでいることを吐露する。自分の選択はいつも最悪で、取り返しのつかないこ
とになる。そして、自分の中が空疎だという恐怖。
 その苦しみを、「もう寝よう」というコトバで慰める千鳥。
 千鳥のお腹の中も空っぽで、空っぽ同士が、共に苦しみを共有する時に、
こんなにも違う方向性なのがおもしろい。達巳にとって、こういう女性だからつ
きあえるのかもしれないと、恋愛の妙について考えさせられた。頭で考えない、
寝るとか食べるとかの肉の本能。千鳥役の女優が、美しい光を放つエリコと比べ
て地味で、猫背気味でおどおどした雰囲気を漂わせているが、それがむしろ生々
しい肉を感じさせて気になってならなかった。

 達巳は、兄に対して、年齢が5、6歳離れていて性格も似ていないから対立しな
いし好意はあるが反面どこか疎ましく思っている。エリコと千鳥を比べても女性
の趣味も似ていない。けれど、根本的にはふたりは空虚な思いを持て余している
ことが似ているようだ。しかもその空白を、女性(の肉体)の存在で埋めようと
している。

 作者・有田真代は、苦悩する達巳の長ぜりふに思いを込めたのかもしれない。
あえて観念的にしているのか、女性だからどうしても男性のコトバは観念的になっ
てしまうのかはわからない。

 近年、映像だけに留まらず舞台も、わかりやすい設定、わかりやすい起承転結
の物語、わかりやすい登場人物の感情表現による、安心な物語が増えている中、
「わからないと思われることをおそれない」姿勢が作品から満ち溢れていること
は、頼もしい。装置や照明の細やかさからも、作品を丁寧に作りあげようとして
いる心が伝わってくる。

 あまりにも増えすぎたわかりやすい作品ブームに、わかりにくくてもいいじゃ
ない、みんなが違うこと感じてもいいじゃない、という作品がようやく現れはじ
めてきた昨今、背番号零もそのひとつとして期待したい。

 私個人としては、オリジナルな表現を求めて観念に突入していくよりは、「タ
ンパク質」「もう寝よう」のようなものに瑛太や達巳が救われたように、これら
のコトバの発見は戯曲自体も救われた気がした。会話劇に挑戦した意義を感じる
させる第一歩だと思う。

 良い物語であれば誰が演じてもどんな演出でもなんとかなるというものではな
くて、俳優がそこにいることで成立する演劇の復権を夢みて−。

〈この中にあるのは、ただの肉です。タンパク質です。それでも顔がほころびま
す〉

 舞台上にあるのは、ただの肉です。タンパク質です。それでも我々は顔がほこ
ろびます……勝手ながら、そんな感じ。

【筆者略歴】
 木俣冬(きまた・ふゆ)
 フリーライター。映画、演劇の二毛作で、パンフレットや関連書籍の企画、編
集、取材などを行う。キネマ旬報社「アクチュール」にて、俳優ルポルタージュ
「挑戦者たち」連載中。蜷川幸雄と演劇を作るスタッフ、キャストの様子をドキュ
メンタリーするサイトNinagawa Studio(ニナガワ・スタジオ)を運営中。個人
ブログ「紙と波」http://blog.livedoor.jp/kamitonami/
・wonderland寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/index.php?catid=3&subcatid=33


【上演記録】
背番号零第四回公演『明るい部屋』
横浜 STスポット(2008年2月22日-26日)
http://www.sebango-zero.net/
作/有田真代
演出/門田純

出演:
笠木真人
門田純
高橋果奈
佐々木幸子(野鳩)
布川恵太
中川知子
泉光典
片倉わき

スタッフ:
作/有田真代
演出/門田純
舞台監督/藤本志穂(うなぎ計画)
音響/香田泉(猫ノ手)
照明/福島早紀子 
舞台美術/急な坂アトリエ
衣裳/山内加奈子,堀内さゆり
宣伝美術/市原拓
演出助手/大久保嘉洋
制作/山本ゆい
製作協力/森貴裕(猫ノ手)
製作指揮/高松宏行
企画製作/背番号零


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【編集日誌】
☆「モグラ町」は残念ながら見逃してしまいました。公演評を読み合わせると、
舞台の特徴が浮かび上がってくるのではないでしょうか。再演あるいは前川作品
の次作を龍昇企画が舞台にかけてほしいと願っています。
☆背番号零の今回の舞台には、木俣さんのレビューにあるとおり、<肉の感触> 
がありました。だからといって暑苦しいわけではありません。展開の折々にひん
やりとした空気さえ漂うのです。そこが不思議な特徴なのかもしれません。
☆1988年から始まった東京国際芸術祭は今年でひとまず幕を下ろしました。アー
トネットワーク・ジャパン(ANJ)が主催した後期の10年を振り返るシンポジウ
ムが3月24日にしすがも創造舎で開かれ、その席で来年から「フェスティバル東
京」(仮称)として東京都とANJらが共同で開くことが明らかにされました。プ
ログラム・ディレクター(プロデューサー)は今回のディレクターだったANJの
相馬千秋さんになるとのことでした。彼女は30歳代前半。この若さと女性という
点から国内では例を見ない抜擢と言われそうですが、海外ではそれほど珍しくな
いと言います。専門職としてのフェスティバルディレクターが活動の場を広げて
いけるよう期待しています。
(北嶋)
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発行 ワンダーランド
〒202-0002 東京都西東京市ひばりが丘北4-1-9 (有)ノースアイランド
Tel& Fax: 042-422-5219  wonderlands@northisland.jp
webサイト http://www.wonderlands.jp  
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