キャリアデザインマガジン

日本キャリアデザイン学会 キャリアデザインマガジン第78号


カテゴリー: 2008年08月25日
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□    キャリアデザインマガジン 第78号 平成20年8月25日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □-----------------------------------------------------------

1 キャリア辞典「人間力(3)」
2 私が読んだキャリアの1冊
   川喜多喬・小玉小百合編『優れた人材のキャリア形成とその支援』
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆学会ホームページ リニューアルのお知らせ
 日本キャリアデザイン学会は学会ホームページをリニューアルし、視認性の
 向上、内容の拡充をはかりました。ぜひご利用ください。
 なお、リニューアルにともない、アドレスが変更となっておりますので、ご
 注意ください。
 新アドレス → http://www.career-design.org/

◆日本キャリアデザイン学会 2008年度第5回研究大会・総会の参加申込を受
 け付け中です。
 日 時:2008年9月27日(土)・28日(日) 
 テーマ:「キャリアデザイン : 個人の責任と支援者の役割−「自律」「協
     働」−」 
 会 場:京都産業大学
  ※大会の詳細、およびお申込は学会ホームページでお願いします。
   http://www.career-design.org/content/view/33/1/

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1 キャリア辞典
  〜「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです〜

 「人間力」(3)

 「人間力」に詳細かつ具体的な定義を与えたのは、平成14年に経済財政諮問
会議が「人間力戦略」を打ち出したのを受けて平成15年に内閣府に設置された
「人間力戦略研究会」であった。その報告書によれば、「この研究会の目的は、
人間力という概念を明確にしつつ、その現状を分析し、今後の社会・経済の発
展に結びつくような政策提言を行っていくことにある」ということだから、定
義づけが重要な目的の一つと位置付けられていることがわかる。さらに報告書
は、「文部科学省は、近年の教育改革の中で、自ら学び、自ら考える力などの
「生きる力」という理念を提唱してきた。「人間力」とは、この理念をさらに
発展させ、具体化したものとしてとらえることができる。すなわち、現実の社
会に生き、社会をつくる人間をモデルとし、その資質・能力を「人間力」とし
て考える」と述べている。この研究会の座長を教育学者の市川伸一氏が務めて
いることをみても、文部科学省が主導的な立場をとったことがうかがわれよう。
 さて、ここで与えられた「人間力」の定義は「社会を構成し運営するととも
に、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」というも
のだ。もっとも、報告書は「この定義は、多分にあいまいさを含んでいる。し
かし、私たちは、人間力という概念を細かく厳密に規定し、それを普及させる
ことをこの研究会の使命とは考えていない」とも述べていて、必ずしも厳格な
定義を定めようというものでもないようだ。
 もっとも、これだけではいかにも抽象的なので、報告書は後段では「その構
成要素に着目」して、さらに具体的な定義を行っている。以下の3要素をあげ、
「これらを総合的にバランス良く高めることが、人間力を高めること」である
という。
(1)知的能力的要素
・基礎学力(主に学校教育を通じて修得される基礎的な知的能力)、専門的な
 知識・ノウハウを持ち、自らそれを継続的に高めていく力。また、それらの
 上に応用力として構築される論理的思考力、創造力など
(2)社会・対人関係力的要素
・コミュニケーションスキル、リーダーシップ、公共心、規範意識や他者を尊
 重し切磋琢磨しながらお互いを高め合う力など
(3)自己制御的要素
・(1)(2)の要素を十分に発揮するための、意欲、忍耐力や自分らしい生き方や
 成功を追求する力など
 読めばもっともな印象は受けるのだが、これでもまだ抽象的で漠然としてい
るという感もある。ともかく報告書はこの定義をもとにわが国における人間力
の現状を概観し、「我が国の若年層において、人間力とりわけ学習意欲や就業
意欲が「低下」している可能性が高い」と結論づけている。そのうえで、その
原因を検討し、多岐にわたる政策提言を行った。
 もっとも、この報告書は残念ながら世間の注目を大きくは集めなかった。そ
の後も文部科学行政の検討においてはたびたび参照されているが、その他の場
面ではあまり活用されていないようだし、政策提言の実現度という点でも疑問
符がつきそうだ。次に「人間力」が政策の表舞台に立つのは、この2年後の平
成17年にスタートした「若者の人間力を高めるための国民会議」においてとな
る。
                         (編集委員 荻野勝彦)


