キャリアデザインマガジン

日本キャリアデザイン学会 キャリアデザインマガジン第34号


カテゴリー: 2006年02月13日
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□    キャリアデザインマガジン 第34号 平成18年2月13日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □-----------------------------------------------------------

1 私のキャリア観 法政大学教授 諏訪康雄(2)
2 キャリア辞典「アウトプレースメント」
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり勉強会を開催いたします。
 テーマ:「インターシップ活性化のための課題:大学、学生、企業、受け入
      れ担当者の4者への調査から」
 日時等:3月17日(金)18:30〜20:30 於 東京大学社会科学研究所
 講 師:堀有喜衣 労働政策研究・研修機構研究員
     堀田聰子 東京大学社会科学研究所助手
 コメンテーター:小島貴子 立教大学大学教育開発・支援センター
         松岡猛 NECラーニング(株)
  ※下記アドレスからオンラインで参加のお申し込みを受付中です。
   https://www.hosei.org/event/detail/20060317.html

◆来年度の日本キャリアデザイン学会大会の日程が決まりました。
 開催日:平成18年10月28・29日(土・日)
 開催校:立命館大学衣笠キャンパス(京都市北区)
  ※テーマ、自由論題募集などの詳細は決まり次第学会ホームページなどで
   お知らせいたします。 http://www.cdi-j.jp/

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1 私のキャリア観

「法とキャリアデザイン(1)」(7回連載)
              法政大学大学院政策科学研究科教授 諏訪康雄

【第1回】「キャリア権」構想の背景

−−−−−「キャリア権」という概念としてはなかったとしても、キャリアを
働く人にとって優良な資産としていく、ということは、日本では従来も企業内
で、長期雇用の枠組みの中で取り組まれてきました。

諏訪 まさしくそのとおりで、働くことを大事にする日本の雇用慣行が発想の
基礎にありました。とはいえ、企業がずっと存続するならそれでいいのですが、
現在は働く人の職業生活の途中で企業がなくなってしまう、という可能性が以
前よりはるかに高くなっているのではないでしょうか。産業構造が大きく変わ
るときには、企業内だけでキャリアを考えるのでは不十分ですし、リスクも高
くなります。

−−−−−たしかに、職業生活の途中で、求められるスキルが大きく変わると
いうことは常にありうると思います。

諏訪 歴史をみてもそうです。たとえば、江戸から明治に移ったときは、日本
でも刀剣や弓矢から銃砲類へと武器の技術革新が起こり、江戸時代に武士がや
っていた剣道などの道場がバタバタつぶれました。そうなると、それまで道場
の師範で尊敬されていた人が、その腕前を見せ物にして生活を立てなければな
らなくなってしまった。

−−−−−芸は身を助けるとはいいますが、社会的威信はガタ落ちですね。

諏訪 同じような話で、江戸時代の外国語といえば漢文、中国語で、日本の漢
文は中国人も感心するくらいハイレベルでした。ところが明治になると、片言
でもいいから英語とか、ヨーロッパ言語ができるほうがずっと役立つ時代にな
って、漢文の先生は要らなくなってしまった。もっとも、漢文の素養があった
から、当時は外国語に立派な訳語をあてることができました。「権利」とか
「自由」とかは、この時期につくられた言葉です。

−−−−−「経済」とか。

諏訪 そうそう。今はキャリアだのキャリアデザインだのとカタカナで言うわ
けですが(笑)、当時の知識人はそのくらい漢文の素養があって、それは漢文
を一生懸命勉強しておけば悪いようにはならないよ、という社会だったからで
すね。ところが、江戸時代の武士は官僚だったわけですが、剣術や漢文が達者
でもそのまま明治政府の官僚にはなれなかった。鉄砲や英語のような新しい技
術に対応できなければなりませんでしたが、古い技術で高いレベルに到達して
いるほど、新しい技術への対応は難しく、結局は「武士の商法」などといわれ
るようなみじめな道をたどったのです。ものの考え方も同様で、古いものにな
じんでいればいるほど、新しいものへの転換は困難でした。

