キャリアデザインマガジン

日本キャリアデザイン学会 キャリアデザインマガジ第81号


カテゴリー: 2009年01月06日
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□    キャリアデザインマガジン 第81号 平成21年1月5日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □-----------------------------------------------------------

1 キャリア辞典「非正規労働(1)」
2 私が読んだキャリアの1冊
   梅澤正『職業とは何か』
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり研究会を開催いたします。
 非会員の方もご参加できます。

 日 時:平成21年1月31日(土) 15:30〜17:30
 講 師:法政大学経営学部教授 川喜多喬氏(本学会会長)
 テーマ:「私の”キャリアデザイン”観と研究・教育への応用経験」
       ・・・この「めがね」を使ってみると見えること・・・
 会 場:東京国際フォーラム (Gブロック 5階 G502)
 定 員:80人
 参加費:会員/無料 非会員/3.000円

  ※内容・申込要領等、詳細は学会ホームページをごらんください。
   http://www.career-design.org/content/view/110/1/

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1 キャリア辞典
  〜「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです〜

「非正規労働」(1)

 昨年(2008年)末もおしせまった12月26日、厚生労働省は「非正規労働者の
雇止め等の状況について(12月報告)」を発表した。これはもちろん、昨今の
厳しい雇用失業状勢、とりわけ厳しいとされる非正規労働者の雇用問題をふま
えたものだろう。それによれば「派遣又は請負契約の期間満了、中途解除によ
る雇用調整及び有期契約の非正規労働者の期間満了、解雇による雇用調整につ
いて、本年10月から来年3月までに実施済み又は実施予定として、全国の労働
局及び公共職業安定所で12月19日時点で把握できたものは、全国で1,415件、
約85,000人となっている」とのことだ。
 非正規労働については、ほかにも非正社員、非正規社員、非正規雇用、非典
型労働、非典型雇用など、さまざまな類似の用語がある。どれが定番なのだろ
うか。
 ウェブ上をみると、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』に登
録されているのは「非正規雇用」だが、検索エンジンのgoogleを使ってこれら
用語を「ぐぐって」みたところ、厚生労働省公認?の「非正規労働」が最も多
く約2,440,000件、次いで「非正規雇用」が約1,260,000件、「非正社員」が約
770,000件、「非正規社員」が約478,000件、「非典型雇用」が約102,000件、
「非典型労働」が約88,600件という順となった(平成21年1月5日22:45検索実
行)。
 また、日本経済新聞社のオンライン新聞記事検索サービス「日経テレコン21」
を使って、今回の雇用調整局面である過去半年間における新聞記事での登場件
数をカウントしてみると、こちらは「非正規雇用」が671件で最多、次いで
「非正社員」が542件、「非正規社員」が444件で続き、意外にも「非正規労働」
は99件にとどまっている。「非典型雇用」と「非典型労働」はこの検索ではヒ
ットしてこない(検索対象は日経新聞朝刊・夕刊のほか読売・朝日・毎日・産
経の各紙、平成21年1月6日検索)。間違いかと思ってサービス対象の全期間で
検索しても非典型雇用は5件、非典型労働も20件しか登場していなかった。
「非典型」は難解な印象があるのか、新聞報道では好まれていないようだ。
ちなみに、日経と朝日は「非正社員」の登場回数が明らかに多く、読売・毎
日・産経は「非正規雇用」が明らかに多いので、新聞社によってある程度用語
の基準が作られているのかもしれない。
 最近の動向として、昨年(2008年)10月には連合が「非正規労働センター」
を設置しているし、厚生労働省も冒頭の発表で「非正規労働」との用語を使っ
ていて、政労の足並みは一応揃ったといえるかもしれない。いっぽうで、使用
者団体である経団連はというと、やはり昨年(2008年)末に発表された『2009
年版経営労働政策委員会報告』をみると、「パートタイム労働」「派遣労働」
「期間従業員」などといった個別の名称が使われていて、これらを一括した呼
称は登場していない(一応「有期雇用従業員」というのがそれに近いかもしれ
ないが、「非正規労働」とはややニュアンスが違うだろう)。雇用対策の重要
性については政労使のコンセンサスになっているようだが、ここはまだ足並み
は揃っていないようだ。
                         (編集委員 荻野勝彦)