2 私が読んだキャリアの1冊

 『実証研究 優れた人材のキャリア形成とその支援』
   川喜多喬・小玉小百合編 ナカニシヤ出版 2008.4.25

 この本は論文集であり、5つの事例調査と編者による解題の6章から成り、
事例調査の5章はいずれも非常にユニークな企業・職種を取り上げている。さ
らに、いずれも社会人大学院生の修士論文がベースとなっており、うち4章が
著者が働く勤務先あるいは業界を対象としている。詳細な事例調査の中には外
部からはなかなか窺い知ることのできないであろうと思われる内容も多く含ま
れ、事例集としてまことに興味深い本である。
 第1章は自由闊達で先進的な社風で有名な、誰もが知っている国際的エレク
トロニクス企業(読めば特定は容易なのだが、社名は伏せられている)の役員
クラスのキャリア形成を調べている。中でも、調査対象者全員が「長期キャリ
アの計画については特に考えてはいなかった」と応えているとの結果は興味深
い。ただ、関連会社への出向、海外勤務、異文化体験、修羅場体験など、その
結論は実感に合うものだろうが、この企業であれば、結果的に役員になった人
もならなかった人も、相当割合で出向や海外勤務などを経験するだろう。役員
になった人とならなかった人を比較して明らかな差がなければ十分な実証とは
いえないのではないか。
 第2章も、ユニークな経営と個性的な人材が集まり輩出されることで有名な
企業の事例である(これまた読めば特定は容易なのだが、社名は伏せられてい
る)。この企業に著者と同期入社した人のうち、「優れた人材」と目される13
人をヒヤリング調査の対象として、その定着や転職・起業等に影響を与えてい
る要因を明らかにしている。きわめて独自色の強い企業だけに事例としてまこ
とに面白い。
 第3章はファッションデザイナーの人材形成を調べている。大手アパレル3
社の事例からファッションデザイナーの標準的なキャリアを示し、個別企業の
詳細な観察を加えて、企業内経験の有用性を明らかとしている。さらに、著者
の勤務先の保有するファッションデザイナーのデータベースを利用して、優れ
たファッションデザイナーのキャリアの特徴を示している。個人の資質に大き
く依存すると考えられがちな職業だが、優れた人で10年程度、トップクラスで
も5〜6年程度の企業内経験が有用であるとの結論は興味深い。
 第4章も民間地方放送局のアナウンサーという非常にニッチな職業を対象と
する。聞き取り対象者は11人で、そのキャリアを3つのタイプに分類し、それ
ぞれの特徴を明らかにするとともに、アナウンサーがフリーランスに転換する
要因についても示した。また、米国でみられるような小規模局から大規模局に
転職するというキャリアパスが日本ではみられないことも示している。
 第5章は、これまた先進的な人事管理で知られる著名なIT起業の事例であ
る。この企業は従業員のキャリア開発支援の先進事例としても有名であり、そ
の中で重要な役割を果たしている企業内キャリアカウンセラーの実態を調べて
いる。聞き取り対象は同社のカウンセラー10人と独立のカウンセラー1人であ
る。企業内キャリアカウンセラーの必要性・有用性とそこで求められる能力・
資質等について明らかにしており、先進事例の詳細な紹介として非常に有益で
ある。
 第6章は編者による解題の性格を持つ。これら事例研究の意義を確認し、そ
れぞれの研究の持つ含意を先行研究の文脈の中で解き明かしている。著者が述
べるように「だいたいが全ての人材マネジメントの仕組みが試行錯誤を通じて
できていくものである」。そのときに多くの実務家が参考とするのは理論より
実例であろう。もちろん先進企業や同業他社の事例が注目されるだろうが、異
業種や特殊な職種の事例にもヒントはあろう。そして、それが単なる事例、事
実の紹介だけではなく、なんらかの仮説を実証したものであれば、それはなお
さら試行錯誤のうえで参考となる可能性があろう。そういう意味では、この本
は学術書であるとともに実用書としても有益かもしれない。
                         (編集委員 荻野勝彦)
 ※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
  日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。


3 キャリアイベント情報
  〜キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します〜

◆中央職業能力開発協会(JAVADA)キャリア・シート(CADS&CA
 DI)活用セミナーセミナー 「CADS&CADIを活用した"納得できる
 キャリア形成”支援法セミナー」
  平成20年9月24日(水) 9:30-17:00
 於 エル・おおさか 708号室(大阪市中央区)
  http://www.javada.or.jp/jigyou/jinzai/cads_cadi.html

◆法政MBAセミナー2008「組織カウンセリングとキャリア支援型人材マネジメ
 ント」
 平成20年11月1日(土) 14:00−16:00
 於 法政大学ボアソナードタワースカイホール(東京都千代田区)
 http://www.i.hosei.ac.jp/~hbs/
  ※本学会の渡辺三枝子会長、川喜多喬常務理事が出講します。


【編集後記】
 北京五輪が閉幕しました。今回もまた感動のドラマが多く生まれましたが、
キャリアデザインという観点ではアスリートのキャリアにも関心を寄せざるを
得ません。学生スポーツのうちはまだしも、その後はわが国でも競技で「喰っ
ていける」人はむしろ少数派で、試合や練習の時間を確保するために不安定な
アルバイトなどで働くかたわら競技を続ける人も多いのだとか。また、プロの
アスリートになれたとしても、引退後のキャリアには困難な現実もあるでしょ
う。国策として強化を掲げるのであればしっかり取り組む必要のある課題では
ないでしょうか。もちろん、取り組まれてはいるのでしょうが…。(O)


【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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◆学会監修・菊地達昭編著『キャリアデザインへの挑戦』優待販売のお知らせ

・本学会の菊地達昭・常務理事編により、学会創立期のメンバーなど、有識者
 58人の「私のキャリアデザイン論」(『文部科学通信』に連載)を集大成し
 た図書『キャリアデザインへの挑戦』が、経営書院から出版されました。
 定価1890円(税込み)のところ、会員には特別に3割引(1323円)で販売を
 いたします。
  *経営書院(FAX:0120(73)3641、e-mail:sato-ken@sanro.co.jp)へ直接
   申し込んで下さい。その際、宛名に経営書院『キャリアデザインへの挑
   戦』係と書き、冊数、 宛名、送り先住所、送り先連絡先電話番号、会
   員番号を明記してください。
    なお郵送料はご負担下さい。折り返し振込用紙を同封しますので到着後
   1週間以内にお振込下さい。

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
  
  このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
  無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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サラリーマン時代に始めた株式投資から株で勝つための独自ルールを作り上げる。2017年、億り人に。 平成24年より投資助言・代理業を取得。現在、著者自身が実践してきた株で成功するための投資ノウハウや有望株情報を会員向けに提供しているかたわら、ブログやコラム等の執筆活動も行う。 2014年まぐまぐマネー大賞を受賞。読者数3万人。雑誌等のメディア掲載歴多数。 主な著書に『10万円から始める高配当株投資術』(あさ出版)『「小売お宝株」だけで1億円儲ける法』(日本実業出版社)
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