−−−−−それは現代でもキャリアデザインにおける大きな課題とされていま
すね。蓄積したものが大きければ大きいほど、それにこだわってしまう。

諏訪 現代の中高年の再就職が難しいというのと同じことが起きていたわけで
す。むしろ若い人のほうが、蓄積したものが少ない分だけそれを捨てやすい。
昭和でいえば戦後の職業軍人なんかも大変でした。かつては尊敬を集める立派
なキャリアだったものが、外部環境が変わったことで、かえってうさんくさい
ものと思われてしまう。

−−−−−社会的、経済的なニーズが変化することで、キャリアの価値も変わ
ってしまうわけですね。日本企業の場合は、繊維メーカーが総合化学メーカー
になり、カメラメーカーが半導体製造装置メーカーになったように、企業自身
もニーズにあわせて事業分野を変化させ、従業員もそれと同時に新しい能力を
形成していくというスタイルを取ってきました。

諏訪 キャリアは社会、組織がつくっていくという側面と、個人、本人がつく
るという側面とがあります。基本は社会や組織がつくるのでしょうが、個人が
意識的につくっていくという面もある。それはことばを変えれば、キャリアデ
ザインを誰がするか、ということになります。組織、企業がやる場合は、企業
のニーズに応じてやるわけですが、うまく事業分野の変更で対応できればいい
ですが、できなかった場合には悲惨なことになりかねません。さきほどのアル
ミ精錬などは、変化が急激すぎて対応できませんでした。

−−−−−たしかに繊維メーカーでも、最近のカネボウは最終的にはうまくい
きませんでした。

諏訪 そういうことは常に起こりますし、起こりやすくもなっています。その
リスクは組織と個人が共有しているわけですが、組織が疲弊しているときは十
分な退職金を払えるとは思えませんし、産業全体が疲弊しているときには転職
だってままならない。

−−−−−となると、どうしても異業種への転職ということにならざるを得ま
せんね。労働条件も下がるでしょう。

諏訪 その意味では、企業だけでなく個人も、かなりのリスクを負っています。
予想されるリスクが現実のものとなったときに、人間がそれに耐えられるのは、
自分がそれに一定のコミットをしたときです。

−−−−−なるほど、自分で選んだ、決めたのだから、自分の責任として納得
しやすい・・・

諏訪 私自身の経験でも、最初に選んだ労働協約という分野は、先生がいくつ
か示した中から自分で決めましたから、その後世間の関心が薄れても、誰にも
文句は言えないわけです。まあ、自分は先が読めていなかったなとか、反省は
しましたが(笑)。もしこれが、先生からこのテーマをやれ、と命令されるよ
うな形で決まっていたとしたら、私の研究者人生をどうしてくれるんだ、と思
ったかもしれません。キャリアは組織が作っていくけれども、そこに自分の判
断も加味される、なんらかの形でコミットすることが大切です。キャリアの重
要な判断には、できるだけ個人が主体性を持てるようにすることが望ましいと
思います。
                  (聞き手・文責:編集委員 荻野勝彦)

 諏訪 康雄(すわ やすお)
 法政大学大学院政策科学研究科教授。労働法専攻。主な著書に『雇用と法』
(1999、放送大学教育振興会)、『判例で学ぶ雇用関係の法理』(1994、産業
労働研究所、共著)など。