2 私が読んだキャリアの1冊

 『職業とは何か』 梅澤正著 講談社現代新書 2008.8.20

 ベストセラー作家、村上龍氏の手になる『13歳のハローワーク』という本が
一世を風靡したことがあった。今でも、インターネット書籍通販大手のAmazon.
co.jpの売上ランキングをみると「社会・政治 > 社会学 > 労働問題」のカテ
ゴリではいまだに1位になっているが、この本の発売当時の「オビ」には「人
生は一度しかない。好きで好きでしょうがないことを仕事にしたほうがいいと
思いませんか?」という惹句が謳われていた。そしてその主要なメッセージは
「いい学校を出ていい会社に入れば安心」という時代は終わりました。13歳か
ら大人まで、自分の本当に好きなことをもう一度よく考えて仕事を選ぼう! 」
というものだった。
 著者はこの本の中で、これらのフレーズを目にして「がっかりしてしまいま
した」と率直に述べている。それが永年にわたってキャリア研究に取り組んで
きた大家のいつわらざる感想だろう。著者はこの本の第1部で、「適職」こそ
職業なのか、「やりたい仕事」こそ職業なのか、「楽しく働ける仕事」こそ職
業なのか、と問いかけていく。第2部では「キャリアという考え方」を導入し、
職業は生き方と不可分の「人と社会をつなぐもの」であると述べる。そして、
職業が経済的報酬にとどまらず、知識や能力、人的ネットワーク、信用や人望
といった人生におけるさまざまな資源を提供し、自分づくりを担保することを
訴える。その中で、若者、特に就職活動にのぞむ学生たちに対するメッセージ
として、人が職業を選ぶのとともに「職業が人を選ぶ」という側面に目をむけ、
やりたい仕事ではなく社会が必要としている仕事、自己理解より社会理解とい
う観点を大切にしようといったことが述べられる。キャリア教育に多くの業績
を持つ著者らしく、現実社会を踏まえた、地に足のついた議論であり、企業で
人事管理を担当する多くの実務家の実感にもよく一致しているだろう。
 続く第3部では職業能力が論じられる。以下は一介の実務家にすぎない私の、
民間企業における人事管理の実務担当者としてのごく限られた経験に基づく実
感によるもので、学問的価値はもとより皆無だが、正直な感想として述べさせ
ていただくと、このあたりから少々論調が現実離れしはじめる感は否めない。
著者は職業能力を基礎的能力と職業固有の能力とに大別し、「得意技や専門性
が職業への自信を生む」として、職業固有の能力の重要性を強調する。これに
対し、現時点では「コミュニケーション力」「社会力」あるいは「社会人基礎
力」などの基礎的能力が重視されており、これが職業能力形成の遅れにつなが
っていると指摘する。著者は「職業」を企業などの枠を超えた普遍的な概念と
しているようなので、企業内で育成される能力は「職業固有の能力」よりは
「仕事固有の能力」の色彩が強い、と考えているのかもしれない。第3部の後
半では「プロフェッショナル」について熱を入れて語っているのだが、妙に経
営コンサルタントなどの主張の引用が多く、第1部、第2部が著者の確信を感
じさせたのに対するとやや説得力を欠く。特に企業の実務家としてつらいのは、
「特定の組織に帰属し、企業のために尽くす人材にプロフェッショナルという
用語をあてはめるのは適切とは思えません。プロフェッショナルは、語源に照
らすと、企業や組織にとって重要か否かではなく、社会や市民にとって有意義
かどうかが判断の尺度になるのではないでしょうか」という見解だ。「特定の
組織に帰属し、企業のために尽くす人材はプロフェッショナルとはいえない」
「プロフェッショナルは社会や市民にとって有意義かどうかが判断の尺度」と
いうことは、「特定の組織に帰属し、企業のために尽くす人材は社会や市民に
とって有意義ではない」ということだろう。しかし、企業とは財やサービスを
提供することで社会のニーズにこたえるものであり、さらにはイノベーション
を通じてより豊かな生活を実現していくといった大切な役割を果たしている。
少なくとも、民間企業に勤務する人の相当割合は、自分の仕事は世のため人の
ためになっていると信じ、誇りに思っているだろう。それに尽くす人材は社会
や市民にとって有意義ではないといわれては、企業の人事担当者は立つ瀬がな
い。たしかに企業内育成は著者にすれば「仕事固有の能力」を形成するものに