2 キャリア辞典
  〜「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです〜

「アウトプレースメント」

 キャリア用語にはカタカナ用語、とりわけ米国発祥のことばが多いようだが、
これまた米国渡来のことばらしい。アウトプレースメントは「再就職支援」と
いう訳語をあてられることが多いようだが、これはいささか語義のニュアンス
を十分に伝えていないようで、カタカナのまま定着しつつあるらしい。
 アウトプレースメントはその字面から容易に想像できるように、転職者が自
発的に転職を意図して支援を受けるというよりは、企業が従業員を転職させる
ために支援を求めるというニュアンスが強い。米国は一般的に解雇自由の国と
されているが、いかに解雇自由でも問答無用で一方的に解雇を行えば当然軋轢
を生じ、紛争は避けがたい。このとき、再就職先を斡旋できれば人員削減はは
るかに容易に進むことは疑いなく、そこにアウトプレースメントの必要性が発
生した。とりわけ80年代以降、米国では人員削減が日常茶飯事のように行われ
るようになり、アウトプレースメントの需要は急拡大し、それを請け負う人材
ビジネスも大きく成長して、今日にいたるまで浮沈はありつつも隆盛している
ようだ。
 それでは日本ではどうだろうか。90年代、多くの企業がリストラに取り組む
必要に迫られた際には、多くの人材ビジネス業者がアウトプレースメントを手
がけたし、新規参入も相次いだ。行政においても、経済産業省などがアウトプ
レースメントを含む人材ビジネスの育成に乗り出し、日本でもおおいに隆盛す
るかに見えた。
 しかし、それはそれほど長続きはしなかった。企業のリストラが収束し、経
済も回復して企業業績が回復すると、アウトプレースメントへの需要は大きく
縮小したようだ。それにともない、アウトプレースメントビジネスの縮小や撤
退も相次いでいるといわれる。
 米国で一定規模のアウトプレースメントビジネスが存続するのは、好不況に
かかわらず米国企業はきわめて容易に人員削減に踏み切る一方、中途採用も頻
繁に行われていることから、常時アウトプレースメントへの一定の需要がある
とともに、再就職者を採用したい企業も多くあるからなのだろう。それに対し
て日本では、90年代の経済不振下においてはアウトプレースメントしたい企業
が多い一方、それを受け入れる企業は限られていたから、アウトプレースメン
トを成立させられる業者は貴重であり、したがって多くの利益をあげることも
できたのだろう。しかしながら、経済環境が好転すれば、雇用を重視する日本
企業のアウトプレースメントへのニーズもまた減退せざるを得ない。そうなる
とアウトプレースメントビジネスも縮小を余儀なくされる。それが日本の現状
ではないだろうか。
 アウトプレースメントに限らず、今日の日本では90年代には活発だったいわ
ゆる「不況型人材ビジネス」の相当数が苦戦を強いられているらしい。かつて
これを「振興・育成」しようとしていた行政は、これをどう見ているのだろう
か。
                         (編集委員 荻野勝彦)


3 キャリアイベント情報
  〜キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します〜

◆厚生労働省「企業経営とポジティブ・アクションを考えるシンポジウム」
 平成18年2月22日(水)13:00〜15:00
 於 女性と仕事の未来館ホール(東京都港区)
 http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/01/tp0123-1.html

◆生涯職業能力開発促進センター アビリティガーデン講演会
 「元気な中小企業になろう!」
 平成18年2月27日(月)14:30〜17:00
 於 アビリティガーデン(東京都墨田区)
   ※他に衛星通信システムを利用して全国120カ所以上の雇用・能力開発
    機構の施設で参加可能です。
 (講師)橋本久義 政策研究大学院大学教授
     中村裕樹 Jリーグキャリアサポートセンター カウンセラー 
 http://www.ab-garden.ehdo.go.jp/exchange/index.shtml#forum


[編集後記]
 本号の「キャリア・インタビュー」に出てくる「自由」「権利」「経営」を
はじめとして、私たちが日常的に使っている用語の中には、明治の文明開化で
入ってきた概念に訳語をあてたものが非常に多いのだそうです。たとえば、そ
もそも「法律」がそうだといいますし、ほかにも科学、理論、社会、民族など
など枚挙にいとまがないのだとか。ちなみに「自由」という訳語が広まったの
は福沢諭吉が「西洋事情」で用いたからだそうで、諭吉はほかにも「競争」
「演説」などの訳語をつくったり広めたりしたのだとか。先達の偉さをあらた
めて感じますが、さて、諭吉なら「キャリア」にどんな文字をあてたでしょう
か。(O)


【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

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◆働く若者ネット相談事業 ご利用のお勧め
 厚生労働省委託事業・日本キャリア開発協会受託・キャリア協議会協力
 webサイトを利用していつでもどこでもネットで相談できる仕組みです。
 また対面カウンセリングや電話カウンセリング、TVカウンセリングも行っ
 ています。詳しくはhttp://net.j-cda.org/まで。     (厚生労働省)

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
  
  このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
  無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部企画室担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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