すぎないかもしれないが、これほどまでに企業内育成を軽視されては企業実務
家としては慨嘆するよりない。
 第4部は、私のいたって雑な受け止めとしては「企業にいやいや勤め続ける
のも選択肢のひとつだけれど、転職や起業で「リセット」したほうがいいです
よ、2回でも3回でも「リセット」すればいいけれど、ただしそれを成功させ
るにはリカレント学習が不可欠ですよ」ということのようで、これはこの限り
ではまったくそのとおりなのだろう。ただ、リカレント学習は成功の必要条件
ではあるにしても、決して十分条件ではあるまい。また、リカレント学習とい
っても決して容易なことではなく、とりわけ個人が独力でそれに取り組むとな
るとなおさらだ。実際、数多く紹介される個別事例も、スピンアウトして成功
した例ばかりだが、これらがごく限られた例外であることは否定できない事実
だろう。これに対し、日本企業の多くが採用している「長期雇用・内部育成・
内部昇進」というやり方には、企業に勤続し、雇用を安定させつつ必要なリカ
レント教育・学習が行われていくしくみがビルトインされている。そして、そ
れは決して例外的な人のものではなく、ごく一般的な多くの人々にも適用可能
だ、というのが日本的雇用慣行の妙味なのだが、著者がそれにまったく関心を
示してくれないのは人事担当者としてはまことに淋しい。
 企業実務家として残念なことに、この本は第1部・第2部できわめて有益な
議論を展開しているにもかかわらず、「企業に対する無関心」という点におい
て『13歳のハローワーク』と変わりはないように感じられてしまう。独立・起
業して成功する人や、高度な「職業固有の専門能力」を生かして複数企業を渡
り歩く人よりは、途中何度かの転職はあるにせよ勤め人のまま職業生活を終わ
る人のほうがはるかに多いのだし、それが今後大きく変わるということもおそ
らくあるまい。となると、今日のわが国において(現実を離れた善悪は別とし
て)「リセット」「リカレント」を強調しすぎることは、これから職業生活を
歩みはじめる若者たちをかえってミスリードしてしまうのではないかと心配す
るのは、はたして私だけなのだろうか?
                         (編集委員 荻野勝彦)
 ※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
  日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。


3 キャリアイベント情報
  〜キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します〜

◆産業社会研究センター「父親の仕事と子育て応援シンポジウム」〜ワーク・
 ライフ・バランス支援は、企業と社会の明日への投資〜」
 平成21年2月4日(水)13:30〜16:30 
 於 東京ウィメンズプラザ(東京都渋谷区)
 http://www.papa-wlb.com/symposium.html
  ※本学会の佐藤博樹理事が出講します。


【編集後記】
 あけましておめでとうございます。経済情勢、雇用失業情勢が悪化し、波乱
含みの年明けとなりました。このところ雇用対策がいつになく注目されていま
すが、単に仕事があり、収入があるというだけにとどまらず、働く人の「キャ
リア」に注目した雇用対策が行われることを期待したいと思います。難しい課
題ですが、なんとか明るい兆しの見える年になってほしいものです。今年も日
本キャリアデザイン学会と「キャリアデザインマガジン」をよろしくお願いい
たします。(O)


【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.career-design.org/

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
  
  このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
  無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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